無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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前回の続きです。


第12話

「・・・・複数いるな」

 

 学校から帰宅途中に何者かに尾行されている事を悟った俺は駅とは違う方向に向かい歩いている。

 本で顔を隠し周囲に目線をやるが、俺が移動速度を上げると、少し離れたところで複数の人間が移動速度を上げているのが分かる・・・。

 ――これはもう確実だな。

 相手を誘導し人気の無い場所に向かおうとしているが都心は人で満ち溢れ、何より今は帰宅ラッシュの時間帯、・・・・中々いい場所が見つからない。

 広い場所が理想的だがそれは難しい、路地裏に誘い込むか?・・・いやダメだな、狭い上に挟み撃ちにされる可能性がある・・・それは避けたい。

 大きめの倉庫やガレージが無難か。

 

「あそこが良いな・・・・」

 

 しばらく歩くと自動車整備工場のガレージを見つけた。

 看板を見てみると既にここは閉鎖されているみたいで人は居ず、ガレージの中には車の廃品が多数 放置されているため個性の材料には困らない。

 

 ――好都合だ。

 俺は中に入り相手を待ち構える・・・・。

 

「いたぞ!! こっちだ!!」

 

 相手が現れガレージに入ってきた。

 

「こいつで間違いないな?」

「ああ・・・」

 

 人数は4人・・・・少ないな?

 もっと多くの視線を感じていたが伏兵がいるのか?・・・・警戒しなければな。

 とりあえず、まずはこいつらだ。

 

「あんた達、俺の事を知ってて追いかけて来たのか?」

 

 俺はヴィラン達に問いかける。

 

「当然だ! おめえが造理 錬だろ?」

「聞いた話だと"金塊"を造れるそうじゃねえか!? お前が居りゃ大儲けだ!」

「おとなしくしてもらおうか!!」

 

 やっぱり狙いは金か、・・・・・迷惑極まりないな。

 

 俺は何時でも迎え撃てるよう戦闘態勢をとるが

 

「やあ、造理くん」

「?」

 

 突然、一番後ろに居た男が俺の名前を呼び前に出てきた。

 メガネを掛けた、やせ型の中年・・・・見覚えがある顔だ。

 

「久しぶりだね・・・7年ぶりかな?」

「・・・・ああ、あなたですか先生(・・)

 

 どこかで見た顔だと思ったが、こいつは俺の小学校の時の担任だった。

 

「確かにお久しぶりですね。・・・・お元気でしたか?」

 

 俺は久しぶりに再会した担任に挨拶をしたが

 

「元気?・・・・・よくもそんな口が聞けたな!!」

 

 俺の言葉が気に食わなかったのか声を荒らげてきた。

 

「 君への恨みは一度も忘れなかった!!」

 

 この男は俺に恨みを抱いていたようだ・・・・まあ当然だな。

 こいつはかつて、『授業の一環』などと偽って、俺を拉致誘拐。オレの個性を使わせて金儲けをしようとし、営利誘拐と強要罪で警察に逮捕された教師だ。

 俺についての情報は警察の情報規制によって一般人にはあまり知られないようになっていたが、通っていた学校の教師には知らされていた。

 事情が事情なだけに聖職である教師にはある程度の情報が提示されたのだが、・・・・中には当然、良からぬ事を考える者が居る。・・・この男もその一人だ。

 

「君のせいで私の人生は台無しになったよ! おかげで職を追われてヴィランにまで成って散々だった!! 」

 

 ――何て身勝手な理屈だ。当時8歳だった俺を利用して金儲けをしようとしたくせに逆恨みもいいところだ。

 確か借金を抱えていたと聞いていたが、それで犯罪を犯してしまったら救いようがない。

 

「仕返しをする為にずっと居場所を捜してたが、今朝のテレビを見てようやく突き止めた!! まさか雄英の生徒になっているとは順風満帆だなあ!!」

 

 やっぱり今朝の報道陣のカメラに映っていたか・・・。

 

「君がちょっと気を効かせてくれるだけで私は幸せになれたのに!! それを君はそのくらいのことで警察に通報しやがって!! 私の人生を返せ!!」

 

 ――聞くのが馬鹿らしくなってきたなあ。と言うか、ヴィランに成ってまで俺に復讐したかったのか? 仲間を引き連れてまで・・・。

 

「今度は7年前のようには行かない! おとなしく言う通りにし「《錬成》」グワアッ!!!・・・」

「「「!!?」」」

 

 これ以上、付き合ってられるか! 俺は拳岩を錬成し、愚かな元教師を倒す。

 

「やりやがったな! クソガキ!!」

「やっちまえ!!」

 

 残りの3人が襲って来る。まずナイフを持ったヴィランが向かって来たが、そのヴィランの腕を掴み後ろに回し・・・

 

「ガアッ!!?」

 

 肩の骨を外す。

 

「このガキャー!!」

 

 メリケンのような拳をしたヴィランが向かってきた。あの手が個性か? そのヴィランはメリケン拳を繰り出してきたが俺は・・・

 

「ブホォッ!!」

「なっ!?」

 

 ナイフを持ったヴィランを盾にし、その拳を防ぐ。

 ナイフを持ったヴィランは倒れこみ、その手に持っていたナイフを掴んで怯んでいたメリケンを着けたヴィランの肩に突き刺す。

 

「ギャアア!!!」

「てめぇー!! 締め殺してやる!!!」

 

 残りの一人、腕が四本ある異形型のヴィランが向かってきて俺を捕まえようとしたが俺はそれをしゃがんで回避し、そして

 

