無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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第15話

「皆は!? いるか!? 確認出来るか!?」

「散り散りにはなっているが、この室内にいる」

 

 場所は出入り口ゲート付近、其処には飯田、麗日、障子、芦戸、瀬呂、砂藤・・・・そして13号が残されて居た。

 彼らの目の前には黒いモヤのヴィランが居る。

 13号は委員長である飯田に学校まで駆けこの事態を伝えるように指示を出すが飯田はそれに反論する。

だが、クラスの皆が飯田に行くことを進める。

 

「食堂の時みたくサポートなら私超出来るから! するから!!・・・・お願いね委員長!!」

「!!?・・・ああ!!」

「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか?」

「バレても問題ないから、語ったんでしょうが!!」

 

 飯田は行く決意を固めたが、敵はそれを許してはくれない。

 13号はヴィランと対峙するのであった・・・・。

 

 ――――

 

 

 

 ◇

 

「造理! お前は直ぐに避難しろ!」

「避難するにはヴィランが多すぎます!」

 

 出入り口付近であの黒いモヤのヴィランの個性に巻き込まれ、視界が見えた瞬間そこは中央広場の噴水近くであった。

 相澤先生は俺に隙を見計らって避難するように言うが、周りは数十人のヴィランに囲まれているため、それが出来ずにいる。

 

 ――何より

 

「こいつを生け捕りにしろ!」

「こんな所に”造理 錬”がいるとはなあ!?」

「こいつが居りゃ大儲けだあ!!」

 

 どうやらヴィランの中に俺を知っている奴が居たみたいで、すっかりターゲットにされてしまっている。

 これでは避難しても追いかけられてしまう・・・・本当に迷惑だ!

 

「ギャア! 切られた!!」

「痛えっ!!」

 

 俺は腕に付けたガントレットを錬成して、先端半分が刃に成っている”ブレードトンファー”に生成しヴィランに切りつける。

 打撃よりも斬撃の方が確実にダメージを与える事が出来るし、何よりヴィランが相手なら遠慮はしない。

 

「お前どこでそんな体術を覚えたんだ?」

「独学ですよ、独学!」

「殺すなよ?」

「解ってます!」

 

 致命傷を与えないように相手の肩や足の一部を切り裂き、行動不能にさせて行く。

 今まで何度もヴィランに襲われ続けたのだからこの程度は技術、体術は造作もないこと・・・。

 

「相澤先生、今日のヒーロー基礎学はオールマイトもいるはずですが、来れないんですか?」

「トラブルがあって授業が終わる頃なら来れるそうだ」

 

 授業が終わるまで、まだ二時間はある・・・ダメだな、時間が掛かりすぎる 。

 防犯センサーが作動してないなら、恐らく電子機器による通信手段は全て妨害されているはずだ。

妨害出来る個性を持っているヴィランを探すのは至難、・・・授業が終わる頃まで持たない。

 出入り口に目をやると、複数のクラスメイトの姿が確認でき、飯田、麗日の姿もある。

 ――飯田を脱出させることにが出来れば何とか・・・・

 

「もらった!!」

「もらってない!」

「ウギャアアア!!」

 

 背後から異形型のヴィランが攻撃を仕掛けてきたが、それをかわし相手の腕を切りつける。

 だが、このままじゃ消耗戦だ・・・・あれをやるか?

 

「相澤先生、合図したら高く飛び上がって下さい」

「何する気だ?」

「ヴィランの動きを止めます。・・・飛び上がらなかったら痛いですよ?」

「・・・やりすぎるなよ!」

 

 俺は笑みを浮かべながらそう語る。

 この場にいるヴィランの数は軽く見積もっても70人、可能な限り引き寄せる。

 

 ―――今だ!

