IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回は一夏メイン。兎弟子が自重しなかったのと白式がやらかしたせいでとんでもISが爆誕!
それと忘れられてるシャルロット達も・・・・


78話 舞い戻る白刃ともう一人の助っ人 兎、チェックメイトする

再び時間は一夏がレグルスに斬られた直後まで遡る。

 

一夏side

 

雪片が砕け明らかに致命傷の傷を負って落下する中、俺は不思議と不安を抱いていなかった。普通ならこうなったことへの後悔や走馬灯を見るものなのだろうが、俺が思い出したのは今朝の幼馴染(雪兎)との会話だった。

 

『一夏、コイツをやる』

 

雪兎がそう言って俺に渡したのは剣を抱く鳳の意匠が施されたペンダントだった。

 

『これは?』

 

『御守りみたいなもんだ。一応、肌身離さず持っとけ』

 

『ふーん・・・・お前がそう言うなら着けとくか』

 

御守りだなんてあいつらしくないことを言いながら渡してきたペンダント。ならばきっと何らかの意味がある物だと思い、俺はそのペンダントを身に付けた。そして、落下しつつある俺の視界にそのペンダント(・・・・・・・)が映る。そこで俺は朧気ながら違和感を抱いた。

 

(あれ?ISを展開すると身に付けてたものは全て拡張領域に収納されるはずじゃ・・・・)

 

そう、ISの展開中にそのペンダントがあるはずがないのだ。それによく見ればペンダントは淡く白い光を発しており、白式もそれに呼応するかのように白い光を纏っていた。

 

(それにこの感覚・・・・前にも・・・・)

 

すると、突如俺の視界が切り替わる。そこは以前にも福音との戦闘で意識を失った時に訪れた謎の空間。

 

「ここは・・・・」

 

『来ましたね、マスター』

 

そこには以前にも見た白いワンピースの少女と白い装甲を持つ白騎士に酷似したISを纏う女性、そして、初見の麦わら帽子を被った少女がいた。

 

「君達は一体・・・・」

 

『わかりません?』

 

そう呟いたのは白いワンピースの少女だ。その少女の言う通り、俺にはなんとなくだがその少女が誰なのか分かる気がした。

 

「もしかして・・・・白式、なのか?」

 

『はい♪』

 

俺がそう答えると少女・白式は嬉しそうに微笑む。彼女が白式なのだとしたらその隣にいる白いISの女性の正体も雪兎や束さんから聞いた話から想像がつく。

 

「ってことは貴女は白騎士、なんですね?」

 

白騎士は静かに頷くことで俺の言葉を肯定する。そうなると疑問なのは初見の麦わら帽子の少女だ。この少女に関しては全く心当たりが無い。しかも少女は「私は?私は?」と期待した眼差しでこちらを見てくるので「知らない」とはとても口に出せない。

 

『・・・・マスター、大丈夫です。この娘はマスターが知らないのを知っていてやってますから』

 

『ブーブー!ばらしちゃつまらないじゃない、白式お姉ちゃん!』

 

「確信犯か!」

 

隣で見ていた白騎士もバイザー越しではあるが呆れているような気がする。それとこの少女はどこか親友に似ている気がした。

 

(ちょっと待て、今この娘は白式のこと「お姉ちゃん」と呼ばなかったか?)

 

白式の妹もしくは妹分、そしてこの空間は俺と白式が作り出した空間である以上は彼女もISなのだろう。だが、白式を「お姉ちゃん」と呼ぶのであれば彼女は千冬姉の使っていた【暮桜】ではないだろう。だが、俺は白式以外のISは持っていないはず。では彼女は一体・・・・

 

『とりあえず初めましてお兄ちゃん(マスター)♪私の名前は【白鳳】だよ』

 

「ハク、ホウ?」

 

『そっ、白い鳳って書いて白鳳。いい名前でしょ?』

 

鳳と聞いて俺は胸元にある雪兎から貰った白い鳳のペンダントを取り出す。

 

「もしかして君は・・・・」

 

