無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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第11話

「オールマイトの授業はどんな感じですか?」

「え!!? あ・・・すみません僕 保健室に行かなきゃいけなくて・・・」

 

 戦闘訓練の翌日、雄英に登校すると校門の前にはマスコミで溢れかえっていた。

 オールマイトが目当てみたいで、登校した生徒、緑谷、麗日、飯田、爆豪など片っ端からインタビューし、根掘り葉掘り聞き出していた。

 

「オール・・・小汚っ!! なんですかあなた!?」

 

 今度は相澤先生が標的となった。

 にしてもカメラが回っているにも関わらず他人に対して堂々と失礼な言葉を吐くとは社会人としてどう何だ・・・?

 

「彼は今日 非番です。授業の妨げになるんでお引き取りください」

 

 相澤先生は手を振りながらそう答えるが・・・・・このままだと俺も被害に遭いそうだな。

 テレビに映るとヴィランに見られるかもしれないから俺はカバンから本を出し、顔を隠しながら校門を潜ろうとする。

 ――だが

 

「うわあああ!! 何だあ!!!?・・・だっ!!?」

「なっ!?」

 

 相澤先生を追って一人の女性アナウンサー校門に近づいてしまいセキュリティが作動し世間で言う”雄英バリアー”が閉まってしまった。

 それに驚き、後ろに去がった女性アナウンサーと接触してしまい本が落ちてしまう。

 

「失礼!? 大丈夫?・・・・て、君! 雄英の生徒!!?」

「(くっ! まずい、カメラに顔が映る・・・・!)」

 

 心の中で思わず舌打ちをする俺は落とした本を直ぐに拾い顔を隠す。

 

「ねぇ君! オールマイトについて聞かせ・・・何で顔隠してるの?」

「ノーコメントで・・・では」

「あっ!? ちょっと!!」

 

 アナウンサーの質問を無視した俺は、学生証を門に提示させ校門を開き急いで潜った。

 テレビに・・・それも生中継のテレビに映ってしまったな。

 顔は直ぐに隠したが顔が映ってしまったかもしれない。

 何事も無ければいいが・・・。

 俺は少し不安を抱えながら校舎に入っていった。

 

 ――――

 

 

 

◇◇

 

「じゃ、ホームルームを始める」

 

 始業時間になりホームルームが始まる。

 昨日の戦闘訓練のことで相澤先生は労いの言葉を掛けてくたが、緑谷と爆豪が注意を受けていた。

 まあ爆豪は子供みたいに暴れていたし、緑谷は個性の制御が出来ずに大怪我を負っていたので注意されて当然ではあるな・・・。

 そしてホームルームの本題に入ったが

 

「学級委員長を決めてもらう」

「「「学校っぽいの来た―――!!!」」」

 

 との事・・・。

 全員また臨時テストでもやらされるのではないかと思っていたみたいで不安の顔をしていたが、相澤先生の言葉に、全員 驚きの声を挙げ、そしてほぼ全員が委員長に立候補した。

 立候補をしていないのは俺以外では轟と麗日と飯田だけだったが飯田が立候補をしていないのは意外だった。

 あの手の人間はこう言う事には真っ先に立候補をすると思っていたが

 

「静粛にしたまえ!!」

「「「!?」」」

 

 突然、飯田が声を挙げる。

 飯田が言うには委員長は周囲からの信頼あってこ務まる責務とのことで、民主主義に則り投票で決めるべきと発案し、多少 反対意見もでたが飯田は押し切り最終的に相澤先生が合意した為、結局 委員長は投票で決めることになった。

 

 ―――その結果

 

 緑谷出久  3票

 八百万 百  2票

 

 他は・・・

 尾白、爆豪、切島、峰田、口田、障子、耳郎、蛙吹、上鳴、瀬呂、常闇、砂藤、芦戸、青山・・・・そして飯田。

 以上の者たちが1票ずつであった。

 緑谷が3票も獲得するのは意外であったがこの短期間でそれだけの信頼を勝ち取ったと言うのはかなりすごい事と言えるな・・・。

 

