今回は前回アイディアを得た雪兎が新たなISを作るお話です。かなりクセのあるISになったんじゃないかなぁ?
そして、とうとうアレが千冬の手に・・・・
プールでの乱闘騒ぎの中、脱出した雪兎とシャルロットは景色のいいレストランで食事をしてデートを終えた。騒ぎを起こした二人は何故か全てを真耶の代わりに迎えに行った一夏のせいにして@クルーズで高級パフェを奢らせたらしいが、後日、雪兎とシャルロット、そして簪達の証言により一夏も流石に理不尽だとキレて数日二人は口を聞いて貰えなかったそうだ。そして、雪兎達がそこでデートしており、邪魔されたことへの意趣返しだと知ると二人揃って泣きついてきた。などと色々あったが、今は平常運転だ。セシリアとラウラも一週間ほど帰省しているし、一夏もまだ実家のため、雪兎の部屋は静かである。
「よし、こっちの調整はこんなもんか」
今やっているのは箒が紅椿を手に入れ使われなくなった打鉄・参式の調整だった。雪兎は後に起こるとある事件に備え参式をある人物に渡すため調整し直していたのだ。
「今日は千冬さん、学園に来てたよな?」
その人物とは千冬であった。原作では彼女の専用機である暮桜はとある理由で凍結処理がされており、千冬は今はISを所持していないのだ。先日の鈴とセシリアの起こした事件の後始末の書類とかで出勤していたと雪兎は記憶している。
「受け取ってもらえるかな?」
そんなことを考えながら雪兎は職員室へと向かった。
「失礼します。織斑先生はいらっしゃいますか?」
「ん?天野か、珍しいな。お前が休みに私を訪ねてくるなんて」
訪ねてきた雪兎を千冬は物珍しそうに見た後、入室を許可し自分のデスクへと呼んだ。
「ちょっと渡したいものがありまして」
「渡したいもの?」
「これです」
そう言って雪兎は再調整を終えた参式を千冬に手渡した。
「これは・・・・参式か?何故これを私に?」
「箒も紅椿を手に入れて使い手がいなくなりまして・・・・他の人ではちょっと手に余るISなので預かっていただけないかと」
「お前は今後も何か起きると思っているのだな?」
雪兎の思惑はあっさりと千冬に見抜かれた。
「バレました?」
「何年お前と付き合いがあると思っている。確かに今年に入ってからトラブルに事欠かんし、備えておくことも必要だろう。だが、何故私に?」
「暮桜、今は使えないんでしょ?」
「・・・・束にでも聞いたのか?まあいい、確かに今は暮桜は使えん。しかし、それでも訓練機ぐらいは使えるぞ?」
「それじゃ間に合わない事態のためにも現状切り札とも呼べるこいつは織斑先生に持っていて欲しいんです」
いつになく真剣な雪兎に千冬は参ったと息をつき参式を受け取る。
「・・・・わかった。お前がそこまで言うなら受け取ろう」
「コアは初期化して再調整してあります。整備が必要な時は俺に言ってください」
「お前が何を危惧しているかは知らんが、この剣を預かる以上は何とかしてみせよう」
こうして守護者の剣は世界最強の手へと渡った。
翌日、千冬は真耶を伴って早速アリーナで参式を試すことにした。すると、パーソナライズやフィッティングが開始され参式は名実共に千冬の剣となった。
「あいつ、やってくれたな・・・・」
しかも、先行して千冬のデータがある程度入っていたのかあっという間にパーソナライズとフィッティングは終了した。そこで千冬はあることに気付く。
「ん?前とカラーリングが違う?」
そう、以前は打鉄と変わらぬカラーリングだったのに対し、今の参式は所謂親分カラー、ゼンガー・ゾンボルトが使用していたものと同じカラーリングになっていたのだ。更に出力調整も千冬の癖に合わせてあり、このISならば一夏達専用機持ち達が束になってかかってきても負ける気がしなかった。
「こんなものを私に渡すとはな・・・・その信頼、応えねば大人の恥だな」
それからしばらく参式を動かしていたが、その規格外っぷりに真耶が絶句していた。
その頃、雪兎は先日アイディアを得た新たなISの設計に取り掛かっていた。
