IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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少し遅くなって申し訳ありません。リアルの方がドタバタしていました。


~前書き劇場~

雪兎「やっぱりメカ弄りはいいなぁ」

??「ほう、ここが前書き劇場か」

雪兎「えっと・・・・どちら様で?」

??「ふっ、名乗る程でも無い者だ」

Tシャツに「俺が氷室幻徳だ!」と書いてある。

雪兎「・・・・いや、Tシャツにおもいっきり書いてあるが」

幻徳「はっ!?」

雪兎「・・・・前回、俺と巧さんはグリスコートの改修をしたんだが」

幻徳「えっ?普通にあらすじいくの?」

雪兎「本編でちゃんと相手してやるから!」

幻徳「はい・・・・」

Tシャツの後ろに「(´・ω・`)ショボーン」と書いてある。

雪兎「後ろにもあんのかい!?」


147話 フルフルとピキピキ 兎、遭遇する

???side

 

その日、通路を歩いていた俺は興味深い話を聞いた。

 

例の男(・・・)がこちらに来たようだ」

 

「それでは例の計画を?」

 

「その為の鍵は既に我々の手にある」

 

声がする方を見ると、少しだけ開いた扉から内海とクロムの姿が見えた。内海の手には先日ブロス隊が奪取したパラレルボトルなるボトルが握られている。

 

「天野雪兎でしたか?それほどまでの人物なのですか?彼は」

 

「何でもあちら側のスタークが手痛いしっぺ返しを受けたそうだ」

 

「ああ、あのスタークにですか・・・・なるほど、それは確かに優秀な人物のようですね」

 

天野雪兎・・・・その名前には少しだけ聞き覚えがあった。何でも平行世界において「兎の皮を被った天災(ラビットディザスター)」なる2つ名を持つ技術者にして男性IS操者で、その世界の篠ノ之束の弟子らしい。難波会長(老害)はどうやら彼の持つ技術を欲しているようだ。

 

「別の世界と言えどスタークに痛手を負わせた人物か・・・・」

 

二人の話を聞くに、一筋縄ではいかない人物のようだが・・・・俺はそこである事を思い付いた。

 

「これは利用出来るかもしれんな」

 

俺の想像通りの人物ならば味方に出来るかもしれない。そう思った俺は早速彼と接触すべく行動を起こす事にした。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、楽しかった!」

 

グリスコートの改修の後、一段落着いた一海はフラフラと足取りがたどたどしい状態で帰っていった。

雪兎と葛城はコーヒーを、シュテルはココアを飲んで休憩している。

 

「久しぶりに弄りがいのある機体と出会えました。ありがとうございます」

 

「いやいや!僕もとても面白くて参考になるものを見せてもらった!一海くん、ISを使う時だけ1度以外白星あげれなかったからねぇ」

 

雪兎が頭を下げると、手を振りながら笑顔で感謝し返す。すると、葛城は立ち上がって自身の机へと歩く。

 

「・・・・ねぇ、雪兎くん」

「はい、どうかしましたか?」

 

葛城は机に置いてあるハザードトリガーを持つと、雪兎の方を向いて問いかけた。

 

「どうして、ISを創ろうって思ったんだい?」

 

「どうして、ですか・・・・」

 

葛城の言葉に雪兎は葛城の雰囲気が少し変わったのを感じ取る。

 

「この先、誰かが君の事を裏切るかもしれない。君の開発したISを、利用する奴が現れるかもしれない。それでも、ISを創ろうと思えるその『理由』が知りたいんだ」

 

ダイナマイトが掘削用から兵器としての爆弾に、宇宙への足掛かりとなるロケットが敵陣を攻撃するミサイルに、多くの技術の発展や発明の裏にはそのような平和的理由で生まれた技術の「悪用」がある。葛城はライダーシステムを平和を得るための兵器として開発した。しかし、彼のかつての雇い主たる難波はその研究を単なる兵器としてしか価値を見出ださなかったのだろう。だからこそ、葛城は知りたいのだ。自分と同じ技術者である雪兎がどうしてISの開発に携わっているのか、どのような思いでそれを行っているのかを・・・・しかし、雪兎の答えは意外なものだった。

 

「理由、ですか・・・・俺にとってISの開発は趣味みたいなもんですからね・・・・そこまで深く考えた事無いですね」

 

「しゅ、趣味、かい?」

 

何処ぞの生まれ変わってもメカヲタクを貫いた騎士団長と同じく、雪兎はそれを「趣味」だと告げる。

 

「そりゃあ、初めのうちはそんな事も考えましたけど・・・・そんな下らない理由で後で後悔したくないんで」

 

