IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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七章の最後は兎師匠のターンです。新キャラはちょっとぶっ飛んだやつです。


49話 おいでよ天災のラボ! 兎、ペットを飼う!?

マドカの件は未成年であること、マドカの境遇、ナノマシンによる監視があったことなどとマドカがサイレント・ゼフィルス強奪時に殺しをしていないこと、サイレント・ゼフィルスはちゃんとイギリスに返却されたこと、亡国機業の情報を話したこと、そして何よりも雪兎と千冬が保護するということもあって多くの国が保護観察という処分を認めた。キャノンボール・ファストで雪兎の脅威を目の当たりにして雪兎が保護すると言っているマドカをどうこうしようという国は表立ってはいないだろう。

そんなこんながあったがマドカは最近ではすっかり特訓メンバーとも親しくなってきて皆の妹分というポジションを獲得していた・・・・実力は雪兎やシャルロット、楯無に並ぶレベルなため他のメンバーもマドカに負けていられないとレベルアップに励んでいる。

そんなある日、雪兎の端末に珍しい人物から連絡があった。

 

『はろはろー。やあやあ我が弟子よ、元気にしてるー?』

 

それは雪兎の師匠でありISの開発者・篠ノ之束だった。

 

「珍しいですね、束さんが電話してくるなんて」

 

『そうだねー。ところで今度の土日は空いてるかな?』

 

「予定は特にありませんけど・・・・」

 

『では久しぶりに私のラボに来て欲しいんだよ。あっ、座標データは雪華に送っとくから』

 

「いいですよ。クロエやあいつ(・・・)にも会っておきたかったとこですから」

 

『それじゃあ、よろしくねー』

 

こうして、雪兎は約半年振りに束のラボへと赴くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かこの辺のはずなんだが・・・・」

 

そして土曜。雪兎は千冬からの依頼という名目でISでの飛行許可を取って束の移動ラボである原子力潜水艦【吾が輩は猫である、名前はまだない】のいると思われるエリアにやってきた。

 

『来たね!ちょっと待てって』

 

すると束から通信があり潜水艦が浮上してくる。

 

『いつものところから入ってねー』

 

ハッチが開き、雪兎は慣れたようにハッチから中へと入っていく。

 

「やあやあ。よく来たね、我が弟子よ」

 

「来ましたよ、師匠」

 

「「いぇい!」」

 

まずはハイタッチを交わす師弟。

 

「そういえば面白い娘を拾ったんだって?」

 

「マドカのことですか?」

 

「そうそう、ちーちゃんのクローンって聞いてるけど、どんな娘?」

 

それからしばらくマドカや箒、一夏の近況を話していると・・・・

 

「お久しぶりです。雪兎兄様」

 

「クロエか、久しぶり。半年振りか?」

 

束のラボにいるもう一人の住人クロエ・クロニクルが兎(ロップイヤー)を抱いてやってきた。

 

「ミュウも久しぶりだな」

 

「きゅ」

 

この兎、ただの兎ではない。何処ぞの施設で実験動物になっていた兎なのだが、人語を理解するくらい賢いのだ。それを施設を叩き潰した束が面白がって連れて帰ったのがこのミュウと名付けられた兎なのだ。ちなみに名前の由来はミュータントな兎から。

 

「雪兎兄様、また料理の腕が上がりました」

「へぇー、なら後で食べさせてもらおうか」

 

「はい。束様は美味しいとしか言ってくださいませんから雪兎兄様にちゃんと評価していただきたいです」

 

「本当に我が弟子には感謝してるよ。ゆーくんがくーちゃんにお料理教えてくれたからラボでも毎日美味しい料理が食べられるんだから。それよりもくーちゃん、私のことはお母さんと呼んでいいんだよ?」

 

「いえ、束様は束様ですので」

 

「またやってんですか、そのやり取り」

 

束はことある毎にクロエに「お母さん」と呼ぶように言っているのだが、クロエにとって束は恩人であるためか「束様」と呼んでいる。一方で雪兎は料理などを教えたりしていたらいつの間にか「雪兎兄様」と呼ばれるようになっていた。

 

「それで、今回の呼び出しの理由は何なんですか?」

 

「それなんだけどね。ゆーくんが収集したデータと・・・・みゅーちゃんをしばらく預かってほしいんだよ」

 

「はぁ?ミュウをですか?」

 

「ちょっと忙しくなりそうでね」

 

おそらく専用機限定タッグマッチに出てくるゴーレムⅢ達のことだろうか?と雪兎が考えると。

 

「やっぱりゆーくんは色々知ってるみたいだね」

 

「!?」

 

束は心を読んだかのような指摘をする。

 

「前は聞かなかったけど、束さんが当ててみせよう!ズバリ、ゆーくんはこの世界について(・・・・・・・・)色々知ってるよね?外の世界(・・・・)でこっちのこと知って生まれ変わった。違うかな?」

 

「束さんはそういうオカルトじみたこと信じないと思ってたんですが・・・・正解ですよ」

 

転生者であることを看破され、雪兎は大人しくそれを認める。

 