 ――だが、気になるのは・・・

 

「さすがに聖職・・・て、何故 俺に票が入っているんだ!?」

 

 飯田・・・お前は別の奴に票を入れたのか・・・。

そう言う事で、委員長が緑谷に決まり八百万が副委員長と言うことになった。

 

 ――――

 

 

 

 ◇◇◇

 

「混んでるな・・・」

 

 午前のカリキュラムが終了し昼休みになり食事を取るため食堂にやってきたが、人で溢れかえっていた。

この食堂はヒーロー科だけではなくサポート科や経営科の生徒も一堂に会するため毎日混雑しているらしい。

 俺は注文した食事を手に取り、席を探していたが・・・

 

「あ! 造理 君!」

「?」

 

 振り向くと其処には緑谷、麗日、飯田の3人が一緒に食事を摂っていた。

 

「席 探してるの!? ここ空いてるよ! 良かったら一緒に食べようよ!」

 

 麗日が声を掛けてきて食事を誘ってきた・・・・どうするか?

 断ろうと考えたが周りを見渡すと他に席は空いてなく、学校の中でまでクラスメイトを敬遠する必要は無かった為、誘いの乗ることにした。

 俺は緑谷の隣に座り食事を取る。

 

「造理君と一緒にご飯を食べるのは初めてだね」

「これを機にお近づきになりたいな」

「・・・・・」

 

 緑谷と飯田の言葉に声を詰まらせてしまう俺。

 以前この3人には冷たく突き放してしまったが、3人はそれを忘れてしまっているかのように俺に接する。

 この3人は本当に良いやつらなのかもしれないな。

 話しが進むと緑谷が委員長をやることに不安を募らせているような発言をするが、飯田が緑谷を後押しする。

 どうやら飯田は緑谷に投票したらしく、飯田も委員長をやりたがっていたようだが自分が正しいと判断したことを実行したらしい。

 更に話しが進むと飯田の家は代々続くヒーロー一家らしく飯田はそのサラブレッドということが分かった。

 飯田は兄に憧れてヒーローを志したようで規律を重んじ人を導けるヒーローを目指していたが、自分には人を導く立場はまだ早いと思ったがために緑屋を委員長に押したみたいだ。

 ――ヒーローの志に満ち溢れているな。

 俺は心の中で飯田に感心をした・・・・。

 ――その時。

 

『セキュリティ3が突破されました 生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難して下さい』

「「「!!?」」」

「警報!?」

 

 突然の警報音。

 セキュリティ3と言う事は誰か雄英敷地内に侵入したと言う事だ。

 食堂に居た全員が迅速に避難をしようとしてるが、どう見てもパニックになっておりこれでは避難どころではない。

 俺はその場を動かず状況を確認するために窓の外を見てみるが、そこにはマスコミ報道陣がいて先生達がその対応に負われていた。

 

「造理君、どうし・・・て! あれは報道陣!?」

 

 3人も窓の外にいる報道陣に気づき、そしてみんなを落ち着かせようとするが

 

「どわ―しまった――!!」

 

 緑谷が人の波に攫われ遠ざかっていく・・・・。

 個性を使って事態を収めようと思ったが、俺の個性では負傷者が出てしまうかもしれない・・・・ならば

 

「飯田、麗日、頼みがある!」

「「!?」」

 

 飯田と麗日に任せる事にした。

 麗日の個性で飯田を浮かし、飯田がエンジンの噴射を利用して食堂出入り口まで移動し、そこで目立つように大声を上げて事態を収拾する・・・。

 

「しかし僕では「お前に票を入れたのは俺だ」!? 造理君!?」

 

 飯田の言葉を遮り俺はそう言い放った。

 あの時、クラスのほぼ全員が立候補しその他の者は静止していたが飯田だけが違う意見を言い出した。

 その場に置いてもっとも効率よく円満に解決する手段を提示しそれを成立させてみせた。

 

「飯田なら大勢が間違った選択をしたときも真っ先にそれを止めることができる・・・あのホームルームのやり取りで俺は飯田が適任だと判断した」

「造理君・・・・分かった!! 麗日くん! 俺を浮かせろ!!」

「うん! 分かったよ!!」

 

