無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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久しぶりに気が向いたので投稿しました。



第19話

「ってえ・・・・」

 

 都内にある繁華街のバー・・・そこには雄英から逃れ、負傷し倒れる死柄木の姿があった。

 

「両腕両足打たれた・・・脳無もやられて手下どもは瞬殺・・・子供も強かった・・・」

 

 倒れ込みながら悔いる死柄木。

 

「平和の象徴は健在だった!・・・話が違うぞ先生!」

『違わないよ』

 

 死柄木の目線の先にはモニターがあり、そのモニターから音声が流れる。

 

『ただ見通しが甘かったね』

『うむ・・・なめすぎだな』

 

 モニターからもう一人別の人間の音声が流れる。

 

『ところでワシと先生の共作・・・脳無は回収してないのかい?』

「吹き飛ばされてしまい正確な位置座標が把握出来ないのです。探す時間も取れなかった・・・」

 

 黒霧がその問に答える。

 

『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに・・・・まぁ仕方がないか?・・・残念』

「パワー・・・・そうだ、一人・・・オールマイト並みの速さを持つ子供がいたな・・・・」

『・・・・・・・・へえ』

 

 死柄木の言葉にモニターの向こうにいる人物が興味を抱く。

 

「それにもう一人厄介な子供・・・・"造理 錬"がいました」

『造理?・・・・あ~、あの有名な・・・・』

 

 モニターの向こうのもう一人の人物が関心を抱く。

 

『"錬金術"の個性を持っていて、金塊やら何やら色んな物を造り出すことが出来る子供だな』

『彼の個性は前々から欲しいと思っていたよ。あれは使い方次第では、僕の体も治せそうだしね。」

「まさか雄英に居るとは・・・彼のおかげでガラクタ達も無力化されてしまいました」

『あのガラクタは捨て駒の為に用意したものだ。いくらやられても問題はない』

「あのガキどもの邪魔がなければオールマイトを殺せたかもしれないのに・・・ガキがっ・・・ガキが!!」

 

 倒れこみ血を流しながら死柄木は怒りをあらわにする。

 

『悔やんでも仕方がない・・・今回だって決して無駄ではなかったハズだ。じっくり精鋭を集めよう。」

「・・・・」

『我々は自由に動けない、だから君のような"シンボル"が必要なんだ・・・死柄木 弔、次こそ君という恐怖を世にしらしめろ!』

「・・・・・ああ」

 

 モニターの向こうに居る人物に対し、死柄木は強い決意のようなものを見せていた・・・

 

 ――――

 

 

 

 

 ◇◇

 

「手術は無事に成功、容態も回復に向かっている・・・これでもう安心だよ」

「ありがとうございました」

 

 場所は都内にある病院・・・現在、俺は病院のベットの上で医師の診断を受けていた。

 USJにてヴィラン共を追い返した後、俺は意識を失いそのまま病院に救急搬送されたと言う・・・。

 医師の話では俺の容態は筋肉繊維の損傷だけでなく内臓器官までダメージを受けていたらしく、搬送されてすぐに緊急オペが施されたらしい。

 目を覚ましたのが今朝であり、ヴィランの襲撃から一日が過ぎていた。

 

 それからしばらくした後、警察がやって来て、ヴィラン襲撃の後のことを詳しく聞かせてもらった。

 生徒は俺と緑谷以外は全員ケガ一つ無く無事だったようだが、先生達・・・特に相澤先生が酷い状態のようだ。

 聞いたところ"両腕粉砕骨折"に加え"顔面骨折"、さらに"眼窩底骨"が粉々になっており、眼に何かしらの後遺症が残る可能性があるとのこと・・・。

 他にも13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが命に別状はなく、病院で治療をうければ問題は無いといい、オールマイトに関してはリカバリーガールの治癒で処置可能が可能とのことで学校の保健室に向かったという・・・。

 緑谷は両足を骨折したらしいが、リカバリーガールの治療で充分とのことでオールマイトと共に保健室で治療を受けたみたいだ。

 

「問題ないようだな、造理・・・」

「!!?」

 

 突然、誰かに話しかけられ振り向くと、そこには病人服を着た全身を包帯で巻かれた不審者の姿があった。

 

「何を驚いている?」

「・・・相澤先生・・・ですか?」

「見れば分かるだろう」

「無茶を言わないでください」

 

 見れば分かると言うが、顔はすべて包帯で隠され辛うじて目だけ見える状態だし、服装も違うから声を聞かなければ誰だかさっぱりわからん。

 

「動いて平気なんですか?」

「先ほどリカバリーガールの治療を受けて、動ける程には回復した。・・・今日中に退院するつもりだからな・・・」

 

 それほどの重傷を負いながらすぐに次の行動に移るとはさすがプロのヒーローだな。

 聞いたところにによると今日の雄英は臨時休校になっているらしく、明日には通常勤務に復帰しなければならないから、リカバリーガールに無理を言って治療を受けたらしい。

 

「無理をなさらず休めばよろしいのに・・・」

「そんな悠長なことはしてられん・・・・二週間後には雄英体育祭が控えているからな」

 