「まあ、私としてはあまり認めたくないけどゆーくんという実例がいちゃね・・・・で、何処まで知ってるの?」

 

「この後束さんがやろうとしてることと・・・・今年の冬近くのことまでですかね?そこまでしか本で出てなかったので」

 

「本か、ってことはライトノベルか何かかな?」

 

「大正解ですよ。でも俺というイレギュラーがいたんで色々変わってますし、アニメとかにもなっててそのエピソードも混ざってたりしますからもうあまり当てにはならないと思います」

 

「そっか、でもイレギュラーっていうのは少し違うんじゃないかな?」

 

「えっ?」

 

「ゆーくんはちゃんとこの世界の住人だよ。君を私は認めてる」

 

「束さん・・・・前に雪華にも言われました」

 

「おっ?二次移行の時かな?」

 

「はい」

 

「とりあえず今はゆーくんが何を何処まで知ってるかまでは聞かないよ。聞いちゃったらやっぱりつまらないもの」

 

前回と同じく束はそう言う。

 

「多分、ゆーくんにとっての本番はここからじゃないかな?」

 

「俺にとっての本番?」

 

「そっ。きっとこれからはゆーくんの知らない事ばかりのはず。だから油断はしちゃ駄目だよ?」

 

「はい、わかってますよ」

 

「よろしい。ではみゅーちゃんのこともよろしくね?ちーちゃんには連絡しといたから」

 

「根回し済みでしたか・・・・まあ、ミュウなら手間はかからないからいいですけどね」

 

何せ下手な子供より賢い兎だ。ちゃんと言って聞かせれば問題無いだろう。

 

「じゃあ、ついでにコレも手伝ってもらおうかな?」

 

そう言って束はモニターにゴーレムⅢと思われる無人機のデータを表示する。

 

「それ、やっぱ束さんが作ったやつかよ!?」

 

「だっていっくんや箒ちゃんを強くしようと思ったら百の模擬戦より一回の実戦でしょ?」

 

「だから天災なんて呼ばれるんですよ・・・・」

 

「そういうゆーくんだって兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)だっけ?そう呼ばれてるじゃん」

 

どっちもどっちである。

 

「これさぁ、前に作っておいたやつなんだけど。今のゆーくんだと全部一人で殲滅出来ちゃうよね?それじゃあ意味ないからもっと強化しようと思っててね」

 

「まあ、こいつら程度なら俺でなくとも殲滅されますね・・・・千冬さんに」

 

「あの打鉄・参式とかいうISでならちーちゃんでもやれるね・・・・」

 

二人の脳裏に参式でゴーレムⅢを叩き斬る千冬の姿が浮かぶ。

 

「・・・・俺が協力したことはバラさないでくださいよ?」

 

雪兎としても楯無や簪が怪我をしないのであればあの襲撃はレベルアップにもってこいのシチュエーションのため、少し協力することに。

 

「あっ、束さん。千冬さんには参式渡してるんで暮桜は無理に封印解除しなくて大丈夫ですよ」

 

「そうだね。あれがあれば必要ないかもね」

 

「あと、クロエをお使いに出す時は十分注意してくださいね。亡国機業とかいう馬鹿が人質とかにしようと拉致るかもしれないので」

 

「くーちゃんを?わかった注意しておくね。万が一そんなことしたら私自ら殲滅してあげるよ」

 

さりげにワールドパージや亡国機業との邂逅も潰しにかかる雪兎。本当に亡国機業は泣いていい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、クロエの料理を食べてからミュウを連れて雪兎は学園に戻った。

 

「お帰り、雪兎・・・・って、どうしたの、その兎」

 

「束さんが預かってくれって渡された兎。名前はミュウって言うんだ」

 

「きゅ」

 

すると、「よろしくな」と言っているのか前足を上げてシャルロットに挨拶するミュウ。

 

「・・・・えっと、もしかしてこの子。人の言葉分かるの?」

 

「きゅっ」

 

『その通り』

 

今度は何処からともなくプラカードを取り出したミュウ。

 

「・・・・」

 

「そのプラカードは楯無さんの扇子と同じ原理な」

 

「うん、雪兎が連れてきた兎だし、普通じゃないのは予想してたけど。ここまでとは僕も予想してなかったよ」

 

こうして雪兎とシャルロットの部屋に新たな住人が増えたのであった。




という訳で七章はこれにて閉幕です。
そしてスーパーラビット・ミュウちゃん登場です。この兎、束の興味を引くだけあって色々おかしい兎です。(♀)

ゴーレム超強化。特訓メンバーでないダリルとフォルテは泣いていい。


次回予告

襲撃に備え専用機持ちのレベルアップを図る専用機持ち限定タッグマッチが開催されることとなり、一夏のパートナーを廻りラバーズがいつもの如く大騒ぎ。一方、雪兎はキャノンボールのせいかタッグマッチなのに一人で参加させられる羽目になり・・・・

次回

「専用機限定タッグマッチ!一夏のパートナーは? 兎、ハブられる」

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