IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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さて、夏休み編である五章開幕です。
まあ、色々と原作ネタからオリジナルネタまで色々ぶっこんでいく予定なのでよろしくお願いします。
さあ、ブラックコーヒーの準備は万全かい?

ISー兎協奏曲ー第5幕開演です。


五章「兎とシャルと夏休み」
26話 二度目のデート!ミックスベリーは恋の味? 兎、シャルとデートする


一夏達の懲罰用トレーニングメニューも終わり、雪兎も一週間の病室軟禁を終え退院。休み前の中間テストも終わり、終業式を終え、IS学園は夏休みに入った。それぞれ国に帰省する生徒もいるため寮に残った生徒の数は割りと少ない。寮に残っている生徒はそれぞれ事情があって帰省していない生徒や日本でも家が遠く帰り難い生徒がほとんどだ。

 

そして、雪兎の周りはというと・・・・

箒は重要人物保護プログラムの関係で引っ越してばかりだったため帰省する意味がなく、セシリアやラウラは代表候補としての仕事があるため少ししたら帰省するそうだ。鈴は帰省することを止め寮に残るらしい。簪はまだ姉との関係がギクシャクしているため彼女も帰省せずに残るそうだ。本音は簪が残るため自分も残ると言っているらしい。聖は実家が遠いので帰省は延期だそうだ。一夏と雪兎は実家が近いため一度帰省するという。最後にシャルロットは実家のデュノア社が例の件で大慌てな状況なため帰省は任意で構わないと言われているため今は帰省せずに寮に残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の家に程近い雪兎の実家の前に妙にソワソワしたシャルロットの姿があった。

 

(今日は家にいるって言ってたよね?)

 

雪兎も既に両親が他界しているため雪菜と二人暮らしなのだが、雪菜が代表候補生だった関係上、雪兎の家も割りと立派だったりする。

 

(か、彼女だもんね。彼女が彼氏の家を訪ねるのは普通だよね?)

 

先日正式に雪兎と付き合うことになったシャルロット。そのことは雪兎が退院した翌日にはクラスはおろか学園中の噂になっていた。それで一夏ラバーズがかなり慌てた(特に幼馴染二人)のだが、その話は何れ機会がある時にしよう。

 

(で、でも、雪兎には今日いくって言ってないし・・・・)

 

迷惑にならないだろうか?などとシャルロットが考えて いると。

 

「ん?シャルか?どうしたんだ、こんなところで」

 

「えっ?」

 

後ろから雪兎の声がした。

 

「ゆ、雪兎?」

 

「よっ。来るなら連絡してくれれば良かったのに」

 

「ど、どど、どうして、雪兎が後ろに!?」

 

「いや、家に食材とかの備蓄無かったからちょっと買い出しにな。にしてもどうしたんだ?」

 

「う、うん、雪兎が帰省するって聞いて、雪兎の家ってどんなの何だろうって思って、そしたら雪兎に会いたくなっちゃって・・・・来ちゃった」

 

この娘。相変わらず男がやられたらドキッとする仕草が妙に様になっている気がする。雪兎もそんなこと言われて内心悶えていた。

 

「そ、そうか。上がってけよ。外、暑かったろ?」

 

「う、うん」

 

色々と悩んではいたが、雪兎の思わぬ登場でシャルロットは当初の目的である雪兎の家に上がることに成功した。

 

「その辺で適当に座っててくれ、今飲み物出すから」

 

「うん」

 

居間に通されたシャルロットは置いてあるソファーに腰かける。

 

「悪いな、麦茶くらいしか冷たいのなくて」

 

「ううん、気にしないで。僕がいきなり来ちゃったからなんだし」

 

「そういやシャルは帰省しなかったんだな?」

 

「うん、帰ってもお母さんのお墓参りぐらいしかすることなくてね。そっちは次の長期休みに行くつもり」

 

「そうか、その時は俺も一緒に行っていいか?シャルのお母さんにも挨拶したいし、何よりシャルの育った場所を見てみたい」

 

「うん!その時は一緒行こっ!」

 

そんな約束を交わし、その日は二人で雪兎の家で過ごした。なお、その際に雪兎が作った昼食を食べ、シャルロットが改めて料理の勉強をしようと決意したんだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日。二人はデートしていた。どうも駅前のデパートで秋物の服が出始めているらしく、先取りして買っておきたいと言うシャルロットに連れられる形ではあったが、雪兎もシャルロットと出かけるのは嫌いではなかったので問題はなかった。

 

「ごめんね、この前ラウラと服を買いに来たときはラウラのばっかり買っちゃって僕のはあまり買えなかったんだ」

 

「ラウラって、やっぱ私服とか全然持ってねぇの?」

 

「うん、パジャマすらもね・・・・」

 

「なるほど、俺が同室だからやってねぇけど、一夏が一人部屋だったら確実に潜り込んでるな。その格好で」

 

「そういう知識もやっぱりアレで?」

 

「まあな、二人が買い物行ったエピソードもあったからな」

 

秘密を暴露して以来、雪兎は時々こういう話をシャルロットにするようになった。それはシャルロットが雪兎が無茶しないように知識を共有したいと言い出し、大きな事件などは覚えている限りシャルロットに伝えてある。だが、日常的なエピソードはこういう時だけ口にしているのだ。

 

「一応、確認なんだが、@クルーズって店で昼食取った?」

 

「そこもお話になってるんだね・・・・って、ことはその後のことも」

 

「メイドと執事の衣装着てバイトして強盗撃退したことか?」

 

「やっぱり知ってたんだ・・・・」

 

これは結構シャルロットにとって苦い思い出だったので雪兎に知られていたのは少しショックだった。

 

「・・・・俺はメイド服のシャルを見て見たかった」

 

