俺の妹がこんなに優等生なはずがない   作:電猫

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今回は他の人とリレー小説のような物をやっていたので、それをまとめた物です。
本当は載せるつもりはない遊びだったのですが、長くなったので載せてみます。
これは本編とは別時空とでも思ってください。
あれです、つい書いてしまったヤンデレの時のようなものです。
批判は……無いとありがたいな……


第?話

 ☆新垣兄妹バトル編

 

 ある時、Mに目覚めた京介は気づいてしまった。あやせにセクハラをして蹴られるのは気持ちいい、しかし気絶してしまえば罵倒というご褒美を逃してしまっているんじゃないだろうか? ということに……

 

「攻撃を受けきって気絶しないように耐えるか、気絶から回復までの時間を短縮しなくては!」

 

 最近、兄のセクハラが増えたあやせは考えた。兄さん相手に照れる姿は見せられない。

「兄さんをより確実に気絶させないと、心を落ち着ける時間が足りない!」

 

          1

「兄さんセクハラです!!」

 

 あやせの右ハイキックが、信じられない速度で迫ってくる。

 

「くっ、間に合うか!?」

 

 俺は衝撃(ご褒美)に備えるべく、左側へ防御の意思を固める。

 グハァ、だが耐えたぞ。

 相変わらず気持ち良いキックだ(二つの意味で)

 良し、これで罵倒もして頂ける……

 その瞬間、俺の右側頭部に衝撃が走った!?

 薄れていく意識の中、目に映ったのは、左足でハイキックを決めた妹の姿が……まさか時間をおかずに、ほぼ同時に左右蹴りが来るとは、昔そんな技を使う漫画を読んだ事が……

 

          2

「兄さん、それもセクハラです!!」

 

 あやせの右ハイキックは更に速度を上げたようだ。

 

「だが……ここでくたばるわけには!」

 

 俺は初手でのゲームオーバーを避けようと、まずは左に意識を高め──耐える!

 今日のキックも抜群の気持ちよさだ(二つの意味で)。

 よし、次は……右!

 その瞬間、俺の右腕に衝撃が走る。

 右ハイキックに続いて左ハイキックにも何とか対応できた。

 衝撃の余波で気絶は時間の問題だが、罵倒を聞き終えるまでは耐えられるはず!

 ……だが、俺の目に映ったのは。

 左右のハイキックを両手で防がれ、常人ならバランスを崩して当然の姿勢から、妹が。

 腹筋を総動員して、目を瞑ったままありえない勢いで顔を近付けてくる、その姿!

 もちろん俺に防ぐ術などなく、妹渾身の頭突きで意識を刈り取られた。

 

          3

「兄さんまたまたセクハラです」

 

 あやせのハイキック、もはや音速に手が届くのではないかと疑うレベルだ。

 しかし甘い、来るのが分かっていれば!

 俺は背後へバックジャンプをして回避する。

 打撃のご褒美が無いのは悲しいが、たまには罵倒もされたいんだ!!

 

「どうだ、あやせ。なに!?」

 

 俺の目に映っていたあやせの姿が消えていく。

 

「兄さん、それは残像ですよ」

 

 背後から聴こえるあやせの言葉を最後に俺の意識は途絶えた。

 

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 どうしても気絶してしまう。ならば……

 

「あやせの足より先に罵倒が飛んでくる行動を取ろう!」

 

 過去の経験を京介は必死に思い出し、そして──。

 

その1.「俺には、お前以上に、大事な奴なんていない! 誰よりも、お前が大事だ!!」

→足は飛んでこないが罵倒もない。あと、とても恥ずかしい(お互いに)。

 

その2.いきなり倒れ込んで顔を胸に埋める。

→威力を増したビンタに今度こそ意識を失ってしまう。ある意味本望。だけど残像の可能性もアリ。

 

「どちらもダメか……」

 

結局いつも通りセクハラに励む京介であった。

 

 

 

 ☆あやせ暴走編

 

 あやせ、桐乃、加奈子のとある日常会話

 

