「確かこっちの方角に向かったはずだけど・・・・」
「しかし緑谷くん、本当なのかい? さっきの言葉は・・・」
「断言は出来ないけど、可能性は高いと思うんだ。・・・・造理くんはヴィランに追われている」
飯田の問いにそう答える緑谷。
現在、緑谷・麗日・飯田の三人は錬を探している。
三人は帰宅するため駅まで一緒に向かっていたが、その途中で先に帰ったはずの錬を発見した。
再び声を掛けようとしたが、錬の後を着けている不審な男達に気がついてしまい、錬が移動速度を上げると男達も速度を上げ、何より錬が周囲をやたらと警戒しているようにも見えてしまい、ヴィランが絡んだ事件である可能性を頭に過ぎらせてしまった緑谷が錬の後を追ったのである。
その緑谷に続いて麗日・飯田も後を追った。
「でも本当にヴィランに追いかけられてるなら、交番かヒーロー事務所に駆け込めばいいんじゃ・・・」
「彼はとても賢い人間だ。それで解決出来るならそうしているはずだ」
「・・・・・・」
錬の気がかりな行動に3人は頭を悩まし、緑谷に至っては沈黙している。
むしろ緑谷は学校から別れた時に言い放った錬の言葉が気になっていた。
"お前たちを危険に晒したくない"・・・と言った錬の言葉を・・・。
「(危険に晒したくないって言っていたけど、それじゃまるで自分は常に危険に晒されているような口ぶりだった。なぜ危険なんだ? 確かに世の中全く危険が無いと言えば嘘になるけど、オールマイトがこの街に来たことでヴィランの発生率は低下しているし、何よりそう言う理由なら僕たちの誘いを断るまでにはならないはずだ。造理くんの口ぶりからするとまるで彼が狙われているかのような感じだ。では一体誰に? 誰が彼を狙っているんだ? まだ高校生である造理くん一人を限定して狙うなんておかしいし、彼にはそれだけの価値があるのか?彼はいったい何なんブツブツブツブツ・・・・・・・・・・・・・」
「デクくん デクくん、途中から声に出てるし、怖いよ・・・」
緑谷の長々しい言葉に麗日が苦言を入れる。
「しかし本当にどこに行ってしまったんだろうな?」
「確かに急に見失っちゃったしね・・・・」
「どっかの建物に入ったのかな?」
3人は錬の姿を探すも中々見つけられず、困り果てていた・・・。
―――その時
『パンッ!』
「「「!!?」」」
突然の音に驚く3人。
「何? 今の音?」
「パンッ! て音がしたよ?」
「・・・・・この音は!」
「飯田くん?」
緑谷と麗日は音の正体には気付かなかったが、飯田が何かに気づく。
「・・・・銃声音!」
「「えっ!?」」
飯田の言葉に驚く緑谷と麗日・・・・それもその筈、そもそもこの日本に置いて銃声音なんてものを聴くことはまず無いし、その考えに至った飯田に対し疑問を抱くのは致し方ないと言うものである。
「昔、兄さん・・・・ターボヒーロー・インゲニウムが警察と合同訓練をしたことが有ってそれを見学したことがあったんだ。・・・・その時、警察の射撃訓練も一緒に見学して、その時に聴いた銃声音に似てるような気がする・・・・」
「で、でも、何でそんな音が?」
「・・・・・・!?」
飯田の話しを聞いて、緑谷はしばらく考え込んだが、何かに気づいて銃声音が鳴った方角に向かって走り出す。
「あ!? デクくん!」
「緑谷くん!?」
突然走り出した緑谷に驚き、麗日と飯田も後を追いかけていった・・・・。
――――
◇◇
「造理くん!!」
「!!?」
緑谷! それに麗日に飯田・・・! 何故ここに!?・・・・まさか複数有った残りの視線の正体はこいつらか? 俺を追いかけてきたのか? 何故?・・・・何故俺を追いかけてきた?
「何だ!? お前ら!!」
――いや、それどころじゃない! このタイミングで現れるのはマズイ!!
「ひっ!!」
「麗日さん」
「麗日くん!」
元担任が緑谷達に拳銃を向け、緑谷と飯田が麗日を庇う様に前に出る。
くっ! 仕方ない!!
