登場するパックの名称はダークマテリアルズの星光の殲滅者から。
注目のタッグマッチ第一回戦第一試合は唯一ソロで参加となった雪兎と三年生のダリル・二年生のフォルテペアの試合だった。
「まさかこんな早くお前と当たるとはなぁ」
「先輩、しかもあの装備はおニューっぽいッスよ?」
雪兎が事前に相手の情報を調べ尽くしてからくるタイプだということから考えて雪兎の装備は対ダリル・フォルテ用に用意したものだと二人は考えていた。
「先輩方、準備はいいですか?」
そんな雪兎が纏っているパックは濃い紫と赤紫色のパーツで構成されている。これといった武装は見当たらないが、両腕を大型のガンドレッドで覆っており、手も白式の雪羅のクローモードと同じくらいに大型化されていることから近接格闘型と推測されるが【LA:ライトニング・アサルト】のようなてんこ盛りではないことにダリルは少し疑問を抱く。
「お前、オレ達にはアドヴァンスドとやらを使う気がねぇってか?」
「いいえ、こいつもちゃんとアドヴァンスドですよ・・・・【LF:ルシフェリオン】、こいつのこと甘く見てると痛い目見ますよ?」
「
その頃、観客席では・・・・
「うわぁー、雪兎ヤる気だよ」
「シャルロット、そんなにヤバいのか?あのルシフェリオンってのは」
雪兎の試合は見ておくようにと千冬に言われて他のメンバー総出で観戦していたのだ。
「うん、ルシフェリオン、バルニフィカス、エルシニアクロイツ、スピリットフレアっていう四種類のパックはダークマテリアルズってカテゴリーに入るアドヴァンスドパックで、性能的にはライトニング・アサルトより上位のパックだよ」
バルニフィカスはバクテリアで傷、エルシニアは感染症の一種を意味する単語だ。スピリットフレアは揺らめく炎を吐くものを意味する。どれもかなり厄介なものを意味しており、
「ルシフェリオンは明星。特性は一撃必倒の超火力仕様なんだよ」
「つまり、この試合は・・・・」
「うん、瞬きなんかしたら見逃すよ?」
『試合開始!』
そのアナウンスと共に最初に動いたのは雪兎だった。
「なっ!?」
いきなりの瞬時加速で雪兎はダリルが纏う【ヘル・ハウンド】の懐に飛び込むとその大きな手でダリルの頭部を掴み地面に押し倒すように叩き付ける。
「あがっ」
「先輩っ!?」
「まだ終わりじゃねぇぞ?」
そして、そのまま再び瞬時加速で地面に叩き付けたダリルを押し付けながら直進し引き摺っていく。
「自慢の【イージス】も展開する時間なきゃ意味ねぇわな?止めだ、ディザスター・ヒート」
最後に雪兎はダリルを持ち上げると掌にある砲口から爆炎を放ちアリーナの壁まで吹き飛ばされたダリルはあっという間に戦闘不能になってしまった。
「なっ・・・・!?」
「鉄壁とか言うからどんなもんかと思えばこの程度か・・・・」
その声には明らかな失望が感じられた。
「次はあんたの番だ。フォルテ・サファイア」
「くっ!」
雪兎がフォルテに視線を向け瞬時加速で迫るとフォルテはすぐさま正面に氷壁を作り出してブロックしようとするも。
「誰が直進しか出来ないなんて言った?」
声がしたのは背後からだった。
「ひぃっ!?」
「今のは・・・・
雪兎が行ったのは氷壁に当たる前に横方向に瞬時加速を行い軌道修正をし、更にもう一度瞬時加速を重ねてフォルテの背後へ回るというものだった。これは複数のスラスターを用いた連続瞬時加速で方向転換までこなす神業だったのだ。
「何よ、アレ・・・・あんなのどうしろって言うのよ」
「・・・・」
鈴は雪兎の変態的な神業に戦意を落とすが、一方で一夏は試合を食い入るように観ていた。
「くっ、それならこれでどうッスか!!」
なんとか雪兎の魔の手を逃れたフォルテは自身の周りを氷壁のドームで覆い隠し全面防御を展開する。しかし、それは悪手だった。
「終わったね」
「どういうことだ?あの氷壁は彼女達の得意とする鉄壁だぞ?そんな簡単に破れはーー」
「言ったよね?ルシフェリオンは超火力仕様だって」
「ちょっと待ちなさいよ・・・・あのパック、アドヴァンスドとか言いながら全然装備無いわよね?」
「じゃあ、
そう、アドヴァンスドは通常のパックの複数分の容量を使用する装備。だが、ルシフェリオンにそんな容量を使っているようには見えない。
「ルシフェリオンに使われた容量はいくつ分だ?」
「四基分・・・・雪兎はそう言ってたよ」
ライトニング・アサルトよりも一つ多い。つまり、
「確かに終わったな・・・・」
雪兎は氷壁のドームを見て酷くつまらないものを見た顔をする。
「正直、マドカの時以上の失望だな、これは・・・・これで
そう言いながら雪兎は右手の掌を氷壁に向ける。
「・・・・コードSLB起動」
すると掌の砲口に超高温の炎が集束されていく。
「疾れ明星、全てを灼き消す焔と変われ・・・・ルシフェリオン・ブレイカー!!」
放たれた焔は氷壁など無かったかのように容易く氷壁を貫通すると、そのまま中にいたフォルテをアリーナの壁へと叩き付けた。絶対防御によって守られていたからフォルテ自身はなんともないが、彼女のIS【コールド・ブラッド】の装甲の表面は黒焦げになっており、その威力の凄まじさを物語る。
「・・・・これを防ぐつもりだったのなら楯じゃなくて城壁でも用意しておくんだったな」
試合は当初はもう少し拮抗した試合が予測されていたが、結果は雪兎の圧勝。それも蹂躙と言っていい圧倒的な試合だった。そして、雪兎は試合後に観戦している一夏に視線を向けた。
「・・・・やっぱりか」
「どういうことだ、一夏」
その視線の意味を理解した一夏に箒は説明を求める。
「この試合なんだけどさ・・・・雪兎は俺に見せてくれたんだよ。俺が目指す頂きを」
そうこの試合、雪兎は初めからダリルとフォルテなど眼中にはなく、一夏が目指すべき戦闘スタイルの極地を見せつけることが目的だったのだ。
「待ってやがれ・・・・絶対に追い付いてやる!」
この一夏の決意が白式にある決断をさせることになるとはこの時は誰も思いもしていなかった。
はい、蹂躙戦でした。
イージスコンビが哀れ過ぎるけれど、雪兎が今後裏切る二人に手加減なんて真似はいたしません。
そして、一夏が更なるパワーアップフラグを・・・・
次回予告
雪兎の試合が終わり他のメンバーの試合が始まると思いきや再び学園を無人機が襲う。しかも、その数は八機!?一夏達は無事に無人機を倒すことが出来るのか?
次回
「無人機再来! 兎、特訓の成果を見る」