IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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~前書き劇場~

簪「今回は私達みたいだね、レヴィ」

レヴィ「何か珍しい組み合わせだね」

簪「作者曰く、水色・ヒーロー好きコンビだって」

レヴィ「あ~!なるほどなるほど」

簪「レヴィもヒーロー好きだもんね」

レヴィ「格好いい動きの参考にしてる」

簪「なら、この前貸したアレはもう見た?」

レヴィ「電光超人グリッドマン、だっけ?今アニメでやってるやつの元のやつ。僕はあのサンダーグリッドマンってのが好きだなぁ」

簪「わかる!合体はやっぱりロマン!」

レヴィ「パワーアップした簪の烈鋼もアレのデータ使ってるんだっけ?」

簪「他にもシンケンジャーの折神とか戦隊ロボも参考にしてるんだよ!他にも・・・・」

レヴィ「へぇ~(簪ってご主人と同じで趣味(ヒーロー関係)の話になると饒舌になるよね)」

簪「それに、前回は憧れの仮面ライダーと一緒に決めセリフも言えたし」

レヴィ「それはズルイ!僕もやりたかった!」

簪「サインはレヴィの分もお願いしてあげるから」

レヴィ「約束だよ!」

簪・レヴィ「「それでは152話をどうぞ!」」

雪兎「仲良いな、お前ら・・・・」


152話 簪、決意の力! 兎、サポートに回る

「「勝利の法則は、決まった」」

 

流石はヒーローオタク、葛城に一発でポーズとセリフを完全に合わせてみせた簪は既にやりきった表情だ。しかし、すぐに気持ちを切り替えてCヘルブロスへと攻撃を開始する。

 

「きて!撃龍!」

 

簪の呼び声に応え、撃龍が烈鋼に近付くと、撃龍は幾つかのパーツに分かれ烈鋼へと装着されていく。その姿は白雷を元にした砲撃型で、頭部と長い首から構成される大型ランチャー【雷撃砲】、翼が変形した背面のツインリニアレールキャノン、尾が蛇腹剣となっており、追加された装甲には内蔵ミサイルポッドとかなり攻撃的である。

 

「また簪らしい進化したなぁ、あれ・・・・あれなら簪に任せても大丈夫だろ」

 

烈鋼から送られてきたそのデータからその無茶苦茶っぷりに呆れる雪兎。しかし、そのデータから簪がCヘルブロスに負けるとは思えなかった雪兎はチェスを止めに行った一海の方に向かう事にした。

 

「fire!」

 

雷撃砲の一撃を何とか両腕をクロスしてガードしたCヘルブロスだが、その威力は凄まじく、両腕のギアパーツが融解しかけている。CヘルブロスがISとは違い元々シールドを張っていないせいもあるが、その威力が白雷を凌駕しているのも理由の一つだろう。砲撃に耐え反撃に移ろうとしたCヘルブロスだが、今度は撃龍と共に呼び出された蒼燕がその刃のような翼ですれ違い際で切りつけ、よろめいたCヘルブロスの装甲を地面から飛び出してきた穿甲がドリルで抉る。

 

切換(チェンジ)、穿甲!」

 

その隙に簪は撃龍を分離させ、代わりに穿甲を纏う。穿甲を纏った烈鋼は両腕にドリルを装備し、背面の大型ブースターを点火させ接近すると、ドリルを高速回転させながら振るいCヘルブロスの装甲を削り切り、Cヘルブロスを弾き飛ばす。

 

「これも・・・・いけ!スパイラルブーストパンチ!」

 

再び距離が開いたところで右腕のドリルを再び高速回転させながらCヘルブロスへと向け、右腕のドリルを含む一部を射出し、対するCヘルブロスも歯車を飛ばして対抗するも歯車の歯が少しずつ削れていく。

 

「ぶち抜けぇえええ!!」

 

そしてとうとう歯車を撃ち砕き、そのせいで少し狙いが逸れたもののCヘルブロスの右肩の装甲を破壊した。

 