「雪兎、それってこの前プールで考え事してた時の?」
丁度、部屋を訪れていたシャルロットは画面に表示される一風変わったISの設計データを見てそれがサーフィンをしていた時に雪兎が着想を得たものだと気付いた。何故なら、そのISに装備された特殊な装備はまるでサーフボードのような形状をしていたのだ。
「ああ、昔、前世でこんな装備で飛んでるロボットとかのアニメが流行ったことがあってな」
しかも、このサーフボード、分離・変形・合体によって様々な武装へと変貌するのだ。
「雪片弐型と同じ擬似第4世代武装【バイザーボード】だ。こいつも別のアニメから着想を得た装備さ」
この【バイザーボード】複数の種類があり、状況に応じて切り換えれるので雪兎の雪華と紅椿の中間という印象を受ける。
「ほんと、雪兎の前世の世界って凄いこと考える人がいたんだね・・・・」
こんなアイディアがあちらの世界ではゴロゴロ転がっていたのだと思うと、シャルロットはその世界に束のような科学者がいなかったことが幸いに思えてくる。絶対にとんでもないことになっていただろう。
「基礎設計は終わったな。あとは束さんにデータ送って評価してもらってからテスター探さないと」
「自分でやらないの?」
「いや、雪華のやつが最近自分以外のIS使うの気に入らないらしくてな」
声に出してそう言ってくるのではなく、他のISを使った直後は何故か展開速度が遅くなるのだ。
「ランク戦の訓練機とかは許してくれるんだが、参式とかカスタムEVOL使うと露骨に反応鈍くてさ」
「嫉妬してるんじゃないの?「自分じゃ不満なのかー!」って」
「シャルもそう思う?」
ISは装備というより相棒・パートナーという表現がしっくりくる。そのため他のISにホイホイ乗り換えられては機嫌も損ねるというものだ。
「だから誰かテスターになってくれるやつ探さないといけないんだ。俺もこれ以上相棒の機嫌損ねたくねぇし」
そういう訳で新たなISには新しいテスターが必要なのだ。
「相棒と言えばシャルのリヴァイヴはもういいのか?」
「うん、一応修復は終わってるんだけどね」
どうも最近シャルのリヴァイヴも反応が悪い時があるらしい。
「ちょっと貸してくれ、調べてみる」
「お願い」
待機状態のペンダントを雪兎に渡すと、雪兎は専用のスキャナーのような機械にリヴァイヴを入れEVOLsystemのメンテナンス画面を開く。
「はぁ?何だこりゃ?」
すると、リヴァイヴから妙なエラー反応が出ていた。
「おいおい、こいつは・・・・」
更に調べてみると、そのエラーの内容はリヴァイヴ自身からの要望だった。
「シャル・・・・リヴァイヴのやつ、こんなこと言ってんだが」
『現状の機能では所有者の技能についていけません。性能向上の為、雪華とのデータリンクを願います』
「どういうこと?」
「多分、二次移行するだけじゃシャルの能力に合わせれないから俺の雪華のデータを使わせてくれって言ってるんだと思う」
よほど前回の福音との戦いが、最後まで主と戦えなかったことが悔しかったらしい。
「リヴァイヴ・・・・」
「なあ、シャル。リヴァイヴ、しばらく俺に預けてくれないか?俺、こいつを改修してやりたいんだ」
ここまで主想いなリヴァイヴをみて、雪兎は心動かされたようだ。
「僕からもお願いしていい?あっ、でもデュノア社にはなんて言おう・・・・」
「そっちは俺で何とでも出来るから心配するな。んじゃ、リヴァイヴはしばらく預かるぞ?」
その時、画面に新たな文字が表示された。
『よろしくお願いします』
「任せろ。お前は俺が完璧に改修してやる」
こうしてシャルロットのリヴァイヴは新たなる力を得るべく雪兎の元へと預けられたのだった。
新しいISと新生リヴァイヴは次の章にて御披露目しようかと思います。
そろそろ六章に入ろうと思います。
多分、あと1、2話で五章は終わりです。
次回予告
雪兎が新たなISとリヴァイヴの改修に取り掛かり、夏も終わろうというある日。雪兎は一夏に気晴らしにと神社の夏祭り誘われる。
次回
「紅の舞と夏の花 兎、夏祭りにいく」