「あーあやせ、その、最近京介とは……どうなの?」

「き、桐乃!? と、突然どうしたんですか? 兄さんとはいつも通りですよ」

「いや、その……二人の関係が……大丈夫かなって……」

「あーそういや、ララポでデートしてたっけか?」

 

 加奈子の爆弾発言に、桐乃が勢いよく食いついた。

 

「なにそれ!? 詳しく!!」

「な、なにを言ってるんですか、加奈子!?」

「えっと? 加奈子様がララポで暇つぶししてたら、あやせが服屋で京介にファッションショーやってたみたいな〜」

「それでそれで」

「京介が褒めるとにやけて、意見が違うと拗ねてた……」

「ち、違いますよ!? あれはデートでなくて……ただの買い物です! それに、にやけていたり、拗ねたりなんて……してませんよ!」

 

 焦って誤解を訂正するあやせ。しかし二人の反応は……

 

「ふーん」

「へー」

「絶対信じてませんね、その顔!?」

 

 あやせの反応をスルーした桐乃が加奈子に続きを促す。

 

「ちなみに加奈子、他には?」

「うーんと、喫茶店でアーンしてた」

「アーンって、嘘!? マジで!?」

「か、か、か、加奈子!? な、な、な、なんで、なんで、それを知ってるんですかぁぁぁぁーーー!?」

 

 あやせの大絶叫!? しかし加奈子はけろっとした顔で応えた。

 

「えっ、大宇宙の意思っしょ!!」

「うわっ、その慌てっぷり……本当なんだ……」

「ち、ち、ち、違うんですよ? 桐乃! あれ、あれあれは、そうです介護! 介護の練習なんです! 兄さんが病気になったり、おじいさんになったりした時の為なんです、そうなんです!」

「いや、あやせ……それ無理でしょ……」

「か、介護、ぷっ、あっはっははははーー!!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

 無理矢理な言い訳して、顔を真っ赤に染めあげ、涙目のあやせがぷるぷる震えている。

 

 

 オタクな面々の会話;

 

「あー京介、その、最近あやせとは……どうなの?」

「き、桐乃!? と、特にいつも通りだが」

「京介氏、なんだか怪しいですぞ」

「あのメデューサに怯えているだけ……ではなさそうね」

「ララポの他にも、二人で、その……デート、とか行ってるんじゃないの?」

「な、なんでそれを? あー、でもあれをデートって言ったらあやせに怒られるだろ」

 

 京介がぎょっとした目で桐乃を見た後、頬を掻きながら訂正する。

 そんな京介を三人が呆れた目で見つめ、ひそひそ話始めた。

 

「この男……自覚がないとは厄介ね」

「京介氏はラノベの主人公みたいでござるな」

「ちょっと、あやせに同情する」

 

 首を振って桐乃が気分を入れ替え、京介に再度尋ねた。

 

「じゃ、じゃあ、二人でお出掛けとかは?」

「それも最近あやせが嫌がってなぁ。どこで誰に会うか分からんって言われて、反抗期ってこんな感じなのかな?」

「妙ね。メデューサの魂は嫌がっていないと私の邪気眼には映るのだけど」

「誰にも会わない場所なら良いという意味でござるかな?」

「あ、ちょっと冷やかしすぎちゃったかも……い、家ではどうなの?」

「べ、別に前までと……一緒だぞ」

 

京介が三人から目を逸らした。

 

「怪しいわね」

「怪しいでござる」

「京介、しょ〜じきに答えてね。あやせと家で過ごしてて、前と変わったことってある?」

「いや、その……前よりも、照れることが増えた、かもな」

「具体的に説明なさい」

「具体的に言うでござるよ」

「なになに、もしかしてご飯の時とかに介護されてるとか?」

 

 桐乃の言葉に飲み物を吹き出す京介。

 

「ぶっ! なんで分かるんだよ?!」

「ご飯の介護……アーン、ね」

「アーン、でござるか」

「あやせ……介護で貫くつもりなのね……」

 

