IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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~前書き劇場~

シャル「あれ?今回はこっち?」

ディアーチェ「そのようだな」

シャル「あっ、雪兎からメールだ。何々・・・・」

何か難波重工とかいうアホどもが俺の技術狙って侵攻してくる。こっちのアレコレ片付けたらすぐに戻るからそれまで迎撃頼む。

PS
敵戦力の大まかなデータ添付しとくから活用してくれ。

シャル「・・・・」

ディアーチェ「また面倒事に巻き込まれて盛大にやり返しておるようだな」

シャル「・・・・そっか、雪兎の技術狙って・・・・うん、大体の事情は察したよ」

ディアーチェ「いかん、これはシャルロットの入れてはいけないスイッチが入ってしまった!?」

シャル「難波重工・・・・ただで帰れると思わないでね?」

ディアーチェ「これ(雪兎)!はよ帰ってこぬかぁああああ!!」

ユーリ「だ、第151話、どうぞ・・・・(ガクガクブルブル)」


151話 侵攻!難波重工! 兎、本領発揮する

雪兎達が難波重工と争っている頃。

 

「雪兎のやつ、また面倒事を・・・・」

 

「ははは・・・・いつもの事だろ?」

 

「それに、今回はどっちかというと雪兎が狙われてたみたいだし、仕方ないんじゃない?」

 

雪兎から連絡を受けたシャルロットの召集で集まったいつものメンバーは学園のピンチかもしれないというのに緊張感はほとんどなかった。まあ、以前に迷い込んだ異世界での戦いに比べたら自分達のホームで迎撃出来るだけ気が楽なのかもしれない。

 

「我々が丁度学園に戻っているタイミングとは・・・・敵も運が無い」

 

「ホントね」

 

更に言えばセシリアや鈴、ラウラ達も春休みの一次帰国から戻ってきたばかりで進級前の旧1ーAの全員が揃っている状況なのだ。

 

「さて、相手はあのIS馬鹿(雪兎)に喧嘩を売った大馬鹿共だ。ましてやこの学園に攻め込もうとしている以上、迎撃はやむ得まい」

 

「ついでにまだいるだろうこの世界のお馬鹿さん達にも私達に手を出したらどうなるか、今一度思い知ってもらおっか?」

 

「そうだな・・・・ついでに他の小娘共(旧1ーA)にも実戦を経験させてやるか」

 

「だね、せっかくだしゆーくんがデータ足りないって言ってたあの娘達(新型量産機)のテストもしちゃおっか?」

 

千冬と束の言葉を簡略化するとこうなる「持てる力全てを使って難波を潰せ」と。

 

「これは、難波重工とやらに同情するよ」

 

「雪兎君を敵に回すとか、何考えてるんだろう?」

 

「それに、師匠がいなければ何とでもなると思われてるなんて不服」

 

そう、難波重工は忘れている。この世界で厄介なのは雪兎だけではないという事を。

 

「やる気は十分のようだな?それでは作戦を開始する!」

 

「「「「はい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワームホールを越えて難波重工が辿り着いた場所はIS学園から少し離れた雑木林。海を挟んだすぐ向こう側にはIS学園が見える。

 

「転移座標が少しズレたか・・・・まあいい、これより作戦を第二段階に移行する!」

 

現場指揮を任されたチェスがハードスマッシュを分隊長とし部隊をいくつかに分けて学園へと侵攻させる。

 

「この世界に恨みはないが、我々の目的の為だ」

 

「何故かとてつもなく嫌な予感がするのだけれどね、僕は」

 

部隊A・ジュラシック、スイーツ

 

「別の世界って言ってもほとんど変わんねぇんだろ?」

 

「ええ、変わりませんとも。断罪すべき対象であるのは何も変わらない」

 

部隊B・マッドドッグ、ジャッジメント

 

「何だろうな・・・・嵐の前の静けさってやつか?これは」

 

「そうだな・・・・何か致命的な見落としをしている気がする」

 

部隊C・セイルフィッシュ、ハザード

 

それ以外にもハードガーディアンとスマッシュの混成部隊を学園に向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は難波重工の面々は上手くいっていると思っていた。しかし、それを撃ち砕いたのは一発の弾丸だった。

