IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

86 / 167
作戦の後日談と糖分補給回です。皆の衆、珈琲(無糖)と壁の準備はよろしいか?

アーキタイプ・ブレイカーは一応事前登録しました。
何か面白いキャラ増えるっぽいし・・・・


80話 少年少女の休息 兎、シャルロットに連れ回される

京都における亡国機業の日本拠点を叩く今回の作戦はスコールら数名の幹部は取り逃がしたものの、アンタレス、オータム等の幹部数名を捕らえることに成功。また、亡国機業を支援していたと思われる人物(予想通りIS委員会の重鎮の一人)の逮捕に繋がり大きな成果を挙げたと言える。一方でセシリアのブルー・ティアーズ、鈴の甲龍、ラウラのシュヴァルティア・レーゲンは深刻なダメージを受けており、搭乗者であった三人も全治二週間の怪我を負ってしまった。ウィルスによって暴走させられた紅椿も夕凪燈夜による初期化後は束によって精密検査を受けることに。箒も剥離剤の放った電撃や暴走時の無茶な動きのせいでしばらくは入院することになっている。その事後処理等でまだ数日は京都を離れれないらしい。

 

「改めて見ると今回の被害は甚大だな・・・・」

 

「でも、雪兎の知る最悪な状況は回避出来たね」

 

そう、原作ではこの京都での一戦で束とアリーシャが亡国機業側につくのだが、雪兎の事前の行動により回避された。代わりに【闇夜の星座】という未知の敵や機械戦乙女などが現れ予想以上の被害を被ってしまった。

 

「ああ・・・・でも、もう俺の持つ原作知識も役に立たないだろう。って言っても元々俺が知ってるのはこの京都の戦いまでなんだがな」

 

雪兎が前世で読んでいたのは原作十巻まで。それ以降の話を雪兎は知らない。

 

「でも、これで原作知識とかいう未来予知的な隠し事もなくなったから少しは気が楽になったかな?」

 

「雪兎・・・・」

 

「いつになるかはわからないけどあいつらにも話さないとな。まあ、あいつらのことだからあっさり受け入れてくれそうではあるが」

 

「そうだね。特に一夏とか「それがどうした?」とか言われそうだよね」

 

確かにと思いつつ雪兎はホテルのベランダから星空を見上げる。

 

(聖剣(エクスカリバー)か・・・・)

 

十巻の最後にスコールと束が呟いていた事から独自に雪兎が調査したところ、聖剣(エクスカリバー)とは米国と英国が共同開発した対IS用攻撃衛星ということになっているとあるIS(・・)だ。ISであるならばとコアネットワークを経由してハッキングしてみたところ、搭乗者というかコアと一体化している少女の名はエクシア・カリバーンというらしい。

 

(どう考えても厄介事の種にしか見えないな)

 

対IS用というのもそうだが、共同開発といいつつも主導は米国らしく、プロジェクトの障害になりそうな気しかしない。束にも訊ねてみたところ同意見らしく。束曰く、「物凄く不愉快なモノ、今すぐにでも壊しに行きたいレベル」とのことなので次は聖剣を巡る争乱になるだろう。本当にこの世界の米国は何を考えているのやら・・・・

 

「雪兎、また考え事?」

 

「ちょっとな」

 

「もう、僕はまだあの時の事許してないんだからね!」

 

あの時のこととはアンタレスと対峙した時にシャルロット達を先に行かせたことだ。勝つのは信じていたが、今回は相手が相手だったためシャルロットは心配でならなかったようだ。

 

「悪い、シャルが足手纏いだなんては思ってねぇけど、他のメンバーだけで行かせるのは不安だったからな。その点シャルなら安心して任せれるしな」

 

「もう、調子いいんだから・・・・」

 

そう言って雪兎はシャルロットの頭を撫でる。撫でられるシャルロットは誤魔化されているようでむすっとするが撫でられるの自体は嫌じゃないのかされるがままだ。

 

「そうだ!一日付き合ってもらうって約束、明日使ってもいい?」

 

「いいぜ、ってか俺に拒否権無いだろ、それ?」

 

「うん♪」

 

「・・・・知ってた」

 

(よし!雪兎と二人っきりで京都デートだ)

 

こうしてシャルロットは班行動のリベンジをデートという形で実現することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で翌日、二人は京都の街に繰り出した。亡国機業も街への被害は抑えたかったようで襲撃があったのにも関わらず被害は軽微だったことが幸いし、数日経った今ではすっかり元の賑わいを取り戻している。

 

「で、シャルさんや。今日のプランは決まってるのか?」

 

「一応、行ってみたいところを書き出してはみたんだけど・・・・」

 

そう言ってシャルが取り出したメモを見ると素人目にも徒歩で回るには時間が明らかに足りない。

 

「コースはこれで・・・・ここと、ここは時間的に無理があるから除外・・・・シャル、最低限外したくない場所は?」

 

「ここと、ここと・・・・それとここかな?」

 

「ならこの二つも除外して・・・・」

 

とりあえず時間的に回れそうな場所を厳選し、実現可能なプランを作成する二人。そんな二人の前を日本の観光地ならではの交通手段が横切る。

 

「人力車か・・・・」

 

