無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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ようやくUSJ編に入ります。


第14話

「今日のヒーロー基礎学は人命救助訓練だ!」

 

 相澤先生が手にカードを持ちながら言う・・・。

 ヴィランに襲われた次の日、俺はいつもと変わらずの授業を受けていた。

 昨日の一件で緑谷、麗日、飯田の3人は、時折こちらに目線を向けるが、特に会話をする事は無く、少しギクシャクしてしまっている。

 

 ――まあ、これは仕方がない。

 立場を弁えない行動は時にして重大な事態を招きかねないし、昨日の件もあいつらは巻き込まれたと言うより、自ら首を突っ込んで行ったようなものだったからな・・・。

 ・・・・相澤先生の厳しい言葉と俺の言った言葉にかなり堪えているようだ。

 

「尚、今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」

 

 3人?・・・・ああ、警戒を兼ねてか・・・。

 昨日、マスコミが雄英に侵入してきた上に、生徒には口外されてないが俺がヴィランに襲われる事件まで起きたからな、プロヒーロー数人で生徒の安全を守るつもり何だろう・・・。

 

「訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。・・・以上、準備開始」

 

 クラス一同、コスチュームを手に取り準備を始め、準備が出来た者からバスに乗り込んでいく。

 

「隣に座るぞ?」

「あっ!?」

 

 俺は緑谷の右側隣に座る事になった。

 昨日の件も有って緑谷が思わず声を上げたが、すぐに黙り込んでしまった。

 

「学内であまりよそよそしい態度は取らないでくれると助かる」

「造理くん?」

 

 俺と接する事が気まずくなっているようだが、学内でこの状態はあまり良くない。

 このクラスの連中はヒーローを目指しているだけ有って正義感が強い奴が多いから、こういう状態が続くと他のクラスメイト達まで影響が出かねないからな。

 

「人にはそれぞれ事情が有り、言えないことの一つや二つは存在する。・・・・お前もそうだろ?」

「!?・・・・」

 

 俺の言葉に緑谷は目を見開く・・・・この反応を見るとよほどの秘密を抱えているんだろうな、先日の”人から授かった個性”ってやつが関係してるのだろうか・・・?

 

 ――まあ、それはいいとして、こいつは洞察力が高いみたいだから俺の事情も何となくは気づいてしまうかもしれない・・・・恐らく昨日現場で造った金塊も見てるだろうし・・・。

 

「だから学内では普通に接してくれ・・・・嫌なら別に構わないが?」

「べ、別に嫌って訳じゃ・・・」

「なら頼む」

「う、うん・・・」

「何の話しをしてるの?」

「「?」」

 

 俺と緑谷との会話が気になったのか、緑谷の左側に座っていた蛙吹が話しに割り込んできた。

「い、いや、あの・・・」

「男同士の会話だ。女の子が気にすることではない」

 

 突然の事に緑谷はドギマギしていたが、俺がすかさずフォローする。

 その後、話しは変わりクラス一同は個性に付いて語り始めたが、爆豪が蛙吹の言葉にキレだし、それが面白かったのか他の奴らも爆豪をイジり始めた。

 中にはその会話を低俗と罵る奴も居たが、楽しんでいる奴が殆どで合った。

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ・・・」

「「「ハイ!!」」

 

 相澤先生の言葉に全員ビシッと返事を返す・・・・・相澤先生は生徒の手綱をちゃんと握ってるようだな・・・。

 

 ――――

 

 

 

 ◇◇

 

「すっげ――――!! USJかよ!!?」

「あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も、ウソの災害や事故ルーム(USJ)!!」

「「「(USJだった!!)」」」

 

 ――とまあ、コントみたいなやり取りをしているクラス一同、そして俺達の目の前に居るのはスペースヒーロー”13号”である。

 “ブラックホール”と言う他に類を見ない強力な個性を持っていて、災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーローであり、あまり戦闘は得意ではないらしいがそれでも間違いなく一流のヒーローだ・・・。

 

「え―始める前にお小言を一つ二つ・・・三つ・・・四つ・・・」

「「「(増える・・・)」」」

 

 13号は授業を始める前に個性の在り方、扱い方に対して語り始めた。

 超人社会では人類の大半が行き過ぎた力を持っているため、それを人に向ける危うさを知らない者がほとんどであり、13号は俺達に個性は人を助ける為にあるのだと心得て欲しいとのことだ。

 クラス一同は13号の言葉に感動してるようだが、俺はその言葉で"親”のことを思い出してしまった為、あまり感動は出来なかった。

 人助けが必ずしも良い結果を生むわけではないと言うことを幼い頃に知ってしまった俺は、人助けと言う言葉はどうしても薄っぺらく聞こえてしまうの・・・。

 

