だが、雪兎を想定外の事態が襲う!?
セシリアのブルー・ティアーズの調整を終え、出撃準備をする雪兔達。雪兎自身も【J:イェーガー】以外のパックも用意し、万が一に備えていた。
(福音の性能を考えれば対抗できるのは【W:ウィザード】と【B:ブレイド】くらいだな)
「雪兎、準備は大丈夫?」
「ああ、シャルの方こそ大丈夫か?」
「・・・・ちょっと不安だけど、皆が一緒だから」
「そうか、俺達は万が一のオマケだけど、何かあってもお前は俺が守るよ」
「う、うん・・・・」
(一応、模擬戦で箒の慢心は折っといたが、やっぱりまだ安心はできないな・・・・原作通りならこの出撃で一夏は)
原作では一夏と箒の二人で行う作戦は初撃を外してしまう。更に封鎖区域に船舶が侵入し、それを放置して作戦を優先しろという箒に一夏が反発。それで隙を作ってしまった箒を庇って一夏は撃墜されてしまう。そして、立ち直った箒ら五人の専用機持ちが無断で出撃しピンチになるも二次移行した白式で駆けつけた一夏と
(俺というイレギュラーがいる以上、何かしらの変化があるかもしれない。それは覚悟してはいたんだがな)
「雪兎?」
「何でもない。そろそろ作戦開始時間だ。行こう」
「うん」
雪兎は不安が残るのを隠しつつ、集合場所へと向かった。
時刻は十一時半。砂浜に出撃する専用機持ち五人が揃う。
「来い、白式」
「行くぞ、紅椿」
「行きますわよ、ブルー・ティアーズ」
「来て、ラファール・リヴァイヴ」
「行くぜ、雪華【J:イェーガー】」
そして、それぞれが専用機を展開し、五機のISが並ぶ。
「じゃあ、箒。よろしく頼む」
「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ」
そう言う箒だが、その表情はどこか嬉しそうで雪兎の不安が増す。
「セシリア、シャル。俺達はあくまで補佐だが、ファーストアタックが失敗したらすぐに二人の援護に入る」
「ええ、お任せください」
「僕も頑張るよ」
「心配は要らない。私と一夏が力を合わせればできないことなどない。そうだろう?」
「ああ、そうだな。でも箒、先生達も言ってたけどこれは訓練じゃないんだ。実戦では何が起きるかわからない。十分に注意してーー」
「無論、わかっているさ。ふふ、どうした?怖いのか?」
やはり箒は浮かれ過ぎているような気がしてならない。
「そうじゃねえって。あのな、箒ーー」
「ははっ、心配するな。お前はちゃんと私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいればいいさ」
今の箒には一夏の言葉すら満足に届いていない。これには流石の一夏も不安を隠せないようだ。
(箒のやつ・・・・これは本当にヤバそうだ)
原作やアニメで見た時もそうだったが、一夏も箒も一歩間違えば死んでいた可能性すらあった。だから雪兎は何があってもいいようにやれることはやったつもりだ。雪兎にとって一夏と箒はかけがえのない幼馴染なのだ。
『天野』
そこで雪兎にプライベートチャンネルで千冬が声をかけてきた。
『先程、織斑にも言ったがーー』
「箒、ですね?」
『ああ、万が一の時は頼む。だが、お前も私の生徒だ。無理はするな』
「はい。わかりました」
通信を終えると、雪兎達は一夏達に続いて出撃した。
「束さん、本当に自重せずに作ったなぁ、紅椿」
「瞬時加速とほぼ同じスピードですわね・・・・一夏さんが乗っているというにも関わらず」
「篠ノ之博士が提案したのも納得だよ。あのスピードなら福音に接触できる」
一夏達の後方を追う雪兎達は改めて紅椿のデタラメさを実感していた。
「暫時衛星リンクより情報照合完了。目標と白式の位置確認。そろそろ接触するぞ」
そこで紅椿は更に加速し、白式も零落白夜を起動。そこから瞬時加速で福音へと斬りかかる。しかし、福音は最高速のまま反転し、それをかわし迎撃モードに移行した。
「ファーストアタック失敗!これより援護行動に移る!行くぞ、二人共!」
「わかりましたわ」
「うん、わかった!」
迎撃モードになったことで移動速度が落ちた為、雪兎達はすぐさま一夏達の元へと向かう。だが、零落白夜の稼働時間を気にして大振りになってしまった一夏の隙を福音は見逃さなかった。
「しまっーー」
福音が持つ多方向推進装置の翼は砲口も兼ねた装備であり、そこから幾重もの羽のような光の弾丸が白式に撃ち出された。
「ぐぅっ!?」
