IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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前回に少し誤字があったので修正しました。

とうとう雪兎の専用機のお初見目です。
前半が特訓パート、中盤が一夏VSセシリア、後半が雪兎VSセシリアです。


3話 クラス代表決定戦 兎、チョロインをボコす

「一夏、箒、一度戻って来てくれ」

 

「わかった」

 

「うむ」

 

白式が一次移行(ファーストシフト)を終えた頃、雪兎も準備ができたのか二人を呼び戻した。

 

「やけに時間かかってたけど、何の準備してたんだ?」

 

「俺の専用機じゃセシリアの専用機の真似事は難しいからちょっとしたオプションの準備をな」

 

そう言うと雪兎は4つの球体を実体化させる。

 

「ブルー・ティアーズの最大の特徴はBT兵器と呼ばれる光学兵器だ。4つの自律機動兵器(ビット)と中・遠距離用のライフルを用いた射撃戦特化の機体でな。ビットでの誘導、ライフルでトドメってのが彼女の得意パターンだ」

 

つまり4つの球体はビットに類する武装なのだろう。

 

「あと、ミサイルも2基あるからビットを何とかしても油断するなよ?」

 

「お前、ほんとにどこでそんなこと調べたんだよ・・・・」

 

「公開されてる情報と実機を見ればある程度は推測できる」

 

原作知識というカンニングもあるが雪兎のメカオタとしての知識と束仕込みの知識である程度推測できるのは本当だ。

 

「一夏の白式には近接用のブレード【雪片弐型】しか武装がない。まあ、当たりゃ一撃必倒レベルなんだがな」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)【零落白夜】か」

 

先程、一次移行を終えた時に表示された白式の力。普通、単一仕様能力は二次移行(セカンドシフト)後に発現するものなのだが白式は一次移行の段階でそれが使えるのだ。しかし、【零落白夜】はシールドエネルギー無効化という強力極まりない効果の代わりに自身のシールドエネルギーを消費するという欠点を抱えていた。

 

「なので一夏がすべきことは『いかに相手の攻撃を掻い潜り、一撃必倒の攻撃を確実に当てるか』ってことになる」

 

「なるほど・・・・しかし、それでは私はあまり手伝うことはできそうにないな」

 

箒もどちらかというと近接よりの戦闘スタイルなためセシリア対策の模擬戦は難しいだろう。好意を寄せる幼馴染の役に立てそうにないと、箒は少し落ち込む。

 

「そうでもないぞ。このビットは外部操作もできるから箒に操作してもらおうかと思ってたんだが」

 

「私はその手の武装の扱いは慣れていないのだが・・・・」

 

「ISを操作しながらやれってわけじゃないし、操作はかなり簡略してある。それに箒が手伝ってくれれば俺も一夏のモニタリングがしやすいからな。手伝ってくれると助かる」

 

「そ、そこまで言うのなら仕方ない。手伝ってやろう」

 

「サンキューな、箒」

 

幼馴染達に頼られ嬉しいくせにツンデレ発言をする箒に雪兎は内心「ツンデレ乙」などと思いつつも自身のISを展開する。

 

「こい、【雪華】」

 

そのISは白式と同じ白い装甲を持つが、所々の装甲の色が灰色になっており、汎用機として傑作機とも呼ばれた第二世代機ラファール・リヴァイヴのようにハードポイントが多数設けられた機体だった。

 

「ビットは箒に任せるから装備は標準でいいか・・・・装備展開【T:トライアル】」

 

すると、各ハードポイントに白い装甲が追加され、灰色だった装甲も白く変化していた。

 

「雪兎、お前、今何をした?」

 

通常、ISは二次移行などでしか姿形を変化することはない。例外としてパッケージなどの装備もあるにはあるが、今の雪華のように瞬時に行われるものは今現在発表されているISには存在しない。

 

「こいつは装甲切換(アーマー・チェンジ)っていう俺が考案した特殊機能だ。まだ試作段階だから雪華にしか搭載してねぇんだがな」

 

「切換というからには他にもいくつか種類があるのか?」

 