「《錬成・大分解!!》」
「なあっ!!?」
「「「!!?」」」
俺はガレージ床を分解し、元担任の足場を崩す。
広範囲に分解した為、ガレージの中は地震のように大きく揺れ、元担任は体勢を崩し、膝を付く・・・・今だ!
「造理く「動くな緑谷!!」・・!!」
俺は元担任に向かって走り出す!
「く、来るな!!」
「くっ!!」
相手は俺に向かって発泡し、その銃弾は俺の頬を掠めるが、俺はそのまま突っ込んで行き、
ズバッ!
「がっ!? あ、あああああああああああああああああっ!!!」
事前に拾ったトンファーで瞬時に錬成した小太刀を用いて、銃を持った手を切り落とした。
さらに相手の顔を掴み、
「《錬成・分解!》」
「うがああああああああああああっ!!!!!!」
「「「!!?」」」
元担任の顔の表面を分解する。
「グアッ!! アアッ!!」
顔を分解された元担任は血を流しながら顔を抑え床を這いつくばり、それを見ていた緑谷、麗日、飯田の3人はあまりの光景に声が出ないでいた。
「こいつらに手を出すな!!」
「ガアハッ!!?・・・・・ガ・・・」
俺は投げ捨てたトンファーを拾い元担任を気絶させ、意識を奪う。
その後、元担任の分解した顔は再構築し止血も済ませるが・・・・かなり危なかったな、まさかここで緑谷達が現れるとは・・・
「造理くん・・・・この人たちは?」
「ヴィランだ」
「ヴィラン!? ・・・・やはり君は狙われて「話しは後だ」!?」
飯田の言葉を途中で止める。
「もうすぐ警察が来るからこいつと中に居る連中を拘束するのを手伝ってくれ・・・」
「あっ!? う、うん・・・・」
俺はワイヤーを造り3人と一緒にヴィラン達を拘束。主犯を止血まで済ませた後に、警察の到着を待つのだった。
ついでに造った金塊も分解して・・・。
――――
◇◇◇◇
「・・・・以上が事の全容です」
あの後すぐに警察が到着し、ヴィラン達は拘束され、俺と緑谷達は事情聴取のため、現在は警察署にいる。
緑谷達は後からその場に来て何も知らない為、家に帰らせるようと思ったが、全員から事情を聞きたいと警察から言われてしまった為、結局3人も同行した。
「事情が事情なだけに仕方がないけど、今回はやり過ぎだよ? 造理くん」
「出来れば穏便に済ましたかったんですが、クラスメイトが現れる事は想定外でした。・・・もちろん罰を受ける覚悟はありますよ? 塚内警部」
「造理くん!」
隣に座っていた緑谷が声を挙げる。
個性の無断使用だけなら厳重注意で済むが、今回は建物に被害を出しすぎてしまった。
何より俺はもう高校生であり、義務教育期間である中学生ではないため、何のお咎めなしというわけにはいかない。
「その心配はないよ。確かに建物に被害を出てしまったけど、相手は拳銃を持ち、さらに発砲までしたから、これは正当防衛が成り立つ。まぁ相手は重傷だったけど・・・」
「二度も重罪を起こす輩に慈悲なんて与えませんよ。ぐじゃぐじゃになった顔に無くなった片腕は、戒めということで……」
「それだと、相手の恨みを買うことになりかねないのは、理解してるかな?」
などと説教に近い発言をしてくる塚内警部。
オレはそれはあえて皮肉ってみせた。
「もう片方の腕も切っといたほうが良かったでしょうか?」
「はぁ~、ここまでにしよう。こう言った議題に答なんてないだろうし。それに、軽傷とは言えど、ケガを負っている君を責め立てたくはないからね……」
「・・・・・・」
俺は絆創膏を張った傷を撫でる。
「ヴィランは全員逮捕したし今回はこれで解決だ。後、雄英には既に連絡を入れて事情を話しといたよ・・・・事情は察してくれ」
――当然だな。
雄英の生徒がヴィランに襲われた以上、何も知らせないと言うのはありえない。
先生方も俺の事情を知っているから特に何かを言われる事はないが・・・・・
「あの・・・・」
「ん? 何だい?」
「造理くん・・・・何でヴィランに追われてたんですが?」
突然、麗日が声を挙げ塚内警部に質問し出した。
「悪いけど彼についての事は、一般人にはあまり話せないんだ」