 

「な、なんだ!?」

 

「センサーの範囲に反応は無かったはず!」

 

完全なレンジ外からの攻撃に困惑するマッドドッグとジャッジメント。だが、当然攻撃は一発だけでは終わらない。続けて飛来したのは高密度エネルギーの矢。それが寸分の狂いなくマッドドッグを襲う。

 

「がぁ!?」

 

咄嗟に回避しようとしたのが幸いし、かすった程度で済んだものの、ダメージはどう考えてもかすった程度のものでは無い。

 

「くっ、発射先の特定をーー」

 

狙撃ならば場所を特定すればと、ジャッジメントが指示を飛ばそうとするも、それを遮るように三、四度目の狙撃がジャッジメントを襲う。

 

「別方向からだと!?一体どれだけの狙撃兵がいるというんだ!?」

 

しかもその狙撃は全てレンジ外。その精密射撃の精度の高さから相手にはこちらが丸見えなのは明白だ。そうこうしている間にも弾丸とエネルギー矢が飛来し、ハードガーディアンが大破していく。

 

「ちくしょうっ!隠れてねぇで出てきやがれ!!」

 

「何故狙撃ばかり・・・・まさか!?」

 

そこでジャッジメントは気付く。何故自分達の部隊がこのような多角的狙撃を受けているのかを。

 

「私とマッドドッグの力を知られている?」

 

そう、彼らの能力は近くにいればいる程効力を得るもの。敵は何らかの方法で知り、狙撃によるなぶり殺しという戦法を取ったのだ。

 

「ここは一度退いてーー」

 

不利と察し、チェス達の元へ一度戻ろうとするも、そこを狙ったかのように今度は光の雨が降り注ぐ。

 

「今のはイギリスのBT兵器!?だが、威力がデータにあるものと違い過ぎる!」

 

「もしかしたら敵の狙いは俺達の分断!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『気付くのが遅過ぎましてよ?』

 

「セシリア、そのまま鳥籠の維持を・・・・あの二人はこちらで仕留めよう」

 

『お任せしましたわ、箒さん、エリカさん』

 

狙撃を行っていたのはアルテミスとスナイパービットを使うエリカと刃衣装備の箒だった。ジャッジメントの予想通り、雪兎からもたらされたハードスマッシュ達のデータからマッドドッグとジャッジメントの能力を知った面々はレンジ外攻撃と、セシリアの制空権確保による隔離戦法というえげつない戦法で彼らを封殺していたのだ。

 

「さて、最近はあまり活躍出来ていませんでしたし、私も頑張りませんと」

 

「・・・・実戦ではエリカを敵には回したくないな」

 

アルテミスとスナイパービットの射程は兎印の中でもダントツで、ガト・グリスの高性能レーダーやエリカの精密射撃の腕も相まって恐ろしい命中率を誇る。箒も彼女のレーダーとコアネットワークを通じたリンクによって超精密射撃を可能としている。

 

「トーナメント後に付けられた2つ名は【魔弾の灰猫】だったな」

 

「ええ、それなりに気に入っていますわ」

 

そんな軽口を交わしながらハードガーディアンをまた一体射ち貫くエリカに、箒は戦慄しつつもマッドドッグへと穿千・極を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ジュラシック、スイーツの部隊は突如上空から爆撃を受けていた。

 

「うおっ!?何だこりゃ!?」

 

「そ、そんな事より僕を助けたまえ!!」

 

爆撃の犯人はというと・・・・

 

「今ので3割か・・・・脆いな」

 

「だね、このままやっちゃおっか」

 

インレの各所からマイクロミサイルをお見舞いしたラウラと、ブラストガンナーによる砲撃を放った聖だった。

 

「・・・・ラウラ=ボーデヴィッヒ、と知らぬ少女?しかし、あのISは・・・・」

 

ラウラは知ってはいるものの、そのISがあまりにも様変わりしているせいかすぐには判らず、聖の事は知らない難波重工の面々。その為、二人の非常識なまでな重武装ISに言葉を失う。

 

「キハール起動」

 

「弾薬補充完了」

 

「「fire!」」

 

