大分原作離れしてきましたが、我らが雪兎君は気にしません。
さて、どんな結末なるやら・・・・今回は少し長いです。
学年別タッグトーナメント準決勝第一試合。
一夏・箒ペアVS簪・本音ペア
「お互い悔いのない試合にしようぜ、簪」
「うん。でも、負けない」
この対決、一夏・箒ペアは二人とも超がつく近接メインなのに対し、簪の打鉄弐式は中・遠距離型。本音という壁役がいるが、一夏の白式には零落白夜というバリア無効化攻撃があるため有効とは言いにくい。一夏達からすれば本音をさっさと片付けて二人で簪の撃破を狙いたいところだ。しかし、簪がそれを許すかと言えばそんなことはない。
「【山嵐】!」
最初に山嵐で二人を分断、一夏を簪が、箒を本音が相手することで一夏達の狙いを崩す。そして、箒を本音が止めている間に一夏を遠距離で仕留める作戦に出る。
「やっぱ、そう簡単にはやらせてくれないか」
「一夏の零落白夜は厄介。でも、当たらなければ意味はない!」
二砲の春雷から放たれる荷電粒子砲が一夏を追い詰めんと迫るが、ギリギリのところでかわされていく。
「そう焦るなよ。もっと試合を楽しもうぜ!」
春雷の連射が止まる隙を突き一夏は瞬時加速で一気に距離を詰め、零落白夜を発動させる。雪兎との特訓で零落白夜の展開スピードは以前と比べかなり早くスムーズになっており、簪が咄嗟に薙刀を展開していなかったらそこで簪は脱落していたことだろう。
「やっぱ、しののんも強いよー」
「私の攻撃をキッチリガードしている布仏も中々やるではないか」
一方の本音も箒の攻撃をしっかりガードし、箒の足止めをこなしていた。防御に絞ったからこその芸当であり、反撃などは全くできないのだが。
「思ったより良い試合するじゃん、あいつら。特に本音」
「うん、あの箒の剣を止められるなんて布仏さんもやればできるんだね」
酷い言われようだが、本音は元々整備科志望であることを考えるとこういう評価になるのも無理はない。
「こりゃ、簪が一夏を仕留めるまで本音が耐えられるかが勝敗を訳そうだな」
「逆に布仏さんがやられれば一夏と箒の2対1になるからね」
地味に勝負の行方を握ることになってしまった本音。
(ん?一夏のやつ・・・・なるほど、そう来るか)
そんな中、硬直した試合を動かしたのは一夏だった。
(俺が簪にやられるか箒がのほほんさんを倒すか、どっちが早いかって感じだな)
あまり認めたくはないが今の一夏に簪を打ち破る一手は思いつかない。だが、箒に任せっきりというのも一夏には認められないことであった。
(せめて箒と俺の立ち位置が逆なら・・・・いや、雪兎ならそういう状況にするよな、絶対に)
あの親友はことその手のことに関しては恐ろしく頭が回る。ならばこの状況を彼ならどうするだろうか?一夏はそれを考えた。
(加速性能は白式と打鉄弐式は互角。じゃあ、打鉄と打鉄・改は?打鉄・改だよな・・・・なら)
『箒、頼みがある』
一夏は戦況を変える一手を打つべく箒に
「ふ、二人同時に瞬時加速!?しかもそれを利用して相手を入れ替えた!?」
この大胆な作戦にシャルルも驚いた。そう一夏が考えた作戦は一瞬の隙を突き、二人同時の瞬時加速で入れ替わるというものだったのだ。
「やるじゃんか、一夏。確かに俺もお前のその状況ならその手を打つな」
簪の打鉄弐式は確かに強力だが、箒の使う打鉄・改なら短時間であれば足止めは可能だ。その間に当初の予定通り本音を先に沈め2対1に持ち込む。一昔前の一夏なら思いつきもしなかったであろう作戦に簪・本音ペアは隙を見せてしまった。そう、決定的な隙を。本音が撃墜され、一夏と箒の波状攻撃を受けて簪もついに撃破されてしまった。
「面白い試合だったぜ。一夏、箒。次は」
「僕らの番、だね」
一夏達の見せた試合に雪兎とシャルルも気合が入った。
(あと一つ勝てば
一方のラウラは一夏が決勝まで勝ち上がってきたことに胸の奥にある感情が高ぶるのを感じつつも次の試合は今までのようにはいかないだろうと軍人としての勘がそう告げていた。
(天野雪兎・・・・やはりやつが立ち塞がるか)
あの最強の世代と呼ばれたうちの天災・篠ノ之束の弟子にして高速の妖精の二つ名を持つ天野雪菜の弟、そしてラウラが教官と慕う織斑千冬の弟弟子という間違いなく同世代最強の男。そんな男が何故あの織斑一夏を庇うのか?ラウラはそれが疑問だった。
(何れにせよ立ち塞がるというのなら打ち破るまでだ!)