 三人の目は非常に生暖かいものだった。

 

 

 オタク達の会話の少し前

 

「に、兄さん……」

「どした、あやせ? 顔赤くして。今日のメシって辛かったか?」

 

 あやせは京介の質問に答えず、大きく息を吐き出し覚悟を決め、おかずを京介の口元に持っていった。

 

「ア、アーン……」

「ふぁっ!? い、いきなり、マジに、どうした、あやせ!?」

「……に、兄さん……アーン……」

 

 京介の問いに答えず、にじり寄ってくるあやせ。あやせのそんな姿に京介も覚悟を決めて、口を大きく開いた。

 

「…………おう、ア、アーン……」

「………………」

「………………」

 

 永遠に続くのだろうかという気まずい沈黙の後、顔を赤く染めたあやせが早口で喋りだした。

 

「か、勘違いし、しないで下さいよ、兄さん。こ、これは……あくまで、兄さんが病気になったり……おじいさんになったりしたときの、その……予行演習ですから」

「お、おう……わかった。あれ? 病気はいいんだが……爺さんになった時って……なんか夫婦みたいだよな?」

「ひゃいっ!? ふぁ、ふぁぅふ!?! 〜〜〜〜に、兄さんのばかぁーーーー!!」

 

 京介の最期に見た光景は額に迫ってくるあやせの右拳だった。

 ドタンッ、と椅子ごと人が倒れこむ音、それに遅れてカラコロと箸が床に落ちる音がリビングに響きわたった。

 

 

 椅子ごと倒れ込んだ京介を、あやせは最初は遠目から、そしてすぐそばにしゃがみ込んで肩口をつんつんして確認する。

 

「に、兄さん……? 気絶、してますよね?」

 

 額に拳のあとが残っているものの、目を瞑っている兄は無邪気な顔立ちで、そして──

 

「上手く言えないですけど、今の兄さんは昔と変わらず頼もしく見えますよ」

 

 だから普段からセクハラを控えて、もっと真面目にしてくれたらいいのに。

 あ、でも、セクハラが急になくなるのはなんだか寂し……ちがいますよなにを考えてるんですか私は!

 その、私にセクハラをしないぶん他の女の人が犠牲になってたら困るなって意味ですからね!

 勘違いしないで下さいね!

 

「……って、まだ起きてないですよね?」

 

 空中に向かってわちゃくちゃと手を動かしていたあやせは我に返って、再び兄を眺める。

 その安らかな寝顔にあやせは再び顔を綻ばせた(京介が眠るに至った経緯を追及してはならない)。

 

「介護……これも介護ですよね!」

 

 桐乃との会話を思い出して理由(断じて言い訳ではない)を見出したあやせは、ゆっくりと兄に向かって手を伸ばす。

 そして兄の額を、更には髪や頬などを優しく撫でながら、しばしの時を過ごすのだった。

 

 

 ☆京介シスコン編……やっぱりあやせ暴走編

 

 麻奈美の家に遊びに行った帰り、ロックが追いかけてきた。なんだ? 珍しい。

 

「あんちゃん待ってくれ。……今度、あんちゃん家に遊びに行っていいか?」

「なんだロック? お前いままでそんな事言った事なかったろ?」

「いや、いつもうちにばかりだから、偶にはあんちゃん家にも行ってみたいなと……」

「俺はお前に会いに来てるんじゃなくて、麻奈実に会いに来てるんだけどな」

「まあまあ、あんちゃんそんな事言わずにさあ〜」

 

 ロックが食い下がってくる……怪しいな。

 

「というかロック……お前うちに何しに来るつもりなんだ?」

「えっ!?えっと……それは……そうだ、尊敬するあんちゃんの生活を見てみたいんだよ!」

 

 なるほど尊敬するときたか。ロック……それならいま思いつきましたみたいな、平手に拳を叩くような態度は取らない方がいいぞ。

 

「…………ほう、そうなのか? 俺はてっきりあやせに会いたいからだと思ったんだがな……」

「ま、まさか……そんな事は、か、考えてないぞ、あんちゃん」

 

 汗を浮かべて、目を泳がせてどうしたんだ、ロック?