今のところ(・・・・・)はこの【T:トライアル】を含めて3つだな」

 

「随時と厄介な機能だな、それは」

 

箒はその機能の有用性に気が付いたようだ。

 

「何が厄介なんだ?」

 

「考えてもみろ。戦闘中に相手の戦闘スタイルが突然全く違うものに切り替わるのだぞ?これが厄介以外のなんだというのだ」

 

「うわぁー、確かにそれは厄介だ」

 

一夏も箒に言われその厄介さを理解する。確かに近接戦闘していたと思えばいきなり距離を取って遠距離戦闘を強いてくるなど厄介過ぎる。

 

「さてと、試合まであまり時間はないから今回は多少付け焼き刃にはなるがビットと遠距離射撃への対策といかに接近戦闘へ持ち込むかの二点に絞ってやるからな」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えたクラス代表決定戦当日。

 

「逃げずに来たことは誉めて差し上げますわ」

 

一夏が白式を纏いアリーナに向かうと、既にセシリアがブルー・ティアーズを纏って待ち構えていた。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

試合は既に始まっているがセシリアは六七口径特殊レーザーライフル【スターライトmkⅢ】の砲口を下げたまま一夏に話しかけてきた。

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

明らかな上から目線の発言に一夏は呆れるよりも笑みを浮かべる。

 

「そういうのはチャンスとは言わないな。それに、一週間前の俺ならそうなる可能性も高かったと思うがーー」

 

そういうと一夏は一気にセシリアとの距離を詰め雪片弐型を振るう。

 

「油断し過ぎじゃないか?」

 

「くっ!いきなり攻撃してくるなんて卑怯ですわ」

 

「試合はもう始まってんだぜ?卑怯も何も無いだろ?」

 

まさか先手を取られるとは思ってもみなかったセシリアだったが、そこは代表候補生。紙一重で雪片弐型を回避し距離を取ろうとする。

 

「させるか!」

 

だが、一夏がそれを許さないとセシリアを追う。

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

そこでセシリアは4基のビットを展開し一夏を近付けまいと妨害する。

 

「それも読めてたぜ!」

 

しかし、雪兎達との猛特訓で鍛えた一夏には通用せず、瞬く間に2基のビットが切り伏せられる。

 

「な、何故!?彼は初心者のはず・・・・」

 

いきなりの劣勢にセシリアは焦っていた。無理も無い。初心者で素人と侮っていた一夏に想定とは逆に一方的に攻められるなどと誰が予想出来ただろうか。その後もミサイルやビットで妨害を入れるも一夏を引き離すことができずセシリアは劣勢を強いられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天野のやつ、オルコット対策のみに重点を置くことでそれなりに形にしてきたか」

 

試合を管制室で見ていた千冬は一夏の動きを見て雪兎が行った特訓の内容を把握したようだ。

 

「すごいですね。たった一週間でここまで仕上げてくるなんて・・・・」

 

これには真耶も千冬同様感心していた。

 

「これは勝負あったな」

 

最後のビットが切り伏せられ、苦し紛れでミサイルを放つも一気に距離を詰めた一夏は零落白夜を発動。ミサイルで少しダメージを受けたものの、結果は一夏の圧勝という大判狂わせという結果に見学していたクラスメイト達も驚きを隠せなかった。驚いていなかったのは特訓に付き合っていた雪兎と箒くらいのものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先手を取れたのが大きかったな。最初にライフルで牽制してビットを展開してりゃもう少し良い試合になってたのに」

 

「ああ、明らかに相手が油断していてくれたのが救いだったな」

 

クラスメイト達と試合を見ていた雪兎と箒はそう今の試合を評価する。

 

「それでお前は大丈夫なのか?ここ一週間の間、一夏の特訓ばかりでお前は何もしていなかったように思えるが」

 

「問題無い。BT兵器が真価を発揮しているならともかく、今の彼女に負ける気はしないよ」

 

「BT兵器の真価?」

 

「ああ、BT兵器は【偏向射撃(フレキシブル)】というレーザーを自在に曲げて変幻自在の射撃を行うというコンセプトで開発された兵器だ。だが、彼女はまだ偏向射撃を行える程BT兵器を使いこなせてはいない」

