無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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第18話

「どうした平和の象徴? さっきまでの勢いが無いよ?」

「くっ!・・・」

 

 脳無に苦戦を強いられているオールマイト、パワーもスピードもオールマイトに引けを取らない相手に手を拱いている。

 脳無一人だけならば戦いようはいくらでも合ったが、ワープゲートの個性を持つ黒霧の存在が厄介であった。

 脳無の動きを止めようとすると黒霧がワープゲートを出し、妨害してくる。

 しかし、何よりもオールマイトを困らせているのは・・・

 

「どうやら生徒の事が相当気になっているようですね? オールマイト・・・」

 

 オールマイトは生徒達の事が気になっていて、それをヴィラン達に見透かされている・・・。

 後から現れた甲冑のヴィランの大半が生徒の方に向かってしまい、このままでは生徒たちが危ない。

 一刻も早く救出に向かわなければならないが・・・

 

「させませんよ? 貴方はここに留まって貰います」

「むっ!?」

 

 相手はそれを許してくれない。

 さらに周りには甲冑のヴィラン達がオールマイトを逃がさないように円陣を組んでいる。

 

「いいざまだなオールマイト?、そんなに生徒達が気になるのか? 言っとくけど助けに何て行かせないよ・・・?」

「くっ・・・!」

「オールマイトが居るにも関わらず生徒に死人が出れば、あんたが平和の象徴で無くなるも同義。そしてオールマイト・・・おまえを殺せばこのヒーロー社会は崩壊する。おまえは所詮、抑圧の為の暴力装置なんだよ。・・・暴力は暴力しか生まないのだと世に知らしめるのさ!」

 

 めちゃくちゃな思想論を愉快そうな眼で言い放つ死柄木・・・。

 

「そういう思想犯の眼は静かに燃るもの・・・自分が楽しみたいだけだろう嘘吐きめ」

「・・・バレるの早・・・」

 

 オールマイトは相手が唯の愉快犯であることを見透かす。

 しかしこのままではマズイのは確か、一刻も早くこの状況を打開しなければ生徒達の身が危ない・・・・。

 

「(どうするか?・・・)」

 

 オールマイトはこの状況を打破する為に必死に思考する・・・。

 

 ――その時

 

「オールマイト!」

「「「!!?」」」

 

 突然、誰かに呼ばれ振り向くとそこには・・・。

 

「何だあれは?」

「巨人・・・ですか?」

 

 とてつもなく大きな巨人の姿が合った・・・。

 

 ――――

 

 

 

 ◇

 

「SMASH!!」

「オラァ―!!」

「だあ―!!」

「ふん!!」

 

 緑谷、爆豪、切島、轟が順調に甲冑ヴィランを誘導している。

 緑谷は打撃と背負投げを駆使し、爆豪は爆破の衝撃で相手を吹き飛ばし、切島は自身の体を硬質化してタックルを繰り出し、轟は氷を利用して相手を押し返す。

 

「《錬成》」

 

俺もヴィランを押し返し誘導する。

ここまでは順調だ、甲胄ヴィラン共は動きは単純だから誘導がしやすい。

 もう少しだ、・・・もう少し・・・もう少し・・・・。

 

「轟! 今だ!!」

「ああ!」

 

 轟が個性を発動し、一固まりに成っていた甲胄ヴィラン共が次々と氷漬けに成って行き動きを止める。

 一体一体を凍結させても無人である甲胄ヴィランは動いてしまうから、密集したところで一固まりに氷結してしまえば身動きはとれない・・・。

 ――条件は揃った!

 

「全員、離れていろ! 今から巨大なものをぶちかます!」

「何やるんだよ!?」

「見ていれば解る!」

 

 切島が質問してくるが、説明している時間が無いため受け流す・・・。

 

「《錬成!!》」

 

 個性を発動し、俺立っている地面が山のように盛り上がっていく。

 

 ――そして

 

「なっ!?

「で、で、でけぇっ!!」

「きょ、巨人!?」

「!?」

 

 岩で出来た巨人・・・巨岩兵(ジャイアント・ストーン・ゴーレム)が完成した・・・・ちなみに名前は適当である。

 俺は個性で生成した物を操る事もでき、ゴーレムを造り操ることは造作もないこと、ただゴーレムの場合、常に触れ個性を発動し続けなければならないため、燃費はあまり良く無く動きも遅いため、戦いにはあまり向かないが、単純な破壊活動ならもってこいだ。

 そして相手、甲胄ヴィランは轟の氷結で動きを封じられていて、何より無人である・・・。

 

 ――後は簡単だ!

 

「一体も残さずに潰してやる!」

 

 俺は巨大ゴーレム・・・巨岩兵の頭の上に乗り、巨岩兵の腕を大きく振りかざし・・・

 

ドガ!ドゴ!ドゴ!ドガ!ドガ!

 

 氷漬けになっている甲胄ヴィランを潰していく。

 いくら相手が金属の甲胄で合っても、巨岩兵の腕の重さはザッと50トン・・・戦車よりもに重い攻撃だ! この攻撃を喰らえば、一たまりもない!