 

「そうか……それは良かった。もしあやせ目当てだったなら……」

「ち、ちなみにあやせさん目当てだったなら、どうなるんだ、あんちゃん?」

「俺は一人の友人を失くすところだった」

「抹殺するのかよ!?」

「いや、良かった良かった。あっ、あやせ?」

 

 俺は挨拶するように右手を上げた。それにつられたロックが振り返る。

 

「えっ!? 嘘、あやせさん♪ ……なんだいない…じゃ、ん」

「そうだな、ただマヌケはいたようだな……」

 

 俺は優しく背後を向いてるロックの肩を掴んだ。

 

「あ、あんちゃん……」

「ロック……言い残す言葉があれば、聞いてやるぞ」

 

 

 商店街を歩いていると、麻奈美お姉さんを見かけました。

 

「あやせちゃん、こないだぶり〜」

「お姉さん、こんにちは。こんなところでどうしたんですか?」

「お買い物の途中なんだ〜。あ、そういえばね、最近の京ちゃんなんだけど……」

 

 お姉さんが、ちょっと頬を赤く染め、言いよどみました。

 

「な、なにか変なこと言ってました?」

「う〜ん、言ってたっていうか。その、一緒にお弁当を食べてたときにね」

「(……嫌な予感がしますね)」

「とつぜん思い付いたみたいに、おかずをお箸で取って『ほい』って……」

「(……なにをしてるんですか、に・い・さ・ん?)」

「ちょっと恥ずかしかったけど、京ちゃんが普通だったからぱくって食べたら、『介護か……』って呟いてて」

「(……お姉さん相手にアーンとか、これって私のせいですか……違いますよね兄さんが悪いんですよね)」

「その、ご家族のことで困ってたら、何でも言ってね〜」

「あ、いえ……。家族は大丈夫です。お姉さんに気を遣わせてごめんなさい」

「何もないならそれでいいよ〜」

「すみません、急用ができたのでこれで失礼しますね」

「あ、うん、分かった〜。じゃあね〜。……急用?」

 

 

 私は家のドアを思いっきり開けると同時に、叫びました。

 

「兄さん!!」

「おっ、あやせ、おかえり」

 

 兄さんのいつも通りの態度に腹が立ちます。

 

「おかえり、じゃないです!!」

「ど、どした? なんかしたか、俺?」

「なに、お姉さんにアーンなんて、してるんですか! しかも学校ですよね! うらやま……いえ、なんでもないです」

 

 危ないです。あやうく本音を……いえ、そんなことよりいまは兄さんの追及が先決です。

 

「あ、ああ、麻奈実の事か……ついついな……たしかに学校はまずかったな……あの後、赤城や周りの連中がうるさかったし……」

「人前だったんですか!? 本当になにをやっているんですか、兄さん!」

「いや、介護する側って……どんなかなって……麻奈実とも付き合い長くなりそうだなって思ったら、なんとなく?」

「ダメです! 介護する方も、されるのも妹の私の特権です!!」

「い、いや、あやせ…特権って?」

 

 困惑する兄さんにたたみ掛けます。こういうのは冷静にさせてはいけないんです。

 

「とにかく他の人にアーンなんてしたらダメですからね。特に桐乃やあの人達なんかに………そうです、そんなにアーンをしてみたいなら、今日の夕飯は全て兄さんが、私に食べさせて下さいね♪」

「えっ!? いくらなんでも全部は……」

「なんですか、兄さん? ご返事は?」

「は、はい!?」

 

 

 とうとう夕食の時間が来てしまった……どうなるんだろうか?

