IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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シャルロットVSオータム戦の次は雪兎VSマドカです。
捕まってしまったオータムはどうなるのか?
マドカは雪兎に勝てるのか?
何で亡国側の心配してるかって?雪兎が負けるイメージが浮かばないから。


40話 雪兎VSエム 兎、マドカと戦う

マドカside

 

『エム、オータムが捕まったわ』

 

その通信は私がIS学園に向かっている途中にきた。

 

「そうか。あれだけ大きな口を叩いておいてこの様か」

 

『救助に向かってくれる?』

 

「拒否権などないのだろう?了解した」

 

私の体内には監視用のナノマシンが投与されている。そんな私が逆らえる訳がない。

 

『でも、篠ノ之束博士の弟子、天野雪兎とは出来れば交戦しないで。彼は不確定要素が強すぎるわ』

 

天野雪兎。織斑一夏と同時期に発見された二人目の男性IS操者にしてISの開発者である篠ノ之束の弟子とされる人物だ。彼に関しては学園内にいるスパイですら全貌を把握できておらず、高い戦闘能力と開発力、そして謎の情報収集力を併せ持つ異才。オータムに関しても彼が何かしら手を打ったのだろう。となれば・・・・

 

「スコール、それは無理な話だ。既にこちらが捕捉されている」

 

そう、彼は私が何処から来るのか知っていたかのように私を待ち受けていた。

 

『何ですって!?今すーー』

 

「スコール?通信妨害(ジャミング)か」

 

この時、私は気付くべきだった。コアネットワークを用いた(・・・・・・・・・・・・)通信が通信妨害される(・・・・・・・・・・)というのがどういうことかということを、そして今、私が使用するISが(・・・・・・・・・・・)どのようなISだったのか(・・・・・・・・・・・)ということを・・・・

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、シャルロットを一夏の元に向かわせた雪兎は楯無や千冬との打ち合わせ通りにセシリアと鈴を連れて哨戒に出ていた。

 

「セシリア、お前には言っておかないといけないことがある」

 

「今、この場でということは襲撃犯に関することですの?」

 

「ああ、今回の襲撃者は亡国機業という組織の連中だ」

 

「それって最近、各国のISを強奪してるっていう・・・・」

 

「その通りだ、鈴。俺の独自の情報網でその連中は先日イギリスのとある施設を襲撃したという情報が入った」

 

「まさか!?」

 

そこでセシリアは何故雪兎が自分にその話をするのか理解する。

 

「BT2号機【サイレント・ゼフィルス】それが強奪されたISの名だ」

 

「BTってセシリアのブルー・ティアーズの・・・・」

 

「ああ、同じコンセプトの機体だ。だが、試験用のブルー・ティアーズに対してサイレント・ゼフィルスは実戦用だ。この意味がわかるな?」

 

「それであんたは【W:ウィザード】で来たわけね」

 

祖国の、それも自身のISと縁のある機体が敵の手にあると知り項垂れるセシリアに対し、鈴は雪兎が装備したパックが何を警戒してのものかを察する。

 

「それもあるが、もう一つこいつで通信妨害を張るためだ。お仲間に連絡取られると面倒だからな」

 

「あんた、本当に容赦ないわね・・・・」

 

「ついでに言うとこの通信妨害エリア内ではコアネットワーク経由の通信とか全部出来なくなるから二人は範囲外にいてくれ。特にセシリア、お前のブルー・ティアーズはビットも使えなくなる。だからすまんが鈴と他の警戒に当たってくれ」

 

「・・・・サイレント・ゼフィルスのことはお任せしても?」

 

出来れば自身で取り戻したいところだが、【W:ウィザード】の性能は学園では雪兎の次に熟知していると言ってもいいセシリアは邪魔になると判断し雪兎にサイレント・ゼフィルスのことを託す。

 

「可能なら奪還するが、最悪の場合は破壊する。それだけは承知しておいてくれ」

 

「わかりましたわ。破壊されたとしても祖国へは私が説明しましょう」

 

「助かる」

 

そう言うと雪兎は高度を上げ【W:ウィザード】の広域センサーでマドカの位置を調べる。

 

(そこか)

 

そして、マドカのサイレント・ゼフィルスをセンサーに捉えると指令部で指揮を取る千冬に連絡を取る。

 

「織斑先生、こいつ(【W:ウィザード】)のジャミングフィールドを使います。以後は通信が出来ませんのでご了承を」

 

『わかった。やはり敵は早速投入してきたか』

 

雪兎がジャミングフィールドを使うのは打ち合わせで説明されている。そして、それが何を意味しているのかを千冬も悟る。

 

「ええ、おかげで準備が無駄にならずにすみましたよ」

 

『そちらはお前に一任する。とっとと片付けてこい』

 

「了解!」

 

通信を終えると雪兎は二次移行によって進化した【W:ウィザード】の力を解き放つ。

 

「いくぜ、グラスパー!」

 

進化したグラスパービットは別々であったディフェンサーを取り込み支配と反射のビットを一体化させた装備だ。攻撃機能こそ相変わらず存在しないものの、ジャミングフィールドの生成や耐久性の向上により、より凶悪な能力を発揮する。そのグラスパーを広域展開し、ジャミングフィールドを展開してマドカを待ち構える。そして、マドカも雪兎の存在に気付き接近してくる。

 

「さあ、宴を始めようか。織斑マドカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マドカside

 