「これがドリルの力よ!」

 

すると、丁度そこへ葛城と戦っていたCヘルブロスが吹っ飛ばされてきて簪と戦っていたCヘルブロスと並ぶ。

 

「おっと、ちょっと飛ばし過ぎてしまったかな?」

 

そのCヘルブロスを追って何故か脚部が戦車のようになった葛城もやってた。

 

「どっちももうちょっとみたいだし、ここは二人で決めるとしようか」

 

「はいっ!」

 

そう言うと、葛城はフルフルR/Tボトルをフルボトルバスターにセット、簪は再び撃龍を纏う。

 

『フルフルマッチデース!』

 

「雷撃砲、チャージ!」

 

「いくよ?簪ちゃん」

 

「はい!」

 

『フルフルマッチブレイク!』

 

「メガライトニングバーストッ!!」

 

フルボトルバスターと雷撃砲から放たれた強力な砲撃が二体のCヘルブロスに直撃し、既にボロボロだった二体はそれに耐えられず爆散してしまった。

 

「うん、やはり僕の発明品はサイコーだね!」

 

「カッコ良かったです!」

 

「そうだろう!そうだろう!」

 

簪の素直な褒め言葉に気分を良くする葛城。

 

「あとは・・・・一海君は雪兎君が一緒だから大丈夫だろうけど」

 

「大丈夫、あっちにはカロリナが向かったから」

 

「ああ、あの大きな盾を装備したISの娘か・・・・なら、大丈夫かな?」

 

何となくではあるが、この世界の彼女らならば何とかなると思った葛城はこれ以上の増援を阻止すべく、簪を連れてワームホールの方へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、チェスと再戦していた一海は劣勢を強いられていた。その理由はチェスが本来のクイーンを解禁し、雪兎にやられたルークの再使用時間(リキャストタイム)が過ぎて万全の状態だったからだ。

 

「くっ・・・・」

 

「いくらライダーシステムといえど一人で私の駒達を相手にするのはキツイだろう!」

 

本体であるチェスを狙おうにもルーク二体のガード、素早いナイトに援護射撃のビショップ、替えが効くポーンに・・・・そして、それ単体でハードスマッシュ並みの能力を持つクイーン。強力な駒程再使用時間は長いものの、これらを効果的に操るチェスは一海をしても強敵であった。

 

「よく粘る・・・・だが、それもここまでだ!」

 

クイーンの斬撃を後ろに跳んで回避した一海をそれを見越して配置されたポーン二体が羽交い締めにし、ポーンもろともビショップの火炎弾が襲う。

 

「ぐぁああああ!?」

 

「まだだ!」

 

追撃に大きく跳び上がったナイトが一海を踏み付ける。

 

「があっ!」

 

「どうした!そんなものか!猿渡一海っ!」

 

今までの雪辱を晴らさんとばかりに畳み掛けるチェス。そして、変身解除されてしまった一海にトドメを刺さんとクイーンが一海を切りつけようとしたその時、突如クイーンが横から射たれ吹っ飛んだ。

 

「な、何だと!?」

 

「・・・・ゆ、雪兎?」

 

その射撃を行ったのは白と蒼白い装甲に、左腕全体を覆う巨大な拘束具を装備し、右手で長身のソードライフルを構えた雪兎だった。

 

「また貴様かっ!」

 

チェスにとってはもう怨敵と言っていいほど邪魔をしてきた雪兎の登場にスマッシュの姿でも分かる程チェスは激昂する。

 

「おうおう、随分と嫌われたもんだな、俺は」

 

そう軽口を言いながら邪魔なナイトやポーンを射ち抜きながら雪兎はゆっくり一海へと近付く。

 

「よっ、また派手にやられたな?」

 

「うるせぇ・・・・ここから大逆転するとこだったんだよ」

 

「そうか、それは悪い事をしたな」

 

