残された少女達は再起を果たし福音を討つことができるのか?
珍しく雪兎が出ません。
「あの馬鹿者が・・・・」
千冬は指令室となっている宴会場で静かに呟く。一夏が撃墜され、その後、雪兎により速やかに撤退が決断された。しかし、一夏達の撤退を支援するために雪兎は一人殿として福音の元に残った。結果的に一夏達は撤退に成功するも一夏は重傷、そして殿として残った雪兎の反応はロストしてしまった。
「ちーちゃん、ゆーくんはきっと生きてるよ」
「当たり前だ。あいつはお前の弟で、私の弟弟子で、あのバカの弟子だ。そんな簡単にくたばるものか」
そう口にする千冬からも心配はすれど雪兎を信頼しているのが感じられる。
「問題はあいつらの方か・・・・」
「一夏・・・・」
重傷を負い未だに目を覚まさない一夏の傍で箒は己の至らなさに、雪兎達がいなければ自分も同じようになっていたという可能性に自分を責めていた。
「私は・・・・一夏、雪兎、お前達に救われる価値があったのだろうか・・・・」
しかも、その雪兎は生死・行方ともに不明なのだ。セシリア達に連れられ撤退した際にそれを聞かされ箒の心は失意のドン底に叩き落とされた。紅椿を手にして舞い上がっていたばかりに幼馴染二人がこうなってしまった。そう箒が考えるのもある意味自然なことだった。
「雪兎・・・・絶対に戻るって約束したじゃないか」
もう一人、雪兎のロストで落ち込む少女がいた。シャルロットである。しかし、シャルロットには疑問に思っていることがあった。
(雪兎はもしかしてこうなることを知ってたんじゃ・・・・)
そう思った理由は作戦会議や出撃前にやたら一夏達が失敗することを懸念していたこと。密漁船がいたことにもあまり驚いていなかったこと。一夏が撃墜されたというのに冷静に撤退の指示を出していたこと。そして・・・・
「これを渡したのもこうなるってわかってたからなの?」
シャルロットの手にある白い剣十字のペンダント。雪兎がシャルロットに渡していたパーソナライズをしていないリヴァイヴを
「僕の時も雪兎は色々知ってた。なら、雪兎は今までも色々知っていて、それに対して対策をしていた?」
そう考えると色々と納得がいく。雪兎が行っていた特訓も全体のレベルアップを図り、今回のような事態にも対処できる力を付けさせるつもりだったと推測できる。このことに気付いているのはおそらくシャルロットただ一人だろう。
「帰ってきたら聞かなきゃいけないこと増えちゃったなぁ」
ならば雪兎がそう簡単にやられる訳がない。シャルロットは最も信頼する想い人から託された剣十字を握りしめ、涙を拭って立ち上がる。
「僕が、僕達がやるんだ。それで雪兎を探すんだ」
「こちらは問題なかったようですわね」
「セシリア?」
部屋を出るとそこにはセシリアの姿があった。
「シャルロットさん、わたくし達はもう一度福音の攻略に挑むつもりです。シャルロットさんはどうなさいますか?」
「愚問だよ、セシリア。僕もやる。このまま負けたままなんて雪兎のパートナーを名乗れなくなっちゃうよ。それでメンバーは?」
「ええ、鈴さんやラウラさん、それに簪さんも参加するそうですわ。箒さんは今、鈴さんが説得に向かってらっしゃいますわ」
全員雪兎が鍛えてきたメンバーだ。ならば不可能ではないはずだ。
「見せて差し上げましょう。わたくし達の力を」
「うん。僕達がやるんだ」
こうして少女達だけによる第二次福音迎撃作戦が教師達には黙って計画されるのであった。
箒の説得を終え、ラウラが黒兎隊が保有する衛星で福音の居場所を突き止めた。どうやら雪兎との交戦の後にその場にとどまり続けているらしい。
「待ってなさいよ。一夏と雪兎の借りは私が返してやるわ」
機能増幅パッケージ【崩山】を装備した甲龍を纏う鈴。
「今度は負けませんわ」
前回同様【ストライク・ガンナー】を装備したブルー・ティアーズに乗り込むセシリア。
「私も全力でいく」
打鉄弐式で気合を入れる簪。
「見せてやろう、私達の実力を」
砲撃パッケージ【パンツァー・カノニーア】を追加したシュヴァルツェア・レーゲンを展開するラウラ。
