IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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~前書き劇場~

雪兎「前書き劇場も今回で見納めだな」

一海「普段やってない分、ここのは色々と強烈だったぜ・・・・」

シャル「でも、楽しかったでしょ?」

雪兎・一海「「確かに」」

シュテル「あちらの皆さんへのお土産も色々ありますのでお願いしますね?」

ドスンッ

一海「・・・・ドスン?ドサッじゃなくてドスンッ?」

シュテル「ええ、(ディアーチェ)が『我が右腕が世話になったのだ、これくらいは当然だろう』と」

雪兎「一海、storageあってよかったな」

一海「だな」

レヴィ「そういえば今日は学園の入学試験の日だよね?」

一海「あの襲撃の翌日に入試って・・・・この世界は学園まで図太いな」

雪兎「・・・・何故かモーレツに嫌な予感がする」

シャル「それよりも今回はアレ、皆でやらない?」

シュテル「いいですね」

レヴィ「アレだね!」

雪兎「アレか」

一海「いいな!それ」

葛城「何だか楽しそうだね?僕も参加しても?」

一海「うおっ!?葛城さん、いつの間に!?」

雪兎「よし、せーのでいくぞ?せーの!」

「「「「さてさてどうなる153話!」」」」

雪兎「決まったな」


153話 議論する兎と誓いの(ナックル) 兎、送迎する

一海達と別れ、雪兎と葛城は学園の一角にあるプロジェクト・フロンティアの研究施設の雪兎のフロアを訪れていた。

 

「・・・・プロジェクト・フロンティア、思っていたより大掛かりなプロジェクトみたいだね」

 

ここまでの道中にプロジェクト・フロンティアの説明を受けた葛城はその規模の大きさに軽く驚いていた。

 

「それよりも聞きたい事があるのでは?」

 

「やはり一海君を引き離したのは狙っていたんだね?」

 

そう言い、葛城は一海から預かっていたブリザードナックルを近くの作業台に載せた。

 

「一海君から君に貰ったと聞いたけれど、これはどういうつもりだい?」

 

ブリザードナックルがただのグリスの強化武器であれば葛城もこんな追い詰めるような事をする必要は無かった。だが、このブリザードナックルには武器として以外にもとある機能が内包されていた。それに気付いたからこそ、葛城は雪兎に問わねばならなかった。

 

「このブリザードナックルにはビルドドライバー(・・・・・・・)と接続して変身アイテムとして使用出来る機能が、クローズドラゴン(・・・・・・・・)を元にしたシステムを内蔵しているね?」

 

「流石は巧さん、この短時間でよく気が付きましたね?」

 

「雪兎君!君は自分がどういうモノを作り出したのか理解しているのかいっ!」

 

「一海のやつに何れ必要になると思ったから作った、それだけです」

 

「だがっ!」

 

「巧さん、俺だって必要なければこんなもの作ったりしませんよ!貴方はまだ(・・)必要無いと言う!だが、それはいつだ!?本当に必要な時に間に合うんですか!?」

 

「うっ」

 

「前にも言いましたが、俺はやらずに後悔するくらいならやって後悔する道を選びます!何もせずに一海(ダチ)を死なせるような事になったら、俺は一生、いやいくら後悔してもしたりねぇ!」

 

そう言う雪兎の気迫に葛城は圧倒される。

 

「・・・・すみません、少し熱くなり過ぎました」

 

「いや、こちらこそすまない・・・・君の覚悟を少し見誤っていたようだ」

 

言いたいだけ言った雪兎がクールダウンし謝ると、葛城も雪兎の真意を知り謝り返した。

 

「一応、もう1つ保険をかけてますし、そもそもあれを使うには今の一海ではハザードレベルが足りません。それに肝心なビルドドライバーを一海は持っていない」

 

「そうだったね・・・・」

 

雪兎の言葉を聞き一安心する葛城。

 

「さて、真面目な話はこれくらいにして技術交流といこうか、巧さん」

 

「見せてもらうよ、君の本来の技術力を」

 

その後、二人は深夜に戻って来ない雪兎を心配したシャルロット来るまでハイテンションのまま技術交流を続けていたそうな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な事があった翌朝、それでもきっちり時間通りに起きてきた雪兎は多少回復した一海に学園を案内していた。尚、一海には世話役としてユーリが同伴している。

