IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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~前書き劇場~

雪兎「で、今回は交流パートとの事だが」

シュテル「ようやくこの世界の一夏達とご対面ですね」

雪兎「となると、やっぱりいるんだろうな・・・・この世界のシャルロットが」

シュテル「やはり複雑ですか?」

雪兎「そりゃな・・・・まあ、別人とは理解してんだが」

シュテル「なるほど」

雪兎「そんな事より!巧さんの研究室への訪問だ。出来る限り吸収して帰らねば」

シュテル「・・・・これは私以外のストッパーが必要ですね」

雪兎「という訳で146話、スタート!」


146話 兎式異世界交流と新・発・明 兎、交流する

「ってな訳で、当分こっちの世界でいる事になった天野雪兎だ。雪兎って呼んでやってくれ。で、こっちはシュテル」

 

「いや、何でお前が・・・・いや、そう呼んでもらうけどよ」

 

「よろしくお願いします」

 

話し合いの後、一海の案内で食堂を訪れた雪兎達。そこでこの世界の一夏達と遭遇し、一海が雪兎とシュテルを紹介する。この世界の一夏達は龍我の1件もあってか、平行世界からの客人というのに慣れているようだ。

 

「平行世界って事は、雪兎くんは僕達の事を知っているの?」

 

「あ、あー・・・・おう、そうだな」

 

「今の間はなんだよ」

 

「気にすんな。少し戸惑っただけだ」

 

この世界のシャルロットの問いに雪兎は気まずそうにそう答える。同じ顔をした別人というのは理解しているが、複雑なものは複雑なのだ。すると、早速この世界のセシリアが気になっているだろう事を訊ねる。

 

「む、向こうの世界の私達は何方かとお付き合いをしているのでしょうかッ!?」

 

「あー、そうだな。一部の奴以外はアイツにゾッコンだな。多少改善されているとは言え、鈍感だけど」

 

セシリアの質問に雪兎がそう答えると、この世界でも一夏にゾッコンと思われる数人が残念そうに肩を落としている。

 

「向こうの皆の恋愛事情を聞いても、別に得する事ないだろ?」

 

「「「「ある!!!」」」」

 

一夏の鈍感発言にシャルロット以外が反応して反論する。この光景に雪兎は少し呆れていた。

 

「頑張って治してみる」

 

「おう、頑張れよ・・・・」

 

この世界でも一夏はやはり一夏らしい。

 

「カシラは向こうの世界にもいるのか?」

 

「カシラ・・・・あぁ、一海は会ってはいないな。もしかしたら何処かにいるかもしれない」

 

意外な人物(ラウラ)からの意外な質問に雪兎は少し驚きながらも正直に返答すると、ラウラもしょんぼりとする。なので今度は雪兎が皆に質問する。

 

「ラウラと一海ってどんな関係なんだ?」

 

「どうと言われてもな・・・・憧れの対象?」

 

「ただ単に懐いてるだけじゃないの?」

 

(なるほど、こっちでいう聖のポジションに一海がいるわけな)

 

その質問には箒と鈴が曖昧に答えた。その答えで雪兎も大体の事情を察した。そんな時、雪兎は見慣れぬ少女の姿を見つける。

 

「そう言えば、一海。コイツは?」

 

それは青羽の後ろにまるで雛のように引っ付く少女だった。

 

「コイツか?コイツは小羽。色々あって俺達が面倒見ることになったんだよ」

 

初対面である雪兎にも小羽が警戒しているのが判った。

 

「初めまして、天野雪兎って言うんだ」

 

なので、雪兎は小羽に視線を合わせるようにしながら近づいて挨拶をする。すると、小羽の視線から警戒が解かれ、雪兎に興味を持ち始める。

 

「ユキトは、カシラや青羽の友達?」

 

「友達っつても、今日が初対面だけどな」

 

「ユキトは敵じゃない?」

 

「おう、お前に酷いことはしない」

 

