IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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新年明けましておめでとうございます。(遅い気もしますが・・・・)
今年も兎協奏曲をよろしくお願いいたします。





155話 雪と兎と温泉旅館 兎、遭遇する

夜間瀬町。東京に比べると雪の多いぐらいの田舎町でしかないこの町はその日軽いパニックに陥っていた。何故ならば半数以上が外国籍(しかも国はバラバラ)の集団が突然来訪したからだ。更に言えば、その集団は最近有名になりつつある兎一味なのだ。

 

「結構騒ぎになってるね」

 

「まあ、過半数が元々代表候補生でそれなりに知名度はあったのに、俺を筆頭に今年は色々やらかしたからなぁ」

 

「・・・・一応、やらかしてる自覚はあったのね、あんた」

 

鈴のジト目を軽く流しつつも、一行は本日の宿である縁嬉へと到着し、聖を先頭に雪兎達兎一味は縁嬉へと足を踏み入れた。

 

「こんにちは~、予約していた宮本ですが」

 

「いらっしゃいませ~、あっ!宮本先輩!」

 

(やっぱり知り合いかよ!)

 

一行を出迎えてくれたのは車イスの少女・沓野奏(くつのかなで)。この縁嬉を営む祖父母の元に湯治を兼ねて長期滞在している少女だ。そして、雪兎は半ば予想していた事が的中し、額に手を当てやれやれとため息をついた。

 

「あっ、この娘は沓野奏ちゃんといいまして、この縁嬉のおじいちゃんとおばあちゃんのところに湯治に来てる娘なの」

 

「く、沓野奏と申します!どうぞよろしくお願いします!」

 

聖の紹介で少し緊張した様子で話す奏。無理も無い、まさかかつての先輩が連れてきたクラスメイトが超が付く有名人集団だったのだから。

 

「そんなかしこまらんでもいいぞ、年の1つか2つしか変わらねぇし」

 

「そうですか?・・・・あれ?私、自分の年言いましたっけ?」

 

「外見と聖を先輩って呼んでたからそこからの逆算さ」

 

「そうでしたか!」

 

奏とのやり取りでうっかりボロを出し掛けた雪兎だが、咄嗟に言い訳を思いつき、何とかその場しのぐ・・・・もっとも、シャルロットを筆頭に気付いているのも数名いたのだが。

 

「それではお部屋に案内しますね」

 

その後、自己紹介を終えた一行は数名ずつ部屋へと案内されていく。部屋割りはこうだ。

 

①雪兎、一夏、弾、数馬、紫音

②シャルロット、マドカ、蘭、クロエ

③箒、簪、本音、カロリナ

④セシリア、エリカ、アレシア、ロラン

⑤鈴、聖、ラウラ、晶

⑥楯無、虚、忍、カテリナ

⑦ディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリ

 

雪兎とシャルロットを同室にしようという案もあったが、「そういうのは二人っきりの時で十分だ」と雪兎が却下したそうな。

 

「本当に彼女と一緒じゃなくて良かったのか?」

 

「普段から同室なんだ。こういう時くらい離れてもいいだろ?」

 

「でもあの娘、すげーむくれてたぞ?」

 

「・・・・正直に言うと、今のシャルと二人っきりが怖い」

 

「あっ、そういうことか」

 

学園の外であるこの旅館で二人っきりという状況と到着前のシャルロットの態度から危険だと雪兎の直感が告げているらしい。

 

「それに俺だって久しぶりに男子とワイワイ騒ぎたいんだよ」

 

「あー、それわかる!」

 

「そうゆうもんか」

 

「そうゆうもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、部屋に荷物を置いた後、夕食までの空き時間に女性陣は縁嬉にある温泉に入る事にし、男性陣は少し町を散策する事にした。

 

「ほんと、如何にも温泉街って感じだな」

 

「まあな、確かこの辺には縁嬉以外にもいくつか温泉宿があるって話だし」

 

「ねぇ、雪兎兄、あそこにあるお店って」

 

そんな話をしながら通りを歩いていると、紫音がある店を見つける。そこには『こはるびより』という看板があった。

 

「ここって、雪兎が前に話してた和菓子屋だっけ?」

 

「ああ、そういやこの通りだったな、この店あるのは」

 

雪兎もゲームの知識しかなかった為、この店の正確な位置は把握していなかったようだ。

 

「確か、縁嬉のお茶請けの菓子もここの和菓子だったはずだが」

 

