「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」
オールマイトが1-A組の教室にやって来た。
「オールマイトだ!! すげえや、本当に先生やってるんだな!!」
「画風が違いすぎて鳥肌が・・・・」
「あれ・・・
オールマイトの登場に興奮するクラス一同。
現在の時刻は午後、午前中は必修科目の普通の授業を行い、午後からはヒーロー科特有の授業、"ヒーロー基礎学"が執り行われることになっている。
ヒーローの素地をつくる為に様々な訓練を行う科目、単位数は最も多いらしい。
そして今日のヒーロー基礎学の内容は・・・・
「今日はこれ!! 戦闘訓練!!!」
戦闘訓練とのこと。
ヒーローにとって必須の戦闘力、戦闘知識を学び高める内容。
まずは基礎体力作りから始めると思っていたが、初授業でいきなり戦闘を行うとは、やはり雄英は進んでいるな。
「そしてみんなにはこちらを・・・・」
オールマイトがリモコンを取り出しボタンを押すと・・・・
「「「コスチューム!!」」」
クラス全員分のコスチュームが出てきた。
"被服控除"によって雄英専属のサポート会社から要望に応じて用意された最新のコスチューム。
「これに着替えたら順次、グランドβに集まるんだ!!」
オールマイトはそう言い残し、一足先にグラウンドに向かった。
クラス一同はコスチュームを手にし、更衣室に向かう。
コスチューム・・・・可能な限り要望を出したが、ちゃんとあつらえてもらえただろうか・・・・。
――――
◇◇
場所はグラウンドβ。
「恰好から入るってのも大切なことだぜ少年少女!! 自覚するんだ!! 今日から自分はヒーローなんだと!!」
クラス全員がコスチュームに着替え、グラウンドβのゲートを潜る。
「さあ!! 始めようか、有精卵共!! 戦闘訓練の時間だ!!!」
全員にそう言い放つオールマイト・・・・しかし緑谷を見たら顔を押さえて震えている。
緑谷のコスチューム・・・オールマイトを意識して作られているのがよく分かる。
オールマイトはおそらく笑っているんだろうな・・・。
他の奴らも自分の個性に合わせたコスチュームを着用している。
若干無駄が多いようにも見えるが、恰好を重視したんだろう。
俺も要望通りのコスチュームを身につけた。
刃物も寄せ付けない炭素繊維を編み込んだノースリーブの首から膝までのスーツに、収納ポケット多い炭素繊維を編み込んだズボン。
膝には特殊合金で出来たプロテクター、同じく特殊合金の芯が入ったブーツを履く。
さらに両腕には特殊合金で作られた手の甲から肘まである
そして最後は炭素繊維を編み込んだ紅い全身マントを上にから羽織る。
この紅いマントは耐熱、耐電、凍結対策を施し、スーツよりも厚く作られている。
俺の個性を最大限に引き出す為のコスチューム・・・・概ね要望通りだ。
「先生! ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」
「いいや! もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!!」
ロボットのようなコスチュームを着た飯田がオールマイトに質問する。
オールマイトが言うには屋内の方が凶悪敵出現率が高いらしく、真に賢しい敵は
確かに公衆の面前に出てくるヴィランはスリだの食い逃げだの小者じみたことしかしない奴らばかりだ。
「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
基礎を知る為の実践とのこと。
「勝敗のシステムはどうなりますか?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか・・・・?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」
「このマントヤバくない?」
「んんん~~~聖徳太子ィィ!!!」
聞かなくても説明があるだろうに・・・・・オールマイトが震えて困っている。
それと最後に質問した青山・・・・馬鹿に見え・・・止めておこう。
それからオールマイトがカンペを取り出し説明を始める。
ルールは、敵がアジトに"核兵器"を隠していて、ヒーローはそれを処理すると言うアメリカンな設定であり、ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえる事。
これが勝利条件らしい。
そしてコンビ及び対戦相手はクジで決めるとのこと。
飯田が意見し、緑谷の説明で納得したが、まだ一つ問題がある。
それは・・・
「尚、今年のA組は1人多いから1組だけ3人チームとする!!」
2人コンビにすると1人余ると言うこと。
「3人?」
「そう言えばこのクラス1人多いな?」
「推薦入学2人と一般入学18で、20人のクラスと聞いてましたわ・・・」
「どういう事?」
クラスの人数が1人多いことに疑問を抱く一同・・・・生徒には知らされていないのか?