 

「色々とこっちとは違う部分はあるが、基本的な部分は変わんねぇんだな」

 

「あはは・・・・その色々の大多数にマスターが絡んでますけどね」

 

「雪兎ェ・・・・」

 

「これでも自重はしてるぞ?師匠がその気になってたら面影も無いレベルで改築されてるんだから」

 

「多少性格がマイルドになってもあの人はあの人か」

 

今朝、この世界の多少性格がマイルドになった束と遭遇した一海と葛城が驚愕しているのを見るに、あちらの束は原作通りかそれ以上に取っつき難い性格のようだ。

 

「そういや表の方が騒がしかったが、何かあんのか?」

 

「ああ、今日は学園の入試でな」

 

「あ~、入試ね・・・・って、あんな事あったのに普通に入試すんの!?」

 

「一海、色々あって、マスター()のせい、と言えば大抵納得されるんですよ、この世界は」

 

「なるほど兎の皮を被った災害(ラビット・ティザスター)の2つ名は伊達じゃねぇって事かよ」

 

改めて雪兎の無茶苦茶っぷりを痛感する一海だが、そこでふと疑問が浮かぶ。

 

「あれ?学園の入試って外の会場でやってなかったか?」

 

「あっ、それは一夏が原因だ」

 

原作の冒頭で、主人公である一夏がIS学園の試験会場に迷い込んだのがそもそもの発端になっており、同じようなトラブルを避けるべく、試験会場はIS学園に限定したのだ。海外の受験者は交通費が国から支給されたり、宿泊先は学園が一括管理しており、大きなトラブルは今のところ起きてはいないとのこと。

 

「へぇ~」

 

「あと、今年は四人も男子が見つかったらしい」

 

「そうなのかぁ~・・・・って、えぇえええ!?」

 

「驚くのは無理もねぇとは思うが事実だ」

 

一人は紫音の事なのだが、それとは別に全国一斉調査で三人もの適性者が見つかった。これは世界的にも大きなニュースになっていた程だ。

 

「束さん曰く、俺や一夏っていうサンプルがいたせいか、ISコアが徐々にだが男を受け入れ始めてるんだとよ」

 

これには世の女性権利主義者達が大いに反発したものの、束の公式発表の場でそんな発言をしたが故に、束に徹底的に言葉で叩きのめされたらしい。だが、その男子三人が何らかの手段で襲われる事を懸念し、学園が保護に動いているとの事。

 

「っつう訳で、今年は学園で試験をやるって訳だ」

 

「なるほど」

 

そこに丁度筆記試験が終わったと思われる受験生達が廊下に出てき始めた。

 

「あれが未来の後輩候補かぁ・・・・って!?」

 

その中に雪兎は見覚えのある人物を発見した。

 

「・・・・雪兎先輩?雪兎先輩ですよね!?」

 

その人物は雪兎を見つけるや否や瞬歩と見間違うレベルのスピードで雪兎の目の前までやってきた。

 

「お久しぶりです!雪兎先輩!!」

 

「お、おう、久しぶりだな、日向」

 

「雪兎、こいつは?」

 

「あっ、初めまして!雪兎先輩の中学の後輩で紫陽日向(しよう ひなた)と申します!」

 

その人物の正体は雪兎や一夏の中学の後輩である紫陽日向だった。その日向だが、雪兎はとある理由から彼女を苦手としていた。

 

「そして、先輩の一の妹分です!」

 

そう、日向は猛烈な雪兎の妹分(信者)の一人なのだ。一海は雪兎にじゃれつく日向に嬉しそうにピコピコする犬耳とブンブンと振られる尻尾を幻視した。

 

(こ、濃い・・・・)

 

まるで三羽烏を凝縮したかのような濃さに流石の一海も少し引き気味だ。

 

「だぁー!!いい加減に離れろ日向!」

 

「あっ、はい」

 

どうやら一年振りの雪兎との触れ合いで興奮していたようだ。

 

「・・・・まさかお前にもIS適性があったとはな」

 

「A判定でした!」

 

「・・・・来年から更に騒がしくなりそうだ」

 

日向をよく知る雪兎は、適性さえクリアしていればIS学園の入試程度なら日向の苦にならないと思い至り、少し遠い顔をしていた。

 