『大当たり~♪』

 

この麦わら帽子の少女の正体は雪兎がくれたペンダント【白鳳】だった。

 

『私はね、雪兎お兄ちゃん(マイスター)からお兄ちゃんを助ける為に作られたんだよ』

 

「えっ?」

 

『正確には私がマイスター雪兎に頼んで作成して貰った強化外装・・・・正式名称は自律型追加補助外装【白鳳】です』

 

詳しく話を聞くと、俺が雪兎から八葉一刀流を習い始めた頃に白式が雪兎に頼んでいたパワーアップアイテムがどういう訳か白鳳になったんだとか。

 

『まだ色々と話したいことはありますけど、マスターには今しなければならないことが』

 

「そうだった!」

 

そう、俺はレグルスに斬られて落下中だったはず。

 

『傷は前回同様私達が治しておきました』

 

「それは助かる!あっ、でも雪片が・・・・」

 

しかし、俺の唯一の武装(今は雪羅があるので厳密には違うが)であった雪片を折られてしまったんだった。

 

『それも問題ありません!』

 

すると、白式が雪片弐型とは違う刀を俺に差し出す。

 

「これは・・・・」

 

『【煌月白牙】、雪片と違いマスターの為だけに作られた刀です』

 

「【煌月白牙】・・・・俺の刀」

 

『折れちゃった雪片も形は変わっちゃったけど、ほら!』

 

白鳳も太刀から脇差まで短くなった新しい雪片を俺に手渡す。

 

『他にも色々と強化されていますが、説明は後程』

 

「ああ、今度は負けない!」

 

俺がそう言うと、徐々に視界がぼやけていく。おそらく次に目覚めるのはさっきまでの戦場だろう。ぼやけつつある光景の中、白式達が微笑んでいたような気がしたところで俺の意識は現実へと浮上した。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い光が納まった時、そこには見慣れぬ白いISの姿があった。しかし、そのフォルムは白式に酷似している。いや、その表現は正しくない。そのISは白式が白鳳を取り込み発展強化、つまり三次移行(サード・シフト)した姿、白式第三形態【白鳳】だった。

 

「い、ちか?」

 

「おう。悪い、心配かけたな、鈴」

 

「一夏さん!ご無事でしたのね」

 

「セシリアも無事でよかった」

 

「私は心配などしていなかったぞ、一夏。我が嫁であるお前がそう簡単に死ぬなどとは思っていなかったからな!」

 

「ラウラ・・・・その割には目が潤んでるぞ」

 

鈴、セシリア、ラウラの三人のISは既にボロボロだ。無理も無い。短い時間とはいえ彼女達はたった三人でオータムにレグルス、無数の機械戦乙女、そして暴走した紅椿の相手をしていたのだ。むしろ誰一人欠けていない方が奇跡と言えよう。

 

「もう大丈夫だ。後は俺に任せろ」

 

「三次移行したとはいえ大した自信だな、織斑一夏」

 

そんな一夏の言動が癪に感じたのかオータムが不機嫌さを隠さず一夏を睨む。

 

「ふふ、惜しいとは思っていたが、まさかあの状態から復活してくるとはな・・・・ますます気に入ったぞ、織斑一夏!」

 

レグルスに至っては興奮冷めやらぬと言ったところだろうか?

 

「・・・・」

 

(箒、今助けてやるからな)

 

最後に無言で白式を見つめる紅椿に一夏は覚悟を決める。

 

「やっちまえ!機械戦乙女どもっ!」

 

先手はオータムの指示を受けた機械戦乙女達。それぞれ銃口を一夏に向け一斉に銃弾の雨を見舞うも全ての銃弾は白式の背面に装備されたクリアブルーのエナジーウイングに阻まれ無力化される。

 

「なっ!?」

 

「ありがとな、白鳳」

 

『どういたしまして♪さあ、お返しだよ』

 

そう白鳳が告げると、エナジーウイングの表面から無数のエネルギー弾が放たれ一瞬にして一夏を射った機械戦乙女達が全滅する。

 

