騎馬戦が思いのほか盛り上がらなかった為、省略して一話にまとめてみました。
話しも変わっています。
「予選通過は上位42名!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されているわ!!」
42名がゴールしたと同時に終了の合図が鳴り響き、第一種目が無事に終了した。
結果は緑谷が1位で俺が2位と成り、それに続いて轟が3位で爆豪が4位、他のA組のメンバーも全員、予選を通過している。
「そして次からいよいよ本選よ!! ここからは本選よ!! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバリなさい!!」
その言葉と同時にミッドナイトのバックにあるモニターが動き出す。
第一種目では緑谷に後れを取ってしまったが、次はそうは行くまいとモニターを凝視する・・・。
「第二種目は・・・コレよ!! 《 騎 馬 戦!! 》」
「騎馬戦・・・!」
「個人競技じゃないけどどうやるのかしら?」
周りの連中が疑問の声を上げる。
ミッドナイトの説明では、参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ると言うことであり、基本は普通の騎馬戦と同じルールであった。
ただ、一つだけ違う事があった・・・。
「ここにいる全員には先程の結果にしたがい各自にポイントが振りあてられること!」
・・・との事。
説明がさらに続き、振りあてられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手となる者がそのポイント数が表示された"ハチマキ"を装着して、終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競う・・・。
さらに騎馬が崩れたとしてもアウトにはならず、42名からなる10~12組の騎馬がずっとフィールドに居続け、ハチマキを奪ったとしても競技が終了するまで安心できない仕様になっている。
「"個性"発動アリの残虐ファイト!・・・でも、あくまで騎馬戦!! 悪質な崩し目的のでの攻撃等はレッドカード!一発退場とします!」
予選上位になるほどポイントが多く振りあてられるらしいが、ここで全員が予想もしなかったことが起こった・・・。
――それは
「1位に与えられるポイントは・・・"1000万!!!"」
その言葉を聞いた全員が一斉にある方向を向く。
「予選通過1位の緑谷出久くん!! 持ちポイント1000万!! 上を行く者には更なる受難を・・・雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。・・・これぞ "Plus Ultra"!!」
その場にいる全員がまるで獲物を見つけた肉食獣のように緑谷を凝視し、緑谷はまるで追い詰められた草食獣のように見えた。
当人も極度のプレッシャーで身を固めてしまっていたが・・・。
「くっ!!」
すぐに真面目な顔を見せ気持ちを持ち直して見せた。
流石は緑谷と言うべきか・・・いや、既にヴィランとの命を懸けた戦いまで経験をしているのだから、この程度のプレッシャーなどは直ぐに克服できるのも当然か・・・。
「それじゃ、これより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
15分のシンキングタイムが与えられ全員が行動を起こすが、俺はしばし考え込んでいた。
個性の特性を考えれば特定の人物に集中するのが当然だが、俺にはどうしても組んでおきたい人物がいた。
そいつは既に二人をメンバーに加えていたがもう一人を探しているようだ。
俺は右手の親指に細工をして、その人物の下に歩みを進める。
「俺と組んでくれないか?・・・・・心操」
「!!?・・・お前は!!」
普通科の生徒・・・心操 人使の元に・・。
――――
◇◇
「俺と組んでくれないか?・・・・・心操」
「!!?・・・お前は!!」
現在、心操 人使は混乱していた。
彼は自分の個性を使いA組の尾白とB組の生徒をチームに加え、もう一人を探していたが突然、後ろから声をかけられて振り向くとそこには二週間前に自分をひどい目に合した男・・・造理 錬が目の前に居たのだから・・・。
「(何でこいつが俺の所に!?・・・いや、それはいい。この前こいつには舐めたまねされたからな・・・こいつも"洗脳"してやる!)・・・ああ、かまわないぜ」
心操は個性を発動し、錬に返事を返した。
「感謝する、ありがとう」
「(答えた! チョロイな・・・)」
