IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回は雪兎が本格的に動き出します。

そして、あの元アムドライバーのあの男も登場・・・・


93話 雪兎の取引と二つ目のピース 兎、取引をする

「なあ、イヴァン・・・・俺と、人の形をした災害と呼ばれた俺と取引してみないか?」

 

追っ手のJAを蹴散らした後、ジェナス達とは別ルートで皆との合流しようと大きく迂回するルートを使っていた。その途中、雪兎はイヴァンにある取引を持ちかけた。

 

「取引だと?」

 

「そっ、何かザルディともゼアムを巡って揉めそうな感じだし、ウィルコット派とジノベゼ派が本格的にドンパチやり出すのも時間の問題だろ?」

 

「ああ、組織が手に入れた情報でも双方が戦力を集結させつつあると聞いている」

 

「人間同士の争いを止める為に作られたアムテクノロジーがその人間同士の争いに使われる・・・・皮肉過ぎるだろ?」

 

アムテクノロジーは人間同士の争いを止めようと人類共通の敵・バグシーンを人工的に作り出し、アムドライバーというヒーローを使って人類の結束を強めようとして作り出されたものだ。だが、アムテクノロジーを独占しようとした一部の者達によってその在り方は歪められた。これはISにも同じ事が言える。当初、宇宙開発用に束がISを発表した際には多くの人々が夢物語だと相手されなかった。だが、白騎士事件で兵器としての有用性を見せれば人々は掌を返して束へとすり寄っていき、ISが女性にしか使えないと判ると今度は女性というだけで男性を見下す女性権利主義者が台頭するようになった。

 

「ザルディがゼアムをどう使うつもりなのかは知らないが、争いを鎮静化出来るは一時的なものに過ぎない、と俺は考えている」

 

そしてイヴァンは雪兎のよく知る幼馴染の少女・箒と境遇が重なる点がある。まずは両者ともその技術の産みの親が兄・姉であること。イヴァンはその技術を独占しようとする者達に兄を殺され、箒は重要人物保護プログラムによって家族や一夏と離れ離れにされ、それぞれ理由は違えど各地を転々とせざるえなかった。また、イヴァンは復讐の為に、箒は姉が開発者であったことと自身にIS適正があったことからその技術とは切っても切れない関係が存在した。そして、イヴァンは兄のような存在であったガン=ザルディによってゼアムの存在を知り、箒は一夏と共に在りたいと願い、それぞれその技術を求めた。そんなこともあってか雪兎にはイヴァンの事が他人事には思えなかったのだ。

 

「だからこの争いを止める鍵はゼアムじゃないと?」

 

「ああ、そして武力以外の断罪の場を求めるのであれば俺がその場を設けてやる」

 

そこまで言うと雪兎は不敵な笑みを浮かべこう続ける。

 

「元の世界で【兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)】と呼ばれたこの俺がな」

 

「なるほど、悪魔との契約という訳か。ならばその対価だが・・・・私の今後の人生でどうだ?あの話、乗ろうじゃないか」

 

悪魔との契約と言いながらもイヴァンも同じような笑みを浮かべながら、その対価として雪兎がガン=ザルディと話し終えた際に言った「行く場所がなけりゃ全部終わってから俺達の世界に来るか?」という提案に乗ると言い出した。

 

「・・・・くくっ、くははは、ははははは!」

 

これには流石の雪兎も笑いを堪えきれなかった。

 

「くくっ、お前さ・・・・対価に自分の人生差し出すとか正気か?」

 

「私一人の人生を対価に世界を変革出来るならば安いものだろう?」

 

「違いねぇな!いいぜ、その対価で取引成立だ!」

 

この契約によりこの世界の結末は原作とは大きく変化する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪兎、心配したんだからね!」

 

その後、フライング・ラビットに合流した雪兎達を待っていたのは涙目のシャルロットだった。雪兎がそう簡単にはやられないのはシャルロットも勿論知ってはいるが、心配しなかったかといえばNOであり、色々あって若干雪兎に依存気味なシャルロットからしたら雪兎達と別れていたこの数日間は耐え難いものだったようだ。

 

「す、すまん・・・・連中、数だけは多いから見つからないよう移動すんのに手間取ってな」

 