「何故です?」
「守秘義務さ・・・・察してくれ」
「・・・・はい」
麗日は押し黙る・・・。
「さて、もう夜になるし、部下に家まで送らせるよ」
「ありがとうございます」
「三茶・・・送りの手配を」
「ハッ!」
俺達四人は挨拶を帰し、猫の警察官と一緒に部屋を出る。
今回は予期せぬ事が起きたけど、他者に怪我人が出なくて良かった。
緑谷達にも怪我は無かったし、一件落着でいいだろう。
「造理くん」
「?」
隣を歩いていた緑谷が声を掛けてきた。
一体何の用かと思ったが、顔を見れば聞くまでもなかった。
「警察も言っていたが何も話すことはできないぞ?」
「だが、巻き込まれてしまった以上、ある程度は知る資格があるぞ? 造理くん!」
「うん! ウチもそう思う!」
飯田と麗日まで言ってくる。
ヒーロー志望だけあって、お節介だなあ・・・・・だが、こう言うタイプの奴らは適当にはぐらかすと後が面倒なるし、ある程度は仕方がないか・・・・。
「簡単に言うと、俺はとある事情で幼い頃からヴィランに狙われているんだ」
「「「!!?」」」
俺の言葉に3人が驚く。
「幼い頃から!? 何故!」
「悪いがそれ以上は言えない」
「な、何で!?」
「理由は三つある」
俺は指を三本立てる。
「まず一つ、お前たちに話す義務も義理も無いからだ」
「ぎ、義理が無いって「二つ」・・!?」
麗日の言葉を止め話しを続ける。
「お前達に話しても何の解決にもならない」
「だ、だが何か協力ぐらいは「三つ!」・・!?」
飯田の言葉を止め、更に続ける。
「夕方にも言った言葉だが・・・・”お前たちを危険に晒したくない”・・・だ」
「「「!!?」」」
三人の顔を見ながら俺はそう言い放った。
今回は巻き込んでしまったが、また同じ事が起きてしまったら堪らない。
俺と違ってこいつらは攫う理由は無いし最悪の場合、命を失いかねないからな・・・。
「悪いことは言わないから俺には関わるな。今回は運が良かったが、次もそうとは限らないし、最悪、命にだってかかわる」
「で、でも何か出来ることはあるはず「それはお前たちがすることじゃない」・・・!?」
「「「!?」」」
「相澤先生!?」
緑谷が喋っている途中で突然、前から声がし全員が顔を向けると、其処には相澤先生が居た
「相澤先生! 何故ここに!?」
「ここは学外だ、イレイザーヘッドと呼べ・・・」
公私混同を許さない相澤先生。
話を聞くと警察から連絡が来た後、より詳しい事情を聞くために俺達の担任である相澤先生が代表してやって来たと言う・・・。
「造理の事情については雄英がちゃんと把握している。お前たち生徒が介入していいことではない」
「でも僕達にも手助け位は「立場を弁えろ」・・!?」
「忘れるな、お前らはまだ
「「「!?」」」
相澤先生の厳しい言葉に3人は押し黙る。
「造理の手助けは俺達ヒーローと警察で行う事だ。・・・一生徒がすることじゃない」
「「「・・・・・」」」
「分かったら遅くなる前に家に帰れ。明日も授業があるから遅刻するなよ?」
そう言い残し相澤先生は去っていった。
相澤先生の厳しい言葉に緑谷、麗日、飯田の3人は何も言えないでいるが、相澤先生の言う事は事実で有るため仕方がない・・・。
「相澤先生の言った通りだ。納得出来ないかも知れないが、逆の立場に立って考えてみろ」
「逆の立場?」
「もしお前たちが俺の立場に立ったら、どう思うか?」
「「「!!?」」」
三人とも驚いたような顔をする・・・・・察してくれたようだな。
「そう言う事だ、学校以外で下手に俺に関わるとロクなことにならない。分かってくれ・・・・じゃあな」
「造理くん・・・・」
そう言い残し、3人より先に警察署を後にする。
明日からしばらくはギクシャクするだろうが、時期に収まるだろう・・・今までもそうだった。
俺は警察に送られて家まで帰宅した・・・・。
――――
かなりグダグダでしたがオリジナルストーリー終了です。
顔の表面の分解・・・。ハガレンでスカーがマルコーにやった感じのやつです。