「今年は特別でね。雄英では希なスカウト生が出たのさ!」
「スカウト!? 誰ですか!」
「そこに居る造理少年だ!!」
「「「!!?」」」
全員が俺を見る・・・・・あまり目立たせるような事はしないで欲しいな
「でも造理ちゃん一般入試を受けてたわよ?」
「その一般入試で彼は歴代でもトップクラスの成績を叩き出したんだ!! 他の追随を許さないほどにね! その結果が認められ、校長を含めた教師全員の推薦を受けた彼は、雄英歴史上、片手に数えるほどしか例がない、スカウト制度が適応されたのさ!!」
蛙水の疑問にオールマイトが答える。
「本当かよ、それ!?」
「スゲー! スカウトだってよ!」
「凄いわね造理ちゃん」
「本物の才能マンだ才能マン」
「くっ!!」
「・・・・・・」
驚きの顔を見せるクラス一同。
特に推薦入学者である八百万と轟は俺を観察するかのようにジッと見つめ、爆豪は何故か親の敵を見るような目で俺を睨みつけてくる。
意味も無くすっかり目立ってしまったな・・・・あまり余計なことはしないでくれオールマイト。
「十分説明したし!! そろそろやろ!!」
オールマイトが腕を上げ叫ぶ。
そしてクジの結果・・・・
A: 緑谷・麗日
B: 轟・障子
C:八百万・峰田
D: 飯田・爆豪
E: 芦戸・青山
F: 砂糖・口田
G: 耳郎・上鳴
H: 蛙水・常闇
I: 造理・葉隠
J: 切島・瀬呂・尾白
俺はIグループで葉隠と組むことになった。
次に対戦クジを引き、初戦の対戦ペアはヒーローがA、敵がD、緑谷ペアと爆豪ペアとなった。
他のメンバーはモニターで観察する為オールマイトと共に同ビルの地下モニタールームに向かった。
――――
◇◇
『屋内対人戦闘訓練 開始』
訓練が開始され、モニタールームでそれを観察する。
開始早々、敵側である爆豪が単騎で奇襲を掛けるが緑谷はそれをスレスレで回避する。
どうも爆豪は苛立っているのか、やたらと怒号を上げてるいるようだ。
その後緑谷は麗日を1人行かせ、爆豪の相手を1人で務めたが中々いい勝負をしている。
とっさの判断に優れているのか、緑谷は爆豪の攻撃を紙一重で回避する。
一方、麗日は飯田の居る核部屋に到着し飯田と対峙しているが、そこで爆豪が大規模な爆破を起こし、ビルを半壊させてしまった。
屋内戦闘であることを理解してないのか、ほとんど暴走しているようにも見える。
さすがにオールマイトが注意を入れたが、これはもう中断すべきではないかと思った。
その後も緑谷と爆豪が攻防を続け一時爆豪の一方的なリンチになっていたが緑谷は再び対峙し、お互い向かい合って双方攻撃を繰り出す。
そして緑谷は爆豪の攻撃を左腕で防ぎ攻撃で繰り出した右腕を爆豪には向けず天井に向かって放ち、そのまま最上階までの天井を吹き飛ばした。
タイミングを見計らっていたのか麗日は緑谷の攻撃で崩れた柱を個性で浮かし柱と一緒に吹き飛んで出来た瓦礫を柱で飯田に向かってかっ飛ばす。
飯田が飛んできた瓦礫に目を奪われてる隙に麗日が飯田の頭上を飛び越え見事、核兵器にタッチ。
ヒーローチームが勝利した。
勝った方が重傷を負い、負けた方はほぼ無傷・・・・何ともおかしな戦闘訓練であった。
――――
◇◇
場所はモニタールーム。
緑谷は重傷を負っている為搬送用ロボットによってそのまま保健室に直行。
麗日、飯田、爆豪の3人がオールマイトに連れられモニタールームにて先の戦いの評価が始まる。
「まあつっても、今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」
「なな!!?」
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
オールマイトは飯田がベストだと評価する。
その後クラス全員に何故そうなったかわかるか?と聞いたが八百万が手を挙げ、飯田以外の3人のダメだった所を極め細かく説明して見せた。
「(思ってたより言われた!!)まあ・・・・正解だよ、くう・・・・!」
「常に下学上達! 一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので」