すると、雪兎は何か思い出したかのように一海に手を差し伸べる。

 

「そういやまだ言ってなかったな、一海・・・・welcome to the world(ようこそ、この世界へ)

 

「ンだよそれったく……おう、お邪魔させてもらうぜ」

 

その手を掴んで起き上がる一海。再び変身する為に一海がロボットゼリーを手にすると、雪兎が栄養ドリンクの瓶に似た物を手渡した。

 

「これは?」

 

「再変身の負荷を抑える薬だ・・・・まあ、後からまとめて負荷くるから負荷をツケにするもんだと思え」

 

「今戦えるなら問題ねぇ」

 

そう言って一海はそれを一気に飲み干す。

 

「お、おう・・・・それ、かなり不味いんだが、一気とはな」

 

「そういうのは先に言え!」

 

「さて、あちらさんもお待ちのようだし、変身したら?」

 

「後で覚えとけよ、変身!」

 

『ロボット・イン・グリス!ブラァ!』

 

文句を言いつつも再度グリスへと変身した一海。

 

「ついでだ。お前にやったナックル、ここで試しとけ」

 

「あっ、忘れてた」

 

『ブリザードナックル!』

 

「な、何だそれは!?よく分からんが、あれは使わせてはいけない気がする!」

 

ブリザードナックルを見たチェスは本能的にそれが雪兎の手が加えられた物だと気付き、一海を止めるべく駒を差し向けようとするが・・・・

 

「まあ、そう焦らさんなってっ」

 

雪兎がソードライフルの正確無比な射撃で弾き返す。

 

「一海、ナックルにあるボトルスロットに何でもいいからボトル挿してみろ」

 

「ボトルを?ならまずはこいつだ!」

 

『ボトルキーン!』

 

「次はナックル正面の真ん中のボタンを押してチャージ」

 

挿したのはロボットフルボトル。そして、雪兎に言われるがまま一海はナックルの正面にあるグリスのライダークレストが付いたボタンを長押しする。

 

「あとは手を離しておもいっきり振り抜け!」

 

「はぁっ!!」

 

『グレイシャルナックル!カチカチカチカチカチーン!』

 

すると、冷気で出来たロボットアームが一海に迫っていたナイトを一発で打ち砕く。

 

「ナイトがたった一発だと!?」

 

「お、おおっ!こりゃすげぇ・・・・」

 

その威力二人が驚いていると、

 

「驚くのはまだ早いぜ?一海、次は属性元素ボトルだ」

 

「なら、こいつだ!」

 

『エレメントスプラッシュ!』

 

続けて一海が選んだのはスプラッシュエレメントボトル。

 

「あとはさっきと一緒だ」

 

「ボタンを長押しして、離して・・・・打ち抜く!」

 

『エレメンタルナックル!ザバザバザバザバザバーン!』

 

再びライダークレストを長押しして放ったナックルの先から渦巻く水流が放たれ、直撃したビショップはそのまま視界の外まで飛んでいった。

 

「属性元素ボトルとフルボトルを連続して装填すれば、その属性を得た攻撃も放てるし、エレメンタルナックルをしなきゃその属性のまま通常攻撃も可能。便利だろ?」

 

「またとんでもないもん作ったな、雪兎・・・・」

 

自慢気に語る雪兎に、一海は呆れながらもナックルを握り直しチェスへと向かっていく。対する雪兎はチェスと一海の邪魔をしないように駒達の前に立ちはだかる。

 

「ここから先は通行止めだ。どうしてもってんなら俺を倒していくといい・・・・倒せるもんならな」

 

そう言うと、雪兎は左腕の拘束具の錠前に右手を翳す。

 

「せっかくだから見ていくといい・・・・アドヴァンスド【AtC:憑神typeコルベニク】モード2」

 

すると、錠前が外れ、左腕を覆っていた拘束具が弾けるように解かれ、隠されていたその姿を現す。それは他の部分の装甲の蒼白さとは真逆の赤黒い肩から生える先端が鉤爪のような第三の腕。更に左手にも禍々しいデザインの短剣が握られている。

