IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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束と紅椿回です。

さて、雪兎は紅椿にどう挑むのか?

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20話 登場!篠ノ之束!激突、雪華VS紅椿!? 兎、箒とガチバトル!?

夕食では刺身に小鍋、山菜の和え物が二品、赤だしの味噌汁にお新香というメニューだった。しかも、刺身はカワハギとIS学園は随分と羽振りがいいようだ。

 

「雪兎、さっきはどこ行ってたの?」

 

隣に座るシャルロットが自由時間の最後に行方を眩ませていた雪兎に訊ねる。

 

「ちょっと箒に野暮用がな」

 

「それってバスで話してた?」

 

「そういうことだ。それより食おうぜ。こんなの滅多に食えないんだから」

 

「うん、僕も雪兎にお箸の使い方習っておいておいてよかったよ」

 

シャルロットは雪兎と同室だった時から正座や箸の使い方などを習っており、難なく雪兎の隣を確保している。というより雪兎の隣は既にシャルロットの指定席というのが1年1組の暗黙の了解になりつつある。

 

「っ・・・・ぅ・・・・」

 

一方、一夏の隣のセシリアはかなり無理をしているのかうめき声を上げていた。

 

「あそこまでいくと健気だよな」

 

「うん、本当に練習しててよかったよ」

 

この時ほどシャルロットは正座が苦でないことに感謝したことはないんだとか。

 

「無理はすんなよ?そんときは俺も一緒に移動してやっから」

 

「う、うん、大丈夫だよ(雪兎はほんとにナチュラルに僕を落としにくるから油断できない)」

 

一夏にもこれくらいの気遣いができれば、と一部のヒロイン達が思っていたとかいないとか。また、シャルロットが雪兎と同室になった影響か、セシリアのあーんのシーンはお流れとなっていた。頑張れ、セシリア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、やっぱ温泉は違うな」

 

「ああ、さっぱりしたよ」

 

男子の入浴時間は限られているので二人はさっさと入浴を済ませ部屋に戻る。教員部屋の隣なので女子達も遠慮しているのか、男二人で寛いでいた。

 

「そういや明日の準備ってしてあるのか?」

 

明日の準備とは臨海学校の主目的である「ISの非限定空間における稼働試験」のものではなく箒の誕生日のことだ。一夏や雪兎は特に国や企業から新型装備が送られてくる訳でもないため(一夏は拡張領域が無いので装備不可能だし、雪兎は自前で用意しているため)、そっち方面は特にやることがないのだ。

 

「ああ、雪兎は何を用意したんだ?」

 

「俺はこのカーボンファイバー製の竹刀だ。壊れ難いって評判のやつ」

 

「なるほど、俺はリボン、かな?」

 

「あー、なるほど。お前らしいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方、女子達はというと・・・・

 

「あのー、何で私達呼び出されたんでしょうか?」

 

箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラの五人は何故か教員部屋に集められていた。簪がいないのは友達止まりだからだろう。

 

「いや、何、お前らはあの二人に好意を寄せているだろう?」

 

「だからちょっと色々聞いてみたかったのよね」

 

そう千冬と雪菜の二人はぶっちゃけた。

 

「それとほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、紅茶だ。それぞれ他のがいいやつは各人で交換しろ」

 

だが、順に箒、シャルロット、鈴、ラウラ、セシリアに不満はなかったので交換会は開かれなかった。

 

「「「「「い、いただきます」」」」」

 

全員が口をつけたのを確認すると、千冬はニヤリと笑った。

 

「飲んだな?」

 

「は、はい?」

 

「そ、そりゃ、飲みましたけど・・・・」

 

「な、何か入っていましたの!?」

 

「ううん、ちょっとした口封じよ。ね、ちーちゃん」

 

「だから、ちーちゃんと呼ぶな」

 

そう言って二人が取り出したのは星のマークがキラリと光る缶ビールであった。

 

「口封じって・・・・」

 

「私達だってお酒は飲むのよ?」

 