「日向さん、でしたか?そろそろ実技の時間では?」

 

「そうでした!!それでは先輩!またです!」

 

ユーリに時間を指摘され、日向はまた弾丸のように去っていった。

 

「・・・・嵐のような娘だったな」

 

「あれの相手を毎日だぞ?まあ、落ち着けば普通に良い後輩なんだが・・・・」

 

雪兎が絡むと度々ああなるらしい。

 

「何故か少しだけアイツにシンパシーを感じた」

 

「はぁ!?・・・・あっ、そういう事か」

 

一海のシンパシー発言に雪兎は驚くが、すぐにその理由を察してニヤニヤし始める。

 

「お前、楯無さん大好きだもんなぁ」

 

「ちょっ!?お前!!」

 

「か、一海さん、ここは皆さん見ていますから!マスターも煽らないで下さい」

 

雪兎の指摘に顔を真っ赤にして拳を握る一海をユーリが慌てて宥める。

 

「仕方ない、一海弄りは後にするか」

 

「くっ、厄介な奴に知られちまった・・・・」

 

多少のトラブルはあったが、一海への学園の案内は無事に終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、試験会場では一人の少女がおろおろとしていた。

 

「ど、どうしよう・・・・」

 

その理由は年末に一時帰国していた代表候補生から受験のお守りにと預かった大切なブローチを人とぶつかった際に落としてしまったのだ。もうすぐ実技の試験も始まってしまう為、早く見つけねばならないのだが、焦っているせいか中々見つからない・・・・そんな時だった。

 

「もしかして、探してるのはこのブローチかい?」

 

少女の前に少女の探すブローチを持った淡い紫色の髪の少年・紫音が現れた。

 

「は、はい」

 

「良かった。綺麗なブローチだったからなくして困ってるんじゃないかと思ってたんだ」

 

そう微笑む紫音に少女は思わず見とれてしまう。

 

「良かったね、大切なものだったんでしょ?」

 

「はい、私の尊敬する方が受験のお守りにと貸して下さったもので」

 

「そうなんだ・・・・でも、そのブローチ、君に良く似合うと思うよ」

 

「えっ?」

 

「そのブローチを選んだ人はセンスがあるんじゃないかな?」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

紫音の素直な感想に少女は頬を赤く染める。

 

「あっ、そろそろ実技の時間じゃないのかな?」

 

「そ、そうでした!!」

 

「距離的にまだ時間に余裕があるから落ち着いて、君ならきっと合格出来るから・・・・僕が保証する」

 

「は、はい!」

 

「それじゃあ僕はここで・・・・来年、また会えるといいね」

 

「えっ?それはどういう・・・・」

 

紫音が残した最後の言葉に、少女・イクス=シアハートは困惑するが、すぐにとある可能性に気付いた。

 

「セシリアお姉様のご学友の織斑一夏さんと天野雪兎さんの二人以外にこのIS学園に男性がいるとすれば・・・・新しく見つかった四人の男性適性者の方ですわよね?」

 

そして、イクスは決意する。必ずこの試験に合格して(紫音)に改めてお礼を言うのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、姉さんも過保護だなぁ・・・・いや、年末のアレがあったのだから仕方ないか」

 

ここにも一人、来年度IS学園へと入学する男子がいた。彼の名はルーク=ファイルス。名前から判る通り福音の操者・ナターシャ=ファイルスの弟である。そして、年末のアレとは聖剣事変においてナターシャを利用するべくルーク達家族が人質に取られた事だ。あのときは雪兎の手配した影狼隊に救助されたが、あのとき程ルークが己の無力さを悔いた事は無い。

 

「でも、これからは僕だって・・・・」

 

自身を助けてくれた影狼隊の隊員達やそれを手配してくれた雪兎にはルークは一種の憧れに近いものを抱いており、自身にIS適性があり、雪兎の側で学べると知った時ルークは歓喜した程だ。

 

「そう言えば僕の他にも三人、男子がいるのだったな・・・・」

 

ルークの他にも各地で男性適性者が現れ始めており、開発者の束曰く「そのうちISは女性だけのものではなくなる」との事。ルークは自分以外の適性者がどんな人物なのか?出来ればお互いを高め合える相手であれば良いと思いつつ、実技試験へと挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その2日後、雪兎から次元の歪みがなくなったとの報告を受け、一海と葛城が元の世界へと帰る事となった。