 

「さあ、その目に焼き付けろ!」

 

ソードライフル、短剣、左腕の第三の腕、この3つが連動し駒達を3つの斬撃が襲い、地面に3つの焼けついた爪痕を残す。

 

三爪痕(トライエッジ)、中々イカすだろ?」

 

その問いにバラバラに切り刻まれた駒達は答える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ・・・・何処まで強くなるんだ、お前は!」

 

「仲間の為なら、幾らだって強くなってやるよ!」

 

『エレメントストリーム!』

 

一海は先程と同様にライダークレストを長押ししてナックルを構える。

 

「あとな・・・・カッコつけてぇんだよ。別世界だろうが、会長の前ではなぁ!」

 

『エレメントナックル!ビュンビュンビュンビュンビューン!』

 

一海がナックルを前に突き出すと、ナックルから吹雪が放たれ、チェスの体を氷漬けにする。

 

「トドメだ!」

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

一海が跳躍すると、グリスの肩アーマーが90度後ろに回転してゼリーを噴出。チェスを蹴り飛ばした。

 

「グハアアアアッ!!」

 

氷が砕け、蹴りが当たったチェスは見事に吹っ飛ばされる。

 

「クッ、駒も全て消されましたか・・・・もうここまで来ると諦めるしか道は無さそうですね」

 

チェスはあまりのボコボコのされようのせいか逆にクールになると、キングからナイトへと姿を変えて逃げていった。

 

「ヘッ、ザマア"ッガァァァァァッ!」

 

すると、一海の体に電撃が走って変身が解除される。

 

「雪兎が言ってた変身の反動ってヤツか・・・・結構イテェ・・・・!」

 

一海はあまりの痛さに膝をついて苦しむが、完全に動けない訳では無いのでゆっくりと立ち上がる。

 

「終わったか」

 

「雪兎。あぁ、カッコ良くぶっ飛ばしておいたぜ」

 

「楯無さんにいい所見せたいからか?」

 

雪兎がニヤニヤしながら言うと、一海は吹き出して顔を真っ赤にする。

 

「ちょ、聞いてたのかよ!てか忘れろ、今すぐ忘れろ!」

 

「スマン録音済みなんだわ。どっちの楯無さんに聞かせようかなぁ〜」

 

「頼むから止めろ!分かった金払う、払うから止めてくれ!」

 

雪兎と一海が周りを気にせずに追いかけっこを始める。戦場とは思えない程の緩さだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、シャルロットとナイトローグの戦いはCヘルブロス2体とバルドローグの

 

「何でそのISが・・・・」

 

『・・・・今は余計な詮索をしている場合ではあるまい』

 

「雪兎がそれを託したって事は、信じてもいいんだよね?」

 

『・・・・少なくともお前の敵になるつもりは無い』

 

そう言うと、バルドローグは長柄の鈍器【バイスメイス】を手にCヘルブロスへと向かっていく。

 

「僕も!」

 

シャルロットもアンジュルグからネオイェーガーの重複装備に換装し、両手にネオバスターライフルを展開する。

 

「君を破壊する」

 

重複装備ネオイェーガーの速さに対応出来ないCヘルブロスは移動しながら精密射撃を行ってくるシャルロットに防戦一方。バルドローグの方もISにあるまじき重装甲でCヘルブロスの攻撃をものともせず、バイスメイスで殴打を繰り返しヘロヘロになったCヘルブロスにトドメを差すべく、バルドローグはバイスメイスの真の姿を解放する。

 

『さあ、存分に喰らえ』

 

それはまるで鰐が鰓を開いたような形をし、Cヘルブロスを挟み込むと内部の上下2列ずつの刃の付いたチェーンが高速で回り始める。

 

『!?!、?!?!?、!!?!?、!!!!?』

 