「いや、今は仕事中では・・・・」

 

「口止め料は払ったぞ」

 

そう、先程の飲み物はそういう意味であった。

 

「さて、本題だ。お前ら、あいつらのどこがいいんだ?」

 

全員、「あいつら」が誰を指しているかわかっていた。箒達四人は一夏。シャルロットは雪兎のことに他ならない。

 

「わ、私は別に・・・・以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

 

「あたしは、腐れ縁なだけだし・・・・」

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです」

 

箒、鈴、セシリアのコメントである。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう」

 

そんなことをしれっと言う辺り、千冬も中々意地悪である。

 

「「「言わなくていいです!」」」

 

それをはっはっはっとからかう千冬。もう酔ってないだろうか?

 

「で、お前は?」

 

次に一夏に惚れている最後の一人、ラウラに矛先が向く。

 

「つ、強いところが、でしょうか・・・・」

 

「いや弱いだろ」

 

容赦無さすぎません?

 

「つ、強いです。少なくとも、私よりも」

 

恐らく精神的な強さのことだろう。

 

「まあ、強いかは別にしてだ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだってうまい」

 

休日にたまにしてもらっているらしい。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

「「「「く、くれるんですか?」」」」

 

「やるかバカ。女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」

 

一方、シャルロットは・・・・

 

「ぼ、僕は・・・・やさしいところ、です。いつも雪兎は僕にやさしくしてくれて」

 

「だよねー、ゆーくんやさしいもんね」

 

「だから、いつの間にずっと傍にいたいなって・・・・な、何言ってるんだろう、僕」

 

顔を真っ赤にしてそう言うシャルロットに雪菜はうんうんと頷きながらとんでもないことを口走った。

 

「もうゆーくんと付き合っちゃえよ。私はシャルちゃんみたいな義妹なら大歓迎だよ?」

 

まさかの姉公認である。そして、いつの間にかシャルちゃん呼びである。

 

「え、ええー!?」

 

「だって、シャルちゃんならゆーくん任せても安心できそうだし。そうだ!お姉ちゃんって呼んでもいいんだぞ?」

 

「きゅ、きゅー・・・・」

 

あまりのことにシャルロットはオーバーヒートしたかのように倒れてしまう。

 

「雪菜、ほどほどにしといてやれ」

 

「私は本気なんだけどなぁー」

 

そんなこんなで夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。各種装備試験運用の為、訓練機グループと専用機グループで分かれることになった。専用機持ちは個人でデータ取りを行わなければならない為、当然の処置だ。しかし、その専用機グループの中には何故か箒の姿もあった。

 

「専用機持ちは揃ったな」

 

「先生、一人専用機持ちじゃないのがいるんですけど」

 

「それこれから説明すーー」

 

その時だった。

 

「ちーちゃーーーーん!!」

 

ずどどどど・・・・!と砂煙を上げながら天災・篠ノ之束がこちらに駆けてくる。本来は部外者立ち入り禁止なのだが、この天災にそんなもの関係なかった。

 

「・・・・束」

 

「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、ハグハグしよう!愛を確かめーーぶへっ」

 

飛びかかってきた束を千冬は片手で顔面を掴み、見事なアイアンクローを決める・・・・手慣れている。

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬぬ・・・・相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

その拘束から抜け出す束までが一連の動作なのだと言われても不思議でない。あっさり世界最強の手から逃れる束もやはりただ者ではない。

 

「やあ!」

 

そして今度は箒に話しかける。

 

「・・・・どうも」

 

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年振りかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」

 

がんっ!とどこから取り出したのか箒が日本刀の鞘で束をぶつ。

 

「殴りますよ」

 

「な、殴ってから言ったぁ・・・・し、しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどい!箒ちゃんひどい!」

 

いきなり久しぶりに再会した妹にセクハラ発言するから悪い。

 

「え、えっと、この合宿では関係者以外ーー」

 

「んん?珍妙奇天烈なことを言うね。ISの関係者というなら、一番はこの私をおいて他にいないよ」

 

