IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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レース開始です。
【LA:ライトニング・アサルト】がヤバい・・・・


46話 レーススタート! 兎、本気出す

『レーススタート!!』

 

スタート直後に行動を起こしたのは鈴だった。背面に六基の龍玉を回し龍翔を発動して周りを吹き飛ばしながらスタートダッシュを決める。

 

「よし、これなら!」

 

「読んでたぞ、鈴」

 

「ソニックレイダーの方が速かったね」

 

「【J:イェーガー】の性能に助けられたよ」

 

しかし、雪兎、聖、シャルロットの三人はそれをかわして鈴と並ぶ。

 

「げっ!?」

 

「悪いが俺も本気でいくぞ!」

 

雪兎がそう言うとシールドブースターキャノンの装甲の一部がスライドし、ミサイルが現れる。

 

「な、内蔵式ミサイル!?」

 

「持ってけ!」

 

打鉄弐式の山嵐に匹敵するミサイルの雨に鈴は龍玉を雪兎に向けて圧縮した空気の壁【嵐壁】でガード、シャルロットと聖は回避しながら迎撃する。

 

「あばよー!」

 

その隙に雪兎は二重瞬時加速で一気に距離を空けてしまう。

 

「ついでにこれも持っていけ」

 

更に加速中に振り返り、ガードで身動きを止めた鈴にガングニールを向け、レールガンを撃ち込む。

 

「ちょっ!?」

 

慌てて嵐壁でガードするも、嵐壁に触れた瞬間弾丸が破裂し閃光が鈴を襲う。

 

「うわぁー、あのタイミングで閃光弾とかえげつない・・・・」

 

「僕達もボーッとしてたらやられるよ」

 

高機動用のバイザー越しとはいえ真近くで閃光弾を食らったために鈴は視界を失いバランスを崩す。その間に鈴に足止めされた後発組が次々と鈴を抜いていく。

 

「鈴もやってくれたが、雪兎も恐ろしいな・・・・」

 

「ああ」

 

「おお、やられてしまうとは情けない。えい」

 

挙げ句に視界を失っている間にナインテイルにシールドエネルギーを吸われ、鈴はあっという間にリタイアとなった。

 

「本音、意外と怖いことを・・・・」

 

つまり、下手に雪兎に近付くと行動不能にされてナインテイルにエネルギーを吸われるという恐ろしいコンボが成立したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マドカside

 

「前門に兎の皮を被った何か、後門に九尾と言ったところか」

 

レースの様子を見て私はそう思った。あの布陣、打ち合わせしていたとは思えないが、あの九尾のようなISの操者の性格を雪兎が把握していて行ったと見るのが正しそうだ。

 

「相変わらず雪兎さんは容赦ないなぁー」

 

「何だ、蘭もあいつの知り合いだったのか?」

 

「はい。そう言うマドカも?」

 

どうやらこの蘭という少女も雪兎の関係者らしい。

 

「ああ、最近知り合ってな・・・・今日もあいつが招待してくれたんだ」

 

「あー、そっちも相変わらずなんですね・・・・」

 

「?」

 

「私は相談に乗ってもらったり、色々助けてもらってて、実の兄より兄らしい人といいますか・・・・」

 

その蘭の言葉に私は納得する。確かに私も色々と話したり、服を買いに連れていかれたり、雪兎からはどこか兄っぽさを感じていた。

 

「兄か・・・・確かにそんな感じだな」

 

そんな中、再びモニターへと視線を移すと血縁上では兄に当たる男(織斑一夏)の姿が映る。

 

「私を招待してくれたのはあの織斑一夏さんなんですよ」

 

そう言う蘭の表情は私にもわかるくらいに恋する乙女の顔をしていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから新たに脱落したのはセシリアだった。どうやら機体制御で手一杯のところを雪兎に狙撃されてバランスを崩して吹っ飛び、本音のナインテイルに吸われたようだ。

 

「なんか本音のやつ誰かがやられるのを待ってないか?」

 

「うん、そんな気がする」

 

偶然できた布陣とはいえ、雪兎も本音も互いに利用しない手はないというところなのだろう。

 

「しかも、雪兎のやつ。我々をおちょくっているな・・・・」

 

そう、雪兎はあえて後ろ向き(・・・・)で飛びながらガングニールでこちらを狙っているのだ。コーナーなどでは機体を一回転させ、エアロスラスターの噴射口を砲口にして小さな衝撃砲までバラ撒いてくるのだ。

 

「それに、雪兎はまだビットやシールドブースターキャノンを使ってない・・・・あれまで使われたら本当に何もできなくなるよ」

 

一度、そのフルスペックを相手にしたシャルロットも警告する。そう、今現在、雪兎と本音の除く全員はいかに雪兎を攻略するまで限定という同盟を結んでいたのだ。

 

「全員で一斉に攻めてもあのミサイルと衝撃砲を食らってやられるな」

 

「ああ、しかも、下手に動きを止めれば後ろのナインテイルにやられる」

 

「かと言って本音を先に墜とそうとすると雪兎は絶対に本音ごと私達を墜とすよ?」

 

「では、あの時と同様に私が一夏を乗せて行くのはどうだ?」

 

「雪兎に一度使った戦術が通じるとは思えないんだけどなぁ」

 

