無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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今回は一人称で書いてみました。主人公視点です。


第4話

「朝日が眩しいな・・・・」

 

 俺の名は造理 錬。散々紹介されてるから名前は言う必要ないと思うが、一応紹介しておく。

 俺は今現在、"雄英高校"に向かうために朝日が昇る時間、海岸近くの道を歩いている。

 今日は雄英高校ヒーロー科の入試試験、当日。

 まあ、こんな朝早く家を出る必要はなかったんだが、家にいてもやることは無く、早朝はヴィランの出現も少ないため、俺にとっては都合がよかった。

 本を読みながらのんびり雄英に向かうことができる。

 ――読書は実に良い。

 元は知識を得るために始めた読書であったが、知識欲が高かったのか今ではそれが日課となっていた。

 たわいもない話しをしてしまったが、そんな感じで俺は雄英に向かって歩みを進める。

 

「わあああああああ!!」

「?」

 

 読書をしながら海岸沿いを歩いていると海岸から叫び声が聞こえてきた。

 遠くてよく見えないが、海浜公園がある場所で一人の男がガラクタの山の上で空に向かい叫んでいるのが分かる。

 俺と同い年くらいか? こんな寒い早朝に、しかも上半身裸で一体何をやっているのかと疑問視していたが、あいつ周りをよく見ると奇妙な点に気づいた。

 ──浜辺が綺麗になっている。

 あの沿岸は漂着物と不法投棄で、辺り一帯がガラクタで埋め尽くされていたはずだが、綺麗サッパリ無くなっていた。

 あいつがやったのか? 奉仕活動にしては随分過剰だと思うが、もし一人でやったのなら凄いガッツだな。

 叫び疲れたのか、倒れこむと突然巨漢の大人が彼を抱き抱えた。

 2メートルを裕に超えるだろうその男・・・・。

 何だか、オールマイトのように見えるんだが、気のせいだろうか・・・?。

 ──まあ、気のせいだろうな。

 こんな所にオールマイトが居るはずもなく、何より彼の事務所は東京港区の六本木にあったはずだ。

 他人の空似か、もしくはヘアーを真似た熱狂的ファンか何かだろう。

 これ以上、気にかけても仕方がないし、さっさと雄英に向かうとするか。

 

 ――――

 

 

 ◇◇

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!」

「(シ―――ン・・・・)」

 

 静けさが広がる。

 

「こいつあシヴァ――!!!受験生のリスナー!!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHH!!!」

「(シ――――――ン!!)」

 

 更に静けさが広まる。

 俺は今現在、雄英高校の講堂で他の受験生と共に説明を受けている。

 説明をしている人物はボイスヒーロー"プレゼント・マイク"。

 その名の通り現役のプロヒーローであり、ラジオなどもやっているとにかくテンションが高いヒーローである。

 あまりのハイテンションに唖然としている者、呆れている者、何故か口を抑えて感動している者など反応は様々だが、誰も返事を返さない。

 ──と言うより返す度胸が無いのがほとんどだろう。

 特に返す必要もなく、本人も気にせず話を進めていく。

 試験のルールは機械で出来た三種類の仮想敵を相手にすること。

 三種類の仮想敵にはそれぞれポイントが設けられ、それを行動不能にしポイントを稼ぐのが目的らしい。

 何て単純な課題なのだろうか。

 力を量るというだけならいざ知らず、こんな野蛮な試験でヒーローの器が見計れるのだろうか。

 ……いや、ヒーローとて所詮、力がものを言う世界か?

 オレは若干の呆れを顔に浮かべつつ、配られたプリントに目を通していたが……。

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

 一人のメガネを掛けた受験生が質問をし出した。

 俺と同じようプリントの内容に疑問を感じ、そのことに対して問いていたが・・・。

 

「そこの縮毛の君、先程からボソボソと気が散る!! 物見遊山のつもりなら即刻、雄英から去りたまえ!」

 

 突然、別の受験生に説教を始めた。

 指を指された縮毛でそばかすの受験生はたじろぎ、周りの受験生はクスクス笑っている。

 全く何様のつもりなのか、同じ受験生の立場にいる者にそんなことを言う権利がある訳でもない。

 難癖と言うより、言い掛かりだな。

 

「ついでにそこのメガネの君」

「?」

 

 なぜか俺にまで話しを振ってきた。

 確かに俺も少しボソボソと声を出していたがそこまで気が散ることか?・・・ていうか、お前もメガネだろう。

 

「君もボソボソ気が散るし、何なんだ、そのやる気なさげな顔は? 君も物見遊山のつもりなら即刻、去りたま「黙れ」、!?」

 

 癪に障った俺は、あえて言い返すことにする。

 

「同じ受験生であるお前にそんな権利なんてない。そもそも、その程度で気を乱すような未熟者が雄英なんかに来るな」

「!?」

 

 メガネの受験生はたじろぎ、俺は更に続ける。

 

「何より説明を途中で遮り質問をするのはマナー違反だ。・・・身の程を知れ、愚か者」

「うっ!?」

 

 正論で返してやった為、メガネの受験生は歯を噛み締めながらも大人しく座った。

先ほどとは打って変わって静まり返り、全員が俺を見ていた。

 俺の前に説教を受けた縮毛の受験生もこちらを見ている。

 変に目立つような真似をしてしまったが、理にかなっていない説教を受けるつもりはない。

 

「オーケーオーケー、アツくなるナー!! ちゃんと説明するぜー!」

 

 説明を続けるプレゼント・マイク。

 

 説明を聞いていくとプリントに記載された四種類目の仮想敵はポイントが設けられていない、妨害目的の所謂"お邪魔虫"のようなものらしいが、これは少しおかしい。

 仮想敵の倒すことが目的ならば、全ての仮想敵にポイントを設けるはずだ。

 ――何か秘密があるな。

 仮にもヒーロー養成学校の最高峰"雄英"の実技試験が仮想とは言えヴィラン退治だけをすればいいわけがない。

 そもそもヴィランにポイントが設けられていることもおかしい。

 このルールだと、受験生の足の引っ張り合いは目に見えている。

 他の受験生への悪質な妨害は反則らしいが、躍起になってしまう者は必ず出てくる。

 ヒーローの本分はヴィラン退治と人助け(・・・)なのだから、むしろ協力プレイなどをさせる方が効率的のはずだ。

 ───? 人助け?

 

「・・・・ああ、なるほど。そういう事か」

 

 

 試験の本質を見破った俺は、軽く吐息を吐いて疑念を晴らしたのだった。

 

 ――――




一人称の方が書きやすかったですね。主人公の容姿と人柄は煮詰まってなかったのですが、イメージとして"金色の文字使い・勇者四人に巻き込まれたユニークチート"の主人公みたいな感じです。

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