「後悔したくない?」

 

雪兎は転生者としてたまたま(・・・・)人生をやり直す機会を得た。だからこそ雪兎は今世は躊躇わないと決めた。

 

「やらずに後悔するより、やって後悔した方がよっぽどいいじゃないですか。・・・・それに、見ていみたいんです」

 

「?何をだい?」

 

雪兎が天井をーーーその先を見る。葛城も雪兎同様天井を見るが、まだ理解出来ずにいた。

 

「俺の師匠・・・・篠ノ之束が目指した場所、宇宙に行ってみたいんです。まあ、その邪魔をするってんなら全力で排除しますが」

 

それを聞いた葛城はハッと理解する。ISの本来のあり方、それを雪兎は成し遂げようとしているのだと・・・・最後の物言いは少し物騒ではあるが。

 

「ふ、フフフ、ハハハハ!!」

 

「え、なんでそこで笑うんですか!?」

 

「ハハハッ、フフフフ・・・・いや、すまない!君のISに対しての思いがあまりにも素晴らしすぎて・・・・適わない訳だよ」

 

雪兎の答えに葛城は思わず笑ってしまう。それは葛城が忘れかけていた様々な思いを思い出す切っ掛けになった。

 

「でも、思い出せたような気がする。大切な事を・・・・ありがとう、雪兎くん!また1つ成長出来た!」

 

「・・・・お力になれて良かったです」

 

何か憑き物から解き放たれたような感覚を感じる葛城。葛城はその手にあるハザードトリガーを見た。

 

「僕も、目指してみるよ。たった一つの思いや夢に・・・・たった一つ・・・・たった、一つ?」

 

ピコーン!とアニメのエフェクトが出そうな顔で何か思い付いた葛城は慌ててホワイトボードに駆け寄る。

 

「巧さん?どうしたんです?」

 

「そうか、そうだったんだ!何で僕は今まで見落としていたんだ!」

 

ホワイトボードにスラスラと数式を書き殴る葛城。その数式を見た雪兎はそれが何なのかを直ぐに理解した。

 

「巧さん、コレって龍我の・・・・」

 

「あぁ、クローズドラゴンの出力の出し方を数式にした物だ。ドラゴンフルボトルは他のボトルよりも強力が故に適正のある人間でない限り扱えなかった」

 

クローズドラゴンはドラゴンフルボトルの制御不能な程の力を二分割し、それを2本分の出力として扱う事で制御可能にする装置だ。つまり・・・・

 

「クローズはあまりに強い力を分散させる事でスペックをそのままで変身者に悪影響を与えないようにしていたんだ」

 

「そうか!ハザードフォームは2本のボトルを使って変身する。ハザードトリガーが2つの成分の出力を無理矢理同時に上げるから暴走するのか」

 

「あぁ、だから使う成分を1つに限定させる事で、ハザードトリガーのコントロールをすればーー」

 

「1つの成分をハザードトリガーが増長させ、成分を2つ分にできるから、暴走を防げる」

 

「その通り!最ッ高だ!」

 

クローズドラゴンと同じ方法で暴走を抑制しよう。そういう事だ。

 

「それに、これならオーバーフロー状態で運用が可能だ」

 

「作れそうですか?」

 

「勿論!僕は、天ッ才物理学者だからね!」

 

数式を1度消した葛城は新たに数式を書き始める。葛城の目はとても輝かしいものになっていた。

 

「そう言えば巧さん、一海の・・・・グリスの強化はしなくて良いんですか?」

 

葛城はハザードトリガーを安定して使える装置の開発に忙しくなるだろうと考え、その間にやれそうな事を思い付き、葛城に話してみる。すると、葛城はさっきまでの明るい表情を曇らせる。

 

「一海くんは・・・・そのままで良い方が気がするんだ」

 

「・・・・アイツが抱えてる歪みが理由ですか?」

 

雪兎が一海に感じていた違和感を口にすると葛城はコクリと頷く。

 

「一海くんは、見る人の『何か』を見ているような気がする。危ない、いや、異常な何かを・・・・」

 

「成程・・・・俺より長くアイツを見てきた貴方がそう言うなら無理にとはいいませんよ。また何かあったら言って下さい」

 

「あぁ、ありがとう。話を聞いてくれて」

 

「科学者同士、助け合いですよ」

 

雪兎は葛城の研究室から出ると、端末に表示したグリスに酷似したライダー(・・・・・・・・・・・・)とある試作型のボトル(・・・・・・・・・・)のデータを見つめる。

 

「一応は用意してみたが、コイツの出番は当面無さそうだな」

 