 

「色々と世話になったな」

 

「気にすんな、俺も今回の件は色々と得るものがあったからな」

 

「それもお互い様だよ」

 

「送別会が出来ないのは少し残念だけどね」

 

今回は一海が早く帰って皆を安心させたいと言うので送別会は行わず、ちょっとしたお土産を渡すだけに留める事になった。

 

「お土産もたくさん貰ったし、これ以上は申し訳ないよ」

 

「難波とかパンドラボックスとか何かとそっちは物騒みたいだけど、あっちの俺達にもよろしく言っといてくれ」

 

「カズミン、あっちのお姉ちゃんをよろしく」

 

「ああ、必ず!」

 

いつの間にか仲良くなった一夏と簪と握手を交わす一海。

 

「巧さん、またお互いの作品見せ合おう」

 

「ああ!是非ともまたやろう、カロリナちゃん」

 

一方の葛城も技術者の卵であるカロリナとも交流を深めていたようだ。

 

「そんじゃ、ゲートを開くぞ?」

 

「ああ」

 

「お願いするよ、雪兎君」

 

別れの挨拶を終えた二人を連れ、雪兎は再び一海達の世界へと跳ぶ。

 

「ほい、到着」

 

「・・・・本当に一瞬だな」

 

「改めて世界間の技術差の違いを感じるよ」

 

難波重工が必死になってワームホールを開いたのに対し、雪兎のクロスゲートは本当にレベルが違い過ぎた。

 

「それ、お出迎えがきたぞ?」

 

すると、一海達の反応を察知してこちらの皆が駆け寄ってくる。それを見て一安心すると、雪兎は再びクロスゲートを起動する。

 

「もう帰るのか?」

 

「生憎こっちにはまだやる事が山積みでな」

 

「そうか、わざわざ送迎してくれてありがとう、雪兎君」

 

「では、また道が交わる事があれば」

 

そう言って雪兎はクロスゲートをくぐり帰っていった。

 

「また道が交わる事があれば、か・・・・」

 

「きっとまた会えるさ」

 

ふと二人が見上げた空には白い兎のような形の雲が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一海達を送り届けた後、雪兎は一人でとある場所を訪れていた。

 

「よっ、待たせたな」

 

「いや、問題は無い」

 

そこにいたのは氷室幻徳とその仲間のこちらに来ていたクロコダイル隊の面々だった。

 

「ブロス隊だっけか?アイツらもコンテナに箱詰めにして送り返してたもんでな」

 

そう、行方がわからなくなっていたハードスマッシュ達は雪兎達に捕らわれゲートが使えるようになるまで監禁されていたのだ。まあ、ブロス隊はともかく、クロコダイル隊は幻徳の要請で幻徳預りになっていたが。

 

「さて、お前らも怪しまれないよう箱詰めされてもらうぞ?」

 

「うっ、確かに怪しまれない為には必要な処置なのだろうが・・・・」

 

「諦めろ、ブロス隊のように今日までミノムシにされなかっただけ我らの方が扱いがマシだ」

 

「確かに・・・・」

 

「すまないな、こちらに非があるというのにこのような事まで」

 

「みなまで言うなよ。俺だってお前らから色々データ取らせて貰ったんだから」

 

そう、クロコダイル隊は一時開放される条件として、雪兎の実験の手伝いを色々してもらっていたのだ。

 

「向こうに戻ったら色々大変だとは思うが、上手くやれよ?」

 

「ふっ、誰にものを言っている」

 

幻徳と別れの言葉を交わしてからクロコダイル隊をコンテナ詰めにしてブロス隊と同じ座標へと転送する。

 

「じゃあな、幻徳」

 

「ではな、雪兎」

 

それとは別に幻徳をあちらの世界に帰し、漸く一連の事件は幕を閉じた。

 

 

ライダー達との物語はこれにて閉幕・・・・これから先は彼らの物語、それを語るのはまた道が交わった時としよう。




という訳でIGコラボ編はこれにて閉幕です。
何とか年内に終わる事が出来ました。
これからも眠らない聖剣さんのINFINITE・GREASEの方もよろしくお願いします。

次回の兎協奏曲はいつものメンバーが学園を飛び出して色々するようですよ?(次回予告は次回から)

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