IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回はマドカとの対話です。
また、今後のための仕込み回でもあります。


44話 喫茶店の雪兎とマドカ 兎、少女と話す

喫茶店に入った二人は角のテーブル席に座り、店員にアイスコーヒーを頼むと話を始めた。

 

「前にお前は言ったな、本当に成したいことがあるのならそんな借り物の力など使わず自身の力で成せ。と・・・・あれはどうゆう意味だ?」

 

「大体わかってるんじゃねぇか?お前はそもそも千冬さんのクローンの失敗作として破棄された存在だろ?」

 

「やはり知っていたか」

 

そう、マドカは千冬のような実力者を量産しようなどという狂気の研究の産物だった。

 

「それが千冬さんを超えたいと願うならお前が証明すべき力は亡国機業みたいな組織では手に入らん」

 

「かもしれんな・・・・では、サイレント・ゼフィルスが私に向いていないというのは?」

 

「そっちはもっと簡単だ。千冬さんが近接よりの万能型なのに対してマドカはオールラウンダーだろ?近接も射撃もバランスのいいIS、しかも高機動型なら尚いいかな?そんなお前が遠距離特化のゼフィルスじゃ能力の半分は殺してるようなもんだ。相性のいいISさえ使えればお前は間違いなく国家代表クラスの能力はある」

 

「・・・・」

 

雪兎の思わぬ高評価にマドカは驚く。事前にある程度情報を知っていたとはいえ、あの一戦で雪兎はマドカの実力を正確に見抜いていたのだ。

 

「どうした?」

 

「いや、何故お前はそこまで私をかってくれるのかわからなくてな」

 

「俺は評価は平等にするぞ?お前んとこのオータムとかいう馬鹿は調子にさえ乗らなきゃ強いんだろうけどな」

 

「違いない」

 

オータムが聞けば激昂しそうな会話である。

 

「あと、俺はお前を千冬さんのクローンとして評価してる訳じゃない。さっきの評価は織斑マドカとしての評価だ」

 

「!?」

 

これにはマドカもかなり驚いた。今までマドカは研究所では千冬の失敗作として、亡国機業ではただ力がある駒としてしか扱われておらず、織斑マドカとして見られたことはほとんどなかったのだ。

 

「そもそも、双子ですら育った環境とかで全然違うってのにクローン作っただけで千冬さんと同じ能力を期待するとか馬鹿なのか?あの人がどんな努力してたかとか、お前がどれだけ頑張ったかとか全部無視して失敗作だのどうでもいい扱いとか消えればいい」

 

雪兎の表情には明らかな怒りがあった。雪兎は前世の頃からマドカの扱いには少し腹を立てており、こうして接してみてそれが再燃したようだ。

 

「・・・・」

 

そんな雪兎に呆気に取られるマドカ。

 

「おっと、すまんすまん。お前に言ってもしょうがないことだったな」

 

そしてマドカは納得した。この天野雪兎という男は自分を織斑マドカを個人として見てくれる存在なのだと。

 

「お前もIS学園の生徒だったら専用機組んでやったんだがなぁ」

 

これは雪兎の偽りない本音だった。

 

「もし、そんなことがあればお前を頼るとしよう」

 

そんな都合のいい未来があるとはマドカは思わなかったが、気付けばそんな言葉を口にしていた。

 

「そういえば・・・・お前、通信端末持ってる?」

 

「ああ、一応支給されたのがあるが」

 

「ちょっと貸せ」

 

そう言うと、雪兎はマドカの端末に何かを送信する。

 

「よしっと」

 

「これは?」

 

「今度のキャノンボールの観戦チケットだ。あっ、スコールには一応言ったが、それ使って襲撃とかすんなよ?複製とかもやったらすぐバレるからやるな」

 

「どうしてこれを私に?」

 

「なんとなくだ。あと、そんな格好で来るなよ?絶対不信がられる」

 

「これしか服は持ってないのだが・・・・」

 

その言葉に今度は雪兎が驚いた。

 

「はぁ?亡国機業ってやつは・・・・よし、今から買いに行くぞ」

 

「しかし、私は金をーー」

 

「俺が払う。流石にこれは見過ごせん」

 

そう言うと喫茶店でコーヒー代を支払うと雪兎はマドカの手を引き服屋に直行する。

 

「すまないがこいつに見合う服を三着ほど頼む。予算は気にしなくていい」

 

「かしこまりました」

 

「ちょっ!?」

 

店員にマドカを引き渡し、マドカはしばらく店員の着せ替え人形と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・戻った」

 

マドカが隠れ家に戻ると、マドカはげんなりした顔をしていた。

 

「あら、遅かったわね・・・・どうしたの?その服」

 

スコールがマドカを出迎えると、そこには可愛らしい服を着たマドカの姿があった。

 

「天野雪兎に買って貰った」

 

「はぁ?・・・・今、何て言ったの、エム」

 

予想外の名前に流石のスコールも驚く。

 

「街で偶然やつに出会って、今度のキャノンボール・ファストに招待されて、服がいつものしかないと言ったら問答無用で買って押し付けられた」

 

買った後、せっかくだからそのまま帰れと言われ着替えさせられたまま帰されたのだ。

 

「・・・・」

 

マドカはどうしてこうなった?という顔をしているが、それはスコールも同じだった。

 

「どうかしたのか?って、お前、なんだその格好?」

 

今度はオータムが出てきてマドカの格好を見て首を傾げる。

 

「天野雪兎に偶然会って押し付けられたそうよ」

 

「はぁ?」

 

何故そうなる!?とオータムの顔にはそう書いてあった。

 

「しかも、キャノンボール・ファストにまで招待されたそうよ」

 

「ああ、それでそんな格好を・・・・って、あのガキはどんな神経してやがんだ!」

 

その日の彼女達は雪兎の行動が読めず、しばらく三人揃って頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その亡国機業を困惑させた雪兎はまた何か作っているようだった。

 

「ゆ、雪兎。それって・・・・」

そのモニターを覗き込んでシャルロットは絶句する。

 

「これがキャノンボールでの俺の切り札さ」

 

「鈴達の依頼をあっさり受けたと思ったら、そういうことだったんだね・・・・」

 

シャルロットが見つめるモニターにはこう表示されていた。

 

『超高機動型アドヴァンスドパック【LA:ライトニング・アサルト】』と・・・・

 




今回は短いですがここまで。
マドカの着てた衣装はスパロボのラトゥーニのアレを黒にしたやつです。

次回よりキャノンボール・ファスト開幕。
雪兎の切り札とは一体?シャルロットが絶句した理由も明らかに!


次回予告

とうとう開幕したキャノンボール・ファスト。一年生の専用機持ちによるレースにてまたしても雪兎がやらかす!

次回

「開幕!キャノンボール・ファスト! 兎、やはり自重しない」

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