これまであんまり触れていなかった雪兎の生態についてです。
雪兎が普段何をしてるのか、ここくらいしかなかったので。
臨海学校の数日前のある1日。
雪兎の朝は割りと早い。技術者系は普通、遅くまで色々やっていて朝が遅いイメージがあるが、雪兎は基本的に翌日に疲れは残さないようにしている。師匠の束は何日も徹夜とかが普通でそれを反面教師にしているらしい。
「一夏、朝練いくぞ」
「お、おう」
ここ数年の間バイト等で鈍った一夏の身体を鍛え直すべく、雪兎と一夏は朝練を行っている。最近は箒やシャルロット、ラウラなども一緒に行っており、おかげで一夏も大分昔の感覚を取り戻しつつある。
「おはよう、雪兎」
「おはよう、シャル。箒、それにラウラも」
「うむ。おはよう、雪兎」
「今日も早いな。それに比べて嫁は・・・・」
雪兎はあのデート以降、シャルロットのことをシャルと呼んでいる。どうもしっくりくる、とのことで本人も嬉しそうにしているので問題はない。ラウラも特訓のメンバーに加わった際に他人行儀になる必要はないとメンバーに名前呼びを許しており、すっかり仲間というイメージがついている。それとラウラは原作同様一夏に助けられた際に精神的邂逅があったらしく。気が付けば一夏を嫁呼ばわりしている。何度か一夏が訂正を試みたが結局は直らなかった。
「すまん、遅くなった」
「遅いぞ、嫁。お前はただでさえ皆に遅れを取っているのだ。ならば少しはフィジカル面で挽回するようにせねば」
「うっ、痛いところを・・・・」
「悔しいと思うならもう少し気合を入れろ、一夏」
ラウラの加入は一夏を鍛える面でも本当にありがたく、軍人として蓄積されたその技量は中々に貴重な戦力だった。
「よし、それじゃあ今日も朝練はじめっぞ」
朝練のメニューはランニングの後にラウラの指導による対人組み手、箒や雪兎による剣術指南などでシャルロットやラウラも一緒にこなせるよう調整されている。
「雪兎、お前はまた腕を上げたな?」
「指導者が優秀だからな」
「いや、私など教官に比べたらまだまだだ。そういえば貴様も教官の教えを受けたことがあったのだったな?」
「一応は弟弟子だからな。どこぞの弟はあの体たらくだが」
「まったくだ。やはり我々が鍛え直してやらねば」
この会話は雪兎とラウラの対人組み手の最中に行われている。二人とも軽く流すつもりでやっているが、他のメンバーからしたらとても会話などできないレベルだ。
「雪兎って技術者志望なんじゃなかった?」
「あいつ、昔から筋が良くてな。千冬姉ともよくやってたんだよ」
「私達の世代で織斑先生についていけたのはあいつくらいだ」
やはりあの細胞からオーバースペックとすら語る天災の弟子はこちらもハイスペックだった。
朝練後は一度シャワーを浴びてから朝食。一夏同様、雪兎も朝はしっかり取る方である。それから学園で授業。
「えーっと、この問題は・・・・天野君」
「はい、その答えは・・・・」
天災の弟子が学園の授業などで苦戦などするはずもなく、スラスラと問題を解いていく。
「これでいいですか?」
「はい、正解です」
成績も学年主席。こいつ、本当に欠点ないの?ってレベルである。
昼休み。雪兎は一夏同様に自炊も出来るため、週に数回全員でお弁当会のようなこともしている。
「鈴、また中華の腕上げたな。だが、他の分野では負けん」
「くっ、雪兎も玉子焼きのクオリティまた上げてきたじゃない」
「ほんとだ、雪兎の玉子焼き美味しい」
「雪兎って定番のメニューなら弁当屋のクオリティで出してくるからなぁ」
「流石に普段から主夫してたやつには負けるわ」
一夏は料理や家事という分野においてはメンバーの中ではトップである。無駄に女子力が女子を上回っている。
「ゆ、雪兎、僕も作ってみたんだけど、どうかな?」
すると、シャルロットが雪兎に自分の作った料理の試食をお願いする。
「ん?ほうほう、これまた定番中の定番、肉じゃがか、どれどれ・・・・ん、いけるな。味もしっかり染みてる。シャルの料理、俺は好きだぞ」
よし!とシャルロットが握り拳を作り喜びを露にすると、一同は「今日もご馳走さまです」と手を合わせるのであった。ちなみにセシリアは最初の時に雪兎から徹底的に駄目出しを食らっており、原作のようなとんでも料理はしなくなったものの、まだ上手いとは言えず、目下修行中である。この時の雪兎は一同から救世主扱いされていた。
