IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今章も後二、三話で終わる予定です。
雪兎、一夏に続いてシャルロットも本気モード解禁。ヒントは雪兎が確保した無人機のコアは何個だったか。


79話 夕凪燈夜とトリニティモード 兎、ダメ押しする

「こっちは終わったサ」

 

一夏が暴走する紅椿と戦闘開始した頃、双子の相手をしていたアリーシャは既に双子を降していた。

 

「そうですか。ならこっちもそろそろ終わらせますわ」

 

雪兎も一夏の三次移行を確認しシャルロット達が合流したのを知り、本気(・・)を出すことにした。

 

「【B:ブレイド】から【YK:エルシニアクロイツ】にチェンジ。加えて【LF:ルシフェリオン】展開。コード【トリニティ】」

 

そう雪兎が告げると雪華本体が纏っていたパックが【B:ブレイド】から【YK:エルシニアクロイツ】に変わり、白月の【VF:バルニフィカス】が半分【LF:ルシフェリオン】に換装される。

 

「アドヴァンスドシリーズが三つ・・・・」

 

白月がアドヴァンスドを纏った時に予感はしていたアドヴァンスドの複数装備。それが予想を上回る三重装備としてアンタレスの前に顕現する。

 

「まだだ。【極限化】発動」

 

そこにダメ押しの【極限化】。白月の翼が紫、水色、紅の三色のエナジーウイングへと変貌し、紅蓮の砲槍・ルシフェリオンドライバーを砲撃モードで展開させた。どう見てもオーバーキルを予感させるこの状況。そう、雪兎は完全にブチギレていたのだ。

 

「悪くおもうな・・・・怨むならあのガラクタ(新型剥離剤)を使ったオータム辺りを怨め」

 

その原因はオータムの使った新型剥離剤。紅椿のコアをウィルスで汚染し暴走させたあの装置だ。そのウィルスは以前に福音を暴走させたあのウィルスをベースに改造されたもの。実は福音はあの事件以降はウィルスを取り除いたにも関わらず再度暴走の危険があるとして凍結封印されている。今回の件で紅椿も同じ処置を望む声が出るかもしれない。そして何より全てのISコアは束が産み出した娘のようなもの。それを汚されたことに弟子たる雪兎が怒らない訳が無い。加えて紅椿は幼馴染たる箒のIS。それが暴走させられ想い人である一夏と戦わされると思うだけで雪兎は怒りを抑えるきれないのだ。

 

「ひっ!?」

 

その漏れ出す濃密な殺気にアンタレスは恐怖する。

 

「コード【TLB】・・・・集え星光」

 

その言葉と共に雪兎の目の前に四基のビットが集まり紫のエネルギーを収束し始める。それを見てアンタレスは「あれは食らってはいけない」と察して上空(・・)へと逃げ出した。

 

「光を奪い全てを覆う闇となりて我が敵を討ち滅ぼせ・・・・」

 

だが、それは雪兎にとって都合がよかった。何故なら・・・・これで街を焼かなくてすむ(・・・・・・・・・)からだ。

 

「夜明け前が最も暗いと知れ、リミットリリース、フルドライヴ・・・・」

 

収束したエネルギー塊にルシフェリオンドライバーを叩きつけ、その全てをアンタレスに向けて解き放つ。

 

「トワイライト・ブレイカー!!」

 

解き放たれたエネルギーはすぐさまアンタレスに迫り根こそぎシールドエネルギーを奪い尽くす。そしてアンタレスは悲鳴をあげる間も無く意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットとオータムは学園祭で一度対峙しており、その時はオータムが第2世代機であるアラクネを使っていたことと、シャルロットのISがリヴァイヴⅡSにパワーアップしていたこともあってシャルロットの圧勝で幕を下ろした。

 

「前と同じようにいくと思うなよ?」

 

「悪いけど、今回も僕は不機嫌なんだ・・・・速攻で決める!」

 

