無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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第1話

 "個性"と言う超常が伴う現代、"ヒーロー"と言うものが公的職務と認められ、個性を使って犯罪を犯すもの者"ヴィラン"を取り締まる社会となった。

 そして、圧倒的な強さを持ったヒーロー "オールマイト"の登場により、ヴィラン発生率は年々減少し、その存在そのものが抑止力となり人々に平和と安心を与えていた。

 

 ――だが、全ての人々に平和と安心が与えられる訳では、決して無い。

 

「追いつめたぜ、クソガキ!」

 

 と、口うるさく叫ぶ男。

 都心のとある場所、閉鎖された工場の中に集まる複数の男達。

 彼らは世間で言う"ヴィラン"と呼ばれる連中である。

 

 そして、その男達の目線の先には・・・。

 

「やれやれ、追い詰められたか・・・」

 

 一人の少年が立っていた。

 

 少年は諦めたかのようにため息を吐く。

 見た所、少年は制服を着た学生で、眼鏡を掛けたインテリ系の男子。

 少年はヴィランに追われ壁越しに立たされており、周りは完全にヴィランに囲まれている。

 

「散々苦労させられたがもう逃げられねえ。大人しく俺たちに協力すれば痛い目に合わずに済むぜ」

 

「・・・・・・・・」

 

 少年はヴィラン達を黙って見つめる。

 ――そして数秒経った後。

 

「分かりました。あなた達に従います」

 

 彼は両手と膝を地面に着け、そう言い放った。

 

「がぁはははは! それでいいんだよ! ガキは大人しく強い大人の言うことを聞いてればな!」

「素直になることはいいことだぜ? ガキ!」

「ソウダ! ソウダ!」

 

 高笑いをするヴィラン一同。目的が達成されて喜びに浸っていた・・・・だが、その時

 

「がははは! グゥアッ!?」

 

 突然、床のコンクリートの一部が拳の形をして、勢い良く盛り上がりヴィランのアゴに直撃――さらに

 

「ギャッ!?」

「ノワァ!?」

「ウギャッ!?」

 

 他のヴィラン達にもコンクリートナックルがアゴに直撃。

 ヴィラン全員が見事に宙を舞い、地面に倒れ込みノックアウト。

 

 全員が意識を失い動かなくなったところで、少年は静かに立ち上がる。

 

「馬鹿が、子供に簡単に倒される大人が強いわけ無いだろう・・・」

 

 倒れこむヴィラン達に少年は冷たく言い放つ。少年はポケットからスマホを取り出し

 

「もしもし警察ですか?、ヴィランがいるのですぐに来てください。場所は―――」

 

 手馴れてるかのように警察に通報する少年。彼はその場で警察の到着を待った。

 

 

 

 ◇◇

 

 

「全員をすぐに収容しろ!気を失ってるからと言って油断するなよ」

「「「了解!」」」

 

 ほどなくして、警察が到着。

 その中には数人のヒーローも居て、ヴィランを収容していく。

 そして、指示を出していた警察の人が少年に近づいていく。

 

「到着が遅れて申し訳ない。・・・・また狙われたんだね」

「もう慣れっこですよ、塚内警部」

「ははっ・・・・」

 

 顔見知りなのか、特に気にすることも無く返事を返す少年。

 ヴィランの相手を"慣れっこだ"と笑顔で言い放つ少年に、思わず苦笑いを浮かべてしまう塚内警部。彼は少年に事件に至った経歴を詳しく聞いていく。

 ――すると、一人のヒーローが近づいてきて

 

「君!無事で済んだからいいものを、学生がヴィランと戦うなんて無謀もいい所だぞ!個性の使用も禁止されているのだから!」

 

 少年に対し説教を始めた。

 極当たり前のことを言っているが、事情を知っていた塚内警部が止めようとする。

 ――だが

 

「申し訳ありません。自分の行動が浅はかだったと深く反省しております・・・・」

 

 それよりも早く少年がヒーローの前に立ち、頭を深く下ろして謝罪する。

 少年の素直な対応にヒーローは感心の意を見せるが、それを見ていた塚内警部は険しい顔になり、ヒーローに再び声を掛けようとするが・・・。

 

「ですが、あえて言わせていただきます」

 

 またも少年が塚内警部よりも早く口を開き、顔を上げてヒーローに語りかける。

 

「抵抗しなければ、俺はヴィランに連れ去られていた。ヒーロー以外の者が公共の場での個性の使用が禁止されているのは重々承知していますが、法律に従っていたら俺は救われなかった(・・・・・・)ということも理解していただきたい」

 

 少年は無表情でそう言い放つ。

 何の感情も篭ってない言葉にヒーローは思わず息をのんでしまう。

 

「そのへんでいいでしょう。彼もヴィランに追われて疲れています・・・そろそろ家に帰してあげないと」

 

 塚内警部が割って入る。

 

「部下に家まで送らせるよ。くれぐれも気を付けて・・・・我々はいつでも君の味方だよ、造理君」

「ありがとうございます」

 

 塚内警部にお礼を言い頭を下げた少年は、部下の警察に連れられてその場を後にした。

 

「造理?・・・・・あ、造理ってまさか」

「そのとおり、彼が"造理 錬"だよ」

「彼があの噂の・・・・」

 

 何か思い出したかのように声を挙げるヒーローに塚内警部が言い放つ。

 

造理 錬(つくり れん)。・・・・私が知る中でも特に不幸な人生を送っている少年だよ」

 

 塚内警部は少年を乗せ、走り去っていくパトカーを悲しげなめで見つめる。

 

 

 ◇◇

 

 警察に送り届けられ、無事に家にたどり着いた少年"造理 錬" 

 家には誰もおらず、部屋に入ると錬は疲れたのか、そのままベットに倒れこむ。

 

「毎度のことだが、疲れるな・・・・」

 

 溜め息を垂れながら愚痴をこぼす錬。

 彼はとある事情によってヴィランに襲われることが多く、警察やヒーローに何度もお世話になっていた。

 

「最近ヴィランに襲われる数が増えてきた。やはり、あの噂は本当なのか?・・・・・"オールマイトの弱体化"?」

 

 錬は以前ヴィランに襲われた時にふとヴィランが口にした言葉を思い出す。

 錬自身もオールマイトの事はよく調べており、昔と比べて彼の一日の活動時間が短くなっていることに何となく気づいていた。

 

「もしそれが本当なら、ますます危険が増えるな・・・・やっぱり取るしかないか・・・・・・ヒーローの資格を」

 

 錬は静かに、そして冷静にヒーローになることを決意する。

 これは不遇な人生を送っている一人の少年の物語である。

 

 ――――




これだけしか書いてないけど苦労しました。
小説を書くのは難しいです、とても。

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