有線式小型端末キハールとインレの射撃と弾薬を補充し終えたブラストガンナーが再び火を吹き、ジュラシックとスイーツの部隊を襲う。

 

「ちょっ!?オーバーキルじゃないのか!?それ!」

 

「そんな事を言ってる暇があるなら逃げろ!」

 

「逃がさないよっと」

 

「お前達は既に鳥籠の中だ」

 

すぐさま後退しようとする彼らだったが、聖がバイザーをビークルモードに切り換え回り込み逃げ道を塞ぎ、キハールで左右から囲い込み包囲するラウラ。

 

「ハードガーディアンがあっという間全滅だと・・・・!?」

 

「嫌な予感の正体はこれだったのか・・・・」

 

「不幸だなんて言わせないよ?だって、これは貴方達が攻めてきたからなんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、セイルフィッシュ、ハザードの部隊は海上で立ち往生させられていた。

 

「海で俺が逃げ切れないだと!?」

 

「その程度でこのロッソアクイラからは逃げられないよっと!」

 

水中戦を得意とするセイルフィッシュだが、アレシアのロッソアクイラは水中でも速度があまり落ちない。しかも、水中には楯無がスタンバイしており、深く潜ろうとすればアクアナノマシンによる爆撃を食らわされ海面まで打ち上げられる始末。ボートで移動中だったハザードとハードガーディアン達は本音の新装備の1つ【番天印】のホーミングレーザーによりボートを沈められ、ハードガーディアン達も頭部を撃ち抜かれて水没、翼があった為に空へと逃げ延びたハザードは待ち構えていた晶に海面に落とされアクアナノマシンに拘束されていた。

 

「な、何だ、これは!?」

 

「それは楯無先輩のアクアナノマシンによる水の拘束具。簡単に抜けられると思うなよ?」

 

ご丁寧に手足だけでなく武器になりうるものは全て封殺されている。そんなハザードに晶は容赦無く蹴る殴るの乱撃を叩き込み、最後に虎咆穿でハザードを海に沈める。

 

「ゴボゴボ!?」

 

だが、それで終わりではなく、アクアナノマシンによる拘束によって再び海面へと引き戻される。

 

「プハッ!」

 

「よし、ラウンド2!」

 

「ちょっ待っ!?」

 

その後も沈んでは浮上を繰り返しボコボコにされるハザード。

 

「フィッシュ!」

 

「ぎゃああああ!!」

 

セイルフィッシュもアレシアに蛇腹剣を巻き付けられて一本釣りされ、高い所でリリースして海面に叩き付けてもう一度という有り様だ。

 

「うん、これ、私いらなかったよね?」

 

何となくだがハードガーディアンはアレシアと晶がいればどうにでもなった気がする本音。

 

「かんちゃん達は大丈夫かなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弐の型、疾風!」

 

「ふっ飛びなさい!」

 

その他のハードガーディアンとクローンスマッシュの混成部隊には一夏達が対応していた。ハードスマッシュがいない分数だけは多い部隊だが、一夏や鈴にとっては数の多い的に過ぎず、無双ゲーのような有り様になっているが・・・・

 

「遅い!」

 

「きゅ!」

 

『ホームランなの!』

 

その一角にはマドカとミュウの姿もあった。統率タイプをマドカが仕留め、残りをミュウがハンマーでまとめて一掃する。雪兎からハードガーディアンは十分数は確保したから遠慮無く破壊していいと伝言を貰っていたせいか、ここのハードガーディアン達は原形をほとんど残してはいない。

 

「何体か飛んでる個体が抜けたようだが・・・・」

 

「あれはわざとよ・・・・あっち(量産機)の的にするんだって」

 

何体かのクローンフライングスマッシュがその包囲網を抜けたようだが、それはわざとで、学園で防衛ラインを任されているクラスメイト達の練習台にされているらしい。

 

「きゅきゅ!」

 

『次が来たの!』

 

「あーもう!数だけは多いんだから!」

 

「数だけだ」

 

「それに、あっちよりはマシさ」

 

