そして、紅椿暴走の理由とは?
「ほらほら!さっきまでの勢いはどうしたっ!」
雪片弐型の限界が近付き消極的になった一夏にレグルスは容赦の無い攻勢をかけていく。
「くっ・・・・」
ピシピシッ
とうとう雪片の刀身に罅が入りはじめる。
(こうなったら・・・・一か八か!)
「零落白夜、発動!」
もう時間が無いと一夏は零落白夜を発動させ最後の賭けに出る。
「四の型、【紅葉切り】!」
八葉一刀流四の型【紅葉切り】今まで散々練習を重ねてきた一撃を瞬時加速を併用し目視不可能な速度で放つ。だが、只でさえエネルギー消費の激しい零落白夜に瞬時加速の合わせ技となれば疲弊していた一夏と白式では打てて一発が限界の諸刃の剣。一夏にとって全身全霊とも言うべきその一刀であったが、一太刀入れることは出来てもやはりレグルスを破るには至らなかった。
「・・・・」
「気迫の乗った良い技だ、本当に殺すのが惜しくなってきたな。だが、これも仕事だ・・・・せめて私の放てる最大の一撃で終わらせよう」
自らが持てる最大の一撃を放ち零落白夜を維持できなくなった一夏に対し、レグルスは敬意を表し双剣を大剣に戻し上段の構えを取る。
「さらばだ、織斑一夏!!」
その一撃は大剣とは思えない速度で放たれ、一夏は直感で雪片弐型でその一撃を防ごうとするも限界に達した雪片弐型はあっさりと真っ二つに折られ、その先にいた一夏を袈裟斬りにする。
「がはっ・・・・」
「先程の一撃は絶対防御すら捨てた一撃だったか・・・・本当に殺すには惜しい男だったよ」
白式は零落白夜と瞬時加速で絶対防御を満足に発動させられるエネルギーを残していなかった。即ち一夏はその斬撃を直接受けてしまい傷口から大量の血を吹き出しながら一夏は京都の街へと落下していく。
「一夏っ!?」
そして、その光景を見てしまった箒はオータムに致命的な隙を晒してしまう。
「余所見してんじゃねぇよ!!」
「がっ!?」
その絶好の隙を突きオータムは両腕から糸状の物体を放ち箒の紅椿を拘束する。
「箒さん!?」
「箒!」
拘束された箒をセシリアと鈴が助けようとするが、オータムの指示で機械戦乙女達がその前に立ち塞がり邪魔をする。
「乗ってる機体が第4世代機だろうが、乗ってるのが小娘じゃ宝の持ち腐れってやつだな」
そう言って紅椿に近付いたオータムは何かの装置を取り出し紅椿にそれを装着する。
「だからそれを上手く使えるようにしてやるよ」
「がぁあああああ!!」
装置のスイッチが入ると、装置から電撃が迸り紅椿からISコアが露出する。そう、この装置は
「その紅椿ってISはあの天災の特注品とあって何重にもプロテクトが掛かっててそう簡単にはウィルスを捩じ込めない・・・・だが、露出したコアに直接ウィルスを注入すればどうかねぇ?」
この新型剥離剤の真価はISコアに直接ウィルスプログラムを撃ち込むというもの。ウィルスを撃ち込まれたコアはその輝きを濁らせ黒く染まっていく。そして、剥離剤の効果が切れコアが紅椿へと戻ると美しかった真紅の装甲が徐々に赤黒く変色していく。
「き、貴様・・・・紅椿に、何を・・した?」
「ん?ちょっとしたプレゼントさ」
「プレゼントだと?」
「そうお前らもよく知ってる福音に使われたウィルスを弄って作った特製のな!」
「「「「!?」」」」
オータムの言葉に箒達の顔が険しいものに変わる。何故なら福音はかつて臨海学校の際に交戦した暴走ISで、事件後に雪兎に聞いた話によれば「目にしたもの全てを敵と認識させる」という凶悪極まりないウィルスが原因だったと言う。亡国機業はどのような経緯かは不明だが、そのウィルスプログラムを入手していたのだ。そして、今回そのウィルスを撃ち込まれたのは現行のISを一蹴する性能を持つ第4世代機である紅椿。はっきり言って嫌な予感しかしない。
「や、やめろ、紅椿・・・・私は、がぁあああああ!!」
完全に装甲が血のような赤黒い色へと変色すると紅椿は箒の意識を奪い、オータムの施した拘束を引きちぎる。
「う、嘘でしょ!?」