それはグリスのデータとビルドドライバーのデータ、そして属性元素ボトルのデータをEVOLsystemで掛け合わせた際に提示された新たなグリスだ。

 

「巧さんはああ言ってたが、保険くらい用意してもバチは当たらないよな?」

 

そう言いながら雪兎は厳重なロックを施した上でそのデータをグリスコートの改造の片手間に八割程まで完成させたナックルに組み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雪兎は外出許可を貰い、1人街へと出ていた。グリスコートの改修機、グリスコート・ヴォルフのテストはシュテルに任せてきた・・・・雪兎の雪華では過剰性能でテストにならず、双方がちょっとやり過ぎればこの世界のアリーナでは吹っ飛ぶ可能性も否定出来ない。そして、雪兎がわざわざ外出した理由とは・・・・

 

「まさか、あの店があるとはなぁ」

 

それは雪兎の世界にもあったとある喫茶店(44話や118話に出てきた喫茶店)を訪れる為だ。「平行世界なんだし、同じ店くらいあるだろ?」と思うかもしれないが、この喫茶店に関しては別だ。その店は色々と特殊なのだ。

 

「とりあえず、行ってみるか」

 

そう言って雪兎が店内に入ると、

 

「いらっしゃいませ~、お一人様ですか?」

 

雪兎の世界と同様にオレンジ色の髪をしたアルバイトの少女が出迎える。

 

「ああ」

 

「では、ご案内しますね」

 

そう言って雪兎が案内されたのは、あちらでは半ば雪兎の指定席となっている席だった。

 

「それではごゆっくりどうぞ」

 

雪兎がその席に着き、注文を終えると、周りの席を確認してみる。どの客も雪兎がよく知る常連客ばかり。雪兎の疑念は確信へと変わる。

 

「やっぱりか・・・・」

 

すると、顔馴染みの青髪のウエイターが声を掛けてきた。

 

「よぉ、兄ちゃん。今日は1人かい?」

 

「ああ、今日はちょっとな」

 

ウエイターの反応からやはりこの店が雪兎のよく知る店であると判る。

 

「ふーん・・・・まあ、ごゆっくりな」

 

そう言ってウエイターの男は仕事に戻っていった。

 

(この店が本物って事は・・・・あそこにいる常連達も本物って事だよな?)

 

「○郎、もう一品注文しても?」

 

「したらセ○バーの晩御飯のおかず抜きな?」

 

何やら晩御飯のおかずがどうので揉めてる金髪アホ毛付きとブラウニー。

 

「良いお店でしょう?」

 

「いや、何であのナマモノが店員してんのよ!?」

 

「あっ、青いラ○サーさんもいますよ!大人の私」

 

三姉妹に見える三人の聖女。

 

「見つけましたよ、兄さん」

 

「げっ、秋○!?」

 

義妹に引き摺られて店を出ていく眼鏡ボーイ。

他にもコーヒーのカッコイイ飲み方を試行錯誤する男や、ふくよか・白衣・アラフィフの黒幕トリオ、次のライブの打ち合わせをする暴君と竜嬢、ネタの打ち合わせをしている幸の薄そうな女芸人トリオまでいる。

 

「・・・・俺はいつから型○時空に迷い込んだんだ?」

 

そんな事を考えている間に雪兎の注文したコーヒーを猫っぽい何かが運んできた。

 

「お待ちどう様、ご注文のモーニングセットです」

 

「お、おう」

 

雪兎もそこそこここには通っているが、やはりこの猫っぽい何かは見慣れる事はない。すると、猫っぽい何かは雪兎の顔を見て周りをキョロキョロし出す。

 

「シュテルなら今日はいないぞ」

 

「そ、そうですかい・・・・あのお嬢さんにはあっしらが逆らえない何かがありまして・・・・」

 

「そういや、この前公園で読書してたら猫まみれになってたな」

 

この猫っぽい何かも、シュテルが放つ謎の猫吸引物質には逆らえないらしく、前に連れてきた時は猫っぽい何か達が揃って使い物にならなくなった程だ。

 

「今日のシフトにはバブルスとディスティニーもいるから大変な事になるところでしたぜ」

 

「シュテルはお前らの事気に入ってたし、またそのうちに連れてくるか」

 

「せ、殺生な!?」

 

そんな事を話していると、新しい客が来店してきたようで、丁度暇だった猫っぽい何かが対応したのだが・・・・

 

「いらっしゃいませ~、お一人様ですか?」

 

「!?あ、ああ」

 

どうやら常連では無い客のようで、グレーのスーツに黒のコート姿の彼は猫っぽい何かに酷く驚いている。

 

「空いてる席は・・・・では、こちらへどうぞ」

 