心操は思惑が上手くいったことに安堵の表情を浮かべた・・・・・・だが
「それじゃチームが四人揃った所で編成を決めたいんだが・・・」
「!!? 何で・・・!!」
心操はとても慌てた様子であった。
彼の個性は"洗脳"であり、相手に話しかけその相手が返事を返してくれば相手を操ることができ操られた者はしゃべる事も出来ないのであった。
それなのに目の前の男・・・造理 錬は平然とし言葉を発してきたのである。
「そんなに驚いたか? "洗脳"が効かなかったことに?」
「!!!?」
錬は心操の個性を見破っていた・・・。
――――
◇◇
「そんなに驚いたか? "洗脳"が効かなかったことに?」
「!!!?」
随分と驚いた表情を見せるな? 自分の個性が効かなかったことそんなに意外だったか? それとも俺がこいつの個性を知っていたことに対して驚いているのか?・・・仕方がない、種を明かしてやるか。
俺は心操に右手の親指を見せる。
「!!? お前その指!!」
「これがお前の"洗脳"が効かなかった理由だ・・・。」
俺の親指からは血が流れていた。
心操に会いに来る前にあらかじめ親指の皮を噛み切っておいたのである。
「二週間前に宣戦布告をしに来たのが仇になったな? お前のことを調べ上げるのには充分な期間だったぞ?」
「!!!?」
こいつは自分に対してはノーガードのようだな。
こいつのことは一週間ほど観察していたが性格が少しひねくれているだけで特に変わった事は無かった。
大した訓練もしていなければ敵情視察に励んでいる訳でもない・・・それなのにこいつはA組に宣戦布告をした・・・・なら答えは簡単だ。
こいつは個性に関して絶対の自信を持っているという事・・・だが、こいつは普通科に在籍している。
仕入れた情報によれば心操はヒーロー科の実技試験に落ちたと言うが、それなのに個性に自信を持っている。
あの実技試験で相性の悪い個性と言えば容易に想像がつき、対人、もしくは生物にしか効果がない精神干渉をする個性である。
現に心操の後ろで待機している尾白とB組の奴はまるで意識を奪われているかのように目が虚ろだ。
俺が返事を返したことに驚いていたところを見ると相手に話しかけて返事を返して来たら操る事が出来るんだろう・・・。
相手の精神に干渉する個性には共通する弱点があり、対象が強い衝撃を受けたりしたら個性が解除されてしまうことが多い。
また、外部からの刺激にも弱く、俺は常に負傷した親指を押し付け痛みを与え続け自分の身を刺激していることで心操の洗脳を防いでいる。
昔、俺を攫おうとしたヴィランの中にも似たような個性を持っている奴もいたし、皮肉にもその経験が大いに役立ってしまっていた。
「種さえ分かればお前を出し抜くのは簡単だ。……言っただろ? 間抜けなんかには死んでも遅れはとらないと」
「くっ!!」
悔しそうな表情を見せる心操・・・。
「で、俺と組んでくれるのか? 心操・・・?」
「・・・何で俺と組もうとする?」
「この競技においてお前の個性が有用だと判断したからだ」
この騎馬戦はチーム戦であり多くのチームで競い合うバトルロイヤル方式、一対一ならともかくチーム戦においては相手を洗脳出来ることは大きなメリットだ。
何せ相手のチーム一人でも洗脳出来ればそれだけで相手チームを力を半減させることが出来てしまう。
故に俺はこいつとチームを組もう考えた・・・より安全に確実に決勝に上がるために・・・。
「もし俺が嫌だと言ったら?」
「お前の個性を他の連中にばらす・・・と言うのはどうだ?」
「!?・・・ヒーロー科のくせに相手を脅すのか?」
「相手の不利をついて、交渉を有利に進めるのも戦略だよ。それを言ったら、お前の行いも良い行いとは言えないんじゃないか?」
「なっ!?・・・お前!」
まあ当然の反応だな。
正直に言って俺も自分でこんな事を言っていてあまりいい気分ではない。
だが、あくまで俺はリアリスト・・・ロマンチストではない。
「それで? 俺と組んでくれるのか? 別に断ってくれても構わないぞ?」
「・・・・・・」
しばし考え込む心操、・・・・・そして
「・・・分かった組んでやる。だけど!」
「分かっている。個性のことは誰にも言うつもりはない」
潔くとは言えないが了承をもらうことが出来た。
これでこの競技は圧倒的に有利になったな・・・緑谷や飯田あたりと組むことも考えていたが緑谷は集中攻撃を受けることは明白であったし、飯田は轟のチームに行ってしまった為、これは断念。
正直に言って轟や爆豪は挑発をしてしまったことで俺に対抗意識を燃やしているから俺と組んでくれるとは思えないしな・・・。
「15分経ったわ。・・・それじゃあ、いよいよ始めるわよ」