これには流石のCヘルブロスも警告音を鳴り散らすが、バイスメイスは止まる事は無く、そのままCヘルブロスを挟み込んだ場所からまるで食い千切られたように削られ両断されてしまった。

 

『・・・・これは、対人戦では加減する必要があるな』

 

今回はCヘルブロスだったから良かったが、普通の人間もしくはシールドエネルギーを失ったISだったならば、間違いなく殺していただろう。

 

『死にはせずとも、これはトラウマ確定だな』

 

バルドローグに乗る幻徳は一人そう呟くのだった。

 

「あっちも終わったみたいだし、こちらも行くよ!」

 

バルドローグがCヘルブロスを倒したのを横目で確認すると、シャルロットは背面からエネルギーチューブを2本伸ばし、それぞれをネオバスターライフルに接続する。更に左右のそれを銃口が並ぶように接続し、計4門のツインネオバスターライフルへと変貌させる。

 

「これが今回のとっておきだよ!ターゲットロック・・・・ツインネオバスターライフル、フルバーストッ!!」

 

4門の銃口から放たれたオレンジ色の閃光がCヘルブロスへと向かう。そのあまりの熱量に回避しようとするCヘルブロスだが、脚部の損傷が酷く回避する事は叶わずそのままその閃光に呑み込まれ姿を消した。残ったのはその余波で出来たクレーターだけである。

 

「・・・・やり過ぎちゃった」

 

いくら無人機相手とはいえ、雪兎と会えなかったフラストレーションを爆発させてしまったシャルロットは文字通り塵すら残さぬ自分の諸行に「最近、雪兎に戦闘スタイルが似てきたなぁ」と、苦笑するのだった。

 

「あっ、あのISは!?」

 

そこでバルドローグの入手経路の事等を訊ねばとバルドローグを探すが、既にバルドローグの姿は無かった。

 

「結局助けてもらったのにお礼も言えなかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、サイボー・・・・もとい、ナイトローグ内海はというと、

 

「くっ、この堅さはシールドエネルギーとは別口でバリアフィールドを展開しているのか?」

 

「この蝙蝠、思ったよりしぶとい・・・・」

 

簪が援護不要になった為、念の為にシャルロットの援護をしに来たカロリナ相手に苦戦していた。通常のISならばナイトローグでもダメージを与える事は容易なのだが、カロリナのリリコンバーシュはこと防御に関しては兎製ISの中でもトップクラスであり、雪兎との模擬戦にて、あのアメイジングアルケミストの全力爆撃を一度は凌げるというレベルなのだ。箒がトーナメントで苦戦したのも当然である。

 

「ブレイクフィールド展開」

 

「またそれか!」

 

リリコンバーシュの最大の攻撃手段、それはバリアフィールドを展開したまま相手に突撃しバリアフィールドで押し跳ばすシールドアクセラレーター。この技を使う時には機体前面に更にブレイクフィールドという部分展開型バリアを展開する為、正面からの攻撃はほぼ通用しなくなる。バルドローグとは別方面の「防御こそ最大の攻撃」という言葉を体現するISなのだ。

 

「シールドアクセラレーター!」

 

「ぐあっ!」

 

トランスチームシステムで保護されていて尚、生身で全速疾走のトラックに撥ね跳ばされるようなダメージを負う一撃に幾つものアラートがナイトローグのバイザーに表示される。

 

「・・・・非常に遺憾だが、こちらの戦力を見誤っていたようだ」

 

「・・・・帰るの?」

 

撤退を考えていた内海にカロリナは攻撃の手を止めて少し寂しそうにそう訊ねる。

 

「何故攻撃を止めた?」

 

「貴方からは私や師匠達と同じ匂いがしたから」

 

「・・・・なるほど、君も一人の技術者なのか」

 

自身の分析能力から同じ技術者と見抜かれたと気付いた内海は納得の表情を浮かべる。

 

「それに、私の役目は足止め、もう役目は果たした」

 