一夏の言うあっちとは別ルートを進む混成部隊の対応をしている真耶やカテリナ、そして忍の所の事だ。真耶とカテリナがそれぞれヘキサフォートレスとG型装備と重火器装備で敵を薙ぎ払い、抜けた個体を忍が着実に仕留めるフォーメーションで凄まじい数の残骸の山を築いていた。ヘキサフォートレスはクアッドファランクスを雪兎が真耶仕様に完全改修したもので、従来の身動き不可のものをインレの応用で動きは鈍いものの身動きが可能になり、超大型ガトリングガンも6門に増設させ、サブアームで保持した大型シールドで防御も堅くなった化け物のような装備だ。他にも打鉄・弐式と同じマルチロックミサイルまで搭載しているせいでインレ並みの大型外装と化している。千冬曰く「現役の時よりヤバいだろ、あれは」との事。

 

「・・・・山田先生、絶対に怒らせちゃ駄目だな」

 

「「うんうん」」

 

「きゅ」

 

『人は見かけによらないの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ、これは・・・・!?」

 

遅れてこちらにやってきた内海はこの惨状を見て思わずそう言わざる得なかった。雪兎以外は自分達の世界と大差無いものだと思えばこれである。ハードスマッシュの部隊は学園へと上陸も出来ず、残る部隊もほとんど壊滅させられた上で数体のクローンスマッシュは見たこともない量産機の試験運用に使われる有り様。

 

「これを(雪兎)がもたらしたものだというのか」

 

雪兎は自分のみならず、一夏達やクラスメイト達の大幅な底上げを行っており、各企業にも協力的であった為に難波重工とは大きな戦力差が生まれていたのだ。

 

「何故こんな計算違いを・・・・!?スタークか」

 

そこで内海は気付く。この可能性を知っていたであろう(ブラッドスターク)の事を。

 

「お取り込み中申し訳ないけど、君達が難波重工の指揮官でいいのかな?」

 

そんな内海の元にも兎の手の者が現れる。

 

「くっ、この世界のシャルロット=デュノアと更識簪か」

 

「私は向こうにはいない?」

 

現れたのはシャルロット、簪、カロリナの三名。シャルロットと簪はあちらのIS学園にいた頃に調べたものの、明らかに使用しているISが違う。そして、カロリナについては全く知らない生徒であり、使うISもどのような戦い方をするのかもデータが無い。

 

「仕方がない、あちらのデータが役に立たないなら収集するまでだ!クロム!」

 

「駒がまだ補充できていないというのに・・・・わかりましたよ」

 

『バット・・・・!』 

 

『チェス・・・・!』

 

「蒸血」

 

『ミストマッチ!バット・・・・バッバット・・・・!ファイア!』

 

二人は即座にナイトローグとチェスハードスマッシュに変身する。

 

「僕はあの黒い方を相手にするから二人はあっちのチェスの方を」

 

「わかった」

 

「うん」

 

対してナイトローグにはシャルロットが、チェスには簪とカロリナが対峙する事に。

 

「こちらの世界でもシャルロット=デュノアの相手をするとはな」

 

「それは別の僕でしょ?同じだと思ってると痛い目見るよ?」

 

「そのようだな」

 

シャルロットが現在展開しているのはアンジュルグとネオウィザードの2つ。ナイトローグにとっては完全に未知の装備だ。

 

「はっ!」

 

最初に仕掛けたのはシャルロット。最早お馴染みのミラージュを展開してナイトローグを包囲すると左腕の楯から光の短槍・シャドウランサーを放ち面制圧攻撃を開始する。

 

「これは!?」

 

回避、撃ち落とし、切り払いで何とか凌ぐものの、少しずつシャドウランサーがアーマーを掠りダメージを蓄積していく。

 

「くっ、エネルギーを物質化した槍か」

 

「まだまだいくよ、イリュージョンアロー!」

 

「今度は矢か!」

 

あと同時にシャドウランサーよりも高密度のエネルギー矢を放ちながら、その合間をミラージュソードで切りつけていくシャルロット。

 

「ぐっ、忍者フルボトルの分身とは違い、触れただけでもダメージになる上に、やられた消えるだけでなく、固めたエネルギーを解放して自爆まで可能とは・・・・思った以上に厄介ですね」

 

「もうミラージュの特性を把握したんだ・・・・腐っても技術者みたいだね」

 