「今日一日絶対に離れないから!」

 

「えっ?」

 

そう宣言したシャルロットは早速「離すもんか!」と言わんばかりに雪兎の右腕にしがみつく。

 

「あの~、シャルロットさん?これじゃあ俺、何も出来ないんですけど・・・・」

 

「・・・・離さないって言った」

 

「飯も食えないんだが・・・・」

 

「僕が食べさせてあげる」

 

「風呂とかは・・・・」

 

「・・・・僕は雪兎なら」

 

「・・・・」

 

「・・・・いや?」

 

「・・・・もう勝手にしてくれ」

 

その日は結局寝るまでシャルロットは雪兎を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ムーロンへ向けて出発した一行にウィルコット派のNo.2の元アムドライバーの議員ランディ=シムカが通信を入れてきた。

 

『やあ、ジェナス君。ミュネーゼではご活躍だったね』

 

ミュネーゼでのシシー救出の報はシムカの元にも届いているようだ。

 

『ナムールリバーを失ったのは大きかったが、アムドラサポーターであるシシー君の救出は大きな成果だ』

 

シシーはその容姿からアイドル的な人気もある為、影響力も大きいのだろう。そんな彼女がJAの手から救い出されたのはシムカとしても喜ばしい事のようだ。

 

「それで、そんな労いの言葉が本題ではないのでしょう?」

 

『おお!そうだった。ジェナス君、君達のところにアムドライバーとは異なるパワードスーツを使う一団がいるそうだね?』

 

ジェナスの言葉に大袈裟に頷くとシムカは雪兎達IS勢の事を話題に挙げた。

 

『彼らの責任者と話がしたいのだが』

 

どうやらシムカはジェナス達ピュアアムドライバーだけでなくIS勢をも自分達連邦評議会に引き込もうと考えているらしい。

 

「少し待って下さい」

 

そう言ってジェナスがモニターから席を外すと、雪兎達に相談する。

 

「シムカはああ言ってるが・・・・」

 

「そういう事なら私が出よう」

 

そう言って千冬が交渉の席につく。雪兎達は生徒で、教師陣の中で最も権限があるのは千冬だ。だから千冬が交渉の席につくのも納得である。

 

「待たせたな。私が彼らの代表の織斑千冬だ」

 

その後、千冬とシムカの交渉が始まるもシムカはISをアムドライバーに代わる戦力としてしか見ておらず、それに対し生徒を保護する立場であり、IS学園の教師としてISを兵器転用させる訳にはいかないとシムカの言葉に首を縦に振らない。これにシムカは激怒し雪兎や束に聞かせてはいけない言葉を発してしまう。

 

『ええい!こちらが高待遇で迎えてやると言うのに!黙って頷いていれば兵器開発部門(・・・・・・)に率いれてやったものを!!』

 

(ぴくっ)

 

『それにジェナス達への支援も打ち切ってもいいのだぞ!!』

 

そのシムカの言葉に「ブチッ!」と何かが切れる音がし、皆が振り返るとそこには目元に影を落としつつも不気味な笑みを浮かべる兎達がいた。

 

「ねぇ、ゆーくん。私の聞き間違いかな?あのミジンコ、私のISを兵器って言わなかったかな?かな?」

 

「聞き間違いじゃないですよ。俺もしっかり聞きましたから・・・・それにあのミドコンドリア、俺達が従わないならジェナス達の支援打ち切るとか脅してきましたよ?」

 

この時、一夏達は勿論ジェナス達も「シムカ、終わったな・・・・」と心を一つにしていた。

 

「そっか、聞き間違いじゃないのか・・・・ゆーくん、やっちゃおうか?」

 

「ええ、師匠。やっちまいましょう」

 

そう言うと二人は目にも止まらぬ速さで投影式のコンソールを操作し始める。そんな二人を見てダークがジェナスや千冬の代わりにシムカへ返答する。

 

「シムカ、悪いが今後は俺達は俺達で勝手にやらせてもらうぞ」

 

『何だと!?』

 

「あと、覚悟しておいた方がいい。あんたは怒らせちゃならない奴らを怒らせちまったみたいだ」

 

『ど、どういうことだ!?』

 

