今回はかなり長めです。
新型ISと亡国の話まとめたらこうなった・・・・
新キャラ、新ISのラッシュ章でもあるこの章は京都編ですがほぼオリジナル展開になります。
今回は前章の四人の専用機と亡国の新戦力の紹介回になります。
それではISー兎協奏曲ー第十一幕開演です。
72話 新たなる専用機と闇夜の星座 兎、戦力増強を謀る
楯無の召集で専用機持ちの生徒と何故か一緒に召集された晶達四人が生徒会室に集められた。いきなりの召集に多くの生徒が戸惑う中(特に専用機持ちではない四人)、楯無から更に驚くべき事柄が告げられた。
「今回皆を召集したのは現在IS学園とプロジェクト・フロンティアにとって障害になっている
マドカ自身はその場所を知らないそうなのだが、どうも表向きには亡国機業と癒着していると思われる女性権利主義者の別荘になっていて簡単にはバレない、と以前にスコールが言っていたんだとか。また、先日の地下レストランでの一戦の最中に雪兎がレインとフォルテのISに仕込んだ発信器の反応も京都にあったことから亡国機業の拠点が京都にあるのは確定らしい。
「亡国機業は学園祭の時には一夏君にちょっかいをかけて、更に篠ノ之束博士を引き込もうと色々工作していたらしいわ。博士に関しては博士から連絡を受けた雪兎君とシャルロットちゃんが救援に向かって無事だったのだけど・・・・」
ここで楯無が一度言葉を切る。ここから告げることは千冬達教員と特訓メンバー等の一部の人間にしか伝えられていない情報が含まれているからだ。
「・・・・二人が救援に向かった際に専用機の修理の為に一時帰国しているはずの我が校の生徒、ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアが亡国機業に与したことが発覚したわ」
「「「「!?」」」」
これには晶達四人も信じられないといった顔をする。当然だ。ダリルことレインは学園では兄貴分の姉御として割と慕われていた生徒だったからだ。
「これは後の調査で判明したことだが、ダリル・ケイシーは当初より米国の第3世代機の奪取を謀るために学園に潜り込んでいた亡国のスパイであったらしい。一方でフォルテ・サファイアはダリル・ケイシーに拐かされたと思われる」
楯無の言葉を補足するように千冬がそう告げると、ようやくそれが真実だと理解する。
「そう、あの二人が・・・・」
今回召集された生徒の中にはセシリアと同じイギリスの代表候補生で、セシリアにISの基礎を教えたサラ・ウェルキンの姿もあった。原作ではこの場にいないはずの彼女が何故ここにいるかと言うと、以前にマドカに関する裏取引で返却されたサイレント・ゼフィルスにブルー・ティアーズ・エンジェルフェザーの強化型ハイパーセンサーの技術を流用したことでサラでもサイレント・ゼフィルスを扱えるようになり、そのテストとして現在は彼女の専用機になっているのだ。
「色々あって延期になっていた二年生の修学旅行の行き先が京都に決定した。だが、奴等のお膝元にほいほいと生徒達を連れていく訳にはいかん」
「そこで今度は私達から打って出る、ということになったの」
「織斑先生」
楯無と千冬がそう説明すると、エリカが手を挙げる。
「ピーリか、どうした?」
「僭越ながら、この件は既に学生の領分ではないのではありませんか?国際IS委員会に報告した方が・・・・」
「残念ながらそれは出来ん」
「実はさっき言った癒着してる女性権利主義者ってのがどうもその委員会の上層部の人間らしくてね。まず間違いなく揉み消されるわ」
「なっ!?」
そう、亡国機業のようなテロリストが何故世界でも有数の警備態勢を持つ日本に軽々しく出入りが出来るのかといえば、その程度の事など容易く揉み消せる人物が背後にいるからに他ならない。
「だが、こちらには奴等が目の敵にしている標的が何人もいる。修学旅行の下見とでも言って彷徨いていればあちらから手を出してくるだろうよ」
「つまり俺達は釣り餌ってわけね。三年前の借りも返さなきゃな」
「ふっ、私も大人しく食われてやる気は無いがな」
「その意気だ、一夏、マドカ」
元々亡国機業に一度誘拐され今も狙われている一夏に組織を抜けたマドカ、そして今まで散々妨害しまくってきた雪兎。これを亡国機業が見逃すとは到底思えない。
「他に質問はあるか?」
「はい」