その頃、チェスと対峙する簪、カロリナコンビはチェスの繰り出したチェスの駒と戦っていた。呼び出したのは最初は8つ全てポーンの駒だったが、すぐに半数のポーンは成り上がり(プロモーション)で2体は騎馬のようなナイトに、もう2体は魔術師のようなビショップに変異しており、ポーンと合わせてバランスの良い配置をしている。

 

「ルークがいない?」

 

「ルークは貴様らのところの白兎にやられたんだよ!何なんだあの非常識なやつは!」

 

「あー、やっぱり否常識な事やってたんだ、雪兎」

 

「師匠が帰ってきたら聞かなきゃ」

 

「・・・・今、もの凄く不穏な単語が聞こえたんだが」

 

そうこうしている間にナイトが簪に槍を突き放つが、カロリナがそれをブロックして弾き返し、今回は白雷装備できた簪が大型荷電粒子砲【白雷】で反撃し、ナイトの一体がその半身を撃ち砕かれ粒子に還る。

 

「ちっ、こいつらも非常識か!」

 

そうは言いつつも、チェスは後方で何かを操作していた。それはシャルロット達が強襲してくる前から準備していたとあるものを起動させる為のもの。つまり、ナイト達はその為の囮なのだ。簪達もそれには気付いているものの、ナイトの機動力とビショップの魔法のような援護攻撃、その隙を埋めるような動きをするポーンに阻まれ、チェスに攻撃出来ない。倒したナイトもポーンの内の一体が再びプロモーションでナイトに成り、減ったポーンが補填された為、数は減っていない。それでもプロモーション出来る数と一度に展開出来る数に限りがあるようだ。

 

「地味に、厄介」

 

「うん、それにまだ【クイーン】が未知数」

 

ルークはチェスの話を信じるなら雪兎に全滅させられたせいでインターバルが開けていないらしく不在だが、未だに出してこないクイーンの存在が簪とカロリナを警戒させていた。そうやって手をこまねいていると。

 

「さっさと起きろ!クローンヘルブロス!」

 

チェスの背後に置いてあったコンテナから量産仕様のヘルブロスと言うべき存在であるクローンヘルブロスが4体姿を現した。その内の2体はシャルロットとナイトローグの方へと向かっていく。

 

「これが私のクイーン、クローンヘルブロスだ!」

 

「・・・・何、あれ?撃龍神擬き?」

 

「カロリナ、それは言っちゃダメ」

 

「またその名前かっ!?」

 

「あ、既に雪兎に言われたんだ・・・・」

 

何故か緩いノリのまま、2体のクローンヘルブロスが簪とカロリナの前に立ち塞がるが・・・・

 

「はっ!」

 

突如そこへ紅の仮面ライダーが乱入し、その手に持つ大剣でCヘルブロスを押し返す。

 

「あ、あれはっ!?」

 

その姿を見た簪は思わず興奮してしまう。それも無理は無い。何故なら目の前に現れたのは憧れのヒーローの1つ【仮面ライダー】なのだから。

 

「ちっ、葛城巧!という事は!?」

 

「当然俺達もいるぜ?チェス野郎」

 

「追い付いたぞ!難波重工!」

 

そこに久しぶりにISを纏った雪兎とグリスに変身済みの一海も参戦する。

 

「も、もう一人仮面ライダー!?」

 

これには簪が再び大興奮。

 

「天野雪兎、助っ人引き連れ只今帰還っと」

 

「お帰り、師匠」

 

「おう、何かまたパチモン野郎もいるな?」

 

「やっぱりパチモンだった」

 

雪兎達の参戦で数的不利は解消されたものの、クロムは笑みを浮かべる。

 

「ふふ、それで勝ったつもりか?残念だったな!クローンヘルブロスには既にお前達の最新データがインプット済みなんだよ!」

 

「俺、お前らにまだIS見せてないんだけど?」

 

「・・・・そこの非常識以外のデータは全てインプット済みなんだよ!」

 

「・・・・言い直した」

 

「うるさい!勝てばいいんだよ!勝てば!」

 

「ふふ、ふはははは!」

 

何故か自棄になり始めているチェス。だが、葛城が突然笑い出す。

 