そんなラウラとは対照的に聖はもう帰りたかった。
(私、何もやってないのにもう準決勝だよ・・・・「寄生だ」とか言われてるよね?)
何故、この娘はここまで卑屈になれるのだろうか?ちなみに他の生徒からはラウラが凄すぎて認識すらされていなかったりする。聖、君はやっぱり泣いていい。
そんな両ペアの試合はアリーナにいる全ての者の想定外の結末を迎えることになるのだが、それを知るのは密かに妹の活躍を眺め(盗撮)ひゃっはーする天災だけであった。
準決勝第二試合。
雪兎・シャルルペアVSラウラ・聖ペア
「ボーデヴィッヒ、悪いが一夏と戦うのはもう少し延期させてもらうぜ」
「ふん、お前のISが如何に強力だろうとこのシュヴァルツェア・レーゲンの敵ではない!」
「そういうのは負けフラグって言うんだぜ」
「それに雪兎ばかり気にしてると痛い目を見るよ」
「
「量産化の目処の立たない
試合前からの壮絶な舌戦に一人蚊帳の外にいる聖は「もう帰りたい・・・・」と涙目だった。
『試合開始!』
「悪いが最初から飛ばしていくぜ!」
開幕直後、雪兎は展開していた【G:ガンナー】でいきなり面制圧射撃を繰り出す。
「ちっ!」
容赦の無いその攻撃にラウラはワイヤーブレードで聖を自身の後方に放り投げるとAICを展開し何とかそれを耐えきる。
「ほらほら、こっちがお留守だよ!」
すると今度は側面からシャルルの射撃がラウラを襲う。
「くっ!」
「AICは確かに強力だがよ、流石に全方位には張れないよな!」
(こいつら、停止結界の弱点を!)
メタに定評のある雪兎がそんな弱点を見逃す訳がなく、ラウラはいきなり窮地に陥る。
「シュヴァルツェア・レーゲンが停止結界だけのISと思うな!」
しかし、ラウラも軍人としてそこそこの修羅場を潜り抜けてきた猛者。大型レールガンやワイヤーブレードを用いて牽制し、態勢を立て直す。
「やっぱ、一筋縄じゃいかんか・・・・じゃなきゃ
そう告げて雪兎は雪華に新たなパックを展開させる。その色は蒼。セシリアのブルー・ティアーズと同じ蒼天を連想させる色のパックだった。
「【J:イェーガー】お前を倒す切り札だ」
「ターゲット、ロック。fire」
放たれたのは
「くっ、そんなものまで用意していたとはっ」
これは流石のラウラも想定外の事態であり、大いに焦った。雪兎のバスターライフルを警戒すると意識の隙間を縫うようにシャルルが攻撃を仕掛け、シャルルの攻撃をAICで防ぐために足を止めれば雪兎のバスターライフルの餌食となる。そう、雪兎・シャルルペアの必勝パターンにラウラは既に追いやられていたのだ。
「余所見してる時間はあげないよ、黒兎さん」
「さあ、舞い踊りな。
「さ、流石は雪兎さんですわ・・・・あの動き、わたくしのブルー・ティアーズの理想形ですわ」
「しかもあの高出力ライフル・・・・ほんとあいつだけは敵に回したくないわ」
「ええ、あのメタ装備の展開に関して雪兎さんの右に出る方はいないでしょうね」
怪我で不参加となったセシリアと鈴も試合の映像を見て改めてそう思った。こうなるといくら自分達に大怪我をさせたラウラとはいえ同情したくなってくる。
「かんちゃん。私、どうしてもあまあまに勝つ光景が想像できないよ」
「雪兎に勝とうと思ったら初見で情報無しの一撃しか無理だと思う。時間をかけたり、何度もやるのは愚策。絶対に対策したメタ装備使ってくるから」
「だね・・・・」
「お姉ちゃんでも怪しいかも」
どうすれば勝てるんだ、あんなやつ!状態である。情報と時間を与えてしまえば現状の特化型のISではまず彼には勝てない。かなり特殊なISを使う簪の姉にして学園最強の称号を持つ生徒会長・更識楯無なら初見で何とかレベル。想像するだけでも恐ろしい。
(何、あの子。噂は聞いてたけど、ちょっとトンデモ過ぎない!?)