常連客では無い彼に常連客の席の近く(混沌とした場所)へ案内するのは酷だと思った猫っぽい何かは雪兎のすぐ後ろの席へと彼を案内した。

 

「ご注文はお決まりで?」

 

「で、ではコーヒーを頼む」

 

「かしこまりました~」

 

猫っぽい何かが注文を聞き終え去っていくと、彼は安堵の息を吐く。

 

「・・・・まあ、初見じゃアイツらはインパクト強過ぎるわな」

 

そんな彼に雪兎は声を掛けた。

 

「!?あ、ああ・・・・」

 

一方で、彼は声を掛けられるとは思っていなかったようで、声に少し動揺が見える。

 

「そんな固くなんなよ・・・・元々俺に用があったんじゃないのか?」

 

「なっ!?」

 

「どうやったかは知らんが、姿は見えなかったのに気配は駄々漏れだったぞ?」

 

雪兎は彼が学園の外に出てからずっと尾行していた事に気付いており、気付いてはいたが敵意はなさそうなので見逃していたのだ。

 

「まあ、背を向けたまま話すのも面倒だ。こっちの席にこいよ・・・・少なくともこの店の中でなら聞かれる(・・・・)事はないぜ?」

 

「・・・・わかった」

 

こんな回りくどい接触をしてきた事から何らかの事情持ちだと判断した雪兎はマドカの時と同様にジャミングフィールドを展開して話を聞いてみる事にした。が、丁度そこへ猫っぽい何かが彼の注文したコーヒーを持ってきた。

 

「お待たせいたしました~って、お二人ともお知り合いで?」

 

「まあ、朝からの長い付き合いってやつだ」

 

「?とりあえずご注文のコーヒーになります」

 

猫っぽい何かの問いかけに某メダルクラッシャーのような言い回しで返す雪兎。

 

「で、俺に何の用かな?氷室幻徳君?」

 

「!?何故それを・・・・」

 

あっさりと正体を見破られた幻徳は先程よりも動揺した素振りを見せる。そんな幻徳に雪兎は理由を説明する。

 

「理由は3つ・・・・1つ、俺の事を知っているのはIS学園か難波重工関係者に限られているから」

 

これは雪兎が異世界人であるという事から。

 

「2つ、学園のデータベースでお前さんの顔を見たから」

 

これはグリスコートのデータを解析していた際に偶然見つけた臨海学校での幻徳が写った写真から気になって調べたものだ。その際、この世界のシャルロットと良い雰囲気だったのには少し思う所が無い訳では無いが・・・・

 

「3つ、俺の勘と推測から」

 

その他諸々のデータや考察の末に雪兎は何となくではあるが、幻徳が自分に接触してきた理由についてもある程度は察していた。

 

「・・・・流石は天災だな」

 

「俺への接触理由はここ(胸部)に仕込まれた異物の処理と難波由来じゃない力・・・・ってとこか」

 

そう言って雪兎は自身の胸部を示す。

 

「一を知りて十、いや百を知る・・・・なるほど、あの老害が欲するわけだ」

 

あっさりと目的を看破された幻徳も改めて雪兎の規格外っぷりを理解する。そして、「やはりこの男ならば」と自身の口から目的を伝える。

 

「その通りだ・・・・俺に仕込まれたこの装置を無力化するものと、俺にISを1つ用意して欲しい」

 

「それは構わんが、対価は?」

 

「・・・・これでどうだ?」

 

幻徳が取り出したのは記憶媒体。それに保存されているのは・・・・

 

「隙を見て盗み出した難波の研究成果と研究施設に関するデータだ」

 

「いいだろう。引き渡しの時に交換といこうか」

 

「どのくらいで用意できる?」

 

「IS自体は丁度良いのがいるから、そいつの調整とジャミング装置の取り付けで・・・・2日後だな」

 

「わかった」

 

「引き渡し場所はここがいいだろう・・・・ここなら下手にちょっかい出されても客に撃退されるだけだし」

 

「彼らは只者ではないとは思っていたが、それほどなのか?」

 

「・・・・下手すれば都市1つぶっ飛ばせる」

 

「・・・・尾行には十分注意しよう」

 

雪兎の顔が真顔だったので幻徳はそれを冗談とは思わなかった・・・・いや、幻徳自身も感じ取っていたのだろう、ここの常連客達の異常さを。

 

「さてと、そろそろ帰るか・・・・お前さんの専用機の調整もしないといけないしな」

 

「そうか」

 

「あっ、あと早めに抜け出してやれよ?」

 

「?」

 

「待たせてるんだろ?彼女(シャルロット)

 