「はぁあ!!」

 

そこへレグルスが大剣で斬りかかるが、一夏は手にした煌月白牙を振るいそれを弾く。

 

「いくぞ、白式」

 

『はい、マスター!』

 

そして、今度はお返しとばかりに一夏が煌月白牙を振るう。それをレグルスは大剣で防御しようとするが、それは悪手だった。何故なら一夏の煌月白牙はまるで熱したナイフでバターを切るかの如くその大剣を両断したからだ。

 

「何っ!?」

 

「これで終わりだ!」

 

そのまま一夏は返す太刀に零落白夜を乗せた斬撃をレグルスに浴びせシールドエネルギーを削り切りレグルスを無力化する。

 

「レグルス!?くそっ!こうなったら残りの機械戦乙女をーー」

 

「させないよ!」

 

レグルスの敗北に焦ったオータムが残りの機械戦乙女を出し一夏を攻撃させようとするが、それを阻む者がいた。

 

「シャルロット!」

 

そう、雪兎と分かれて救援に駆けつけたシャルロット達だ。

 

「皆は鈴達を守りながら無人機を!この人は僕が相手をするから」

 

「シャルロット、気を付けて」

 

簪達に鈴達の護衛を任せ、シャルロットは一人オータムの前に立ち塞がる。

 

「お前はあの時の・・・・会いたかったぜ!」

 

「僕はもう会いたくなかったけどね」

 

シャルロットとオータムが対峙する一方で簪、本音、アレシア、カロリナの四人は鈴達を守りながら機械戦乙女達を相手にする。いくら劣化IS程度の機械戦乙女といえど数が多く簪達が不利かと思われたその時。

 

「はぁっ!」

 

数機の機械戦乙女が背後から襲撃を受けた。その襲撃者の正体は意外にもアレシアのよく知る人物だった。

 

「えっ?お、お姉ちゃん!?」

 

「Yes!アイアムアお姉ちゃん!!」

 

その人物の名はカテリナ=ロッタ。アレシア=ロッタの姉でIS学園の三年生であるイタリアの代表候補生だった。

 

「な、何でお姉ちゃんが!?それにお姉ちゃんのそのISはーー」

 

アレシアが驚くのも無理は無い。元々カテリナは代表候補生だがテンペスタⅡの事故のせいで未だに専用機を持ってはいない。故に今回の作戦には参加していないはずだったのだ。それが青いカスタムが施されたリヴァイヴⅡで現れたのだ。その疑問に答えたのは雪兎だった。

 

『あー、カテリナ先輩にはフランスまでプロジェクト・フロンティアで使う予定のリヴァイヴⅡを受け取りに行って貰っててな。その帰りにタイミング良かったから援軍として呼んどいたんだ。あと、そのリヴァイヴⅡはその報酬としてカテリナ先輩用にカスタムしたやつな』

 

つまり、これも雪兎のせい、という訳らしい。

 

「やっぱ雪兎さんのせいか・・・・」

 

「そんなことよりも今はこの機械戦乙女とやらを片付けるのが先です」

 

三年生のカテリナが加わったことで戦力的不利を覆すことができ、徐々に機械戦乙女の数も減り始めた。

 

「あっちは大丈夫そうだな。となると・・・・」

 

『残るは彼女(紅椿)だけです』

 

そして一夏は暴走する紅椿と対峙する。

 

「ああ、紅椿は・・・・箒は俺が止めてみせる!」

 

こうして戦況は最終局面を迎えた。




白式超強化。こいつの真価はこんなもんじゃありません。
そしてアレシアの姉・カテリナ登場。この人、あんな性格ですが、ダリル並みには強いです。


次回予告

暴走する紅椿を止めるべく紅椿と対峙する一夏。ウィルスに侵された紅椿を元に戻すべく、一夏は白式の真の単一仕様能力を解き放つ。一方の雪兎はアンタレスを倒すべく本気を出すことに・・・・

次回

「夕凪燈夜とトリニティモード 兎、ダメ押しする」

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