 

「お前はどこまで知っているのやら・・・・知らぬことの方が少なそうだ」

 

「そんなことはない。知っているのは俺が知っていることだけさ」

 

『次の天野対オルコットの試合は30分後に行う』

 

管制室の千冬からそうアナウンスがあると雪兎は「準備がある」とピットへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後、一夏に負けたショックから何とか立ち直ったセシリアがアリーナへ向かうと雪兎は既に雪華を展開しセシリアを待っていた。

 

「お待たせしましたわ」

 

「いや、そこまで待ってはいないさ。それよりちゃんと万全なんだろうな?一夏に負けてショックのまま試合したから負けました、とか言い訳されては敵わん」

 

「見損なわないでいただきたいですわ。このセシリア・オルコット、そのような言い訳はいたしませんわ!」

 

装備も予備パーツがあったようでブルー・ティアーズに不備は見当たらないし、見たところセシリアにも不調は見受けられない。

 

「そうか。なら安心してやれそうだ」

 

そう言うと雪兎は雪華に【T:トライアル】とは異なる装備を展開させる。

 

「【S:ストライカー】お前の力、見せつけてやろう」

 

展開されたのは黄色の装甲に右腕に備え付けられた巨大なシールドのような武装。装甲の色や装備から重機のような印象を受ける。見たところ近接戦用のようだ。

 

「二度も無様は晒せませんわ。いきますわよ、ブルー・ティアーズ!」

 

先程の試合のこともあってかセシリアは慢心などはせずすぐさまビットを展開しライフルで雪兎を狙い射つが。

 

「ふんっ!」

 

雪兎はシールドを前面に展開しその一撃を弾く。

 

「ならーー」

 

「遅い!」

 

「なっ!?」

 

ならばとビットでのオールレンジ攻撃を仕掛けようと動きを止めた隙を逃さず、雪兎は左腕に備え付けられたアンカークローを伸ばしセシリアを捕まえ引き寄せる。

 

「悪いが速攻で決めさせてもらう。シールドバンカー展開!」

 

セシリアを引き寄せつつも右腕のシールドを変形させ中から大型の杭打機(パイルバンカー)を展開する。

 

「そ、それはまさか!」

 

第二世代機の装備の中でも最大の攻撃力を誇る武装に灰色の鱗殻(グレー・スケール)、通称盾殺し(シールド・ピアース)と呼ばれるものが存在する。それは通称通り盾をも貫く威力を誇る。雪兎が展開したそれはその改良型ともされる彼オリジナルの武装で元は宇宙空間でのデブリ粉砕用。その威力は盾殺しをも上回る。

 

「こいつはこの【S:ストライカー】のとっておきだ。持っていけ!【星屑砕き(スターダスト・ブレイカー)】!!」

 

轟音を響かせて炸裂した一撃はブルー・ティアーズのシールドエネルギーを食らい尽くしたった一撃で戦闘不能にしてしまった。また、絶対防御という安全装置で怪我こそ負わなかったものの、その有り余る衝撃は絶対防御を抜けセシリアを気絶させる程のものであった。




ちょっとやり過ぎた感はありますが後悔はしていません。

チョロコットさんは別に本作のヒロインではないので雪兎に惚れることはありませんが、一夏に対しては・・・・

今回登場した【S:ストライカー】はロマン武装が多いのですが、それを補佐する装備もあるので割りと強力な装備です。バンカーは完全に私の趣味全開ですが(笑)

次回予告

クラス代表決定戦を終え(一夏対雪兎戦?やりませんよ?)クラス代表にされてしまう一夏。そして現れるセカンド幼馴染・凰鈴音。
そして更識簪もフライングで登場!?本音の頼みで簪と接触する雪兎。
専用機を持たない彼女の悩みを雪兎は解決できるのか?
「原作遵守?何それ?鈴の酢豚より美味しいの?」と雪兎は再びやらかす。


次回

「セカンド幼馴染と本音の頼み 兎、新たな友達を得る」

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