 

「先生!!」

「ああ!!」

 

 相澤先生が高く飛び上がった。

 

「《錬成・連鎖分解!!》」

 

 俺の位置から全方位に向かって個性を発動、地面はひび割れて行く。

 

「ギャアアア!!」

「ガアアアア!!」

「イテエエエエエエエ!!!」

 

 周囲に居たヴィランの脚が分解されていき倒れこんでいく。

 “連鎖分解”・・・分解エネルギーを地面を伝って放出させて行く個性の応用である。

 脚を分解と言っても、脚を丸ごと分解している訳ではなく、出力を調整して足の裏側の真皮までを分解し、相手を立てなくするもの。

 相手の命を奪わず、身動きだけを奪う為に開発した戦術である。

 

「大したものだな」

「使い所は限られますけどね」

 

 飛び上がっていた相澤先生が降りて来てそう語る。

 この技は約半径15メートル以内に居る自分以外の者全てに影響してしまう為、市街地などでは使用することが難しく、最悪仲間まで巻き込んでしまうかも知れないもの。

 唯一の回避方法は高くジャンプするか、宙に浮くぐらいである。

 

「敵の数は大分減った、今の内に避難しろ」

 

 相澤先生は避難を促すが、それは無理だろう・・・何故なら

 

「最近の学生は凄いなあ・・・」

 

 顔と体中に人の手を付けたヴィランが向かって来ていた。

 

「《錬成》」

「遅いよ!」

「くっ!?」

 

 素早い! こいつが本命か!?

 生成した拳岩を軽々と回避するヴィランのリーダーらしき人物。

 俺はブレードトンファーで切りつけるが、それも回避され右腕を掴まれる。

 

 ――そして

 

「この腕を粉々にしてやる・・・」

「何!?」

 

 腕に装着してあるガントレットが粉々になっていく・・・・これはマズイ!

 

「造理!」

「おっと!? 危ない危ない」

 

 相澤先生が抹消でヴィランの個性を消し、捕縛武器で攻撃を放つが、相手はそれも難なく回避する。

 だが、拘束は解除出来た。

 

「造理! 大丈夫か!?」

「大丈夫です、腕は無事です!」

「触れたものを粉々にする個性だと! こいつが本命か!?」

 

 相澤先生のおかげで大事には至らなかったが、これはかなり危険だ!

 触れたものを粉々にする、それはつまり防御が不可能な攻撃と言うことであり、触れる部分によっては簡単に命を奪われてしまう!

 

「かっこいいなあ、イレイザーヘッド? 生徒を守るために真正面から突っ込んでくるなんて。・・・でもあまり無理するなよ? お前の個性じゃ集団との長期戦は向いてなくないか?」

 

 相澤先生の弱点を見抜いているかのような発言をするヴィランのリーダー。

 確かにこのままではマズイな、相澤先生はドライアイだと言っていたし、1アクション終えるごとに個性の発動時間がだんだん短くなっている。

 

「生徒に安心を与えるために無理してるのか? かっこいいなあ、かっこいいよう・・・・でも残念、本命は俺じゃない・・・・脳無!」

「「!!?」」

 

 ヴィランのリーダーの後ろで待機していた脳がむき出しのヴィランが瞬きする間も無く接近してきた。

 相澤先生が俺を庇う様に前に出るが

 

「ぐあっ!」

「相澤先生!! その手を離せ!!」

「やれ、脳無」

「ぐわあっ!!」

 

 脳ヴィランは相澤先生の右腕を掴み、俺はそれを止めようとするが、脳ヴィランにはらうように拳を振り、俺はその攻撃をガントレット越しにガードしたが殆ど意味が無く、そのまま地面をバウンドしながら吹き飛ばされて行く。

 

「がはっ! ぐっ・・・!?」

 

 何とか体勢を立て直し立ち上がるが、腕が逝きそうだ、あんな虫でも払うかのような攻撃で此処までダメージを受けるなんて・・・パワーだけならオールマイト級か?

 

「ぐあっ!!」

「相澤先生!?」

 

 脳ヴィランが相澤先生の右腕をへし折った。

 ――このままじゃ先生が危ない!!