「えっ?」

 

「いや、あそこの制服ってクラシックタイプの正統派のメイド服だから結構好きでな」

 

「ミニスカメイドより?」

 

「あれは何というかメイドじゃない気がしてならないんだ」

 

雪兎の意外な好みが発覚した。

 

「それに、そんな衣装着たシャルを他の男に見せたくない」

 

「ゆ、雪兎・・・・」

 

そして、またしても雪兎の不意討ちが炸裂し、シャルロットは顔を真っ赤にする。

 

「そういやクレープは食ったのか?」

 

「クレープ?それは食べてないかな」

 

ここで細かな違いが出ていることがわかる。

 

「そうか、なら後で行くか」

 

「そのクレープ屋さんに何かあるの?」

 

「ああ、女子が好きそうなおまじないがな」

 

それ以上は雪兎は語らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

服の買い物を終え、二人は@クルーズとは別のカフェで昼食を取ることにした。@クルーズは以前のこともあってシャルロットとしては入り辛いらしい。

 

「ここのパスタ、結構美味しいね」

 

「そうだな、っと、シャル、顔にソースついてる」

 

「えっ?どこどこ?」

 

「じっとしてろ。とってやるから」

 

そう言うと雪兎はシャルロットの頬についていたソースを自分の指で拭い、それを自分で舐めとる。

 

「な、なな、な・・・・」

 

「あっ、すまん、つい」

 

「う、ううん!ありがとうございます!」

 

なんとも恋人っぽいやり取りにシャルロットはまた顔を真っ赤にする。

 

「・・・・ちょっと御手洗いに行ってくる」

 

それは雪兎もだったらしく、雪兎は恥ずかしさからか少し席を外す。

 

(いいなぁ、こういうの。恋人になったって実感がするよ)

 

付き合う前からそうではあったが、この二人。かなり甘々である。

 

「聞いた?城址公園のクレープ屋さんの話」

 

すると、シャルロット的には聞き逃せない話題を隣のテーブルの女性達が始めた。

 

「聞いた聞いた。そのクレープ屋さんでカップルでミックスベリーのクレープを食べると幸せになれるって話でしょ?」

 

「でも、いっつも売り切れらしいのよねぇ」

 

(雪兎が言ってたクレープ屋さんって、もしかしてこのクレープ屋さん?)

 

雪兎は「女子が好きそうなおまじない」と言っていたので間違いないだろう。

 

(雪兎もそういうの気にするんだ)

 

シャルロットはまだ知らなかった。「いっつも売り切れ」というミックスベリーの秘密を。

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットの推測通り、雪兎が行こうとしていたクレープ屋は城址公園のクレープ屋であった。

 

(やっぱりあのおまじないのクレープ屋さんだったんだ)

 

シャルロットはそれを知り、今日はミックスベリーは残ってないかなぁ、と胸を弾ませてクレープ屋へと向かう

 

「すいませーん、クレープ二つください。ミックスベリーで」

 

「何だ、その噂もう知ってたのか」

 

「さっきのカフェで話してるのが聞こえてね」

 

しかし、店主である二十代後半であろう無精髭ながら人懐っこい顔の男性は申し訳なさそうに言う。

 

「あぁー、ごめんなさい。今日、ミックスベリーはおわっちゃったんですよ」

 

「あ、そうなんですか。残念だなぁ」

 

だが、そんなシャルロットを見て雪兎は笑みを浮かべると店主に注文をする。

 

「なら、イチゴとブルーベリーを一つずつ」

 

すると、店主も雪兎の顔を見て含み笑いをしながら注文を受けた。

 

「ここは俺が奢るから機嫌直せって」

 

明らかに残念そうにしているシャルロットに雪兎はイチゴのクレープを差し出す。

 

「うん・・・・あっ、このクレープ、美味しい」

 

ミックスベリーを食べられなかったのは残念だったが、そのクレープは絶品だった。

 

「だろ?こっちも食ってみろよ」

 

そう言って雪兎は今度は自分のブルーベリーのクレープを差し出す。

 

「う、うん・・・・こっちも美味しい」

 

間接キスっぽくて少し恥ずかしかったが、ブルーベリーのクレープも美味しいかった。そして雪兎はシャルロットにある種明かしをする。

 

「どうだ?ミックスベリーのお味は?」

 

「えっ?あーっ!ストロベリーとブルーベリー!?」

 

そう、あのクレープ屋にミックスベリーというメニューは元から存在せず、ストロベリーとブルーベリーを二人で分け合って食べることこそ「幸せのミックスベリー味」の噂の真相だったのだ。

 

「そ、そういうことだったんだぁ・・・・すっかり騙されたよ」

 

「ははっ、ただミックスベリーを食べるだけで幸せとかじゃ雰囲気出ないだろ?だからこんな噂が生まれたんだと思うぜ」

 

きっとこれを思い付いた人はロマンチストだったのだろう。

 

「それにあの店主、メニューにないミックスベリーを売り切れって言って誤魔化してるから真相を知ってるのは注意深く店を確認してるやつくらいだろうな」

 

先程の店主の含み笑いはそういう意味だったのである。

 

「それはそうと、俺にもミックスベリー食わせてくれないか?」

 

「うんっ!」

 

そして二人は発案者の思惑通りに二人でクレープを分け合って幸せそうな顔をしていた。




という訳で今回はミックスベリーのクレープ屋さんのお話でした。

この話見ると無性にクレープ食べたくなりません?


次回予告

ある日、何故か織斑家に集結した一同。しかも雪兎とシャルロットのラブラブっぷりに一夏ラバーズの四人は焦りながらも一夏へのアピール合戦と称する料理対決が幕を開ける。

次回

「とある夏の織斑家の食卓 兎、幼馴染達を焦らせる」

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