 

「兄さん、ご飯ができましたよ♪」

「(どうして今日に限って両親そろって遅くなるのか……とはいえ)あやせが作るシチューはいつも美味しそうだな!」

「もう、兄さんたら。調子のいいことを言っても、約束は約束ですよ♪」

「(俺の妹がこんなに上機嫌なわけを知りたい)その、一つ訊いていいか?」

「えっ。やっぱり全部は大変かと思ってシチューだけにしたんですけど、ご飯とかもアーンしたかったですか?」

「(逆だ、逆! 酷い目に遭いそうだから、まだ口には出さないけどな)いや、シチューだけなのは助かるんだが……」

「じゃあ今日はお試しで、次は全部アーンにしましょうね♪」

「じゃなくて。俺があやせにアーンするって話だった気がするんだが……なんで皿とスプーンが一つしかないんだ?」

 

 そう問題なのは大皿に盛られたシチューとスプーン一つしかテーブルにないのである。

 

「えっ? 介護する側もされる側も体験したいって、兄さんが言い出したんですよね?」

「だ、だからってスプーン一つだけとか、その、まずくないか?」

「な、何もまずいことなんて無いです! これはその……練習! 練習ですから!」

「で、でもこれだと間接……」

「に、兄さんの希望を叶えるためですから! だから、私以外とアーンとかしちゃダメですよ♪」

「(機嫌の良さは変わらないはずなのに、今回だけはなぜか悪寒が!?)わ、わかった!」

 

 俺の気にしすぎなのか? でも……あやせの顔真っ赤だけど……

 

「じゃあ兄さん。はい、アーン」

「アーン。……い、嫌がってるわけじゃないぞ! ほら、アーン」

「アーン。ふふっ。兄さん、顔が真っ赤ですよ」

「あ、あやせも声が上ずってるぞ」

「そんな生意気を言う兄さんには、熱々のシチューを山盛り……って嘘ですよ。フー、フー。はい、アーン」

「ア、アーン」

 

 

 ご飯後、自室にてあやせ

 

「………………」

 

 私はベッドに飛び込み、枕に顔を押し付けました。

 

「や、やり過ぎちゃいましたぁーー〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

 次に顔に当てていた枕を胸にぎゅーっと抱き締めて、ベッドをごろごろ転げ回ります。

 なんでしょう。行動しているときはいいのに、終わった後のこの……気恥ずかしさは!!

 

「スプーンを一つにしたのは、兄さんに変に思われなかったでしょうか? か、間接キスに……なっちゃうわけですし。で、でも、前にやった事あるから、だ、大丈夫ですよね!!」

「そ、それにしても、一つの食器で食べる食事は…………すっごく………………」

 

 私は先ほどの事を思い出します。急速に顔に血が上ってくるのがわかります。

 

「き、きけんです。こ、この食事方法は封印しないと……」

「で、でも……もったいないかな……月に1、2回くらいでしたら……」

 

 なんでしょう。余りできないと思うと……

 

「…………………………いえ、週1回………」

 

 

 その頃、隣の部屋で京介は;

 

「な、なんであやせは平気なんだ? いや、ちょっと恥ずかしそうではあったけど、俺なんて心臓の音が凄かったのに」

 

 何とか自室まで辿り着いてベッドに正面から倒れ込むと、うつ伏せのまま身動き一つせず俺は頭だけを働かせた。

 

「どう考えてもあやせの行動は、普通の兄妹の関係を逸脱してる、と思う。思うんだが……それを嬉しいって思っちまう俺は……」

 

 ──変態なのか?

 そう頭の中で自問すると、何が普通なのか自信が持てなくなってくる(なお、妹にセクハラをして喜んだり、世界レベルのハイキックを受けて歓喜の表情を浮かべるのが京介にとっての普通である)。

 えっとこういうときは……あれを試してみるか。

 

「え〜と、わふ〜知恵袋で、名前は……『シチュー美味しい』でいいか。今日は味とか全く覚えてないけどな!」

 

***

 ほぼ同時刻。マンションで一人暮らしをしている少女はたまたま、新着の知恵袋を目にした。

 

「良いお名前でござるな。明日は久しぶりにシチューでも……んんん?」

 