 

「《錬成》・・・・発射!!」

「!?」

 

 俺はロープが付いてない銛大砲を生成し、脳ヴィランに向けて発射する。

 銛は脳ヴィランの肩に突き刺さり、その勢いで脳ヴィランは吹き飛び、俺はその隙に相澤先生に駆け寄り、その場を離れる。

 

「先生! 腕が!」

「右腕が折られただけだ! 気にするな!」

 

 十分、重症だ! それに頭から血も流れている! 生徒である俺の前で弱みを見せないために、あえて虚勢を張っているようだが、これ以上戦闘を続けるのは困難だ・・・!

 

「全く、いいところだったのに、ちょっとムカつくなあ・・・・脳無・・来い!」

 

 そう言うと、吹き飛んでいた脳無と呼ばれた脳ヴィランが一瞬でヴィランリーダーの隣に立つ。

 鯨を仕留めることも出来る銛大砲の銛を受けても動けるなんて、とんでもない化物だ!

 

「こんな物を突き刺しやがって・・・さっさと引っこ抜け、脳無」

「「!!?」」

 

 脳無が肩に刺さった銛を引き抜くと驚きの光景を目の辺りにした。

 

「・・・・再生している!?」

 

 銛が突き刺さって空いた脳ヴィランの肩の穴が再生していき、穴が塞がってしまった。

 

「残念だったな? この脳無は”超再生”の個性を持ってるから、どんな傷を負っても元通りに戻るんだよ・・・・」

「超再生だと!?」

 

 脳無の個性はあのパワーじゃないのか!? ならあの脳無は素の力がオールマイト級と言うこと?・・・・ありえない!

 

「さてさて・・・舐めた真似をしてくれたお前から始末しようか?・・・脳無!」

「!? 《錬成!!》」

 

 あの脳無が弾丸のような速さで俺に向かってくる。

 俺はヴィランリーダーの言葉を聞いて直ぐに前方に分厚い壁を生成する。

 

 ―――だが

 

「何っ!!? ぐぅあっ!!」

「造理!!」

 

 脳無は分厚い壁を突き破って来た。

 あまりの光景に驚いてしまった俺はガードが間に合わず、脳無の攻撃をモロに受けてしまい、そのまま吹き飛んで行った・・・。

 

 ――――

 

 

 

 

 ◇

 

「今朝 快便だったし、奴ら一日はくっついたままだぜ」

「あれで全員だったのは運が良かった・・・すごいバクチをしてしまった・・・普通なら念のため何人かは水中に伏せとくべきだもの、冷静に努めようとしていたけど冷静じゃなかった・・・危ないぞ、もっと慎重にブツブツブツブツブツ・・・・・・・・」

「緑谷ちゃんやめて、怖い」

 

 場所は水難ゾーン、そこには緑谷、蛙吹、峰田の3人が飛ばされており、3人は策を講じて水難ゾーンに潜んでいたヴィランの撃退に成功した。

 3人は次の行動に移ろうとするが緑谷は広間に目を向ける。

 

「え・・・? まさか緑谷、バカバカバカ・・・」

「ケロ・・・」

「邪魔になるようなことは考えてないよ!」

 

 蛙吹と峰田は不安そうに緑谷を見つめる。

 

「ただ隙を見て、少しでも先生の負担を減らせればって・・・・」

 

 初戦闘を勝利で飾ってしまったため自分の力がヴィランに通用すると錯覚してしまった緑谷は相澤先生が戦っている中央広場に向かおうと提案する・・・。

 ―――だが、その時

 

バシャーーーーン!!

 

「ぐァ!!」

「「「!!?」」」

 

 突然、三人の目の前で水しぶきが上がる・・・・・そこには

 

「がっ・・・う・・うぅあっ!!」

「「「造理(くん)(ちゃん)!?」」」

「!? ・・お前たち・・・・無事だったの・・か・・・」

 

 造理 錬の姿があった・・・・。

 

 ――――

 




まだオールマイトは出ません。
中々、話しを進められずにいます。


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