「えっ、あっ、はいっ。そ、そうですね・・・・」

 

真耶が色々言おうとするもあっという間に論破されてしまう。

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

 

いかにもテキトーな自己紹介だったが、それでようやく一同はこの人物が篠ノ之束であると理解する。

 

「雪兎、僕は雪兎の忠告聞いててよかったと思ったよ」

 

「言ったろ?驚くって」

 

「うん、想像以上だった」

 

そこで束は雪兎の存在に気付き手を振る。

 

「やあやあ!我が弟子よ!久しぶりだね」

 

「この前会ったのは春休みに白式と雪華受け取った時だから3ヶ月ぐらい振りですかね?」

 

「そうだねー、もうそれくらい経つんだぁ」

 

「クロエは連れて来なかったんですか?」

 

クロエとは束が保護して娘のように可愛がっている少女のことだ。

 

「うん、くーちゃんはお留守番してるってさ。それよりも、あれから色々作ってたみたいだけど?」

 

「後で見せますよ。それとこれ箒の最新のデータです。使いますよね?」

 

「流石は我が弟子!それではお見せしよう!さあ、大空をご覧あれ!」

 

「このパターンはもしや・・・・」

 

すると上空から銀色の金属塊が降ってきた。

 

「やっぱりかー!」

 

一夏が何か叫んでいるがとりあえず無視する方向で。そして、その金属塊が開くと中には・・・・真紅のISが鎮座していた。

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと【紅椿】!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

紅椿、ある意味でISの一つの到達点とも呼ばれるISがそこにあった。

 

「さあ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!我が弟子がデータくれたからすぐに終わるよ!」

 

そう言うと6枚もの空中投影ディスプレイを展開し、あっという間に作業を終わらせる束。

 

「近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ」

 

やはり天災は格が違った。

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの・・・・?身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」

 

どこからともなくそんな声が上がるも。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな?有史以来(・・・・)世界が平等であったことなど一度もないよ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そう束に言われて作業に戻っていく。その後も一夏の白式や雪兎の雪華のデータも見て興味深そうに眺めていたり、箒の試運転をしたりしていると。

 

「さてと、紅椿の試運転も一段落したところで・・・・ゆーくん、紅椿と戦ってみない?」

 

「えっ?」

 

「師匠としては弟子のゆーくんが育てた雪華の力。データじゃなくて実際に見てみたくなっちゃってね」

 

「そういうことですか・・・・なら弟子としては受けざるを得ませんね」

 

こうして、紅椿VS雪華という師弟のISがぶつかることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここで紅椿とやれるとはな・・・・師匠の作った万能型の最高峰とやれるなんて技術者冥利に尽きるぜ)

 

雪兎はこの試合、かなり乗り気だった。それだけ雪兎にとって束は大きな存在だった。

 

(雪兎の雪華か・・・・何度も模擬戦は行っていたが、その性能をフルに発揮させたかと言えばそうではなかった。だが、この紅椿なら!)

 

対する箒も手にした紅椿という力を試す絶好の機会であると闘志を燃やす。

 

「悪いが、箒。紅椿相手なら俺も加減は一切しねぇからな?」

 

「望むところだ、雪兎。今日こそはお前から一本取ってやる!」

 

『それではー、試合開始!』

 

束の合図で両機は一斉に動き出した。

 

「いくぜ【J:イェーガー】!」

 

初っぱなから雪兎はバスターライフルで紅椿を狙うも、紅椿は思った以上の速さで動きそれをかわす。

 

「確かにそのバスターライフルは脅威だが、当たらなければどうということはない!」

 

そう言い右に持つ雨月で突きを放ち無数のレーザーが雪兎に迫る。

 

「機動性なら【J:イェーガー】も負けてねぇよ!」

 

だが、雪兎に簡単に当たるはずもなくレーザーは空を切る。

 

「なら次は・・・・来い【W:ウィザード】!」

 