 流し読みで済ませるつもりが、なぜか友人の顔がありありと思い浮かんでしまった彼女──沙織・バジーナは、「妄想乙」「妹さんを僕に下さい」「今夜が山田。妹さんは君の行動を待っている」などと役に立たない回答が並ぶその質問文を、繰り返し熟読するのだった。

 

 また京介の部屋にて

 

「みんないろいろと書いてくれてるんだな。凄えなわふ〜知恵袋! でっ、ベストアンサーは…なになに『妹は天使です。そんな妹に甲斐甲斐しくアーンして、されるあなたは、死ねばいいのに! おっと本音が漏れた……もとい、そんなに慕ってくれる妹がいるあなたは凄く運がいいのです。妹は可愛いものなんです。妹こそ地上に堕ちた唯一の癒しなのです。だからあなたが感じる嬉しいという感情は正当なものだから安心して下さい。これからも一緒に妹を愛でていきましょう。眼鏡っ娘の巨乳妹は最高さんより』」

「なるほど、俺の感性は間違っていなかったのか……そうだよな、眼鏡っ娘で巨乳は最高なのは間違っていないしな。惜しむべきは、そこに黒髪ロングの清純系がなかったことか……」

「なら俺とあやせの関係はこのままでも、大丈夫なんだな」

 

 俺はほっと安堵の吐息をもらした。

 

同時刻赤城邸

 

「ふっ、今日も悩める同志を救ってしまったぜ…………瀬菜ちゃんに褒めてもらわないと」

 

妹の部屋に駆け込む赤城。

 

「瀬菜ちゃん、瀬菜ちゃん、聞いてくれ! 俺はいま悩める子羊を一人救ってきたんだ!!」

 

「ギャー、お兄ちゃん!? なに人の部屋に勝手に入って来てるんですか!? しかも言っている事、意味わかんない!?」

 

 同じ頃、高坂邸;

 

「な、なによこの知恵袋? もう少し早く気付いてたら……うへへ」

 

 とても他人には見せられない顔になりながら、桐乃は回答案を──

 

「これぐらい普通だって教えるには……『妹と恋しよっ♪』か、それとも『シスカリ』か……」

 

 ──妹ものアダルトゲームをどんな順にプレイさせるべきかを考える。

 

「それにしても、締め切り早すぎ! あたしがせっかく考えてあげてるのにいい度胸ね!」

 

 少し冷静さを取り戻して、桐乃は回答文を、更には本文ももう一度読み返してみた。

 

「妹に甲斐甲斐しくアーンって……あれ? でもこの妹って……まさか?!」

 

 その頃、黒猫邸

 

 タオルで髪を拭きながら携帯を確認する黒猫。

 

「電話…誰かしら、桐乃ね……なんの用事かしら、あの女?」

「なんの用かしら?…………えっ、電話にでるのが遅い…………なんども掛けさせるなですって」

「そっちが勝手に掛けてきたんじゃない…………妹をお風呂に入れていたのよ…………貴女、凄い気持ち悪いわよ」

「だから貴女には絶対に会わせないと言っているでしょう…………少しも、ちょっともダメよ…………先っぽだけって、ちょっと貴女一体何を言っているの!?…………取り乱した?もう手遅れよ。貴女への危険ゲージはメーターを振り切ったわよ」

「えっ、パソコンを見ろ?…………一体なんなのよ?…………わふ〜の知恵袋のそれを検索すればわかる?…………わかったわよ、ちょっと待ちなさい」

 

 黒猫はパソコンを起動して、桐乃に言われたワードを検索にかけた。

 文章を読んでいく内に唖然とした表情を浮かべる黒猫。

 

「………………………………いいたい事はわかったわ」

「ええ、おそらくあの男じゃないかしら…………いやよ、貴女が確認しなさいよ。私はそんな煉獄の炎に突っ込むようなマネはしたくないわ…………仕方ないわね。ベストアンサーが煽っているし…それにしても余計な事したこの解答主、眼鏡巨乳って、呪ってやろうかしら!!」

 




早くも完結詐欺をしてしまった。

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