IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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一夏と雪兎のパワーアップ回です。
福音戦も後半戦、少女達のピンチに駆けつける二人は福音を倒せるのか!?


24話 白き騎士と白銀の翼 兎、覚醒する!?

第二形態となった福音は先程までとは違うプレッシャーを放っており、各ISは操縦者へ警鐘を鳴らす。しかし、福音は速く、ラウラが足を掴まれる。

 

「なにっ!?」

 

「ラウラ!?」

 

シャルロットがすぐに助けようとF装備の近接武装である先端に高周波ブレードの刃と砲口をもつ槍【ハルバートカノン】で突撃するが、福音は空いている片手でそれを受け止める。

 

「よせ!逃げろ!こいつはーー」

 

そこでラウラは福音の光の翼に包まれエネルギー弾の零距離射撃を食らい、ズタズタにされ海へと落下する。

 

「ラウラ!よくもラウラをっ!!」

 

怒ったシャルロットもハルバートカノンから砲撃を繰り出すが、福音も腕と脚の翼からエネルギー弾を放ち相討ちとなってシャルロットも吹き飛ばされる。

 

「あの性能・・・・いくら軍用機と言えど異常ですわ!」

 

セシリアも一度距離を取って狙撃に回ろうとするが、両手足の翼を用いた瞬時加速で一気に距離を詰められ回し蹴りで海面に叩き飛ばされた。

 

「セシリア!」

 

簪は再び山嵐による広域攻撃を行おうとするが、またしても瞬時加速で接近した福音の光の翼で砲撃され墜とされてしまう。

 

「私の仲間を・・・・よくも!」

 

箒は再び福音に斬りかかり、展開装甲も使って連撃を浴びせるも途中で展開装甲の多用でエネルギー切れを起こしてしまいラウラと同様に光の翼による抱擁を受けてしまった。

 

(すまない・・・・一夏、雪兎・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、箒達が福音と交戦を始めた頃。

 

「うぅ・・・・」

 

雪兎は福音との交戦に敗れ、近くの小島に漂着していた。

 

「こ、ここは・・・・くっ、近くの小島か。運がいいやら悪いやら」

 

雪兎のダメージも酷いものだったが、雪華の負ったダメージはそれ以上に深刻なものだった。

 

「くそっ、時間的に箒達が福音とやってる頃だってのに俺は動けないのか!?」

 

すると、雪華が突如輝き出す。

 

「これって・・・・」

 

『貴方は力を求めるのですか?』

 

雪華から声が聞こえた。

 

「雪、華・・・・なのか?」

 

『貴方は何のために力を求めるのですか?』

 

「俺は、守りたいんだ」

 

『何をですか?』

 

「世界中の全部なんて不相応なことは考えちゃいねぇよ・・・・でも、俺の手の届く範囲を、イレギュラーであるはずの俺を、天野雪兎という存在を認めてくれたあいつらを守って一緒に戦いたいんだ」

 

『マスターはイレギュラーなんかじゃありませんよ?』

 

「何?」

 

『マスターはちゃんとこの世界のここに存在しています。彼ら同様に私も貴方を認めているのですから』

 

「雪華・・・・」

 

突然の雪華の言葉に雪兎は思わず涙をこぼす。

 

『マスター、貴方はいくのですね?』

 

「・・・・ああ、俺は戻らないといけない。あいつらだけじゃまだまだ頼りねぇからな。力を貸してくれ、雪華」

 

『はい!行きましょう、マスター!』

 

そして光が消えると雪華の姿が少し変化していた。

 

「これって・・・・第二形態移行(セカンド・シフト)?」

 

そう、雪華もまた第二形態へと至っていた。第二形態となった雪華はパックの装着箇所等は変化していないものの、装甲の一部が多層式になっており、スペックも大幅に上昇しており、更に単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)まで発現していた。

 

「単一仕様能力【極限化(エクシードモード)】だと?またピーキーな能力発現しやがって・・・・」

 

その能力はかなりとんでもないものだった。

 

「奥の手ってとこだな、こいつは。さてと、そろそろいくぜ、相棒!」

 

一夏と違い怪我は治ってはいないが、雪兎は最低限の応急処置を済ませると新しくなった雪華を纏い、福音の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪兎が福音の元へ辿り着くと、既にこちらも第二形態へと至った白式・雪羅を纏った一夏が福音と対峙していた。

 

