IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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早速雪兎がやらかします。

そして私が原作を読んだ時に思ったこともチラッと・・・・


2話 クラス代表決定戦 兎、やらかす

「ちょっと、よろしくて?」

 

箒と話した次の休み時間。再び二人に声がかかった。

 

(このタイミングってことは・・・・チョロコットか)

 

「へ?」

 

声をかけてきたのは読者からはチョロコットなどの愛称で呼ばれることもあるイギリスの代表候補生・セシリア・オルコットだった。

 

「訊いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ。訊いてるけど・・・・どういう用件だ?」

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

(やっぱこの時のこいつは好きにはなれないなあ・・・・)

 

雪兎はこのセシリア・オルコットのことが原作を読んだ当初はあまり好きではなかった。なので、できればこの時期の彼女とは雪兎は接したくなかったのだ。

 

「そこの貴方もですわ!わたくしが声をかけているのですのよ!お返事ぐらいなさったらどうなのかしら?」

 

「・・・・はぁ、まずは自分が何者なのかくらい名乗れよな。こいつはその手の知識全然ないからあんたが何者なのかわかってないんだよ、イギリスの代表候補生」

 

「そ、そんな代表候補生ですわよ!?」

 

確かに代表候補生ともなれば下手なアイドルよりメディアへの露出が多く知らぬ者も少ない。しかし、この織斑一夏という男はその手のことへの関心があまりなく「代表候補生?」と代表候補生の存在すら知らなかったのだ。

 

「国家代表ならともかく代表候補生なんて他国ではこんなもんさ。あと話しかけられただけで光栄に思われたきゃ織斑千冬(ブリュンヒルデ)くらいの知名度になって出直してこい、セシリア・オルコット代表候補生」

 

「ぬぐぐぐぐ・・・・」

 

それだけ言うと雪兎は「話しはもう済んだ」と言わんばかりに話しを切った。そんな雪兎にセシリアはハンカチを噛み悔しがりながら自分の席へと戻っていった。

 

「雪兎、お前相変わらずだなあ・・・・ところで代表候補生ってなんだ?」

 

「読んで字の如くISの国際大会とかの国家代表の候補生のことだよ。さっきの娘はイギリスの代表候補生で名前はセシリア・オルコット。貴族生まれのお嬢様で、専用機はイギリスのイグニッションプランの第3世代機の試作機ブルー・ティアーズ。【BT兵器】っていう光学兵器の試験運用機の1号機だ」

 

「み、妙に詳しいな・・・・」

 

「俺は元々エンジニア志望だぞ?それにあの人の弟子でもある。各国の試作機やその操縦者・代表候補生についてはそれなりに調べてる」

 

「へー、なら今度色々教えてくれよ」

 

「まあ、今後実技試験とかで当たることもあるだろうしな。傾向と対策くらいは教えてやる」

 

そうこうしている間に休み時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

その授業は千冬が教壇に立っていた。

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

(確かここで一夏が推薦されてセシリアがキレて決闘になるんだっけか?)

 

「なあ、雪兎。これってクラス長決めるようなもんか?」

 

雪兎が原作の流れを思い出そうとしていると隣の一夏が質問してくる。

 

「似たようなもんかな?クラス対抗戦とか矢面に立つ仕事も多いらしいけどな」

 

「自薦他薦は問わないぞ」

 

その一言を聞き早速一人の生徒が挙手をする。

 

「はいっ。私は織斑君を推薦します!」

 

原作通り一夏が真っ先に推薦され「私も!」と次々に声が上がる。この時、他人事のように振る舞っていたことを後に雪兎は後悔することになる。

 

「私はアマアマ(多分、雪兎のこと)がいいと思う」

 

そんなことを言い出したのは原作5巻まで一夏に本名を覚えてもらえなかったダボダボの袖の少女・布仏本音だった。

 

「・・・・はっ?」

 

「だってあまあま、せっしー(セシリアのこと)論破してたし」

 

どうやらさっきの雪兎とセシリアのやり取りを見ていたらしい。伊達に更識の従者の家系ではないようだ。

 

「確かに織斑君より頼りがいはありそうよね」

 

「言われてみれば・・・・」

 

「・・・・雪兎。俺、さりげに貶されてね?」

 

ドンマイ一夏。

クラスが一夏か雪兎かで盛り上がる中、それを面白く思わない生徒が一人。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

それはイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットだ。それも当然だろう。代表候補生である自分ではなく物珍しさから男である一夏と雪兎が候補に上がったのだ。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!」

 

この時点で大多数を占める日本人のクラスメイトを敵に回しかねない発言である。

 

「わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

IS技術の修練というのはわかるが、イギリスも島国である。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

自意識過剰ではあるが、「実力トップが」というのも間違ってはいない。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でーー」

 

IS学園を日本に作らせた国連だの国際機関に言えと言いたいところだが、ここでとうとう一夏がキレた。

 

「イギリス大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

この発言で一夏がどれだけキレているかわかる。だが、ここでセシリアは原作にない雪兎にとって逆鱗に触れる発言をしてしまう。

 

「そ、そういう日本だって大したことありませんじゃないですの!IS発祥の国だというのに未だに第3世代機の一機もないじゃありませんか!!」

 

その瞬間、教室の温度が5度ほど下がったと後にクラスメイトは語る。一夏も隣から発せられる冷気に冷静さを取り戻した程だ。

 

「おい、イギリス人。てめえ、何言ってんのかわかってんのか、おいっ!」

 

そう、雪兎までもがぶちギレたのだ。世界最高峰の頭脳と呼ばれた篠ノ之束の弟子にしてエンジニア志望の彼が今の発言にキレない方がおかしい。しかし、愚かにもセシリアは発言を撤回せず、むしろ火に油を注いでしまう。

 

「じ、事実ではありませんか」

 

この時、二人以外のクラスメイトの心は一致していた。

 

((((セシリアの馬鹿!))))

