雪兎にとっても今回の件は想定外の事態です。
キャノンボール・ファストは結局雪兎と本音の勝利に終わり、続く二年生のレースも試作バイザーボードを手にした忍の圧勝で終わった。三年生?ああ、あのダリルとかいうアメリカ代表候補生が圧勝していた。
「「「「一夏/君/さん、誕生日おめでとう!」」」」
その後、予定通り一夏の誕生会が織斑家で開催されたのだが、そのメンバーは・・・・
主役の一夏、箒、鈴、セシリア、ラウラのラバーズに雪兎、シャルロット、聖、簪、本音の特訓メンバーと楯無、虚の生徒会メンバーに新聞部の薫子、更に中学の友達である弾と数馬に弾の妹の蘭、一夏の姉である千冬と一緒になった真耶に雪菜、そして・・・・蘭に連れられてきた
「マドカ、お前はどうしてここに?」
「いや、チケットの礼を言わねばと蘭に話したら今日はここで集まるからと連行された」
「そうか・・・・」
色々とイレギュラーなことが発生していて流石の雪兎も困惑している。
「なぁ、その子。千冬姉に似てないか?」
そんな中、一夏が気付かなくていいことに気付く。
「言われてみれば・・・・」
「その娘、雪兎の知り合いらしいな。どこのどいつだ?」
流石に千冬は誤魔化せないようで、明らかにマドカを敵視している。
「ゆーくん、怒らないからお姉ちゃんに説明してくれないかな?」
雪菜も何かを察したらしく雪兎とマドカに逃げ場はなかった。
「・・・・マドカ、お前さ。こっち側来る気ねぇ?」
「何をいきなり」
「こっち側に来てくれるならお前は俺が何とかしてやるから」
「・・・・どのみちこのままでは組織には戻れんだろう。好きにしろ」
流石のマドカもこの人数と人員は厳しいらしく両手を上げて降伏する。
「本人の承諾も取ったんで説明するが・・・・最初に言っとく。こいつのことは俺に預けてもらえないか?」
「どういう意味だ、雪兎」
「まあ、大体の人は察してると思うが、このマドカは先日のサイレント・ゼフィルスの操者で亡国機業の一人だ」
「「「「えっ!?」」」」
「といっても体内にナノマシン入れられて従う他なかったらしいんだがな・・・・今は俺が無効化してるから安心してくれ」
「お前はレースのアドヴァンスドといい、どれだけ私を驚かせれば気が済むんだ・・・・」
「いやー、今日のレース見せて少しは気が変わって組織抜けてくれるようにしようかと思ってたんですけど、蘭が連れて来ちゃったんで前倒ししようかと」
「お前、そんなこと考えてたのか・・・・」
これにはマドカも呆れている。
「だが、亡国機業の手の者となるとそう簡単にはーー」
「マドカ、ゼフィルス持ってる?」
「修理は終わったから持っているが・・・・」
「それの返却を条件に取引しようかと」
「雪兎君、もしかしてサイレント・ゼフィルスを手土産に組織から亡命させる気?」
「そういう訳です、楯無さん。そういうの得意でしょ?」
そう、雪兎がマドカに接触した理由はこれだった。本来なら黒騎士事件の時に取っ捕まえてやるつもりだったのだが、先も言った通り蘭のファインプレーで前倒しになったのだ。
「それより、何で千冬姉に似てるんだ?」
「クローンか」
ラウラは何か思い至ることがあったのかマドカが千冬のクローンであると見抜いた。
「そうだ、私は織斑千冬を、ブリュンヒルデを量産しようなどという下らない研究の産物だ」
「「「「!?」」」」
これには何となく察していた千冬達以外も絶句する。当然だ。これはVTSなんて比べ物にならない問題だったからだ。
「なるほどね、ゆーくんがマドカちゃんを庇うのはそういう理由なのね」
「そういう訳さ、姉さん。こいつは失敗作だの名前なんてどうでもいいだのと存在を認められなかったんだ」