エリカに続いて手を挙げたのはカロリナだった。
「ゼンナーシュタットか、言ってみろ」
「はい。作戦の概要は理解した。でも、私達四人が呼ばれた理由がわからない」
カロリナが言いたいのは自分達四人は何故専用機を持っていないのにこの作戦に組み込まれたのか?ということだ。専用機と違い学園の訓練機は簡単に外に持ち出せるものではない。ましてや表向きには修学旅行の下見となっているため訓練機など持ち出せる訳が無いのだ。
「そいつに関しては俺から説明するよ」
その疑問に答えたのは雪兎だった。この段階で察しのいい人は気付いていた。この後雪兎が何を言い出すかを。
「元々プロジェクト所属になる生徒にはデュノア社のリヴァイヴⅡをはじめとした量産試作機を専用機として与えてのテストをしてもらうことなってるんだが、カロリナ達四人の推薦組には雪華のパックを元にした
「そ、それって・・・・」
「聖や本音の【ウェーブライダー】や【ナインテイル】と同じプロジェクト・フロンティア製のISだな。元々四人を推薦したのはこれが目的だったわけだしな」
雪兎の言うように聖の【ウェーブライダー】や本音の【ナインテイル】はプロジェクト・フロンティア発足に伴いプロジェクト・フロンティア製のISとして登録された。他のフロンティア製扱いされているISは雪兎の【雪華】、一夏の【白式】、箒の【紅椿】、簪の【打鉄・弐式】、千冬の【打鉄・参式】、雪菜の【シルフィオーネ】が該当する。
「四機とも既に完成してる。この後渡すから作戦までに扱いを覚えてくれ」
「作戦は二週間後だ。天野、それまでに四人を使えるようにしておけ、アリーナはその間貸し切りにしておく」
「助かります・・・・四人共、今日から二週間は他のメンバー総出でしごくから覚悟しておくように」
この時、晶達四人はプロジェクトに志願したことを後悔しそうになるが、その後の特訓でそんなことを考える余裕を失うことになるのであった。
雪兎主導の強化特訓が始まって既に一週間。その日も晶達四人はそれぞれ専用機を纏いアリーナの地面に倒れ伏していた。
「・・・・実力差はタッグトーナメントの時に分かっていたつもりだったが、私達四人がかりでも勝てないとは」
「こちらはまだ慣れていない機体であちらは私達の専用機の設計者。情報的優位もあちらですが、ここまでとは・・・・」
「アドヴァンスド怖いアドヴァンスド怖いアドヴァンスド怖い・・・・」
「広域殲滅型とか、本気過ぎる・・・・」
約一名トラウマになりかけているその惨状を生み出したのはアリーナの上空に佇む一機のISだった。そのISは黒と紫の追加装甲と背面の三対の紫の翼、そしてその周囲に鋭い羽根状のビットを展開しており、腕を組んで四人を見下ろしている。
「休んでないでさっさと上がってこい!来ないならとこちらからいくぞ」
その正体はアドヴァンスドシリーズの【LF:ルシュフェリオン】と同じダークマテリアルズにカテゴリーされている【YK:エルシニアクロイツ】を纏った雪華であった。そう、晶達四人を短期間で鍛える為に雪兎が行ったのはアドヴァンスドシリーズを用いて徹底的に強敵との戦い方を身体に覚えさせる、というものだった。
「まるで魔王だな・・・・」
「うん、ゲームとかのラスボスの風格だよね、あれ」
そんな光景を見ていた一夏と簪の呟きに他のメンバーも頷き同意する。元となったキャラも王様と呼ばれていたので違和感はなく、目の前の蹂躙劇もストーリー中盤辺りでラスボスが顔見せで現れて行われる負け戦イベントの如くだ。だが、元ネタの世界ではもっと恐ろしいピンク色の砲撃を放つ白い魔王様がいることを一夏達は知らない。
「なんかキャノンボールの時のこと思い出すわね・・・・」
「ええ、アドヴァンスドシリーズによる蹂躙。あのレースと同じ状況ですものね」
「でも、加減はしてるとはいえ使い始めて一週間の専用機であれだけ食らいついてるのは凄い。私達も負けてられない」
あの時は本音も雪兎側だったので2対8だったし、キャノンボールということで雪兎もそれなりに本気だった。何れにせよ、アドヴァンスドシリーズとの模擬戦は彼女達の良い経験値になるだろう。