「《錬成》」

「ギャッ!!?・・・ガ・・・ガ・・・」

 

 しゃがんだ瞬間、手を床に付け拳岩を生成し、それを見事に異形型ヴィランの股間に命中させる。

 異形型ヴィランはそのまま股間を押さえ倒れこむ・・・・・痛そうだ。

 

 全員動きの動きは止まった・・・・後は

 

「はっ! ふっ!はっ!」

 

「ギャッ!!」

「グォッ!!」

「グハッ!!」

 

 俺は床に手を付けトンファーを生成し3人のヴィランの首筋を攻撃、全員の意識を奪う。

 

 ――大したことは無かったな、こいつら全員ヴィランと呼べるレベルの奴らじゃない。

 動きは遅いし攻撃も無駄だらけ、・・・・これじゃ、その辺に屯っているチンピラと変わらない。

 後は事前に連絡しておいた警察の到着を待つだけ・・・・。

 

 パンッ!!

 

「動くな!!」

「!?」

 

 振り向くと其処にはメガネが壊れ鼻から血を流していた元担任がいた。・・・・その手に拳銃を持って・・・。

 

「動くんじゃない!! 動くと撃つぞ!!」

 

 もう撃ってるだろうに・・・・・気を引くか。

 

「分かりました。・・・・降参です」

 

 手に持っていたトンファーを捨て、両手を上げるが

 

「ハハッ!! その手に乗るか!? 君は7年前もそうやって私を油断させて警察を呼んだからな!!」

 

 ――そう言えばそうだったな。

 元教師だけあって頭は回るほうか・・・・厄介だ。

 すでに警察には通報してるが到着までは数分は掛かる・・・ならば

 

「取引をしませんか?」

「?」

 

 言葉で相手を行動を誘導する・・・。

 

「取引だと!? どう言うつもりだ!?」

「簡単な話ですよ。今ここで金塊を造りあなたに差し上げます。・・・だから俺を見逃してください」

「ふざけるな! 君を攫ってから金塊を造らせた方が儲か「もう警察を呼んでいます」る・・何っ!!?」

 

 ここに来る前にすでに警察には通報しているから俺のスマホのGPSを頼りにこちらに向かっているはずだ。

 

「恐らく10分もしない内に到着するでしょう。・・・今この場で金塊を手にして逃げれば捕まらずに済みますよ?」

「くっ!・・・・・」

 

 食いついたな、悩んでいる・・・・。

 見たところ、こいつはこのヴィラングループの中ではブレーン的な立場にいたんだろう。

 なら警察が近づいて来ているこの状況でどれが最良の選択なのかを考えるはずだ。

 

「よく考えてみてください。あなたは好きでヴィランになったわけでは無いはずだ。たしかあなた逮捕され職を失った後、借金取りから逃げる生活を送ることになったと聞きます。・・・それでやむを得ずヴィランになってしまったに過ぎない。・・・違いますか?」

「・・・・・」

「それに、そこで倒れてる連中は、あなたが人生を賭けてまで守りたい仲間では無いんじゃないですか? こいつらを回収して俺を連れて行くには時間が有りません。・・・・ならこいつらを見捨て、自分だけ金塊を手にして逃げた方が賢明ではないですか?」

「・・・・・・・・・」

 

 かなり悩んでいるな・・・・もう一押しだ。

 

「《錬成》」

「!? 動くな!!・・・なっ!!!?」

 

 俺は床に手を付け個性を発動しある物を生成した・・・・・・・・金塊を。

 

「3億円相当に成りますかねぇ・・・・・金塊です」

「な!?・・・な!・・・・・・・」

 

 目の前にある金塊を見て言葉を詰まらせる元担任。

 俺が金塊を造れることは知っていたみたいだが、実際に金塊を造り出す所を見たことはない。

 お金が目的なのだから目の前の金塊に目が眩まないはずがない。

 

「どうです? 今すぐこれを持って逃げればこの金塊は全てあなたの物だ。」

「う・・・・う・・・」

「そこでおネンネしてる奴らの報復なら心配ありませんよ? 直ぐに警察が来るんですからこいつらは全員逮捕され刑務所行きです。・・・・何の心配もない」

「!?」

「これをお金に変えて海外にでも逃亡すれば、残りの人生は安心でしょ? 頭はいいんですから海外に行っても仕事は出来ます。」

「はあぁ、はあぁ」

 

 息が荒くなってきたな・・・・仕上げだ、俺は後ろに下がる。

 

「さあ、お選び下さい。俺を攫って警察に捕まってしまう愚策か、金塊を持ち逃走する得策か・・・・?」

「あ・・・・あ・・・」

 

 相手は拳銃を持った手を下ろしゆっくり金塊に近づいていく。

 

 ――金塊を手に取ろうとした瞬間がチャンスだ。

 俺が造った金塊の量は片手で持てる量ではないから手に取るには両手を使わなければならない。

 つまり手に持った拳銃が邪魔になる。

 例え手放さなくても思うようには使えないはずだ・・・・。

 

「はあぁ、はあぁ、はあぁ・・・」

 

 どんどん金塊に近づいてくる。もう少し・・・もう少し・・・・

 

 

「造理くん!!」

「!!?」

「なっ!!?」

 

 突然、名前を呼ばれガレージの入口に目を向けるとそこのは思いもしなかった人物の姿が有った。

 

 ――緑谷、麗日、飯田の姿が・・・。

 

 ――――

 




まだ続きます。
原作キャラ達と関わらせるのならやっぱり主人公である緑谷とその一行ですね。



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