「ラウラ、今日のプリンはどう?」
「うむ、聖のプリンは好きだぞ、私は」
「私も私も!」
一方で聖もデザート作りに関してはかなりの腕前で、何でも両親がパティシエなんだとか。ラウラと本音は着々と聖に餌付けされている。
午後の授業も終わっていつもの特訓が始まるが、「部活にもちゃんと顔は出しておけ」と以前に雪兎がメンバーに言っており、全員が揃うのは週に数回だ。今日はその全員が揃う日のようだ。
「今日の相手はっと」
「げっ、雪兎とじゃんか」
「げっ、とはなんだ。鈴」
特訓で行う模擬戦の相手はくじ引きで決めており、今回の雪兎の相手は鈴だった。
「あんた、メタしか張らないじゃないのよ!そんなやつと当たったら、げっ、とも言いたくなるわよ!」
「そうか、メタ張るから負けると、お前はそう言うんだな?」
「それがどうかしたの?」
「なら今回はメタ装備は使わずにやってやろう」
「えっ?いいの?」
「構わん。俺もメタだけとは言われたくないからな」
そう言って雪兎は雪華を【T:トライアル】で起動する。
「今日こそ勝ってやるんだから!」
「悪いがそう簡単には負けんぞ?」
その試合はそう時間もかからず決着した。無論、雪兎の勝利だ。
「龍咆に依存し過ぎだ。確かにあれは強力な兵器だが、さっきみたいに速射にすると威力が落ちて強行突破しやすい。そこで近接戦に上手く切り替えるか龍咆の威力を時々強いの混ぜたりして距離保つとか考えないと」
「うぐっ」
その辺は現在の鈴の課題である。
「お前の甲龍は比較的燃費もいいし、攻守のバランスもいいんだから。それに見えない攻撃ってのもさっき言ったように威力をばらして撃っても気付かれ難いって利点があるんだ。決して弱くない。もう少し自信を持てって」
「うう・・・・」
使用者より効果的な運用を相手に指摘され凹む鈴。しかも言っていることは分かりやすくすぐに実践できるとあって余計に凹む。
「雪兎さんってメタ張らなくても十分強いですよね・・・・」
「じゃなきゃランク戦で上位にいない。雪兎のメタはちゃんと技量があって成立するものだから」
「簪の言う通りだ、聖。あいつ程の技量がなければあれほどの装備郡を使いこなすなど不可能だ。そういう意味でも雪兎と並び立てるのはシャルロットくらいのものだろう」
「やっぱり、似た者夫婦?」
「ほ、本音!?何言ってるのさ!?」
「おー、しゃるるん顔真っ赤ー」
そんなこんなで特訓の時間も過ぎていく。
「ふぅ、今日も終わったな、雪兎」
「おう、今日も良いデータが取れたぜ」
1日の終わりに雪兎はその日得たデータをまとめて今後の特訓などに活用できるようにしている。このマメさが雪兎の持ち味と言ってもいいだろう。
「そろそろ次のパックの設計も終わることだし、臨海学校で試すとするか」
「うげ、また新しく増えんのかよ。またパターンのバリエーション増えて読み辛くなるな。で?今度はどんなやつなんだ?」
「今度は近接型だ。前の参式とかのデータを使ったやつだ。千冬さんが使ってくれたのが良かった。あの人のデータは貴重だからな」
「そういえば千冬姉も使ったんだったな、アレ。確かに千冬姉ならアレも使えるか」
アレとは参式斬艦刀のことだ。やはりアレは並みの人間に使いこなせるものではなかったらしく、箒も参式は使うが斬艦刀は使わないようにしているくらいだ。
「明日も早いし、そろそろ寝るか」
「おう、それじゃ、お休み」
「ああ、お休み」
こうして雪兎の1日は終わる。
とある天災のラボ。
「ん?この着信音は」
という訳で以上が雪兎の1日です。最後に何かいましたが、次からは原作三巻のメインエピソードになる四章になります。つまり息抜きたる三章は閉幕です。
次の四章は天災や福音が登場するアニメ一期のラストエピソードでもありますが、本作は原作メインなので福音さんは有人機です。
はてさて雪兎の介入でどう変化するかはお楽しみに。
次回予告
ついにやってきた臨海学校!海に水着に大騒ぎの生徒達。という訳で次回は水着回じゃー!
次回
「夏真っ盛り!IS学園臨海学校! 兎、海にいく!」