福音の暴走、その作戦会議の中、雪兎が提案したこととは?
雪兎と箒の模擬戦が終わり、再び評価試験へと戻ろうとすると、真耶が慌てて千冬の元にやって来た。
「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」
その慌てようは今までの比でなく、それだけで非常事態だとわかる。
「どうした?」
「こ、こっ、これをっ!」
渡された端末を見て千冬の表情が曇る。
「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし・・・・」
その内容だけで十分に厄介事である。
「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていたーー」
「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」
「す、すみませんっ・・・・」
(きたか、福音事件・・・・)
紅椿と模擬戦というイレギュラーはあったが、原作通り福音の暴走事件が起きたようだ。
「ーー全員、注目!」
真耶が他の先生へ連絡をしに離れた後に千冬は特殊任務行動になるため試験は中止、専用機持ち以外は各自旅館の部屋での待機が命じられた。そして、専用機である雪兎達は旅館の一番奥の宴会用の大座敷・風花の間に集められた。
「では、現状を説明する」
千冬の説明では二時間前にハワイ沖で試験稼働中だったアメリカとイスラエルの共同開発軍用IS【
「それでは作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」
「はい」
真っ先に手を挙げたのはセシリアだった。
「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外するな。情報漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」
「了解しました」
そして開示された情報は・・・・
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・・わたくしのISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方に特化した機体ね。厄介だわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利・・・・」
「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速二四五○キロを超えるとある。アプローチは一回が限界だろう」
「一回きりのチャンス・・・・ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」
「ですね。しかも、近接でのワンアプローチワンキル・・・・やれるのは」
そこで皆の視線が一夏に集中する。
「え・・・・?」
「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ!」
アタッカーは一夏で決定。問題は一夏をどうやって福音のところまで連れていくかだ。白式は零落白夜に全エネルギーを集中させるため移動に割くエネルギーが足りないのだ。
「天野、お前の【J:イェーガー】はどうだ?」
「セシリアのパッケージよりは稼働データもありますし、バスターライフルに使うエネルギーを全部回せば不可能ではないですが・・・・」
「どうかしたのか?」
「どうせ聞いてるんでしょ?言いたいことがあるなら出てきてください。束さん」
「ありゃりゃ、ゆーくんにはバレてたか・・・・」
すると、天井裏から束が姿を現す。
「束・・・・お前というやつは」
「その作戦は待ったなんだよー!私の頭の中にもっといい作戦がナウ・プリンティング!」
「・・・・出て行け」
頭を押さえ、束に退去を命じるも束がそれを素直に聞き入れる訳がなく、言葉を続ける。
「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」
「なに?」
そこから紅椿が第4世代ISであり、展開装甲という装備によるパッケージ換装を用いない万能機であると説明がされる。それを調整すればスピードは確保できるという。
「展開装甲・・・・それはまるで」
「俺の雪華の上位互換ってとこさ。俺の雪華が常時パッケージ換装を行えることによる万能機化がコンセプトなら、紅椿はそれを必要としない万能機なのさ。まあ、紅椿並みの高性能万能機はそうそう作れんだろうがな」
「どういうこと?」
「燃費だ。束さんのことだから何か考えがあるんだろうが、一戦した俺から言わせてもらうと紅椿は白式並みに燃費が悪い。長期戦には向かない」
「流石は我が弟子、やっぱりそこに気付いちゃったか」
「まあ、一撃で決めれれば二人のコンビで出るのが現状では一番確率が高いが、予備プランは必要だと思う」
「となると、第一陣を織斑、篠ノ之の二名。二陣に天野とオルコット、それと後一人といったところか」
「そうなりますね。出来れば精密射撃が可能なメンバーがいいかと」
一夏の二撃目を補佐するためには射撃型の方が都合がいいのだ。
「ならばデュノア、お前が行け」
「えっ?ぼ、僕ですか!?」
「お前が残りのメンバーで一番精密射撃に向いている。それにお前と天野のコンビネーションはタッグトーナメントで実証済みだ。選出理由としては十分だろう」
「は、はい」
こうして対福音のメンバーはファーストアタックを一夏と箒が担当し、万が一に備え雪兎・セシリア・シャルロットが補佐に付くことになった。
「セシリア、オートクチュール(専用パッケージのこと、今回は高機動パッケージ・ストライクガンナーを指す)の調整は悪いが俺がやる。時間が惜しい」
「お願いしても?雪兎さんなら万全の状態にしてくれると信頼していますわ」
「任された。早速やるぞ」
そして、雪兎はブルー・ティアーズを、束が紅椿の調整を行うこととなり、急ピッチで作業が開始されたのだった。
という訳で雪兎の提案は高機動系二機と射撃型一機によるファーストアタックが外れた場合の補佐をする体制を作ることでした。
これなら白式と紅椿が決めれば出番はないので束に止められないのでは?という私の考えです。
次回予告
とうとう始まった対福音作戦。しかし、思わぬハプニングの連続でまさかの事態に!?
次回
「福音迎撃作戦! 兎、ピンチに陥る!?」