 ――雄英体育祭。

 日本のビッグイベントの一つで、形骸化してしまったオリンピックの代わりとなっているスポーツの祭典である。

 日本の全国民が熱狂し、プロヒーロー達もスカウト目的で注目する、ヒーローを志す者なら絶対に外せないイベントだ。

 ヴィランに侵入されたにも関わらずに開催に踏み切るとはずいぶん強気な姿勢だな?・・・いや、逆に中止をしてしまったら雄英の危機管理体制が疑われてしまうか・・・。

 

「問題なのはお前だな」

「俺ですか?」

「お前の容態だがリカバリーガールの力を借りても雄英体育祭当日までに完治させるのは難しいとの「問題ありませんよ」・・・?」

 

 俺の個性、"錬金術"は医療に関しても融通が効いて、大抵のケガなら治すことができる。

 リカバリーガールの治癒も加われば、2~3日もすれば完治できるはずだ。

 

「便利な個性だな」

「何でも出来るように心がけていますからね」

「だが他にも問題があるだろ?お前の場合は・・・」

「・・・・・」

 

 それは十分に分っている。

 雄英体育祭は日本中が注目するイベントであり当然その様子もテレビ中継される・・・それも全国ネットでだ。

 雄英体育祭で活躍すれば当然注目の的になり、ヴィランに狙われている俺からすれば襲いに来て下さいと宣伝しているようなものだ。

 

「このことに関してはお前の入学当初から議論されていることだ。お前を参加させないという意見も出てい「その必要はないですよ」・・・何?」

 

 相澤先生の言葉を遮り口を挟ませてもらった。

 確かに雄英からすれば生徒である俺を危機に陥れるような真似をするわけにはいかないだろうが、もうそんなことは言ってられないだろう・・・。

 

「正直、こそこそと隠れる意味はもうありません。・・・ヴィラン襲撃を受けた上に相手を取り逃がしてしまったのですから俺が雄英にいることは既にヴィラン達に知れ渡っていると考えるべきです」

「・・・・・」

 

 あのヴィラン連合と名乗る集団、あれだけ大規模な組織が出来上がっているということはヴィランの活性化は思ったよりもずっと早く進行していると言うことだ。

 もしそうなら今までよりもヴィランに襲われる頻度が増えてしまうことは明白であり、雄英体育祭に出ようが出まいが差ほど状態は変わらない・・・。

 鉄壁の要塞であるはずの雄英でさえも遅れをとってしまうのであれば監獄にでも入らない限り安全な場所などない・・・。

 

――ならば

 

「寧ろ積極的に参加して俺の実力を知らしめる方がいいでしょう・・・俺に手を出せば痛い目に合うぞ・・・と?」

 

 俺はあえて強気の笑顔で相澤先生に言い放った。

 

「ずいぶん強気な考えだな」

「受け身の姿勢でいるより、攻める姿勢でいる方が安全なターンに入ったんです。逃げ隠れするのにも限界がありますし、何より――」

 俺は一呼吸をおく。

 

「……俺は他人なんかにアテにするしてませんから」

「…………」

 

 俺の言葉に相沢先生は返事を返さない。包帯の隙間から見え隠れする瞳がわずかに細ばっているのだけが、見て取れた。

 

「……上等だ。お前の参加に関しては俺が学校側に伝えておこう」

「ありがとうございます」

 

 何色を示されるも、先生も理解してくれたようだった。

 

 

 

 

 ――その時

 

「ならさっさと治療を済ませなきゃね?」

「!?」

「リカバリーガール!」

 

 雄英の保険医、リカバリーガールがいつの間にか相澤先生の隣に立っていた。

 相澤先生の治療が終わった後、医師と相談をしていたらしく次は俺の治療を施すためにやってきたらしい。

 

「本来なら教師としては止めなきゃならないけど、そこまで覚悟をしているなら止めるのは野暮ってもんだね・・・なら後押しをするだけだよ」

「ありがとうございます。リカバリーガール」

「イレイザーヘッドも病室に戻りな、まだ安静にしてなきゃならないからね」

「分かってます。それじゃ造理、雄英体育祭の詳細は後日に詳しく伝える」

 

 そう言い残し相澤先生は自分の病室に戻っていった。

 

「だけど本当にいいのかい?」

「?」

「あんたの言ってることはかなり無謀なことだよ? 人間てぇのは欲深い生き物だから、無駄に敵を作ることにもなりかねない」

 

 リカバリーガールは俺を心配してくれているようだが、遅かれ早かれこうなることはわかっていたことだ。

 

「覚悟ならとうの昔から出来てますよ。・・・一人で生きることになった時から」

「・・・・そうさね」

 

 どの道避けては通れない道・・・・ならば、突き進むしかない。

 

「それじゃ治療を始めるよ」

「お願いします」

 

 俺はリカバリーガールの治療を受け、再び眠りについた。

 

 ――――




短いですがここで区切ります。
次回の更新はいつになるか分かりません。


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