「そのくらいこの僕が想定していないと思っているのかい?」

 

「何だとっ!?」

 

すると、葛城はフルフルR/Tボトルを一度ベルトから外して棒状態に戻し、再びそれを振り始める。先程はピョンピョンという音が鳴った段階で止めたが、今回は更にボトルを振りドン!ドン!という砲撃のような音がしたところでキャップを回転。

 

『タンク!』

 

今度は青い戦車の絵柄に変わったそれを折り畳む。

 

『タンク&タンク!』

 

「ビルドアップ」

 

『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』

 

そして、レバーを回すと何処からともなく青い小さな戦車が現れクローンヘルブロスやチェスへと砲撃を開始する。

 

「くっ!小癪な!」

 

その隙にビルドはラビットラビットアーマーをパージし、戦車型のタンクタンクアーマーを装着していく。

 

『オーバーフロー!鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!』

 

「名付けて、仮面ライダービルド・タンクタンクフォームさ!」

 

「か、格好いい・・・・」

 

尚、簪はその様子は全てハイパーセンサーも総動員して録画していた模様。

 

「さて、後は俺達に任せろ、簪」

 

「・・・・ううん、私にやらせて」

 

「ほう」

 

クローンヘルブロスにデータがインプットされていない雪兎が簪に変わろうかと声を掛けるも、簪は何かを決意したかのように雪兎の前に進み出る。

 

「憧れのヒーローの隣でただ見ているだけなんて・・・・私には出来ない!」

 

その簪の決意に応えるかのように打鉄・弐式が光輝き出す。

 

「えっ?」

 

「その光は!?」

 

「あー、ここできたか」

 

そう、打鉄・弐式は二次移行を開始したのだ。光が消えた時、簪の打鉄・弐式の姿は大きく変化していた。その最大の違いは弐式の時は様々な装備を付けていたのだが、その多くが小型化されよりスリムなシルエットに変化しており、各部にハードポイントが増設されていた。

 

「【烈鋼(れっこう)】それがこの子の新しい名前・・・・」

 

だが、変化はそれだけでは無い。

 

「来て、撃龍!蒼燕!穿甲!」

 

そう言って簪が展開したのは砲撃装備をした龍、蒼いクリアパーツの翼を持つ燕、2つのドリルを持つ戦車の自律型追加補助外装・・・・つまり雪兎の白月や一夏の白鳳、シャルロットのコスモスと同じものを呼び出したのだ。

 

「・・・・今度はそれかよ」

 

またしても雪兎のデータベースに無断アクセスした形跡を見つけ、雪兎はもうこれは避けられない事だと察した。すると、ビルドは簪の隣に立ち簪に耳を貸すように言う。ビルドは近づいた簪に耳打ちをすると、簪はコクリと頷いた。

 

「よし、準備は良いかい?」

 

「は、はい!」

 

ビルドと簪はほぼ同じタイミングでポーズを取った。

 

「「勝利の法則は、決まった」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナイトローグと対峙していたシャルロットの方はというと・・・・

 

「何者だ、お前は・・・・」

 

『・・・・』

 

増援としてやってきたCヘルブロスと共にシャルロットへ反撃しようとしたところに思わぬ乱入者が現れたのだ。それは全身装甲(フルスキン)の強固な装甲を持つ紫色のISだった。

 

「あれは、前に雪兎が作ってた・・・・」

 

シャルロットはそのISに見覚えがあった。何故なら、それは黒雷と同様に普通の人間には扱えない、と雪兎が封印したはずの試作機・・・・そう、雪兎が氷室幻徳に譲り渡したバルドローグだった。




皆さんの予想通りの結果になったかな?
帰って来てそうそう簪の弐式がやってくれました。
烈鋼、その実力は・・・・待て、次回!


次回予告

追い詰められる難波重工にダメ押しとばかりにタンクタンクフォームが現れたり、簪の打鉄・弐式が進化を遂げる。一方、シャルロットの元に現れたバルドローグの目的とは?


次回

「簪、決意の力! 兎、サポートに回る」



そして、以前アカウントが消えてしまった麦ちゃさんが、ムギというアカウントでICをリメイクし始めたそうです。良ければそちらも読んでみて下さい。

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