雪兎はバスターライフルが通じないとわかるとパックを【J:イェーガー】から【W:ウィザード】に切り換える。

 

「前はグラスパーしか使わなかったからな!展開しろ、ディフェンサー!」

 

展開したのはグラスパーとは違う円盤状ビットだ。

 

「数を展開しても無駄だ!雨月!」

 

それに対し箒は再び雨月のレーザーを放つが。

 

「かかったな!」

 

雪兎がディフェンサーと呼んだビットの表面は鏡のようになっていた。

 

「鏡面・・・・まさかっ!?」

 

「そのまさかだよ!」

 

雪兎の周囲に並んだディフェンサーは雨月のレーザーを数回反射させると箒へと跳ね返す。

 

「ちっ、簡単には落とされてくれないか」

 

「その程度、セシリアのオールレンジ攻撃に比べれば楽勝だよ」

 

「ならば、空裂!」

 

今度は左の空裂で帯状の斬撃を飛ばしディフェンサーを撃墜する。

 

「なるほどね、確かにそっちは反射出来ん。でも、斬撃を飛ばせんのはそっちだけじゃないぜ!」

 

雪兎が大鎌・ビームハルパーを振るうと、ビームでできた刃そのものが飛び、箒は慌てて空裂で相殺する。

 

「なるほど、そちらは刃自体が飛んでくるのか!」

 

「ああ、こっちも何回でも飛ばせるぜ!」

 

それからは飛ぶ斬撃と隙を縫うような近接戦を両者は繰り返す。

 

「紅椿、束さんの自信作なだけはあるな」

 

「はぁ、はぁ、これでも追い付けないか・・・・やはりお前は強いな」

 

まさか【W:ウィザード】で近接戦がここまでできるとは箒も思っておらず、思いの外苦戦していた。

 

「せっかくだ。お前に俺の新しいパックを見せてやるよ」

 

「ここにきて新型だと!」

 

「こいつはお前や織斑先生のおかげで出来たパックだ。初戦は箒で試すつもりだったよ。来い【B:ブレイド】!」

 

現れたのは深い藍色の鎧武者のような追加装甲を持つISだった。

 

「参式や白式のデータを元に作った近接特化パック【B:ブレイド】だ。久しぶりに剣術勝負といこうか、箒!」

 

その加速はその鎧武者の姿からは想像もつかない速さを持って箒の紅椿に迫る。

 

「くっ、何て加速だ。その肩の非固定浮遊部位は参式と同じか!」

 

「ご名答っ!」

 

そして、雪兎も紅椿同様に二本の刀を構え斬りかかる。

 

「こいつは弐式の薙刀と同じ高周波ブレードだ。あんまし受けるとその刀、叩き折るぜ!」

 

「また厄介なものを!」

 

雨月や空裂のレーザーで接近されないよう戦う箒だが、雪兎はそれを難なく掻い潜り斬撃を浴びせていく。

 

「空裂!」

 

再度空裂を振るうもレーザーは放たれない。

 

「エネルギー武器の使い過ぎだ!一夏と同じで武器性能の把握が疎かだぞ、箒」

 

そして喉元に雪兎の剣が突き付けられ試合は決着した。

 

「また私の負けだな、雪兎」

 

「まあ、経験の差ってやつだ。もっと経験を積んでまた来な。いつでも相手になるぜ」

 

試合は雪兎の勝利。しかし、紅椿はその圧倒的な性能を周囲に知らしめるのであった。




結構長文になりました。

試合までが長いもの原因でしたが・・・・

雪兎の新パックは【B:ブレイド】イメージはフルメタアナザーのレイブンです。あれを二刀流にした感じですね。他にも武器はありますが今回は紅椿に合わせて日本刀です。

次回予告

二人の模擬戦も終わって一息ついたところで緊急事態発生!?実験中のIS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が暴走してこちらに向かっているという情報が!これを束の提案で白式、紅椿で撃墜することに。その時、雪兎がとった行動とは!?

次回

「暴走!銀の福音 兎、提案する」

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