今回の作戦が亡国機業を誘き出すものであったのは千も承知だったが、班行動を始める前に襲撃があり雪兎と京都を回れなかったこと。一夏達の救援の為に雪兎と一緒に戦えなかったことなど不満が溜まっていたところでボコってもいい相手(オータム)との戦闘である。シャルロットも雪兎の影響か自重という言葉を捨て始めており、初っぱなから全開だった。

 

「来て、【コスモス】!」

 

そして、「二度あることは三度ある」シャルロットが呼び出した【コスモス】とは白鳳や白月と同じ自律型追加補助外装。

 

「・・・・はっ?」

 

これには流石のオータムも唖然とする。無理も無い。ここまで亡国機業を翻弄してきた兎印の秘密兵器が三度姿を現したのだ。

 

「武装合体!」

 

そうこうしている間にシャルロットはコスモスをリヴァイヴⅡSと合体させ新たな力を顕現させる。

 

「これが僕の切り札(ジョーカー)、ラファール・リヴァイヴⅡRC(リインカーネーション)さ!」

 

リヴァイヴⅡRCはシャルロット用に開発されたコスモスとリヴァイヴⅡSが武装合体したデュアルコア搭載IS。雪兎の雪月華と同じくリヴァイヴⅡとコスモスの双方にパックを装備可能。白月との違いはエナジーウイングを持たず、コスモス側にアドヴァンスドを装備出来ない代わりにリヴァイヴⅡとコスモスの双方に同じパックを展開する重複武装(デュアルシフト)を可能としている(白月はアドヴァンスドを複数種展開する為に雪華とパックスロットを共有しているため重複武装は出来ない)。

 

重複武装(デュアルシフト)【G:ガンナー】!」

 

栄えある最初の重複武装に選ばれたのは今まで多くのトラウマを製造してきたパック【G:ガンナー】だった。当然、重複武装により火力は通常の二倍・・・・えげつない。

 

「ちょっ!?」

 

オータムも直ぐにその脅威を理解し慌て出すがもう遅い。

 

「お釣りは要らないよ、全弾受け取ってね?リミットリリース、全砲門開放!全弾一斉発射(フルオープンブラスト)!!」

 

容赦無い事にシャルロットは重複武装した【G:ガンナー】の全武装を一斉に発射するというかつて雪兎がゴーレムⅠにやったことを上回る攻撃を敢行した。

 

「やっ、それ死ねるから!ISあってもそれは絶対死ねるって!!ぎゃああああああ!!」

 

戦う前までの威勢は何処へやら、オータムはシャルロットの放った砲撃の嵐の中へと消えていった。

 

「「「「シャルロットさん、こえ~・・・・」」」」

 

それを見ていた鈴達は揃って戦慄し、絶対にシャルロットを怒らせないようにしようと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その上空では一夏の白式と暴走している紅椿がぶつかりあっていた。

 

「くっ!やっぱり絢爛舞踏は敵に回すと厄介過ぎる!」

 

一夏の使う白鳳は白月やコスモスのパック換装システムをオミットする代わりに零落白夜や瞬時加速に多くのエネルギーを回せるように特化させた仕様の為、以前まで問題だった「エネルギー不足による短期決戦型」という制限を無くし、零落白夜も「展開装甲によって発動中常時消耗」から「斬撃が触れている時のみ零落白夜を発動する」仕組みへと変化しており、エナジーウイングにより瞬時加速を使わなくても高速機動を可能にした為、かなり戦闘可能時間が延びたのだが、紅椿はエネルギーの無限供給が可能な絢爛舞踏を持つ為に長期戦は一夏の方が不利と言っていい。更に暴走の影響か紅椿の展開装甲が全て展開状態になっており、束の最高傑作というだけあってその戦闘力は極めて高い。

 

『ええ、あの娘には零落白夜でシールドエネルギーを削り切って無力化という手は通用しないわ』

 

「じゃあ、どうすればいい?手はあるんだろ、白式?」

 

『あるわ。私達の本来の(・・・)単一仕様能力を使えば』

 

