IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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コラボも終わりましたのでちょっと戦闘はお休みし、旅行編です。
行き先は兎一味が一人・聖の故郷となります。

その聖の故郷が何処であるかは本編でのお楽しみに・・・・多分、一部の方は色々と察してくださるかと。


154話 雪舞う町を訪ねて 兎一味、旅行する

『雪兎くん、僕は君に多くを教えてくれた。大切な思いを、覚悟を忘れない事を学べた。

 

もしかしたら、この先争いが起きて、誰かが悲しむ出来事が起きるかもしれない。

 

だが決して忘れないでほしい。皆が愛と平和を胸に生きていける世界を創るのは、僕達なんだと・・・・ありがとね、雪兎くん。また会おう。

 

 

明日を 創る(ビルドする)科学者、葛城巧より』

 

葛城が残していったメッセージをシャルロットとイヤホンを片方ずつ着けて聞きながら、雪兎は電車に揺られていた。一緒にいるのはいつもの特訓メンバー+α・・・・俗に言う兎一味である。

 

「へぇ~、葛城さんがこんなメッセージを・・・・」

 

「あの人らしいっちゃらしいけどな」

 

さて、何故雪兎達兎一味が電車に乗っているのかというと、数日前まで時間を遡る・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旅行?」

 

一海達との邂逅から2・3日が経ったある日、「皆で旅行に行かない?」と聖がそんな提案をしてきたのだ。

 

「うん、旅行と言っても私の故郷に皆を招待しようかなぁ、ってだけなんだけどね」

 

「聖の故郷というと、北の田舎町だって言ってたな?」

 

冬休みは両親も不在だったとかで里帰りを延期した聖だったが、今回はそうもいかなかったらしい。

 

夜間瀬(よませ)って言うんだけど」

 

「・・・・夜間瀬?」

 

その名前に雪兎は聞き覚えがあった。

 

「聖、つかぬことを聞くが・・・・こはるびより、という店を知ってるか?」

 

「あれ?雪兎さんもあのお店知ってるんですか?」

 

「・・・・OK、大体わかった」

 

この質問で雪兎は自分が知る「夜間瀬」が聖の故郷だとと確信した。

 

「こはるびよりとはどんな店なのだ?」

 

すると、ラウラが興味深そうに聖に訊ねる。

 

「和菓子のお店だよ。こはちゃ、友達の家でね、本当に美味しいんだよ」

 

「ほう!和菓子か」

 

和菓子と聞いて目を輝かせるラウラに対し、この時、雪兎は飲んでいたコーヒーを吹き出しかけていた。

 

(やっぱり出てくんのかよ、あの人ら(・・・・))

 

こはるびよりの段階で覚悟はしていたが、もろにその関係者とは思っていなかった雪兎にとっては完全な不意打ちだったのだ。

 

(この分だと他にも別の作品が混ざっててもおかしくないな・・・・てか、プロジェクトに参加してる企業にそれっぽい名前あったが、あれも限りなく俺の知ってるそれに近い可能性もあんのかよ)

 

まさかこんな事でこの世界が純粋なISの世界ではなく、色々な世界の複合世界だと知るとは雪兎も思っても見なかった。

 

「それでね、せっかくだし里帰りも兼ねて皆で旅行しない?って事なの」

 

「いいな、それ」

 

「先日も色々あったしな、ここらで息抜きしてもバチは当たるまい」

 

聖の誘いに一夏達は乗り気のようだ。他の面々も乗り気である。

 

「雪兎さん達はどうします?」

 

「・・・・ここで乗らなかったら空気読めねぇやつじゃねぇか」

 

「「「「やった!」」」」

 

実質選択肢等あって無いようなものであったが、雪兎がそう答えると皆から歓声が上がった。

 

「どうせなら弾達も誘ってやるか」

 

「となればお姉ちゃん達にも声かけなきゃね」

 

「・・・・となると、旅館はあそこかな?」

 

そんなこんなあって気付けばかなり大所帯での旅行になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。千冬達教員は入試の関係で忙しいとの事で、今回は総勢29名の生徒達だけの旅行となったが、雪兎や虚、カテリナがいれば大丈夫だろうと許可はあっさりと降りた。フライング・ラビットではなく電車で移動しているのは「旅行なのだからその旅路も楽しんでこそだろ?」と雪兎が言ったからである。