 

「よろしい、ならば戦争だ。織斑先生、俺はこの決着に決闘を所望します」

 

「う、受けて立ちますわ!」

 

こうして一週間後にクラス代表決定戦という名の決闘が決まった・・・・約一名(織斑一夏)の意見を無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で特訓パートだ」

 

そして放課後。一夏は雪兎に連れられ(連行され)空いているアリーナにやってきた。

 

「俺の意志は!?」

 

「知らん。というか、あそこまで言われて悔しくないのか?一夏」

 

「く、悔しいけどさぁ・・・・」

 

「なら見返してやろうではないか!」

 

「お前、キャラ違くない!?」

 

セシリアにぶちギレて若干キャラ崩壊しつつある雪兎だが、実を言うとぶちギレなくても元より一夏を特訓するつもりだったりするのだが。

 

「そもそも訓練機も借りてないのにどうやって特訓すんだよ?」

 

一夏の言うとおり二人は訓練機を借りて来ていない。まあ、そうすんなりと借りれる物でもないのだが。

 

「心配するな。お前の専用機は俺が最終調整してたし、俺も専用機持ちだ」

 

「ちょっ!?何さらっと重大発言してんのさ!?ってか、俺の専用機!?」

 

「いやー、お前の専用機作るって言ってた倉持技研の連中がさ、お前の専用機作るために他の娘の専用機作るの投げやがったくせにちっとも完成させねえもんだから束さんがぶんどって完成させて最終調整のために俺が預かってたんだ」

 

「さらにやべぇことぶっちゃけやがった!」

 

開発を投げられた生徒会長の妹は泣いていい。というか倉持技研が馬鹿なのである。

 

「で、俺の専用機ってのはどこにあるんだ?」

 

雪兎のは既に待機形態なのはわかるが、アリーナにそれらしいものは見当たらない。

 

「ああ、ちょっと待ってろ」

 

そう言うと雪兎は指はパチリと鳴らす。すると、上から巨大な卵のようなものが轟音と共にアリーナに降ってきた。一夏のすぐ隣に。

 

「あ、あ危ねえじゃないか!」

 

「ちゃんと地面に対して寸止めだし、当たらないよう計算したぞ?」

 

「そういう問題じゃねぇよ!お前のそういうとこ束さんに似てきたよな・・・・」

 

あの天災の弟子となればこうなるのも無理はないのかもしれない。「悪い悪い」と明らかに思ってないだろうことを言いつつも卵状のカプセルを量子転換で片付け、織斑一夏の専用機【白式】が姿を現す。

 

「こいつが兎印のお前専用機【白式】だ」

 

「これが俺の専用機・・・・」

 

「さてと、さっさとフィッティングとフォーマット済ますぞ。それが終わったら俺は準備があるから一次移行(ファーストシフト)するまで慣らしでもしていてくれ」

 

「お、おう」

 

並のエンジニアより手早く正確にそれらの作業を終えると雪兎は投影型キーボードを操作し準備とやらを始めた。

 

「訓練機も借りずにアリーナに向かって何をしているのかと思えばこういうことか」

 

「なんだ、箒も来たのか」

 

そこに二人を心配したのか箒もアリーナにやってきた。

 

「心配は無用だったようだな」

 

「俺が無策で代表候補生に挑むとでも?」

 

「お前はそういう奴だったな」

 

ちなみにこの会話の間、雪兎の手は止まってはいない。

 

「そうだ、丁度良い。箒、こいつで一夏の慣熟の手助けをしててくれないか?」

 

ふと、雪兎は思い付いたように箒に刀の柄だけのようなものを投げ渡す。

 

「何だ、これは?」

 

「前に廃棄処分になった打鉄を外装だけ貰って俺の持ってたコア(・・・・・・・・)を入れて改修した打鉄・改」

 

またしても雪兎はさらっととんでもない発言をする。

 

「お前、持ってたって・・・・ああ、姉さんか」

 

目の前の幼馴染が(天災)の弟子であったことを思い出し、姉経由で入手したのだろうと察する。そして姉のことで少々複雑な思いを抱く箒。

 

「いいのか?これはお前の専用機ではないのか?」

 

「いんや、そいつは訓練機とかと同じでパーソナライズしてねぇから誰でも使えるぞ。色々弄ったから少しピーキーかもしれんが」

 

「それくらいなら問題ない。では少し借りるぞ」

 

そう言って箒は縁取りが紅い打鉄・改を展開し一夏の方へ飛んでいった。

 

(俺は問題なさそうだが、やっぱ原作通り姉妹間は複雑か・・・・)

 

キーボードを叩きながら雪兎はここにはいない師匠である妹大好きのシスコン兎のことを思った。




ちょっと長くなって初戦闘までいけませんでした。

次回こそは戦闘します!

次回予告

打倒セシリア!と、クラス代表決定戦に向けて特訓をする一夏と雪兎。そんな二人を手伝う箒。そして迎えるクラス代表決定戦!
一夏の白式はともかく雪兎の専用機とは?

次回 「クラス代表決定戦 兎、チョロインをボコす」

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