15分のシンキングタイムが終わり、フィールドには合計12組の騎馬が並び立った。
俺たちのチームは心操が騎手を務め、尾白が騎馬の先頭をやりB組の生徒が左後ろの騎馬、そして俺が右後ろの騎馬を務める。
チームのポイントは俺が第一種目で2位になったことで手に入れた
最初は俺が騎手を務めようかと思ったが心操は思いのほか力が無く、こいつに騎馬を務めさせるのはマイナスでしかなかった為、仕方なく騎手を心操にやらせ俺は騎馬を務めることにした。
ちなみに俺が騎馬の後ろを務めたのは心操の洗脳を警戒してのこと。
こいつは恐らく競技中に俺を洗脳すること考えているだろうからこいつを背後に置くのは得策では無いと判断した。
『よォーし組み終わったな!!? いくぜ!! 残虐バトルロイヤル! カウントダウン!!』
プレゼント・マイクの合図とともにカウントダウンが始まり・・・
『3!!』
『2!!』
『1!!・・・・START(スタート)!!!』
戦いの合図が切って落とされた。
――後は簡単であった。
序盤はやはり1000万のポイントを持った緑谷が集中的に狙われ、特に爆豪のチームがやたらと攻めていたがB組のチームが爆豪を挑発し、爆豪はB組のチームを狙うようになった。
緑谷のチームはとにかく逃げの一手を取っていたが轟のチームがそれを許さなかった。
轟はチームに飯田と八百万と上鳴を加えかなり戦略的な布陣を添えていて残り時間が半分になったところで多くのチームを手玉に取りハチマキをかすめ取っていた。
そして序盤に差し掛かった所で轟のチームが一気に攻めに転じ緑谷から1000万のハチマキを奪い暫定1位となり、これには俺も驚いた。
どうやら飯田が切り札を出し高速移動を行ったようだが大したものだ。
――そして残り時間が少なくなったところで俺たちも動き出す。
「動くぞ心操」
「分かったよ」
まず狙うはB組のチーム。
競技中に身を隠しながら他のチームを観察していたが、どうもB組のチームは動きがおかしい。
お互いを全然潰しあわないところを見るとあらかじめ手を組んでいたと言うところだろうか?・・・まあいい、俺たちはB組チームのハチマキを奪っていく。
やることは簡単だった。
心操の個性"洗脳"を駆使すればハチマキを奪うことは容易であり得点で一気に暫定2位まで上がる。
そして俺は閉めにかかろうとする。
「最後の仕上げだ」
「?・・・もう十分だろ」
「狙うは1位だ!」
俺たちのチームは緑谷チームと轟チームに近寄った。
見た所1000万のハチマキは轟の手に渡っているようだがこれは好都合だ。
緑谷に比べれば轟の方がやりやすい。
『そろそろ時間だカウントいくぜエヴィバディセイヘイ!・・・10!』
カウントダウンが始まった。
残り十秒・・・十分だ!
『9』
「俺の合図と一緒に個性を発動しろ、心操」
「本当に上手くいくのか!?」
「ヒーローに成る気があるなら少しは冒険して見せろ!」
「!?・・・分かったよ!!」
俺の目線の先には緑谷チームと轟チーム、そして爆轟チームが入り乱れていた・・・チャンスだ!
『8』
「《錬成!!》」
「「「!!!!!?」」」
「造理!?」
「造理君!?」
轟チームが立っている所の地面を錬成して相手がこちらの向かってくるようにしむける。
『7』
「今だ心操!」
「無茶苦茶だなお前!」
俺は心操に合図を送る。
『6』
「ちょろい奴だな奴? お前!」
「くっ!? ふざけ・・・・・・」
轟の動きが止まった。
心操の洗脳が掛かり意識が失われたようだ。
『5』
「轟くん!?」
「どうしましたの轟さん!?」
「ウェ~~~~イ」
飯田、八百万、上鳴が叫ぶが、それに意味は無い!
『4』
「《錬成》!!」
「「「!!!?」」」
俺はさらに個性を発動し畳みかける。
轟チームがものすごい勢いでこちらに向かってくる。
『3』
「獲れ心操!」
「分かってるよ!!」
向かってくる轟チームに心操が手を伸ばす。
『2』
「貰った!!」
轟が持つ1000万のハチマキが心操の手が掛かり・・・
『1』
「獲ったー!!!」
1000万ポイントのハチマキを手に入れた・・・そして
『TIMEUP(タイムアップ)!!』
競技が終了した。
『"YEAH!"ここに来て大どんでん返しだー!! 前半にほとんど行動してなかった心操チームが1000万ポイントのハチマキを手にしやがったぜぇ!!』
上手くいったな。
まるで第一種目の緑谷のような感じだが、大逆転に成功した。
第二種目は俺と心操の勝利に終わった。
――――
主人公は緑谷ではなく心操と組ませました。
こちらの方が後々都合が良かったので・・・。