ここ数日ではあるが、この世界のシャルロットは時々遠い目をしている事があるのを雪兎は知っている。その理由も・・・・

 

「・・・・善処しよう」

 

雪兎の言葉にそう答え、二人は会計を済ませて店を出る。

 

「きゃああああ!!」

 

すると、突然女性の悲鳴がした。

 

「あれは・・・・」

 

「ちっ、スマッシュか」

 

声がする方を見ると、そこには分厚い装甲を持つストロングスマッシュが暴れていた。

 

「さて、どうしたもんかねぇ」

 

「待て」

 

そう言いつつもクロストリガーを取り出した雪兎だったが、幻徳がそれを制する。

 

「どういうつもりだ?」

 

「・・・・例のジャミング、まだ続けられるか?」

 

その事について咎めると、幻徳は意外な事を聞いてきた。

 

「ああ、まだしばらくはもつが・・・・って、まさか!?」

 

「そういう訳だ」

 

幻徳が取り出したのはスクラッシュドライバーと紫色の特殊な形状をしたボトルだった。

 

『デンジャー!クロコダイルッ!』

 

そのボトルのキャップを正面に向け、腰に装着したスクラッシュドライバーにセット。

 

「見ていろ・・・・これが俺の今の力だ。変身」

 

そして、スクラッシュドライバーのレンチを下げてビーカー型とファクトリーを生成。そこに紫色のボトル成分が満ち、左右から鰐の顎のような物が現れビーカーを咬み砕く。

 

『割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグゥ!オォラァ!』

 

ビーカーが完全に砕け散ると、中から紫色のライダーが姿を現し、女性の悲鳴のようなサウンドが響く。

 

「やっぱりお前も仮面ライダーなのか」

 

「ローグ・・・・仮面ライダーローグだ」

 

ローグの姿を見つけたストロングスマッシュはローグを脅威と認識したのか真っ直ぐローグへ向かって走り出し、自慢の拳を振るう。しかし、ローグは微動だにしない。

 

「効かんな」

 

そして、お返しにとローグが拳を叩き込むとストロングスマッシュはあっさりと吹き飛ばされていく。

 

「ほう、その装甲は・・・・なるほどな」

 

一方で出番のなくなった雪兎はローグの装甲を見てその防御力の秘密に気付いた。

 

「面白い事考えるやつがいたもんだ・・・・それに、これならあのISを任せても良さそうだな」

 

雪兎が先程言っていたISとは、とある理由から黒雷と同様に一般人にはとても扱える代物では無いISなのだ。だが、ローグの戦いっぷりを見て雪兎は幻徳ならばそれを扱えると確信する。

 

「これは思ったよりいいデータが取れそうだ」

 

その後もローグは終止ストロングスマッシュを圧倒し、あっさり行動不能にしてしまった。

 

「うっは、これはグリスやビルドじゃ苦戦しそうだな」

 

そんな事を考えながらさりげなくストロングスマッシュの成分を回収していると、騒ぎを聞き付けた一海やシュテル達がやって来た。

 

「雪兎!?お前こんな所にいたのかって、そいつは・・・・!?」

 

そこでローグの存在に気付いた一海が警戒しスクラッシュドライバーとロボットゼリーを取り出すが、ローグは興味が無いと言わんばかりに一海らに背を向ける。

 

「ま、待て!」

 

それでも一海はローグを追おうとするも、ローグは紫色の銃を取り出し銃口から煙を放ち姿を眩ませた。

 

「マスター、彼は?」

 

逃げられた事に悔しそうな顔をする一海を余所にシュテルは雪兎にローグについて訊ねる。

 

「ああ、ちょっとそこで知り合ってな」

 

「お怪我は?」

 

「問題無い・・・・少なくともあいつは俺の(・・)敵では無いみたいだ」

 

「なるほど・・・・そういう事ですか」

 

雪兎の表情から大体の事を察したシュテルはやれやれと首を振る。

 

「ちょっとした興味本位で来てみたが・・・・この世界は俺を随分と楽しませてくれるみたいだ」

 

一海達には気付かれ無いように片手で顔を隠しつつ、雪兎は楽しそうな笑みを浮かべた。




かなり長くなりました。
一海より先にローグの正体を知った雪兎ですが、正体は明かさない模様。
そして、幻徳の専用機はどうなることやら・・・・
喫茶店は型月ファンなら知ってるあの店です。


次回予告

幻徳との接触から2日後。雪兎は専用機を完成させ、それの引き渡しに再びあの喫茶店を訪れる。そして、パラレルボトル奪還作戦が目前に迫り・・・・

次回

「誓いと決意 兎、ホクホクする」

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