八百万は手を腰に当て胸を張り宣言し、オールマイトは親指を上げgoodを見せる。
飯田も手を胸に当て感動している様子を見せる・・・。
だが、俺の考えは違っていた。
「違うな。飯田もぜんぜんダメだった。」
「「「!?」」」
突然の俺の言葉に全員が驚く。
まず爆豪が単騎で奇襲をかけた時・・・・あれは飯田も直ぐに爆豪を追いかけるべきだった。
チームの総合的な戦闘力は飯田達の方が高かったのだから、2人で挑んでいれば直ぐに決着が付いたはず。
爆豪は暴走状態に有ったが飯田のスピードなら十分カバー出来、相手の隙を付くことも出来た。
あと麗日と対峙した時・・・これはもっとダメだな。
そもそも麗日より圧倒的にスピードが優っていたのだから、さっさと一撃を喰らわせて気絶させるなり何なりすればこんな結果には成らなかったはず・・・。
女に手を上げることを躊躇ったんだろうが、本物のヴィランはそんなことはしない。
「飯田が全然ヴィランに徹し切れていないし、爆轟の方がヴィランらしさを出していた。ヒーロー志望がヴィランに徹することなんで無理な話かもしれないが、飯田の行動次第で勝敗がいくらでも傾けられた。……勝率の高い勝負を見すみす取り逃したとさえ言える」
「「「・・・・・・・・・」」」
「むしろこれは、訓練にすらなっていないな。これじゃあヒーローごっことヴィランごっこの延長だ。……あまく採点したなら、飯田がギリギリ落第点を逃れた程度にすぎない」
俺の言葉に全員が押し黙る。
言われた本人である飯田は悔いるような顔をし、オールマイトは何故かプルプルと震えていた。
「(想像してなかったことを言われた!!!)・・・まあ、確かに飯田少年は固すぎる所があったな! ヴィランを演じてはいたけど、成りきることが出来なかった」
オールマイトは震えながら親指を上げ、再びgoodを見せる。
「仰っしゃるとおりです! 訓練とは言え、この結果は自分が未熟ゆえのこと! これからはより一層誠心致します!!」
飯田は右腕を上げ決意表明のように宣言する。
・・・・こいつはブレないな。
「いいよいいよ! じゃ第2戦を始めよう! ビルが半壊しちゃったから場所を変えるぞ!!」
「「「ハ――イ!!」」」
クラス全員、移動を始める。
――――
◇◇
「次の対戦は"Bグループ"VS"Iグループ"!!」
ヒーロー側がBグループ、そして俺が入るIグループが敵側となった。
敵側である俺と葉隠は一足先にビルに入り準備を始める。
「核兵器どこに設置しようか?」
「ん? ……ああ、四階あたりにしよう。最上階よりも部屋数が多いし、出来るだけ相手から遠ざけた方がいい」
葉隠の問いに答える俺。
対戦相手のBグループは轟と障子であり、轟の個性は氷、障子の個性は触手・・・二人共、個性の威力が未知数だ。
「造理くん、私ちょっと本気出すわ! 手袋もブーツも脱ぐわ!」
そう言ってせっせと脱ぎ始める葉隠。
耳に付けた小型無線だけが見える・・・。
翌々考えたら彼女コスチュームが無いに等しい、手袋とブーツを脱いだら完全に全裸だ。
透明人間としては正しい選択かもしれないが女子としては倫理的に危ない所がある。
――と言うより何故、専用のコスチュームを要望しなかったんだ? 今の技術なら髪の毛なんかの細胞を培養してコスチューム衣装の一つぐらい作れるはずだ。
全裸じゃ防御力も限りなく低下するし? 気温の対応も出来ない・・・・
『屋内対人戦闘訓練 開始』
などと思ってる内に、スタートの合図が鳴り響く。
まずは相手の出方を見るか、一つの動作を見るだけでも情報は得られる。
――――
◇
一方、Bグループ
「四階の北側の広間に1人、もう1人は同階のどこか・・・・素足だな」
障子 目蔵、個性は"複製腕"。
彼は触手の先端に自身の身体の複製する事ができ触手の先に耳を大量に複製して相手の情報を掴む。
「透明の奴が伏兵として捕える係かもしれん」
「向こうは防衛戦のつもりか・・・・外に出てろ危ねえから」
轟がそう言い、障子はそれに従い外に出る。
―――そして
「防衛戦なんて俺には関係ない」
その言葉と共にビル全体が一瞬にして凍結した。