 俺の言葉に賛同し二人は行動を起こす。

 そして作戦通り飯田は宙に浮きエンジンを吹かして出入り口まで飛んでいくが

 

「ヌォオ!!?・・・・・・ふっ!!!」

 

 足で噴射しているため空中でクルクル回りながら飛んでいき出入り口の上の壁に激突・・・・そして

 

「皆さん!! 大丈――夫です!!!!」

 

 大声で叫んだ・・・・・・非常口のポーズを取りながら・・・・確かに大胆ではあるな。

 飯田の行動によってパニックは無事に収まった。

 

 それにしてもあの報道陣はどうやって侵入したんだ? 個性によっては柵を飛び越えることも雄英バリアーを破ることもできなくはないが、マスコミがそんな重罪になる法律違反を進んでするとは考えにくい。

 という事は何かに便乗して入ってきたという事はになる・・・・つまり

 

 ――何者かがマスコミをそそのかしたと言うこと。

 

 マスコミの中に良からぬ者が混じっていたかもしれないな・・・・。

 しばらくした後、警察が到着しマスコミ報道陣は撤退し、事態は終結した。

 

 マスコミ侵入事件の後、教室にて委員長以外の委員決めを執り行おうとしていたが、緑谷が委員長を飯田に譲ると発言し出した。

 食堂での行動に感心したみたいで飯田こそが委員長に相応しいと判断したらしく、他にも食堂に居合わせた連中も緑谷の提案に賛同し、飯田はそれを了承。

 委員長は飯田と成った・・・・。

 

 ――副委員長の八百万の立場が無いな。

 

 ――――

 

 

 

 ◇◇

 

「造理君!」

「?」

 

 振り向くと緑谷、麗日、飯田の3人がいた。

 授業が終わった放課後、帰り支度を済ませてさっさと帰宅するため校門を出ようとしたが、突然3人に呼び止められる。

 飯田が昼休みの時の礼を言ってきたが、”行動を起こしたのは飯田と麗日のため俺が礼を言われることない”、と伝えた。

 

「ねえ一緒に帰ろうよ! 」

「うむ! 造理君とも親睦を深めたい!」

「どうかな・・・?」

 

3人はこの前のように一緒に帰宅しようと提案してきたが

 

「悪いが、それは出来ないんだ」

「え!? どうして・・・・!?」

 

 麗日が声を挙げる。

 まあ当然の反応だな・・・だが、こればかりは了承出来ない。

 こいつらは普通いい奴らだ・・・・・だから

 

「お前たちを危険に晒したくない」

「「「!?」」」

「じゃあな・・・」

 

 そう言い残し俺は学校を後にする。

 あいつらにはまた悪いことをしてしまったが、校外で俺と一緒にいたらヴィランに襲われる可能性があるし、あいつらが俺の境遇を知ると同情してくるのは目に見えているし、何より今日は良くない。

 ――何故なら

 

「・・・・・・つけられているな」

 

 校門から出てしばらくたった後に気づいたが、複数の視線を感じる。

本で顔を隠しながら周りに確認するが物珍しさでの視線ではなく明らかに俺を狙っての視線だ。

 となると考えられることは一つ・・・。

 

 ――ヴィランだな。

 

 やはり今朝の報道陣のカメラに顔が映っていたのか、俺が雄英にいることがバレてしまったかもしれないな。

 オールマイトがこの街に来たことでヴィランの発生率は低下していたから、少し安心していたが、そう上手くはいかないか・・・・。

 このまま帰ると家の場所を嗅ぎつけられるな・・・面倒だ。

 俺は帰り道と違う方向に進みヴィラン達を誘導しようと考え、人気の無い場所に向かった。

もちろん相手にバレないように警察に通報もして・・・・。

 

 ――――




 どうも主人公が境遇の割には平穏に過ごしすぎているような感じがしたので、次はオリジナルの話しをやります。
 後いい加減、原作キャラ達と関係を持たせたいです。


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