『し、シムカ様!!』

 

丁度その時、シムカの側近達が慌てた表情でシムカの元を訪れる。

 

『ええい!何事だ!?』

 

『ね、ネットにこんな情報が・・・・』

 

それはシムカが今まで行ってきた数々の失態や不正等の情報がネットに拡散されているという報告だった。勿論、兎共の仕業である。

 

「どうやら議員殿はお忙しいようだ。では、我々はこの辺で」

 

『お、おい!ま、待てーー』

 

シムカの返事も聞かず千冬は通信を切ってしまう。

 

「すまない、うちの馬鹿共がやらかしたようだ」

 

「いや、いつまでもシムカのヒモ付きって訳にはいかなかったからな丁度良いだろう」

 

「そうだぜ!あのシムカの野郎の慌てた顔、最高にスカッとしたぜ!」

 

千冬が兎共に代わり謝罪するも、ダークとラグナはむしろ清々したと笑みを浮かべる。

 

「補給の心配ならば心配いらん」

 

「ザルディに会いに行った帰りにイヴァンのとこの組織から少し多めに物質を貰っといたし、途中にあったJAの拠点から根刮ぎ物資を拝借してきたから半年は補給要らんだろう」

 

「「「「・・・・」」」」

 

そして、サラッととんでもない事を告げる雪兎とイヴァン。帰りが遅いと思えばこの二人、そんな事をやらかしていた。

 

「・・・・お前達というやつは」

 

それを聞き、千冬は頭が痛くなった。

 

「・・・・ほいっと!これであの塵は社会的に抹殺完了だね」

 

「俺はてっきり暗殺でもするんじゃないかと思ったんだが・・・・」

 

「ん?あんなやつ、殺す価値も無いよ」

 

「そうそう。それに殺すなんて短絡的な手段は使わないさ・・・・むしろ、死んだ方がマシと思える目に遇わせてくれる」

 

どうやらシムカは皆が思った以上に兎達を怒らせたらしい。

 

「シャルロット、もしかしたら一歩間違えばデュノア社もああなっていたのではないか?」

 

「・・・・うん、僕もそう思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、ランディ=シムカが汚職等の罪で逮捕されたとのニュースが流れた。尚、JAがこんな格好のスキャンダルを静観していたのはしなかったのではなく出来なかった(・・・・・・)である。何故なら、兎達に「余計な事したらお前らもああなるからな?」と脅されたからだった。

 

「この兎共、凶悪過ぎんだろ・・・・」

 

この一件で一同は改めて兎を敵に回すとどうなるのかを思い知るのであった。

 

「工作員から連絡があった。二つ目のピースの在処はダラートという町らしい」

 

そんな中、イヴァンの元に工作員から次なるピースの情報がもたらされた。




シムカの出番はこれだけです。
兎を敵に回すからこうなる。彼は思いっきり兎共の地雷を踏み抜きました。


次回予告

連邦評議会と袂を分かった雪兎達はJAの支配地域であるダラートには直接向かわず近くにあるケーナという町を訪れるが、ケーナにはアムドライバーに不信感を抱く住民が大勢残っており・・・・


次回

「護るべきものと機械仕掛けの獣達 兎、大盤振る舞いする」




ジョイ「今回のメカはニルギースのネオアムジャケットッス」

イヴァン「私のアムジャケットか」

ジョイ「これもシーンと同じく雪兎のオリジナル仕様に改修されたネオアムジャケットで、主装備はネオアムバスタードソードッス」

イヴァン「原作ではサーベルだったな」

ジョイ「このネオアムバスタードソードは原作のサーベル同様に装甲パーツを組み合わせて大型ソード【アロンダイト】になるだけでなく、バスタードソードの内部 に刀状のブレードがあり、チューブを接続する事で凄まじいエネルギー噴射と共に刀身を抜刀したり斬撃を飛ばしたり出来るッス」

イヴァン「状況に合わせて使い分けれる訳だな?」

ジョイ「その通りッス!そして、肩の竜の翼のような装甲はそのまま変形して飛行したり、すれ違い様に切りつけたりできるんスよ!」

イヴァン「流石は雪兎だ」

ジョイ「オイラも負けてられないッス!」

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