その弾丸は接触と同時に爆ぜてダメージを与える。何とか致命傷は避けたものの、その圧倒的な連射速度で放たれるそれに一夏と箒は回避しながら二面攻撃を仕掛けるがかすりもしない。
「一夏っ!」
そこでようやく雪兎達が到着し、ビットを機動力強化に回した代わりに装備された大型BTレーザーライフル【スターダスト・シューター】と雪兎の背中に乗るシャルロットのアサルトカノンが福音の攻撃を中断させた。
「遅くなった!これより援護に入る」
「助かる!」
そこからは雪兎達後衛組が射撃で福音を牽制し、その隙を突いて一夏と箒が攻撃を仕掛けるが、流石は軍用ISというべきか。福音は多方向推進装置と弾幕のような光弾で一夏達を寄せ付けない。
(こいつ、やっぱり暴走と言う割には行動が的確過ぎる。ということは認識を操作されて周り全部が敵に見えてるのか?だとしたらこいつの行動もあらかた理解できる)
雪兎がそんなことを考えている間に箒が一夏の攻撃をする隙を作るが、直後、それは起きてしまった。何と一夏は攻撃のチャンスを棒にして封鎖しているはずの区域に入り込んでいた密漁船と思われる船に向かって放たれた福音の攻撃を切り払ったのだ。
「何をしている!?せっかくのチャンスにーー」
「船がいるんだ!海上は先生達が封鎖したはずなのに・・・・ああくそっ、密漁船か!」
更にエネルギーが尽きたのか零落白夜の刃が消え、展開していた装甲が閉じてしまう。
「馬鹿者!犯罪者などを庇って・・・・。そんなやつらはーー!」
「箒!!」
「ッーー!?」
「箒、そんなーーそんな寂しいことは言うな。言うなよ。力を手にしたら、弱いヤツのことが見えなくなるなんて・・・・どうしたんだよ、箒。らしくない。全然らしくないぜ」
「わ、私、は・・・・」
一夏のその言葉で箒は自分が何を言っていたのか気付き、動揺して動きを止めてしまう。それは実戦では致命的な隙である。
「箒さん!」
その隙を見逃さなかった福音は先程から脅威となっていた箒へとその光の弾丸による雨を放つ。
「箒ーっ!!」
それを一夏は自身のシールドエネルギーが尽きかけているのにも関わらず箒を庇う。
「一夏っ!!」
シールドエネルギーの不足により絶対防御が十分に機能せず、一夏は大ダメージを負い撃墜されてしまう。しかし、そこで福音の攻撃は止まない。
「二人はやらせないよ!」
そこにリヴァイヴ専用の防御パッケージ【ガーデン・カーテン】に装備された実体とエネルギーの二つのシールドで構成された複合防御壁でシャルロットが福音と二人の間に割って入る。
「くっ・・・・」
しかし、その防御も福音の波状攻撃には耐えきれず次第にリヴァイヴはボロボロになっていく。
「もう少し、もう少しだけ耐えて!リヴァイヴ」
「シャルっ!」
そこで雪兎はバスターライフルを展開し福音の注意を引く。
「くそっ!作戦は失敗だ!セシリアは箒と一夏を回収してシャルを連れて離脱してくれ!」
「ゆ、雪兎は!?」
「俺はお前らの撤退の時間を稼ぐ。どうやら福音さんは俺達をただじゃ逃がしてくれねぇらしい」
「でも!」
「悪い、俺一人なら後からでも離脱できるが、皆がいちゃ難しいんだ。それにシャル、お前のリヴァイヴももう限界だろう?」
「雪兎・・・・」
「それに約束したろ?お前は俺が守るって」
「シャルロットさん、ここは雪兎さんに任せましょう。今のわたくし達では足手まといにしかなりませんわ」
「・・・・わかった」
セシリアの言葉もあって、シャルロットも何とか撤退に賛同する。
「でも、絶対に戻ってきてよ!」
「ああ、俺が簡単にやられるかよ」
そう言うと雪兎は福音の注意を引くべく福音へと向かっていき、セシリアとシャルロットは箒と箒に抱かれた一夏を連れて戦域から離脱していった。
「さてと、もうしばらくお相手願おうか、銀の福音!」
そして、雪兎の孤独な戦いの幕が上がった。
数時間後、何とか撤退を終えた一同は千冬から雪兎の雪華の反応がロストしたことを伝えられた。
という訳で雪兎が行方不明に。
また、原作と違いシャルロットのリヴァイヴまでも行動不能に・・・・
次回予告
一夏は重傷で意識不明。雪兎も生死不明の行方不明という最悪の結果に終わった第一次福音迎撃作戦。
一度に二人の幼馴染がやられ箒は失意のドン底へと叩き落とされる。
一方、シャルロットは雪兎の生存を信じ、他のメンバーと共に再度福音へと挑むことを決意する。
次回
「少女達だけの戦場 兎、行方不明になる!?」