「グッドタイミングってやつか、これは?」

 

「ゆ、雪兎!?」

 

一夏に続いて雪兎まで現れ、箒は涙を堪え切れなくなっていた。

 

「お前も第二形態移行したんだな?」

 

「ああ、お前も随分とピーキーそうにバージョンアップしてるじゃねぇか」

 

すると、一夏は箒の方を見てから言う。

 

「雪兎、少し任せていいか?」

 

「なるほど、そういうことか。少しだけだぞ?お前と違って俺はあんましダメージ回復してねぇんだ」

 

「悪い、すぐに戻る!」

 

そして一夏は箒の元へと向かった。

 

「よぉ、福音さんよ。さっきの借り、返しにきたぜ」

 

先程は一夏達が撤退後【W:ウィザード】で交戦し撃墜されたため、雪兎は再び【J:イェーガー】を展開していた。

 

「第二形態になったのはお前だけじゃないってのを教えやるよ!」

 

瞬時加速で迫る福音を雪兎は【J:イェーガー】の機動力だけで回避すると二つになった砲口(・・・・・・・・)を持つバスターライフルを福音の背中に向ける。

 

「こいつは前とは一味違うぜ?」

 

双発となったバスターライフル、バスターライフル改が火を噴き、福音を吹き飛ばす。

 

「やっぱ改ともなると威力がちげーわ」

 

何とか光の翼で防御したものの、福音はその威力に雪兎の警戒レベルを上げる。

 

「俺を警戒すんのはいいんだけどよ・・・・後ろも気にした方がいいぜ?」

 

そんな福音の背後から一夏が雪片弐型を片手に斬りかかる。間一髪のところで福音は回避するが、続けて左腕に追加された雪羅のクローモードで切り裂き福音にダメージを与える。

 

「待たせたな!」

 

「ほんとにピーキーそうだな、それ」

 

「荷電粒子砲に零落白夜のシールドとクローの複合兵装【雪羅】だ」

 

「ピーキー過ぎる・・・・」

 

「そういうお前のそれ、砲口が二つになってないか?」

 

「砲口だけじゃなくて分離して二丁にもなるぞ」

 

そう言うと雪兎はバスターライフル改の下にある小型のバスターライフルを分離させ両手で構える。

 

「小型は連射が効いて、大型の方は今まで通りよ!」

 

一夏に説明しながら小型の連射で牽制しつつ、大型で福音にダメージを与える雪兎。

 

「こっちも忘れんなよ!」

 

ついでとばかりに一夏も荷電粒子砲を放つ。これには堪らず福音は再びエネルギー弾の掃射を開始する。

 

「もうそいつは食らわねぇ!」

 

だが、零落白夜のシールドを得た一夏にエネルギー弾が通用する訳もなく、掃射を防ぐと四基に増設し大型化したスラスターによって二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)が可能になった白式が福音に迫る。

 

「瞬時加速が使えんのは白式だけじゃねぇぞ!」

 

雪華の【J:イェーガー】もウイングバインダーが大型化しており、翼を広げた雪華も瞬時加速で福音の背後へと回り、腕部にマウントされたビームブレードを展開し、一夏と共に斬りかかるが、福音は光の翼を繭のように丸めて自身を包む。

 

「雪兎っ!」

 

「わかってる!」

 

その福音の行動に嫌な予感がした二人は攻撃を中断し距離を取る。すると福音は翼を回転しながら開き、全方位にエネルギー弾を撒き散らす。その範囲内には回復しきっていない鈴達の姿があり、一夏はそれを庇おうとするが。

 

「それは僕の役目だよ!」

 

態勢を立て直したシャルロットがアイギスを展開し、それを防ぐ。

 

「一夏、こっちは僕が何とかするから!雪兎と一緒に福音を!」

 

「わかった!」

 

「雪兎にはこれが終わったら色々聞きたいことがあるから!」

 

「話せる範囲なら答えてやるよ!」

 

「今度こそ約束だからね!」

 

「ああ、もう約束は破らねぇよ!!」

 

鈴達の心配が要らなくなり、一夏と雪兎は再び福音へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一夏が駆けつけてきてくれた・・・・雪兎も戻ってきてくれた)

 

それだけで箒は嬉しさを飛び越え、胸が熱くなるのを感じた。そして、戦う二人を、いや、一夏を見て箒は何より強く願った。

 

(私は、共に戦いたい。あの背中を守りたい!)