ここまでの会話で雪兎は小羽に何らかの虐待のような事情があった事を察し、内心怒りを抑えた。小羽も今の会話で雪兎が自分を傷付ける人間では無いと理解し、青羽の前に立って手を差し出した。

 

「よろしく、ユキト」

 

「おう、よろしく」

 

小さな手を握手する。青羽はそれを嬉しそうに見ていた。

 

「初めまして、小羽。私はシュテルと申します」

 

「・・・・シュテルは、ユキトの友達?」

 

シュテルも小羽の元へ行くと、挨拶をする。小羽はすぐに雪兎との関係を聞いてきた。

 

「はい。マスターは私達のマスターです」

 

「・・・・マスター?」

 

小羽はシュテルのマスター呼びのせいか、誰の事が理解出来ていないようだ。

 

「俺の事さ。三羽ガラスや小羽が一海の事をカシラって呼ぶみたいなもんさ」

 

雪兎が小羽にそう教えると、小羽はすぐに理解したのか、コクコクと頷く。

 

「よろしく、シュテル」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

警戒を完全に解いた小羽はシュテルと握手をする。

 

「雪兎くん!」

 

そこへ部屋の片付けに行っていた葛城がやって来た。

 

「巧さん」

 

「待たせてしまったね。部屋の片付けをしていたんだ。さて、早速僕の研究室へ行こう!」

 

どうやら、葛城も早く雪兎と色々と技術的な話をしたいらしい。そこで雪兎はある事を思い付き、一海に声をかける。

 

「あ、そうだ。一海、お前も一緒に来てくれないか?」

 

「え?どうしてだよ」

 

「ストッパーが欲しくてな」

 

「?」

 

疑問符を頭上に浮かべる一海が雪兎のその言葉の意味を理解するのはもう少し後の事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城の研究室へと向かう途中、雪兎達はこの世界の楯無と仲良く談笑する女子生徒とすれ違う。

 

「彼女は?」

 

「ん?楯無さんはそっちにもいるんだろ?」

 

「いや、もう一人の方。知らない顔だったから少し気になっただけだ」

 

雪兎がそう言うと、突然一海の様子が変わる。

 

「お前、みーたんを知らないのか!?」

 

「み、みーたん?」

 

「今話題のネットアイドルみーたんを知らないとはっ!」

 

「いや俺、この世界の住人じゃないし」

 

「シャラップ!」

 

そこからは一海がみーたんについて熱く語り出すが、当のみーたんこと石動美空は若干引き気味だ。一方、雪兎はそんな一海に違和感を覚えた。

 

(何だ?この違和感は?)

 

「聞いてるのか?雪兎」

 

「す、すまん、少し考え事を」

 

「あ”!?」

 

「ほらほら、そのくらいにしとかないと雪兎君達が引いてるわよ?」

 

そこで助け船を出してくれたのは楯無だった。

 

「そもそも異世界の雪兎君達に美空の事言ってもしょうがないでしょ?」

 

「うっ、言われてみれば・・・・」

 

「ごめんなさいね。彼、美空の事になると少しおかしくなるから」

 

「これが俗に言うドルヲタというやつですか」

 

シュテルのその言葉で雪兎は違和感の正体に気付いた。

 

(あっ、一海の反応がまんま典型的なドルヲタなんだ)

 

そう、一海の謎のみーたん推しはまるでこうあるべきだ(・・・・・・・)と言わんばかりのドルヲタっぷりだったのだ。そしてもう1つ雪兎には気になった事があった。

 

「一海、お前ってもしかして会長の事ーー」

 

「さ、さあ!早く研究室へ行こうぜ!」

 

楯無の静止を素直に受け入れた一海の様子から色々察した雪兎がそれを口にしようとすると、一海は慌てて雪兎の背を押し研究室へと向かおうとする。

 

(これ、当たりっぽいな)

 

その様子から考えが正しいのが証明され、雪兎はからかうネタが出来たとほくそ笑む。そうとは知らず、一海は雪兎を連れて研究室へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが僕の研究室さ!」