「もう私は間違えない!」
二度と過ちは犯さないと誓い紅椿を出す箒。
「雪兎、力を貸して」
修復中のカスタムⅡの代わりに雪兎から渡された白いカスタムEVOLを使用するシャルロット。
「さあ、行こう!」
少女達は自ら戦場へと向かう。少女達だけの戦場へと・・・・
「こ、この反応は!?」
指令室で福音の様子を監視していた真耶は福音へと近付く六つの反応を感知した。
「あの馬鹿どもが・・・・」
「あちゃー、待機命令無視して行っちゃったかぁ」
無断出撃で福音の元へと向かう少女達に千冬や雪菜は溜め息をつきつつも、彼女らが通信を遮断し止まるつもりがないとわかるととりあえず事態の静観を決めた。
「帰ってきたら覚悟しておけよ、小娘ども」
海上二◯◯メートルの位置で静止していた福音は何かを察知し顔を上げると、そこに超音速で飛来した砲弾が頭部に直撃する。
「初弾命中。続けて砲撃を行う」
左右に装備された八◯口径レールガン【ブリッツ】による連続砲撃が放たれ福音を襲う。ただ、福音もそれを黙って受ける訳がなく、翼のエネルギー弾で半数を落としながらラウラに接近するが。
「セシリア!」
それをステルスモードになっていたセシリアが【スターダスト・シューター】で迎撃する。
「簪さん!シャルロットさん!」
「任せて!いけ【山嵐】!」
「いくよ【G:ガンナー】!」
更にそれを打鉄弐式の山嵐とカスタムEVOLのG装備による面制圧射撃が襲い、福音はラウラへの接近を諦め全方位にエネルギー弾を放った後、離脱を試みるが。
「させるかぁ!」
海中から接近していた紅椿と甲龍が現れ砲口を倍増し、熱殻拡散衝撃砲となった龍咆が赤い炎のような弾丸を吐き出す。しかし、福音を討つには足らず、福音は再びエネルギー弾の弾幕を展開する。
「箒!こっちに!【F:フォートレス】!」
展開装甲のエネルギー消費を抑えるべく機能を限定した紅椿をカスタムEVOL用に開発された防御パック【F:フォートレス】に装甲切換し、備え付けられた大型シールドビット【アイギス】で守る。その防御力は【ガーデン・カーテン】のシールドを遥かに凌駕しており、
「これはお返しだよ!」
そしてエネルギー弾の返礼として腰のサブアームで固定した一二◯口径大型バズーカ【グランドスラム】による砲撃を放つ。
「こっちも食らえ【春雷】」
簪も春雷の広域砲撃モードで反撃する。
「動きさえ止まれば!」
そこに鈴が双天牙月で切り込み、エネルギー弾のダメージと引き換えに福音の片翼を奪う。
「はっ、はっ・・・・!どうよーーぐっ」
片翼となった福音だが、すぐに態勢を立て直し鈴の左腕に回し蹴りを叩き込む。脚部のスラスターによる加速された蹴りは左腕のアーマーを砕き、鈴を海へと墜とす。
「鈴!おのれっ!」
激昂した箒は雨月と空裂で福音に斬りかかるが、福音は両腕でそれを掴み腕を広げ、残った片翼の砲口を箒に向けエネルギーチャージを始める。
「させるか!」
箒も紅椿を縦に一回転させ脚の展開装甲から刃を出し、踵落としの要領で福音を海に叩き落とした。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
「無事か!?」
珍しく慌てたラウラが駆けつけ、乱れた呼吸の箒に訊ねる。
「私は・・・・大丈夫だ。それより福音はーー」
誰もが勝利を確信するも、その瞬間、海面が強烈な光と共に吹き飛び、その中心に青い稲妻を纏った福音の姿があった。
「!?まずい!これはーー
その姿は斬られた片翼の代わりに光の翼を生やし、腕や脚からも小さな光の翼を生やした光の天使を彷彿させる姿だった。
福音が第二形態移行しました。
そしてカスタムEVOL用のパック【F:フォートレス】登場です。圧倒的防御力と砲撃力を持つ名の通り要塞地味たパックです。
さあ、福音戦も後半戦へ!一夏と雪兎は少女達のピンチに間に合うのか!?
次回予告
第二形態となった福音の猛攻に次々とやられていく少女達。そこに駆けつけたのは二機の白きISだった。目覚めた一夏と帰還した雪兎。そして二人の新たなる力が覚醒する!
次回
「白き騎士と白銀の翼 兎、覚醒する!?」