 

「へぇ、スキー場もあるんだ」

 

「あの辺は雪が結構残るから今もやってるんじゃないか?」

 

「なら皆で行きたいね」

 

事前に聖が用意していた旅のしおりやパンフレットを見てウキウキしているシャルロットとそれを微笑ましく見ている雪兎。

 

「芙蓉亭っていう洋菓子店もあるのか」

 

「あそこのケーキも絶品だよ」

 

「お姉ちゃん、行ってみる?」

 

「是非とも!」

 

聖のオススメ店から芙蓉亭を見つけるラウラと我が事のように言う聖。アレシアも興味があるようで、カテリナを誘っていた。

 

「高社神社か」

 

「結構歴史のある神社みたいだな」

 

「そのようだ」

 

「行ってみましょうよ、一夏」

 

「鈴さん、抜け駆けは許しませんわよ!」

 

神社の娘として高社神社に興味を持つ箒と一夏を中心としたいつもの面々。他にも皆思い思いに夜間瀬を観光しようと話している。

 

「とりあえず、今日は旅館で休んで、明日はグループ行動にするか」

 

「ですね。とりあえず行き先だけ聞いておけば夜間瀬は私がよく知ってますので」

 

「・・・・ところで聖」

 

「はい」

 

「もしかして宿泊先の旅館って縁嬉(えんぎ)か?」

 

「そうですけど・・・・雪兎さん、もしかして夜間瀬って」

 

「前世でISとは別の作品だが舞台になったゲームがあってな」

 

「そういう事でしたか・・・・という事はこはちゃん達も?」

 

「全く同一人物かは判らんが、限りなくそのゲームの登場人物に近いだろうな」

 

そう、雪兎もそのゲームをプレイした経験があった。友人に勧められて購入してみたゲームだったが中々に面白かった為にファンディスクや続編まで購入してしまった程である。

 

「ところで、どんなゲームだったんですか?」

 

「・・・・れ、恋愛系かな?」

 

「雪兎さんもそういうゲームやるんですね?」

 

「前世だと全く女っ気なかったんだよ」

 

なんでも、前世ではあまりそういう縁がなかったとの事。

 

「ふ~ん」

 

それを聞いてシャルロットが不機嫌そうな顔をする。どうやら恋愛ゲームと聞いて、そのヒロインと遭遇したら鼻を伸ばすのではないか?と疑っているようだ。

 

「いや、それは昔の話だからな!?今更シャル以外にデレデレするかっての!」

 

「・・・・ほんとに?」

 

「何でそんなに疑うのさ!?」

 

「・・・・だって雪兎、手出してくれないし」

 

「それはちゃんと理由説明したよな!?」

 

「相変わらず仲がいいよね、あの二人」

 

「というか、雪兎はまだ手出してなかったのか」

 

雪兎は意外にもそういうところはきっちりしており、「そういうのはちゃんと責任持てる年齢になってから」とシャルロットに言い聞かせているらしい。

 

「僕はもう大丈夫だって言ってるのに・・・・」

 

「アルベールさんにもこの前『孫はいつくらいに見られるんだい?』って急かされたし、この世界はちょっとそういうの緩すぎないか?」

 

「ははは、雪兎、ドンマイ」

 

「他人事と思いやがって・・・・」

 

そうこうしているうちに電車は夜間瀬駅へと到着する。

 

「着いたか」

 

すると、聖は先に駅のホームに立ち、雪兎達にこう告げた。

 

「ようこそ夜間瀬へ!」




という訳で、兎一味は夜間瀬に旅行に行きました。
次回からはあちらのキャラもちらほら登場する予定です。

次回予告

夜間瀬へと旅行にやってきた兎一味。到着したばかりという事でその日は旅館でゆっくりする事になったのだが・・・・


次回

『雪と兎と温泉旅館 兎、遭遇する』


あと、年内の更新はこれが最後になると思います。年始はこれとは別に短編を1つ書きたいなと思っています。それでは皆様、よいお年を・・・・

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