その生徒会長本人も試合を見て唖然としていた。現役軍人すら手玉に取るその戦術眼に徹底したメタ装備。学年最強と噂される実力は確かである。
(私対策とかどんな装備で来るか予想がつかないわね・・・・出来れば敵に回したくないわ)
学園最強からもそう評価される雪兎はやはりトンデモないやつだった。
しかし、ここでほぼ全ての人間が忘れている存在がいた。聖である。そう、あまりにも存在感が無さすぎて雪兎達からもパートナーであるラウラにも忘れられていた聖である。
(何、この人外魔境・・・・)
空からはバスターライフルが降り注ぎ、地上ではシャルルがこれでもかと弾丸をバラ撒き、それを必死に捌くラウラ。聖の居場所はやはりアリーナの隅であった。
(早く帰りたいよ・・・・)
そんな中、試合はだんだんラウラが追い詰められていく展開だ。
(早く帰りたいけど・・・・何もせずに負けるのは嫌だなぁ)
ラウラには「何もするな」とは言われたが、聖にも意地があった。
(どうせ負けるならせめて一矢報いてやる!)
この彼女の決意がラウラの運命を変えることになるとは誰も想像してはいなかった。
ラウラはもう正直なところ限界間近だった。頼りのAICが封じられ回避行動と牽制をするぐらいしかさせてもらえない一方的な攻防。ここまで一方的なのは随分と久しぶりのことであった。以前、千冬にも「選ばれた人間気取りか?」と言われたが全くもってその通りだ。世界は広かった。この国には「井の中の蛙」という言葉があるが、ラウラは正にその「蛙」であったのだ。
(そんな私が、見下すことしかしていなかった私が勝てるはずもなかったのだな)
とうとう心が折れてしまったラウラは動きを止めてしまう。そして、それ雪兎が見逃すはずがなく、バスターライフルの銃口がラウラを捉える。
「これで終わりだ!」
誰もがそう思った。だが、放たれたバスターライフルの一撃はラウラには届かなかった。
「えっ?」
何故なら、ラウラの前に会場中から忘れさられていた聖が、ラウラを庇うように立ち塞がっていたのだ。
「宮本っ!?どうしてお前が!」
自分の代わりにバスターライフルの直撃を受け大ダメージを負った聖にラウラは困惑していた。
「あは、はは、ごめんね・・・・動くなって、言われてたけど、何も、せず、に、負け、るのは、嫌、だったから」
「何故だ!何故私などを庇った!?」
「ボーデ、ヴィッヒさ、んは、そうで、もなかっ、たかも、しれない、けど、私は、ボー、デヴィッ、ヒさんのパートナー、だから」
それを聞いてラウラは知らぬうちに涙をこぼしていた。
「馬鹿者・・・・」
あれだけ辛く当たっていたというのに迷わずパートナーだからと告げた聖にラウラは負けた。精神的に、ラウラはこの少女にすら劣っていたと認めた。
「私の負けだ」
こうして準決勝第二試合は聖の脱落とラウラの敗北宣言により雪兎達の勝利という結末を迎えた。
『認めん・・・・我はこのような結末など認めん!』
だが、ラウラのISの内に潜んでいたそれはその結末を認めなかった。
という訳でVSラウラ戦は終了です。
最後のあれは何かって?
ご想像通りのあれかと・・・・原作と違い発動条件がもう一個あったっぽいという設定です。
聖よ、お前はいい仕事をした!世界が認めなくとも私が認めよう。という訳で聖ちゃんにラウラとお友達フラグが建ちました。
次回予告
ラウラ・聖ペアを破った雪兎とシャルルだが、ラウラのISに仕込まれていた悪意が二人を襲う!
次回
「VTS強襲!? 兎、人命救助をする」
活躍報告にて少し相談がありますので時間があればよろしくお願いします。