「そんじゃあ始めるぞ。まずは・・・・・?」

「?」

 

 相澤先生が突然言葉を詰まらせ演習場に目を向け、俺も目を向けると噴水近くの場所に何か黒ずんだモヤが現れる。

 

 

 

 ―――嫌な予感がしてきた。

 

「一かたまりになって動くな!! 13号、生徒を守れ!!」

「え?」

 

 クラス一同、突然のことに理解が追いついてない。

 黒いモヤはものすごいスピードで広がって行き、中から怪しげな連中が現れだした。

 

「何だアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まったパター「違う!」・・・造理!?」

 

 切島の言葉を不定する俺・・・。

 何度も見てきたから、あれがどう言うモノなのかは直ぐに理解出来た。

 肌で感じられる、途方もない悪意・・・・あれは

 

「あれは本物のヴィランだ!!」

「ヴィ、ヴィラン!?」

「「「!!?」」」

 

 その言葉にクラス全員が驚く。

 

「バカだろ!? ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!!」

 

 ――いや、あいつらはアホじゃない。

 この雄英は最先端の技術が満載の要塞であり侵入者用センサーがそこらじゅうに存在するはず。

 それが全く反応してないなら、それを妨害できる個性を持ってる奴がいると言うこと・・・。

 

「校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割、これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 轟がそう語る。

 恐らく先日のマスコミ騒動も奴らの仕業だろうが、妙だ。

 もしそれが本当なら、奴らは学校のカリキュラムを・・・それも教師側のカリキュラムを知っていると言うことになる。

 いくらマスコミの対応に負われていたとは言え学校の機密とも言える情報を簡単に盗めるものなのか? それもプロのヒーロー相手に・・・・。

 

 ――まさか、内通者!?

 

「13号避難開始! 任せたぞ!」

 

 俺がそう思っている間に相澤先生は戦闘態勢に入っていた。

 

「1人で戦うんですか!? あの数じゃいくら”個性を消す”っていっても!!」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 緑谷にそう言い残し飛び出して行く相澤先生。

 だが緑谷の言うことも確かだ、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消しての奇襲・・・短期決戦だ。

 あの数では長期戦は免れない・・・。

 

「生徒の皆! 早く避難を!」

 

 13号の言葉で全員我に返り、避難を始める。

 今俺達がするべきことは一刻も早くここを抜け出し、学校にこの事態を伝えることだ。

 

 ――だが

 

「させませんよ」

「「「!!?」」」

 

 ヴィランはそれを許してはくれなかった。

 

「初めまして、我々は敵連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟・・・雄英高校に入らせて頂いたのは・・・」

 

 俺達の前に黒いモヤを纏ったヴィランが現れる。

 こいつは噴水のすぐ側いたはずだ、それが一瞬でこの場に現れたという事は・・・こいつは長距離移動・・・”ワープ”の個性を持ってると言うことか!

 

「平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

「《錬成!!》」

「なっ!?」

「「「!!?」」」

 

 俺は大量の拳岩を生成しヴィランに向けて放った。

 

「造理くん!?」

「13号!! 直ぐにブラックホールを!! こいつの個性は”ワープ”だ!!」

「!? よし!!」

 

 こいつに何もさせてはいけない! ヘタをすればクラス全員、散り散りされる!

 13号は個性を使用する為に前に出るが

 

「俺達もやるぜ!」

「死ね! クソがあ!!」

「!? やめろ!!」

 

 爆豪と切島が飛び出してしまった。

 くっ! これじゃ13号の個性が使えない!

 

「ダメだ! どきなさい二人とも!」

「スキ有りです」

「「「!!?」」」

 

 黒いモヤがクラス全員を襲う。

 まずい! このままじゃ全員が散らされてしまう。

 

「《錬せ「させません」何っ!?」

 

 黒いモヤを放ちながらヴィランが俺に近づいてきた。

 

「さっきは危なかったですよ、君は生徒の中で特に優秀みたいですね?」

「くっ!」

 

 黒いモヤが集中して俺を包み込む。

 

「そんなあなたには相応しい場をお届けします・・・」

「くそ!!」

 

 俺はそのまま黒いモヤに巻き込まれてしまった・・・・。

 

 

 

 ―――そして現れた場所は

 

「造理!?」

「!?・・・・相澤先生!?」

 

 目の前には相澤先生、そして周りは大量のヴィランに囲まれていた。

 見渡すと、ここは中央広場であることが解った・・・。

 

 ――どうやら一番の危険地帯に送り込まれてしまったみたいだ。

 

 ――――

 




主人公の行き先なんですが、他の方の作品にはあまり無いパターンにしました。


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