 

「止めだ!!」

 

ドガァアーーン!!

 

 止めの一撃! 巨大な衝撃音が鳴り響き土煙が舞い上がった。

 

「すげえ! すげえ! 全部ペチャンコになってやがる!!」

「すごいよ造理くん!」

「・・・・チッ!」

「・・・・・・」

 

 切島と緑谷は歓声を挙げ、爆豪は何故か舌打ちをし、轟は沈黙をしていた。

 これでこちらに向かって来た甲胄ヴィランは全て片付き俺達の危機は去った・・・。

 オールマイトが居る方に眼を向けると、オールマイトだけではなくヴィラン達までこちらを向き驚きの顔を見せていた・・・。

 

 ――そんなに驚くことか?・・・・まあ、それはいいとして、これでオールマイトの不安要素は取り除けたはずだ!

 

「オールマイト!!」

「むっ!?」

 

 声を掛けたオールマイトは驚きの表情を見せていた。

 何故かヴィラン達も驚き手を止めていたがそれはそれで好都合だ。

 

「こっちは片付きました!・・・・心置きなく、ヴィランをぶっ倒してください!!」

 

 俺はゴーレムから降りてそう伝える。

 

「オールマイト! こっちはもう大丈夫です!!」

「ヴィラン共をぶっ殺せえ!!!」

「殺しちゃダメだろ!?」

 

 緑谷も爆豪も声援を送る。

 

 ――さあ、オールマイト・・・・心置きなく戦ってくれ!!

 

 ――――

 

 

 

 ◇

 

 ‐オールマイト視点‐

 

「全く君達と言うやつは・・・・」

 

 あれだけの数のヴィランを倒してしまうなんて・・・・何て頼もしい生徒達だ・・・!

 そして何より自分が情けない! 本来、生徒である彼らを戦わせる何て事は言語道断! 彼らに無茶をさせてヴィランと対峙させてしまったのは私の落度だ! 私がもっとしっかりしていれば・・・・。

 

 ――いや よそう、誠に遺憾だが、これで心配要素が減ったのは確かだ。

 恐らく彼ら・・・造理少年、爆豪少年、切島少年、轟少年、・・・そして緑谷少年、今の私の心境を悟っていたからこそあのような無茶をしたのだろう・・・。

 生徒達に心配をかけさせてしまうなんて・・・私はいつの間にか、心まで無抜けさせてしまっていたようだな・・・?

 ならばこそ、彼らに見せてやらねばならない・・・プロの本気と言うやつを!!

 

「脳無、黒霧、オールマイトをさっさと殺れ・・・俺は子供をあしらってくる」

 

 生徒達の方に向かうつもりか?・・・やらせはしない! 何故なら私は・・・

 

 平和の象徴なのだから!!

 

「「!!?」」

「ヴィラン!! 覚悟!!」

 

 

 

 ◇

 

「「「「!!?」」」」

 

 うっ・・・何だ今のは!? オールマイトを見ていたら一瞬だがゾッとしてしまった!

 他の皆も俺と同じような素振りを見せている・・・・まさか威圧だけで周囲に此処までの影響を与えるのか!?

 オールマイトが脳無に向かって拳を振りかざし、対する脳無も拳を振りかざす・・・・すると

 

 

「のあっ!!」

「がっ!」

「くっ!」

「うあっ!!」

 

 オールマイトと脳無の拳が交わった瞬間、凄まじい音と衝撃波が発生して全員が思わず後ずさっていた。

 二人は物凄いスピードとパワーを用い、真正面からの殴り合いを繰り広げている。

 

「死柄木! これでは近づけません!」

「くっ! だが脳無にはショック吸収があるんだ! いくら攻撃したところで「それはどうかな?」・・!?」

「”無効”ではなく”吸収”ならば限度があるんじゃないか!? 私の100%を耐えるならば・・・・さらに上からねじ伏せよう!!」

「「!!?」」

 

 オールマイトの攻撃が更に早くなり、脳無はその攻撃に追いつけずにいる。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!!」

 

 まるで俺達生徒に投げ掛けているようだ・・・。

 もう脳無は完全にオールマイトに抵抗出来ないでいる。

 

「ヴィランよ!! こんな言葉を知っているか!!?」

 

 オールマイトが大きく振りかぶった。

 

「Plus Ultra!!」

「「「「!!!!?」」」」

 

 オールマイトの拳をくらった脳無はそのまま吹き飛び天井に衝突、更にその天井を突き抜けて遥か彼方に吹き飛んでいった・・・・。

 ショック吸収が出来ない程のパワーと超再生が追いつかないほどのスピードを持って相手を粉砕し吹き飛ばす・・・・正面から完全無欠に相手を倒してしまった。

 これが平和の象徴、オールマイトの実力か・・・!