「つまり私以外全滅という訳か・・・・それならば私一人取り逃がしても痛手では無いか」

 

「その蝙蝠も面白かったけど、今度は貴方の作品と戦ってみたい」

 

「・・・・それは叶わぬ願いだな」

 

カロリナの突然の惜しみ無い称賛の言葉に一瞬だけ呆気に取られるも、内海はすぐにそう告げた。

 

「そう・・・・」

 

「・・・・だが、君との戦い(実験)は実に有意義なものだったよ」

 

悲しげなカロリナにそう言い、トランスチームガンから黒い煙を放ちながら姿を消した。

 

「私も、楽しかったよ、蝙蝠さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Cヘルブロスが全滅する頃には他のハードスマッシュの部隊も制圧され、結果を見れば雪兎達の完勝という結果に終わった。

 

「・・・・話は聞いてはいたが、ここまでとは」

 

「ほとんどのメンバーが二次移行済みとは恐れ入るね」

 

その戦果に一海は勿論、葛城も驚いていた。

 

「まあ、雪兎の理不尽さに比べたら、な?」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「うん、知ってた」

 

一夏が皆を代表してそう言えば、一海も納得の表情を見せる。

 

「ワームホールも消したし、これでこの一連の事件は解決だな」

 

「あっ!ワームホール無くなったら俺達どうやって帰んだよ!?」

 

難波からの増援を阻止する為とはいえ、世界を繋いでいたワームホールが閉じられてしまった事で元の世界に帰れなくなったと一海が慌てて葛城に掴みかかる。

 

「まあまあ、落ち着きなって、一海君」

 

「いや、帰れなくなったんですよ!?」

 

「一海君、僕がそれを考えずにいたと思うかい?」

 

「それに一海、私達がどうやって貴方達の世界を訪れたか、忘れましたか?」

 

「あっ・・・・」

 

葛城とシュテルに言われて初めて一海はその事(クロスゲート)を思い出した。

 

「で、そんなに動いて大丈夫なのか?一海」

 

「何が大丈ーーって、ぎゃああああ!?!?」

 

「言わんこっちゃない・・・・」

 

未だに再変身の負荷が抜けきれていない一海は葛城に掴みかかった動きのせいで再び全身に激痛が走り悲鳴をあげる。

 

「どのみちあんな馬鹿デカいワームホールを開けたせいでクロスゲートは2・3日使えないんだ」

 

クロスゲートやパラレルボトルとは違い、ワームホールは直接世界と世界を無理矢理繋いだらしく、そのせいで次元の境界があやふやになっており、よくて数日のズレ、最悪何処か別の世界に跳ばされるとの事。

 

「一海も休ませる必要があるし、数日休んでけよ」

 

「いいのかい?」

 

「こちらはまだ幸いにも春休みなんで大丈夫でしょう。それに、巧さんのだけ見せてもらって俺のを見せないのはフェアじゃないでしょ?」

 

雪兎が言っているのは自身の工房の事だ。あちらでは葛城の研究室を見学させてもらったので、そのお返しのつもりらしい。

 

「何だって!?それは是非ともお願いしたい!」

 

「では早速、の前に・・・・レヴィ、一海を医務室まで連れてってやってくれ」

 

「わかった!さあいくよカズミン!」

 

「お、おう、って腕引っ張るなぁあああああ・・・・」

 

レヴィに勢いよく引っ張られて悲鳴をあげながら医務室へと一海は去っていった。

 

「狙って彼女に頼んだね?」

 

「はて?何のことやら」




あとがきが抜けておりました。

コラボシナリオも次で最後となります。コラボでがっつり戦闘やったので当面は戦闘は無いと思います。



次回予告

難波重工を退けた雪兎と一海達。空間の安定を待つ中、雪兎は葛城と、簪は一海と、それぞれ言葉を交わし・・・・


次回

「議論する兎と誓いの(ナックル) 兎、送迎する」

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