スコールとの通信が途絶えて程なくして私は天野雪兎と対峙した。彼の装備は紫色のローブのような装甲と魔導師の杖を連想させる武装をもつISだった。

 

「天野雪兎だな?」

 

「そう言うお前は織斑マドカ(・・・・・)だな?」

 

「!?」

 

これには流石の私も驚いた。初対面であるはずなのに目の前の彼は組織でも知る者が少ない私の本名を迷いもなく口にしたからだ。この男は危険だ。そう私の本能が警鐘を鳴らし、私はすぐさま攻撃を仕掛けようとビットを起動させようとするが、ビットは微動だにしない。

 

「な、何故だ!?」

 

今までこんなことは一度もなかった。ビットの部分展開や偏向射撃すら使える私に何故かサイレント・ゼフィルスは応えない。

 

「どうした?お得意のビットでも不調か?」

 

(思念誘導通信の不調?そんなはずは・・・・思念誘導通信(・・)!?)

 

それを見てニヤリと笑みを浮かべる彼を見て漸く私は自分の失態に気付いた。先程のスコールとの通信途絶。そう、コアネットワーク経由の通信すらジャミングするフィールド。これが意味するものは・・・・

 

「そのIS・・・・対誘導兵器特化武装か!?」

 

「ご名答。そのサイレント・ゼフィルスの主兵装は六基のBT兵器のビットとシールドビット、そして実弾・BT兵器を兼ねたスターブレイカー。確かに強力なISだ。だが、その長所たるビットと偏向射撃を封じられてどこまで戦える?」

 

彼は私がサイレント・ゼフィルスを使用してここに現れることを予測し、サイレント・ゼフィルスに対して最悪の相性を持つ誘導兵器封じの武装を用意していたのだ。スコールが戦うなと言っていた意味がよくわかった。

 

「舐めるな!」

 

しかし、私は負ける訳にはいかない。残されたスターブレイカーで攻撃を仕掛けるも彼は容易くそれを回避する。偏向射撃も思念誘導を必要とするため通常の射撃しか行えないため高出力の代わりに連射性能を落としたスターブレイカーでは彼を捉えきれない。

 

「その程度か?偏向射撃が使えるとはいえ、やはりお前にそいつ(サイレント・ゼフィルス)は向いてないな」

 

確かにこの機体は奪取した機体であるため私の専用機という訳ではない。しかし、私がこの機体で勝てなかったのはスコールくらいのもので決して弱い訳ではない。ビットだってだれよりも上手く使える自信はあるし、偏向射撃だってすぐに習得してみせた。なのに、彼はこのサイレント・ゼフィルスを私には向いていないと言い切った。

 

「つまらん。亡国機業ってのは他人が作った強力な兵器がなければ何も出来ない無能集団なのか?その程度で俺のいるIS学園に攻めてきたのか?はっきり言って失望した」

 

スターブレイカーの射撃をかわしながら彼は酷くつまらなさそうな表情を見せる。

 

「興が冷めた。出直してこい・・・・極限化、起動」

 

そう言うと彼のISは紫色の粒子に包まれ残像を残す程の加速で私に近付くといつの間にか二本に増えた杖のような武装は先端からビームの刃を生やした大鎌へと変貌し、サイレント・ゼフィルスを斬り刻んでいく。

 

「・・・・・織斑マドカ、お前が本当に成したいことがあるのならそんな借り物のISなんざ使わず自身の力で成すんだな」

 

初めての惨敗。意識が途切れようとする中、最後に聞いた彼の言葉には何故か温かさを感じた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エム!」

 

マドカを打ち倒した雪兎が彼女を確保しようとすると、雪兎の想定外の人物が姿を現した。

 

「ちっ、その金ぴかの趣味の悪いISは・・・・まさかあんたまで出てくるとはな」

 

それは金色のIS【ゴールデン・ドーン】を纏った亡国機業の幹部スコール・ミューゼルだった。

 

「やっぱり私のことも知っていたようね、天野雪兎」

 

マドカを両手で抱え、背面にある巨大なサブアームを向け、スコールは雪兎と対峙した。しかし、スコールは交戦の意識はないようだ。

 

「ここは退かせてもらえないかしら?」

 

「・・・・なら、次のキャノンボール・ファスト。こいつへの手出しをやめてもらおうか?」

 

スコールの提案に雪兎は条件を出す。

 

「私達がそんな口約束を守るとでも?」

 

「その場合、お前らが地獄を見ることになるぞ?」

 

「・・・・わかったわ」

 

天災の弟子である雪兎の言葉である。下手をすれば今後接触を考えている束の心情にも影響が出ると考えたスコールはその条件を飲んだ。

 

「ならとっとと行け。出来ればもう俺の前に姿を現すな」

 

スコールがマドカを連れて去ると雪兎はジャミングフィールドを解除して千冬に連絡を取る。

 

「すいません、撃退は出来ましたが思わぬ援軍が来て取り逃がしました」

 

『・・・・そうか、わかった。帰投しろ』

 

こうして雪兎と亡国機業の初の接触は終わりを告げた。




マドカには勝ちましたが、スコールの横入りで勝負はお預けに。また、さりげにキャノンボールの事件を潰しました。
そして、マドカは雪兎の言葉に何かを感じたようです。

次回で学園祭も終わり六章も閉幕予定です。

次回予告

亡国機業を無事に退けた雪兎達。しかし、雪兎にはまだやらねばならないことがあった。一方、一夏の王冠はどうなるのか?

次回

「王冠の行方と雪兎の後始末 兎、お説教(物理)する」

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