 

「さてとヴィラン、お互い早めに決着をつけたいね・・・」

「よくも俺の脳無を・・・このチートがぁ!」

 

 対オールマイト用の戦力が攻略されたことで、死柄木は焦りを見せていた。

 まあ当然だな、これほど圧倒的な力を見せつけられてはどうにもならないだろう。

 オールマイトを攻略する術を失ったも同義だ、・・・後はオールマイトがさっさと二人を無力化すれば・・・・

 

「・・・・どうした? 来ないのかな!? クリアとかなんとか言っていたが・・・」

 

 オールマイトが死柄木達を挑発している。

 ――? 何か妙だ・・・?

 

「出来るものならしてみろよ!!」

 

 ――おかしい、やっぱりおかしいぞ? 何故さっさと相手を無力化しなんだ? オールマイト! 脳無が居なくなったんだから、あんたの実力なら簡単にねじ伏せられるはずだ! 何故動かない、オールマイト!?

 

 ――まさか、もう戦う力が残されていないのか!? だとしたらマズイ!!

 

「ガラクタ達! オールマイトを取り押さえなさい!」

「むっ!?」

「「「「!!?」」」」

 

 黒霧が出した命令でオールマイトの周りを囲んでいた甲胄ヴィラン達が動き出した。

 

「死柄木 弔! 慌てている場合ではありません! まだこちらには戦力があるんです・・・まだやれるチャンスはあります!」

「・・・うん・・・そうだな、目の前にラスボスがいるんだ・・・やるっきゃないぜ!」

 

 ヴィランが動き出してしまった! それなのにオールマイトは動きを見せていない!

 やっぱりオールマイトはもう戦う力を残していないんだ!

 

「死んでくれ! オールマイト!!」

「その命、貰い受けます!!」

 

 まずい! ここからでは間に合わな・・・

 

「オールマイト!!」

「「「「!!?」」」」

「なっ!・・・緑谷!!?」

 

 緑谷が死柄木と黒霧の直ぐ側まで迫っていた。

いつの間に!?・・・・あの一瞬であそこまで移動したのか!?

 

「オールマイトから離れろ!!」

「させませんよ!」

 

 黒霧がワープゲートを開き、そこから手が出てきた。

 死柄木の手か!? マズイ! 緑谷がやられ・・・

 

「ぐあっ!?」

「「「「!!!!?」」」」

 

 死柄木の手から血が吹き出た・・・まさか

 

「来たか!!」

「ゴメンよ皆、遅れて!」

 

 その場に居た全員が出入り口に目を向ける。

 

 

 其処には・・・。

 

「1‐A クラス委員長、飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

 飯田と共に雄英の先生方、名だたるプロヒーロー達がいた・・・役目を無事果たしたな飯田!

 先生方は速やかに動き出し、スナイプの銃撃、プレゼント・マイクのボイス、エクトプラズムの分身、・・・・次々とヴィラン共が倒されていく。

 

「ぐっ!! ガラクタ共、盾になれ!! 黒霧! ゲートを・・・」

「直ちに・・・ぐっ! これは・・・!?」

「僕だ・・・!!!」

 

 スナイプの銃弾の嵐を受けている死柄木と黒霧が撤退をしようとするが、重症を負い倒れ込んでいる13号が個性を使い、死柄木達を吸い込もうとしていた。

 だが、流石に距離がありすぎた為、思うようには行かず、死柄木達は撤退を始めた。

 

「今回は失敗したけど、今度は殺すぞ・・・平和の象徴オールマイト!!」

 

 死柄木はそう言い残し、去っていった・・・。

 残ったヴィランは先生方が捕縛していき、各エリアに散らされていたクラスメイト達も無事に保護されていった。

 危機は去ったか・・・。

 緑谷とオールマイトは大丈夫だろうか? オールマイトは何故か煙が舞い上がっていてよく分からないが、緑谷は地面に倒れ込んでいた。

 

「緑谷ぁ!! 大丈夫か!?・・・・・うわっ!!?」

 

 切島も心配なのか緑谷に向かって走っていくが、切島の目の前に突然壁が出現した。

 

「生徒の安否を確認したいからゲート前に集まってくれ、けが人はこちらで対処する」

 

 セメントス?・・・・なるほど、あの壁はセメントスの個性か・・・でも何で、壁を造る必要が?・・・まあいいか。

 先生方が再びゲートに集まっていくところを見ると、どうやら危機は完全に去ったようだな。

 これで一安心だ・・・これでようやく・・・・。

 

「造理ぃ! ゲートに移動・・・!? つ、造理!! どうした!!?」

「「!?」」

 

 倒れられる・・・。

 個性で分解してしまった腹の傷を無理やり塞いでいたが、思いのほかダメージは大きく、戦いが終わったことで気が抜けてしまい、流石に歩くことが出来なくなっていた。

 

「悪い、ちょっと休む・・・誰か運んでくれると助か・・・る・・・」

「造理!! 先生・・方、大変・・・だ・・・!!」

 

 声も聞き取りづらくなっていき、俺はそのまま意識を失っていった・・・・。

 

 ――――




ようやく戦闘終了しました。最後は結局原作通りになってしまいましたね・・・


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