未だに一個人として扱われないマドカを雪兎はどうにか世界に認めさせたかったのだ。
「・・・・雪兎、お前の言いたいことはわかった。だが、これはある意味で私の問題でもある。お前一人に背負わせては教師としても姉弟子としても失格だ」
「それじゃあ!」
「保護責任者はお前と私と更識楯無として処理する。ゼフィルスに関してはオルコット、お前も手を貸してもらうぞ」
「わかりましたわ。サイレント・ゼフィルスが穏便に祖国に戻るのでしたらわたくしが説得してみせますわ。雪兎さん、貴方はわたくしとの約束を果たしていただきました。次はわたくしの番です」
「千冬さん、セシリア・・・・」
千冬は教師・姉弟子としてセシリアはゼフィルスを取り返してくれたことへの返礼として協力を約束してくれた。
「戸籍はどうする?ちーちゃんのクローンみたいだし、やっぱりちーちゃんとこで?」
「ちーちゃん言うなと言っているだろう・・・・マドカと言ったな?希望はあるか?」
「・・・・私は
「えっ?」
「織斑千冬は何れ超える目標だ。それに、そこの
「この娘、俺に対してなんかキツくない?」
こうしてマドカは亡国機業からの亡命者として雪兎達の保護下に入ることとなった。ついでに戸籍は雪兎の妹という扱いになり、蘭と同い年ということで、来年度IS学園に入学させるまでは学園で保護ということになった。
「こ、これからよろしく頼むぞ、に、兄さん」
「とんだ妹ができちまったな・・・・」
その後、この話は口外不可ということが言い渡され、その後、一同は誕生会へと戻っていった。この面子、案外神経が図太い。
それぞれのプレゼントは、箒が着物、鈴が手打ちのラーメン、セシリアがティーセット、ラウラがナイフ、シャルロットが時計、弾と数馬がそれぞれのオススメのバンドのCD、蘭が手作りケーキ、楯無が小型の護身用スタンガン、簪が好きなアニメの総集編のディスク、聖がクッキー、本音がオススメのお菓子詰め合わせ、虚は好きな日本茶の茶葉、薫子がどこで知ったのか一夏が写真を撮るということで新しいカメラ、千冬はトレーニング用のリストバンド、真耶が入浴剤とバリエーション豊かである。
「何だ、俺がトリなのか?」
「うん、何だか雪兎の後だと皆霞んじゃいそうで・・・・」
「「「「うんうん」」」」
シャルロットの言葉に全員が頷く。
「まあいいか・・・・俺はこれだ」
そう言って雪兎が取り出したのは簪と同じく映像ディスクだった。
「それは?」
「過去のモンド・グロッソの中から俺が選りすぐりの試合を解説付きでまとめた総集編ディスクだ」
思ったより普通であった。
「一夏の参考になりそうな試合をまとめた一夏エディションと千冬さんの試合をまとめた千冬エディションもあるぜ」
「ぶーっ!?」
この不意討ちに千冬が噴き出す。
「やっぱ姉弟とあって参考になる試合が多くってな」
「おお!助かるぜ、雪兎」
「「「「やっぱり雪兎に持ってかれたー!!」」」」
ラバーズが何か言っているが無視である。その後も皆でケーキを食べたり、弾と虚がいい雰囲気になったり、一夏にラバーズが誰のプレゼントが一番だったか聞いたりと賑やかに誕生会は過ぎていった。
まさかの蘭のファインプレーでマドカが雪兎の妹になりました。本当にどうしてこうなった・・・・
蘭がいい仕事しすぎて黒騎士事件消滅です。
今回はキャラが動いた感がすごいです。本当ならもっと後だったんだけどなぁ、マドカの回収。
次回予告
マドカが仲間に加わり更に賑やかになる一同。そんなマドカに雪兎がまたしても自重を忘れた専用機を・・・・
次回
「凶鳥の系譜 兎、マドカの専用機を作る」