貴女に彼を託します   作:神鳥ガルーダ

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貴女に彼を託します

 ぼたんが幽助たちと関わってから50年以上の時が過ぎた。
 今、彼女は霊界案内人として一人の女性を霊界に送り届けている最中である。
 女性の名は、浦飯螢子……旧姓は雪村。

「お久しぶりですね……ぼたんさん」

「……久しぶりだね螢子ちゃん」

「もう…ちゃん付けされるような歳じゃありませんよ…」

 すでに螢子は老人と呼ばれる年齢に達している。
 そして、つい先日その一生を終えたばかりである。

「時が流れるのは早いね……ついこの前、温子さんや静流さん、桑原君を送り届けたばかりなのに、今度は螢子ちゃんか。まさか四人ともあたしが送る事になるとはね」

「ぼたんさんは昔とまったく変わりませんね」

「あたしは霊界の者だから……人間よりも寿命が長いんだよ……」

 人間……日本人の寿命は約80年前後だが、霊界の者は魔界の妖怪と同じく千年以上の寿命がある。
 ぼたんの年齢は不明だが、それでも螢子よりは年上であるのは間違いなかった。

「……螢子ちゃんの葬式は、娘さんが行っているんだね」

「ええ。幽助がやるわけにはいきませんから……あいつもぼたんさんと同様まだまだ若々しいですし……」

 幽助は『魔族大隔世』をによって魔族となった為、見た目はまだまだ20代前後の青年である。
 ゆえに、周りからは夫婦でありながら祖母と孫と勘違いされ易い。
 特に螢子の昔からの友人の前には姿を見せる事すら出来なかった。
 そんな幽助が喪主を務めるのは世間的に不味いので、二人の娘がそれを行っていた。
 彼女も半妖なのだが、遺伝子的には人間寄りの為、普通の人間よりも長生きが出来るという程度でしかない。
 いずれ資質と能力を持った何十代後の彼女の子孫が、やがて幽助と同様『魔族大隔世』を起こす事になるかも知れなかった。

 ★☆★

 正式に二代目閻魔大王となったコエンマにより、螢子は天国行きを言い渡された。
 元部下である幽助の妻とはいえ、死後の審判は公平でなければならない。
 しかし螢子は幽助と違い、誰に恥じる事のない生涯を送ったので、贔屓などしなくても天国行き確実だったが……。
 ちなみに幽助の母である温子は、ギリギリ天国行きだったので、ひょっとしたら贔屓されていたのかも知れない……。





 天国への道の門まで見送りに来たぼたんに、螢子が話しかけた。

「ぼたんさん」

「……なんだい螢子ちゃん?」

「幽助の事をお願いします…」

「…そりゃあ、あいつとは付き合い長いからね。螢子ちゃんに言われなくても、時折会って世間話くらいするさね」

 幽助が生き返る為の試練を受けてから魔族に隔世するまで、彼の後見人役を務めていたぼたんである。
 その後も、それなりに幽助と交流があった。

「いえ、そうじゃなく……もう私に遠慮せず、自分の気持ちに正直になって欲しいんです」

「な……何を言っているの?」

 ぼたんは、螢子が言に動揺を隠せなかった。

「……ぼたんさんが幽助に対して、特別な感情を抱いている事……気付いていないと思っていましたか?」

「…………」

 ぼたんは何も言えなかった。
 螢子が指摘したとおり、実はぼたんも幽助に対し恋慕の情を抱いていた。
 だが、幽助と螢子が相思相愛である、二人の仲を応援していたので、自分の気持ちを隠し続けていた。
 他の誰も彼女の気持ちに気付かなかったが、実は螢子だけは気付いていた。

「…わたしはもう、幽助のそばにはいられません。だから……もう私に遠慮する必要はないんですよ……。こんなおばあちゃんになっても、幽助は私を愛してくれました。私は十分幸せを満喫しました。だから……今度はぼたんさんが幸せになる番です」

「……螢子ちゃん」

「でも、やっぱり私も女だから、私だけ老いていく事が辛くなかったわけじゃない」

 むしろ女性である螢子の方がその事を気にしていた。
 魔族と人間は寿命が違う。
 戸愚呂と幻海の様に50年の歳月は、幽助と螢子にも残酷な現実をもたらした。
 しかし、幽助は最後の最後まで螢子を愛した。
 それでも、相手がそのままなのに自分だけが老いていくという現実は辛かったのだ。
 そして、幽助よりも先に逝ってしまう運命もどうする事も出来ない事だ。
 幽助の時間は、戦いの中で命を落とさない限り、あと何千年もある。
 そんな永い時間を生きる以上、やがて幽助の中の螢子との思い出は磨耗していくだろう。
 そしていつか、自分以外の女性を愛し、螢子の事を忘れてしまうかもしれない。
 幽助が自分の知らない女とそんな関係になると、考えるだけで嫉妬心が湧いてくる。

「でも……ぼたんさんだったら許せる。きっと幽助の中の私は磨耗していったとしても、完全に消え去ることはないでしょう。だから……」

 自分の事を知っている二人が時々でもいいから、自分の事を語り合ってくれていれば、幽助とぼたんが覚えていてくれている限り、自分の幽助に対する想いだけは、二人の中で生き続ける事が出来るから……。

「だから、幽助の事をお願いします



 劇場版「幽☆遊☆白書 冥界死闘篇炎の絆」を視て、「幽助とぼたんのカップルもいいんじゃね」と思った事があります。
 人間である螢子は、どうしても幽助と同じ時間を生きることが出来ないし、だからといって幽助に合わせて、戸愚呂の様に妖怪に転生という手段はとれないでしょう。
 それは幻海の考えを否定する事ですからね。
 だから、自分が逝った後をぼたんにお願いするという考えにいたったわけです。

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