轟は凍結したビル上がり1人で四階を目指す。
――――
◇
「ほう、これは中々・・・」
現在、俺の両足の先が凍り付いている。
周りを見渡すと床どころか壁や天井までギッシリ凍り付き、核兵器配置部屋は冷凍庫のようになっていた。
この規模の凍結・・・・ビル全体凍らせたんだろうか? だとしたら凄まじい威力だな・・・
――だが、それよりも気になるのは
「葉隠、無事か?」
「痛タタタタ! 足が凍った! 寒いし痛い!!」
無線で葉隠の状況を確認したがやはり足が凍りついているらくかなり辛そうな声を上げていた・・・・・当然だな。
現在彼女は裸足どころか全裸であり、素足の状態で足が凍りついていると言うことだ。
彼女が入る部屋も凍りついているなら、早く解放しないと凍え死んでしまうかもしれない・・・・相性が最悪だな彼女は・・・。
俺は足に纏わり付いた氷を分解するため個性を発動しようする。
――するとその時
「透明の奴はいないみたいだな?」
轟がドアを開け核部屋に入ってきた。
・・・・随分と早い到着だな? この部屋に核兵器があることが解っていたのか? 障子の姿が確認できないが・・・・なるほど、障子の個性か。
あいつは個性把握テストの時に触手で腕をたくさん複製していたから耳をたくさん複製して遠くの物音を聴くことも可能か・・・。
ここに居ないという事は、おそらく凍結に巻き込まれないように外で待機しているのだろう。
この状況じゃ安易に個性が使えないな・・・
「これほどの威力の凍結・・・・大したものだな。脚がすっかり凍りついてしまった」
「スカウト生と言ってたわりには大したことがないな」
俺の言葉に対し、皮肉にも似た言葉を返してくる轟。
「動いてもいいけど、足の皮剥がれちゃ満足に戦えねぇぞ?」
忠告にも思えた言葉を放ち俺の隣を通り過ぎていき、そのまま核兵器に向かって歩みを進めて行く。
核兵器を含めて全てを凍らせ、核にダメージを与えず敵である俺達を弱体化させる・・・・理想的な手段だ。
仲間もちゃんと避難させ、最小限の動作で自分達に優勢な状況を作り出した。
こいつおそらく相当な量の訓練を積んでいたのだろう。それも戦闘のプロから戦い方を学んでいる可能性が高い。
同世代にこれだけの力量を持つ奴が居たとは、素直に驚きだ。
――それだけに、残念だがな。
「悪いな、レベルが違いすぎ・・グアッ!!!?」
油断と慢心に満ち溢れてしまっている。
「グ!?・・・グ・・ア・・・・」
後頭部に攻撃を入れた為、倒れ込み意識を朦朧とさせる轟。
「お・・・おま・・え・・・足の・・・皮・・を・・」
俺の足からは血が流れていた。
俺は凍ったブーツを無理やり脱ぎ捨て、攻撃を繰り出したのである・・・・足の皮を剥がして・・・。
「敵に背を向けるなんて間抜けもいいところだ。 そもそも、この程度は拘束とは言わないし、ヴィランの中には怪我の一つや二つ負っても怯まない奴がいくらでもいる・・・」
「く!・・・まだ・・だ「ふん!」ガッ!!!」
隙なんて与えない。
起き上がろうとした轟の顔面を殴りつける。
その後は高速連打だ。
持ち前の身体能力と戦闘技術を駆使して、喉、首筋、すね、足首、腹部、脇腹、強打を食らわして、轟は意識をかきとっていった……
「ぐあ、……く、くそ、がっ!!!」
最後の一撃を心臓部分に食らわす。
この一撃がトドメとなり轟の意識が途絶えるのだった。
「……ふぅ~、足がヒリヒリするな」
俺は剥がれた足の皮を個性で再構築する。
筋肉までは損傷してなかった為この程度なら直ぐに治せる。
相手に攻撃を悟られないようにあえて個性は使わなかったが・・・・やはり痛いな。
凍ったブーツの氷も分解して履き直し、そして確保証明のテープを取り出した。
「悪いな、確かにレベルが違ったよ。・・・戦士としてのレベルが」
轟にテープを巻きつける。
『ヒーローチーム:轟! 敵チームに確保されリタイヤ!』
轟がリタイヤ。
「これで後は障子だけだ。・・・・その前に葉隠を助けに行くか」
俺は葉隠が居る部屋に急いで向かった。
――――
1話で終わらなかったので次に続きます。轟との対決なんですがこの展開は初めから決めていました。