「一夏は生死不明、紅椿は暴走でこちらの戦力が二つ減り、あちらは変わらず、いや暴走した紅椿も敵に回すとなると状況は絶望的だな・・・・」
亡国側は依然オータムとレグルスに無数の機械戦乙女が健在。紅椿もウィルスプログラムで敵なったことから流石のラウラも今回ばかりは弱気になってしまっていた。
「しかし、やるしかありませんわ」
それでもセシリア、鈴、ラウラの眼はまだ戦意を失ってはいなかった。
第三形態となった雪華【雪月華】その最大の特徴は雪華とは別に【白月】にも別のパックを装備可能ということだ。つまり、二種のパックを同時運用可能というキチガイ装備だった。現在雪兎が装備しているのは【B:ブレイド】とアドヴァンスドシリーズの一つで高機動近接戦仕様パック【VF:バルニフィカス】の組み合わせの超近接戦仕様である。一方のアンタレスの【
「果てろ、【バルムンク】!」
「やっちゃえ、【テスタロッサ】!」
大剣とチェーンソーがぶつかり合い火花を散らす。何度目かわからないその激突の後にアンタレスが突然距離を取った。
「・・・・あらら。君のお友達、死んじゃったみたいだよ?」
それはどうやらレグルスからの通信だったようで、アンタレスは少し残念そうにそう告げた。おそらく彼女も一夏と直接戦ってみたかったようだ。しかし、雪兎の顔に動揺した様子はなく、むしろ笑いを堪えているようにすら見えた。
「意外だね、もっとこう怒り狂うかと思ったのに・・・・」
「く、ククク・・・・アハハハハハ!」
そのアンタレスの一言で我慢の限界に達したのか雪兎は大声で笑声を上げた。
「ハハハハハ!」
同じ頃、束も雪兎同様に大声で笑声を上げていた。理由はスコールが束が気にしたのが紅椿の暴走だけだったので「心配なのは妹だけなのか?」と訊ねたからだ。
「「一夏(いっくん)が死んだ?あんたら(君達)それをちゃんと確かめたのか(かい)?」」
その問いに対して雪兎と束は言い方は少し異なるも全く同じ言葉を口にした。そして、兎達は全て戦場と通信を繋げ全てを明かす。
「そもそも、何でこの作戦で一夏の護衛が箒達だけだったと思ってるんだ?」
「そんなの君達がいっくんを狙い易くする為に決まってるじゃないか!」
「そんでもって、そんな狙われる一夏に俺達が何の手も施してないとでも?どんだけおめでたいんだ、お前ら」
「だ、だが、レグルスは確実に致命傷を与えたと!」
兎達の種明かしにスコールが反論するも、追い討ちをかけるかの如く束がとある真実を口にする。
「あ~、君達は知らなかったんだっけ?いっくんの白式に使われてるコアは白騎士に使われていたものなんだよ?つまり・・・・」
「白騎士のナノマシンによる自己治癒能力がある。そいつの効果を増幅する機能を持たせたあるものを一夏には持たせてたのさ」
これが発覚したのは福音事件の時、当然この情報も秘匿レベルの高い情報としてIS学園でも一握りの人間にしか伝えられていないのでスコール達が知らないのも無理は無い。
「だ、だが、お前達の仲間が織斑一夏の反応がロストしたと!」
これは真耶が口にしたもの。実際に今も一夏と白式の反応はロストしたままだ。
「そんなの君達をぬか喜びさせる為にその機能が起動したら一時的に反応がロストするようにしてたに決まってるじゃない」
つまり、ここまで起きた全ては兎達の手の平の上だった。そう彼らは言っていた。
「な、ならば、もう一度探し出して織斑一夏を殺し直せば!」
「それも対策済みだ。言ったろ?自己治癒能力を増幅させる機能を持たせたあるものを持たせたと」
「ま、まさか!?」
雪兎のその一言でそれに気が付いたのは亡国側では
「そのまさかさ!誰が
すると、一夏が落下したと思われる場所から白い光が迸った。
という訳で以前使い損ねた剥離剤登場。
そして全ては兎師弟の手の上でした・・・・この二人、愉悦してやがる。
次回予告
全てを兎師弟に出し抜かれ激昂する亡国機業の面々。そんな中、白き鳳を従え白き騎士が戦場へと舞い戻る!
次回
「舞い戻る白刃ともう一人の助っ人 兎、チェックメイトする」