「包装に書いてありましたね、こはるびより、って」

 

「よく見てんなぁ」

 

「今は夕食前だし、寄るのはまた今度でいいだろ」

 

「それにそろそろいい時間だしな」

 

という訳で縁嬉へと戻ろうと通りを引き返していると、前方に緑の着物のような服装で何やら大きな荷物を抱えた少女を見つけた。

 

「・・・・噂をすればなんとやらってか、どういうエンカウント率だよ」

 

その少女に見覚えがあった雪兎がそう呟くと、着物の少女は未だに残る雪に足を捕られて転びそうになる。

 

「あわわわ!?」

 

「ったく!」

 

それを黙って見ている事が出来なかった雪兎はすぐに少女に追い付くと、少女を片腕で支えてもう片腕で落としそうになっていた荷物を掴んだ。

 

「無事か?」

 

「は、はい・・・・あ、ありがとう、ございます」

 

突然の事に驚く少女だったが、すぐに雪兎から離れると頭を下げてお礼を告げる。

 

「おーい雪兎!そこの娘も大丈夫か?」

 

「ああ、間一髪だったがな」

 

「は、はい。私も大丈夫です」

 

そこに一夏達も追い付き、一夏が少女の安否を確認すると、少女は改めて雪兎に礼を告げる。

 

「危ないところを助けていただきありがとうございました」

 

「・・・・見過ごせなかっただけだ」

 

「ふふ、良い人なんですね」

 

雪兎が素っ気なくそう返すと、少女は何かを思い出すかのように優しくそう笑う。

 

「ところでそんな大きな荷物を持って何処へ行くつもりだったんだ?」

 

「あっ!?そうでした!私、配達の途中なんでした!」

 

「配達?」

 

「はい、私の家はこはるびよりって和菓子屋さんで、その和菓子を配達していたんです」

 

(やっぱりこの娘、『星川こはる』だったか)

 

そう、その少女は奏と同様、雪兎が知るゲームの登場人物の一人である星川(ほしかわ)こはるだったのだ。

 

「そんな大きな荷物を?この先なんだったら俺達が持つぜ?」

 

「そんな、悪いですよ」

 

「俺達、この先の縁嬉って旅館に泊まってんだ。だからついでにだよ、ついで」

 

「えっ?縁嬉にですか?偶然ですね、私、その縁嬉に配達するところだったんです!」

 

そして、数馬がそう提案すると、こはるから行き先が同じだった事が告げられた。

 

「まあ、その物量からしてそんな気はしてたが・・・・ドンピシャかよ」

 

「どんな確率だよ」と雪兎が思っているうちに、行き先も同じだからと、こはるも一緒に縁嬉に向かう事となった。

 

「へぇ~、じゃあ、紫音君以外は皆同い年なんですね・・・・それに一夏君と雪兎君はあのIS学園の・・・・あれ?私、もしかして物凄い有名人と一緒にいるんじゃ?」

 

「あははは・・・・今はオフの旅行中だし、普通に接してくれるとありがたいかな?」

 

「あー、なんとなくわかります。私の先輩にも同じような悩みを抱えてた先輩がいましたから」

 

そんな事を話していると、あっという間に縁嬉に到着する。

 

「荷物を持ってもらってありがとうございました。お土産を買う際には是非ともこはるびよりをよろしくお願いしますね?」

 

「店のアピールも忘れないとは・・・・まあ、土産を買う際には寄らせてもらうよ」

 

すると、

 

「あれ?こはちゃんに雪兎さん達?」

 

たまたまエントランスに出ていた聖と遭遇した。

 

「聖ちゃん!久しぶり!」

 

「うん、久しぶり・・・・で、何で皆が一緒に?」

 

「あはは、実は配達中に転びそうになったところを雪兎君達に助けて貰いまして・・・・」

 

「あ~、こはちゃんらしいというか、何と言うか・・・・」

 

その後、他のメンバーも合流し、すっかり仲良くなった一行は滞在中のどこかでこはるびよりに立ち寄る約束をしてこはると別れるのであった。




という訳で、今回は奏とこはるに出演していただきました。
次回は別の二人が登場予定です。


次回予告

一晩明けていくつかのグループに分かれて夜間瀬を観光する事になった兎一味。そんな中、神社を訪れた一夏達はそこでとある少女と出会う。


次回

「巫女姫と旦那様 兎、危険を感じる」

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