考えれば考えるほど雪兎のラスボスっぷりがわかる。

 

「多方面からの波状攻撃で隙を作ってシャルロットのバスターライフルか一夏の0距離での荷電粒子砲が確実だろう」

 

「それしかないか・・・・」

 

こうして対雪兎同盟の反撃が始まる。

 

「やっぱりそうきたか」

 

散開して波状攻撃を仕掛けようとする一夏達を見て、そして観客席に蘭と並んで観戦しているマドカを見つけると雪兎は笑みを浮かべた。

 

「いくぜ、相棒・・・・見せてやるよ、これが【LA:ライトニング・アサルト】の力だ!」

 

最初に斬りかかってきた箒の紅椿をガングニールのランスモードで弾き、急かさず攻めてきた聖の進路をシールドブースタービットで阻害してシールドブースターキャノンを構えるラウラにレールガンモードのガングニールを放つ。更に上からグリフォンを射ちながら突撃してくるシャルロットをエアロスラスターの衝撃砲で迎撃し、動きを止めたところを雪羅を構えた一夏が瞬時加速で突っ込んでくるが、シールドブースターキャノンで返り討ちにする。

 

「どうした、それで終わりか?」

 

「ま、魔王・・・・」

 

聖は思わずそう呟くが今の雪兎は正に魔王の如くといったところだ。

 

「それなら今度はこちらからいくぞ?」

 

すると、ガングニールのランスモード時に穂先となる部分が開きボウガンのような形に変形する。穂先の内側にはいくつもの砲口が存在し、それを一夏達に向ける。

 

「!?皆!逃げて!!」

 

それが何かを知るシャルロットは皆に警告する。

 

「遅い!スプレッドバースト!!」

 

全ての砲口から一斉に発射された拡散レーザーが一同に襲いかかる。

 

「まだそんなのまで隠してたのかよ!?」

 

回避が間に合わないと思った一夏は雪羅のエネルギーシールドを展開してガードするが・・・・

 

「計算通りなんだよ、ミサイルフルバースト!!」

 

そこで動きを止めてしまった一夏に無数のミサイルが放たれた。

 

「ちょっ!?」

 

「一夏!?」

 

爆炎に包まれた一夏はシールドエネルギーを失い脱落。残されたのは箒、シャルロット、ラウラ、聖、簪の五人。だが、魔王(雪兎)の攻撃はまだ終わっていなかった。ランチャーモードに変形させたガングニールでランスチャージをラウラに食らわせ、そのまま0距離射撃でラウラを聖の進行先へと吹き飛ばす。

 

「きゃあ!?」

 

「うわぁ!?」

 

そこにランスチャージ中に放っていたミサイルの雨が降り注ぎラウラと聖も脱落。

 

「ラウラ!聖!」

 

「機体性能と技量が違い過ぎる・・・・」

 

「簪!」

 

残りは三人。だが、そこで忘れていたもう一人の敵が簪に迫る。

 

「えっ?」

 

「かーんちゃん!捕まえた!」

 

そう、本音のナインテイルだ。

 

「しまった!?」

 

ナインテイルに取り付かれ打鉄弐式はシールドエネルギーを奪われていく。

 

「俺も忘れんなよ?」

 

気付けば雪兎は箒の目の前におり、ガングニールを一突きする。

 

「くっ!」

 

何とか雨月と空裂で防ぐも再びランチャーモードとなったガングニールの砲撃で箒も吹き飛ばされる。丁度そこで簪の打鉄弐式のシールドエネルギーはナインテイルに吸い尽くされた。

 

「あとはシャルだけか」

 

「ぼ、僕は簡単にはやられないからね!」

 

その後、シャルロットは善戦したものの、雪兎の使う【LA:ライトニング・アサルト】と【J:イェーガー】では地力に差がありすぎてあえなく撃墜された。結果、雪兎と本音以外が全滅というとんでもない幕引きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・地獄を見る。誇張でも何でもなかったという訳ね」

 

観客席でそれを見ていたスコールはその圧倒的な力に以前雪兎が言っていたことが事実だったと理解する。

 

「・・・・彼と協力関係結んで良かった」

 

シャルロットの父親であるデュノア社社長も雪兎と敵対しない道を選んだ過去の自分を誉めたかった。

 

「またとんでもないの作ったねぇ・・・・」

 

棗局長は【LA:ライトニング・アサルト】の性能を見て改めて雪兎のとんでもなさを知る。

 

「あれはきっと兎の皮を被った災害だ」

 

雪兎の高機動時バイザーが兎の頭部を模したような形をしており、某試験部隊と同じ兎のエンブレムを見て誰かがそう呟き、雪兎の二つ名が決まった。『兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、このレース以降、雪兎のアドヴァンスドパックシリーズは余程のことがない限り使用を控えるようにと学園から通達があったんだとか。




ついに雪兎が天災と同じ災害認定を受けました。

メディアデビュー戦でこれとか色々ヒドイ・・・・


次回予告

様々な人に衝撃やトラウマを与えたキャノンボール・ファストが終わり一夏の誕生会が行われることに。そして、何故かそこにはマドカの姿も!?

次回

「一夏の誕生会 兎、一夏を祝う」

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