「本来の単一仕様能力?零落白夜は白式の単一仕様能力じゃないのか?」

 

零落白夜は白式が一次移行した時に雪片弐型に備わっていた単一仕様能力。千冬の暮桜が有していた単一仕様能力と全く同じものということもあって疑問視されることもあったこの能力は白式曰く白式本来の単一仕様能力ではないらしい。

 

『あれは暮桜から受け継いだ能力で借り物みたいなものよ。だから私達には零落白夜とは別にもう一つ単一仕様能力があるの』

 

「色々と聞きたい事は増えたが、それは後だ。教えてくれ、白式。俺達の本来の単一仕様能力ってやつを」

 

『【夕凪燈夜】全てのISのコアを初期化出来る能力よ』

 

「うわぁ・・・・使いどころ次第じゃチートスキルだな、それ」

 

雪兎達から多くを学んだ一夏はすぐさまその単一仕様能力の凶悪さを察した。ISコアを初期化出来るということはそのコアが今まで搭乗者と学んできた全てを無に還すということ。下手をすれば戦闘中に突然ISを一次移行前まで戻すことも可能なのだ。よって、普段は使えないだろうが、福音の時や今回のような事態であればかなり有用な能力と言える。

 

「でも紅椿を初期化するってことは今までの箒の頑張りも全部消してしまうってことだよな?」

 

『・・・・それでも、このまま暴走させ続けさせたり、凍結処理されるよりはずっとマシだわ』

 

白式はコアネットワークにより福音が凍結封印され搭乗者だったナターシャと離れ離れにされていることを知っている。だから白式はそんなことになるくらいならばいっそのこと初期化して改めて絆を紡ぎ直せば良いと言っているのだ。

 

「・・・・わかった。今はとりあえず箒と紅椿を止める為に使うよ、【夕凪燈夜】を」

 

そんな白式の想いを知り一夏も改めて覚悟を決める。その後、紅椿の猛攻を凌ぎながら白式に夕月燈夜の使い方を聞き、一度紅椿から距離を取る。

 

「行くぞ、次で全てを終わらせる!」

 

そう告げると一夏は煌月白牙と雪片参型を腰の鞘に戻し、小型化し左腕の籠手になっていた【雪羅弐型】をクローモードで展開し、瞬時加速で一気に距離を詰めて紅椿の胸部に淡く光る掌を叩き込む。

 

「【夕凪燈夜】発動!!」

 

すると、雪羅から白い光が迸り、その光が紅椿を包み込んでいく。

 

「いっけぇえええええ!!」

 

一夏の叫びに呼応するかのように光は拡大していく。そんな最中、一夏は一瞬ではあったが髪を下ろし巫女装束姿の箒によく似た少女の姿を見た。その少女は悲しそうに、だが、嬉しいとも受け取れる笑みを一夏に見せた。

 

(今のはもしかして、紅椿?)

 

なんとなくだが一夏はその少女が紅椿だと思った。

 

『・・・・終わったわ、マスター。すぐに紅椿の展開が解除されると思うから箒を受け止めてあげて』

 

「ああ、わかった」

 

光が消えると元の真紅の装甲に戻った紅椿の姿があり、その展開が解け空に放り出された箒を一夏は受け止めた。

 

「・・・・おかえり、箒」

 

これと同時にスコールらの亡国機業の構成員は一部を除いて逃走。京都での亡国機業掃討作戦は終了となった。




とりあえず戦闘は終了です。

雪兎、一夏、シャルロットの使う白月、白鳳、コスモスは本文中にも書きましたが差別化してあります。

白月→アドヴァンスドの複数種運用と???の運用
白鳳→零落白夜と瞬時加速の効率化
コスモス→重複武装の運用
こんな感じです。白月の???についてはまた何れ。


次回予告

京都における亡国機業掃討作戦は一応の成果を挙げるも多くの課題を残した戦いでもあった。そして、戦いを終えた雪兎達に束の間の休息が訪れる。

次回

「少年少女の休息 兎、シャルロットに連れ回される」

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