 

その願いに呼応するかのように紅椿の展開装甲から黄金の粒子が溢れ出す。

 

「これは・・・・!?」

 

それは単一仕様能力【絢爛舞踏】展開装甲を通じエネルギーバイパスを形成、溢れ出すように回復したシールドエネルギーを接触した機体にも分け与えることのできるというとんでもない能力だった。

 

「まだ、戦えるのだな?紅椿・・・・ならば、行くぞ!紅椿!」

 

紅き椿は再び飛翔する。未だ戦っている幼馴染の元へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、きりがない」

 

一夏は何度も福音の光の翼を零落白夜で切り裂いているが、二撃目は毎度かわされ、斬られた翼はすぐに再構築されてしまう。雪兎も同様で、バスターライフル改で翼を撃ち貫くもすぐに再構築されてしまうため、二人のISのシールドエネルギーは既に二割を切っており、稼働時間も残り少なくなっていた。

 

(ちっ、これじゃ奥の手も使えねぇ)

 

福音のエネルギー残量がわからず、このままではエネルギー切れになってしまうと、二人が焦燥にかられる中、金色の光が二人に近付いてきた。

 

「一夏!雪兎!」

 

「箒!?」

 

それは戦線に復帰した箒だった。

 

「ダメージはいいのか?」

 

「私は大丈夫だ。それより二人共、これを受け取れ!」

 

そう言って二人のISに紅椿が触れると凄い勢いでシールドエネルギーが回復していく。

 

「箒、それがお前の単一仕様能力か?」

 

「ああ、これが私と紅椿の力だ」

 

「これなら俺も奥の手を出せる!」

 

「奥の手?まさかお前も!?」

 

「そのまさかだ。一夏、俺が隙を作る。だから最後はお前が決めろ!いくぜ、相棒!【極限化】起動!!」

 

その瞬間、雪華の装甲が展開していき蒼い粒子を纏う。

 

「それは、展開装甲!?」

 

「フルドライヴ!」

 

そして、今までとは比べものにならない速度で福音に迫るとすれ違い様にビームブレードで切り裂き、それを繰り返す。その姿はあまりにも速く、粒子を放出しながら行うせいか残像すら見え、また再構築が間に合わず福音は徐々に光の翼を失っていく。

 

「一夏っ!」

 

「おおおおおっ!!」

 

光の翼を完全に失った直後、一夏は最大加速で零落白夜の刃を福音の腹部に突き刺しシールドエネルギーを削り切る。エネルギーを失いISのアーマーが消失し、操縦者と思われる女性がISスーツ姿で残され、それを極限化を解いた雪兎が無事に受け止め、箒にその女性を預ける。

 

「終わった、のか?」

 

「ああ、俺達の勝ちだ」

 

長い戦いが終わった。

 

「雪兎っ!」

 

すると、雪兎の元にシャルロットが駆けつける。

 

「シャル、か・・・・」

 

「心配したんだからねっ!って、雪兎?」

 

そこでシャルロットは雪兎の様子がおかしいことに気付く。

 

「す、まん・・・・ちょっ、と、無理、しす、ぎた、みたい、だわ・・・・後、は、任せ、た」

 

極限化の超加速で応急処置をしていた傷が開いたのか、雪兎は気を失い雪華も消失してしまう。

 

「ゆ、雪兎!?」

 

すぐさまシャルロットがそれを受け止めるが、雪兎の怪我はとてもじゃないが戦闘などしていいものではなかった。

 

「は、速く戻らないと!!」

 

こうして福音の暴走事件は幕を閉じた。旅館に戻った一同を待っていたのは救護チームと怒りのオーラを纏った千冬であり、大怪我をしている雪兎を除くメンバー全員はそのお説教と学園に帰ってからの懲罰用トレーニングと反省文というお決まりの罰だった。




福音戦終了です。

雪兎の雪華が発現した【極限化】とは装甲を展開し、機体性能を1,5倍にする能力です。しかし、発動中はエネルギー消費も1,5倍になるのでほんとに奥の手な能力です。また、装甲を展開した時に纏い放出する粒子の色は各パックの装甲の色と同じ色になります。

次回予告

福音暴走事件も終わり一件落着かと思えば雪兎は怪我のため病室送りに。そして病室を訪れたシャルロットに訊ねられ雪兎はその秘密の一端を語る。

次回

「語られる秘密と告白 兎、暴露する」

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