突然だが、ここで晶達四人に与えられた専用機について説明しよう。まず最初に晶の専用機だが名は【白牙】。白虎を模したISで腕にあるナックルガードによる打撃、収納式の高周波爪による斬撃、掌の砲口から放たれる龍咆を参考にした圧縮空気砲、人でいう脛の部分のブレードを用いた蹴り等を主体とする近接格闘型。また、背面に二基の大型可動式スラスターと尻尾型の多層スラスターを持ち、複雑な高速移動を可能にしている。
「いけっ!虎咆穿!」
零距離で放つ圧縮空気砲である【虎咆穿】は戦車くらいであれば軽く吹き飛ばしてその装甲を丸めた紙屑のようにしてしまう程だ。しかし、捉えたとか思えば既に雪兎は離脱しており、代わりに紫色の光球が晶の前にあった。
「しまっーー」
次の瞬間、その光球が弾け晶は紫の爆発に呑まれてしまう。
「狙いは良かったんだがなぁ・・・・っと!」
「ちっ、外した」
次に雪兎を襲ったのはエリカの狙撃だった。エリカに与えられた専用機は【G:ガンナー】と【J:イェーガー】の中間とも言える射撃型で名は【
「こちらは狙いが正確過ぎて読み易いな」
エリカの狙撃を難なく回避した雪兎に今度は隙を見て距離を詰めたアレシアが籠手から伸びた双剣で背後から襲いかかるが、それすら読んでいた雪兎は振り向き様に持っていたビームカノン【アロンダイト】でアレシアの横腹を打ち付け弾き飛ばすと追撃に【アロンダイト】の砲撃を放つ。
「げほっ・・・・銃器を鈍器扱いしてぶん回してくるとかありなの!?」
アレシアの専用機【
「また『あの砲撃』がくる前に勝負を決めないと・・・・」
カロリナが警戒しているのは先程四人を地に伏さした【YK:エルシニアクロイツ】の最大威力重圧砲撃【ジャガー・ノート】。これは先程の【アロンダイト】を中心に四基のシールドカノンビット【ランスロット】から放たれる重力波砲撃で並みの戦車であれば一瞬で鉄屑へと変えてしまう威力があるんだとか。
「いくよ、【リリコンバージュ】」
カロリナの専用機の名は【リリコンバージュ】。リリコンバージュとはスウェーデンの国花であるドイツ鈴蘭のことで、花言葉は純潔、純愛、幸福の訪れを意味し、花と実にコンバラトキシンという毒を持つ。そんな名を持つこのISの特徴は背面にあるサブアームで大型の複合武装シールド【
「バリア展開、コードACS」
「紫天の力の一端を放て、コキュートス」
バリアを円錐状に展開し突撃を仕掛けるカロリナに雪兎はビットを前面に展開させて淡紫色のブリザードを放ちバリアごと凍らせて押し返す。
「重力波砲といい、その吹雪といい、そのアドヴァンスドは無茶苦茶過ぎるわよ!」
「これでも加減してるんだがなぁ・・・・ルシフェリオン、バルニフィカスと合体してトリニティモードになったり、スピリットフレアと合体してヴェスパーレッドモードにならんだけまだマシだぞ?」
「ちょっと待って!?今サラッととんでもない発言しなかった!?」
そんなこんなでその日の模擬戦も四人の大敗に終わり、その後は一夏達も順番にアドヴァンスドシリーズに挑んだりしながら京都での作戦に備えるのであった。
一方、京都の拠点へと戻っていたスコール達の元にも援軍が到着していた。
「久しぶりね、スコール」
「増援が来るとは聞いていたけど・・・・サダル、貴女達とはね」
やって来たのはスコールらモノクローム・アバターとは別の部隊【
「にしてもザマァないね、スコール。たかがガキ一人に好き放題にされるなんて」
「アンタレス、貴様!!」
スコールを馬鹿するアンタレスという女にオータムが掴みかかるも、アンタレスはひょいとそれを避ける。
「やだなぁ、アタシはホントのこと言っただけじゃない。そういやアンタも一度捕まったんでしょ?」
今度は自身を小馬鹿にするアンタレスにオータムがぶちギレかけるが。
「やめなさい、オータム」
「アンタレスもその辺にしておきなさい」
それぞれスコールとサダルにより止められる。
「ちっ!」
「はーい」
舌打ちするオータムと全然反省の色が見えないアンタレス。この二人の相性は水と油らしい。
「・・・・それで他には誰が来たのかしら?」
「
「随分と大盤振る舞いじゃない」
「それだけ件の
「楽しみだなぁ~、強いんでしょ?彼」
「・・・・戦闘狂めが」
雪兎の話になるとアンタレスは
という訳で色々出し過ぎて長くなりました・・・・
闇夜の星座のメンバーは基本的に戦闘狂の気があります。
次回予告
準備を終えて京都へと向かう雪兎達。その一行を待っていたのは亡国機業だけではなかった。
次回
「京都と風の戦乙女 兎、二代目と邂逅する」