「本当に人が曳いてるんだね」

 

人力車は明治から昭和初期にかけて使われた移動手段で、観光に用いられ始めたのは1970年頃に飛騨高山が最初とされる。後に鎌倉、浅草、京都等の観光地での遊覧等で使われるようになったと言われている。一応は軽車両に該当するため、自転車以外の通行が禁止されている自転車用道路や自転車が走行可能な歩道は通行できないそうだ。

 

「シャル」

 

「雪兎」

 

「「乗ってみようか」」

 

せっかくの機会なのと、人力車が観光地での遊覧が目的なので丁度良いということで二人は人力車を利用することに・・・・しかし、人力車に乗りにいった二人は意外な人物と遭遇することになる。

 

「ん?」

 

「あれ?」

 

最寄りの人力車乗り場に着くと、見慣れた赤いロン毛が二人の目についた。

 

「ん?おお!雪兎にシャルロットじゃねぇか」

 

「な、何で弾がここに!?」

 

(あっ、そういやこの時期は虚さんへのプレゼント資金の為に人力車のバイトしてたっけ・・・・)

 

その人物とは雪兎と一夏の友人である五反田弾だった。弾が京都にいたことにシャルロットは驚くが、雪兎は原作を思い出し一人納得している。聞けばやはりプレゼント資金を稼ぐために短期バイトで来ていたらしい。更に先日の襲撃事件にも巻き込まれていた。

 

「いきなりISでドンパチだもんなぁ~、我ながらよく無事だったぜ」

 

なんでも機械戦乙女に出くわしたものの、楯無達に助けられたらしい。

 

「マジか・・・・でも、弾が無事で良かったぜ」

 

「うん、僕も友達に何もなくて安心したよ」

 

一安心したところで本題だ。

 

「せっかくだし、弾に頼む?」

 

「そうだな」

 

「デートかよ・・・・ああ、羨ましいぜ」

 

「今日一日貸し切りで特別料金で払おう」

 

「任せろ、親友!」

 

目の前でイチャイチャされると憂鬱そうな弾だったが、雪兎の一言で態度が一変し爽やかな笑みを浮かべて人力車の準備を整える。

 

「雪兎、弾の扱い方を心得てるね・・・・」

 

「まぁな、弾と数馬は一夏の次に付き合いの長い友人だしな」

 

その後は弾の計らいでデートにオススメのコースを回ってもらうことになり・・・・

 

「どうかな?この着物、似合ってる?・・・・雪兎?」

 

「す、すまん、ちょっと見惚れてた」

 

「も、もう、雪兎ったら・・・・」

 

(この着物、買って帰ろうかな?)

 

着物の試着をしてみたり・・・・

 

「このお団子、美味しいね」

 

「シャル、タレが口元についてるぞ」

 

「えっ?どこどこ?」

 

「じっとしてろ、拭いてやるから」

 

「う、うん・・・・」

 

団子屋でお団子を食べたり・・・・

 

「わぁ♪綺麗な紅葉・・・・」

 

「弾、写真頼めるか?」

 

「あいよ・・・・はい、チーズ!」

 

パシャッ!

 

「綺麗に撮れてるね・・・・でも、何で『はい、チーズ』何だろう?」

 

「元はcheeseって発音した時に笑みを浮かべてるように見えるってのが日本に伝わって変化したものらしい。元々は撮られる側がcheeseと言うんだが、日本語の発音だとチーズでズと尖ってしまうから撮られる側は言わなくなったんだとか」

 

「・・・・相変わらず雑学にも詳しいんだな、雪兎」

 

紅葉をバックに記念撮影したり・・・・

 

「これ可愛いね」

 

「記念に買ってくか?」

 

「うん!あっ、皆にもお土産買っていこうよ」

 

「そうだな」

 

皆へのお土産を買ったりしているうちにあっという間に一日は過ぎていった。

 

「最後はここだな。この辺りの夜景が一望出来る穴場だ。夜景も綺麗なんだが、夕焼けもこの通りよ」

 

最後に案内されたのは見晴らしの良い高台。弾曰く地元民が知る穴場なんだとか。

 

「うわぁ!綺麗な夕陽だね」

 

「ああ、京都の夜景って聞くと京都タワーを思い浮かべるだろうし、確かに穴場だな・・・・」

 

そこから一望出来る夕陽に照らされる京都の街はとても綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、弾にホテルの近くの乗り場まで送ってもらった二人は弾に礼を言って別れた。

 

「今日は楽しかったね、雪兎」

 

「そうだな、改めて弾に感謝しねぇとな」

 

「うん」

 

大満足でその日を終えた二人だったが、後日この話をして箒達に大層羨ましがられた。




今章はこれにて閉幕。
とりあえず京都の話はこれでおしまいです。

次章からは一話導入部を挟んでコラボシナリオに入ります。
コラボするのは知名度が怪しいですが『GetRide アムドライバー』になります。

次回予告

京都での戦いから帰還した雪兎達。学園に帰って早々プロジェクトにて聖剣対策として兎師弟が作っていたものが完成し、その御披露目会が開かれたのだが・・・・


次回

「夢への一歩と御披露目会 兎、師弟で移動拠点を作る」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。