 

学園内にある葛城の研究室へと案内された雪兎達。そして、雪兎は早速研究室の物に興味津々のようだ。

 

「巧さん巧さん!これは?」

 

「良いところに目を着けたね、それは僕が開発した・・・・」

 

あっという間に雪兎と葛城はシュテルと一海を置き去りに趣味(メカと研究)の話に没頭している。

 

「・・・・この様子だとしばらくは帰ってきませんね」

 

「だな」

 

葛城の発明品の後は雪兎の今まで蓄積していた開発データを閲覧し、葛城が狂喜乱舞している。

 

「あっ、そうそう一海君、グリスコートを出してくれないか?」

 

すると、意外にも早く葛城が復帰し、一海に専用機(グリスコート)を出すように指示する。

 

「えっ?あ、はい」

 

「うん、そこにメンテナンスモードで展開してくれたまえ」

 

葛城の指示に従い一海がIS用の作業台にグリスコートを展開する。

 

「これがグリスコート、確か巧さんが開発した2.5世代機だったか?」

 

「その通り!当時は難波重工で作成したから予算の関係でそれが限界だったのさ」

 

「ふむふむ・・・・ここの構造は・・・・なるほどなるほど」

 

雪兎は早速メンテナンスモードのグリスコートにアクセスし、色々調べ始めた。そして、とんでもない事を告げる。

 

「巧さん、これ(グリスコート)弄っていい?」

 

「ちょっ!?『弄っていい?』ってお前ーー」

 

「いいよ」

 

「葛城さん!?」

 

「では、早速!」

 

そう言うと、雪兎の背中から複数のサブアームが展開する。

 

「って、えぇええええ!?」

 

いきなり現れたサブアームに驚く一海だが、雪兎はそれを無視してグリスコートのデータをEVOLsystemへと送り、いくつかの改造プランを投影モニターに表示させる。

 

「うーん、そのプランは難しいかな?」

 

「あっ、やっぱりそう思います?」

 

「まず一海君に合っていない事と、そもそもコンセプトが・・・・」

 

「なるほど、ならこっちのプランは?」

 

「ほうほう、そう来るか。なら・・・・」

 

葛城と話しながらも既に決定している部分はサブアームで作業を進める雪兎。これには一海も唖然となる。

 

「うーん、でもこのプランのこれも捨てがたい」

 

「でも、それをするなら大掛かりな改修が必要だよ?」

 

「・・・・もう、いっそうの事腕も全部取っ替えてしまおうか?」

 

「ちょっと待てや、こらぁ!」

 

半分くらいバラされ、何やらとんでもない改造がされそうになったところで一海が正気に戻り雪兎を止めようとするが、作業に夢中な雪兎に逆にサブアームで拘束されてしまう。

 

「・・・・雪兎君、それはちょっと」

 

「・・・・巧さんがそう言うなら」

 

そこで葛城は一海の意見を尊重し、雪兎を止める。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 

そこで拘束されていた一海も解放される。その手にはいつの間にかスクラッシュドライバーとロボットゼリーが握られており、その必死さが伺える。

 

「すみません、マスターは重度のメカヲタクでして・・・・弄りがいのある物を前にするとああなってしまうんです」

 

「・・・・ストッパーって、そういう意味だったのかよ」

 

そこからは一海自身の意見も取り入れつつグリスコートを改修していった。

 

「ところで雪兎君、そのサブアームユニットも自作したのかい?」

 

「ええ、マルチツールユニット【魔ルチアームズ】と言いまして」

 

「おい、今、『魔ルチ』とか言わなかったか?」

 

「おそらく、魔改造マルチを略したのでは?」

 

「魔改造・・・・間違いないな」

 

「・・・・それ、僕にも作ってくれない?」

 

「葛城さん!?」

 

こうして一海はしきりに雪兎と葛城にツッコミ続ける羽目になり、夕食の為に研究室を出る頃にはすっかり憔悴しており、一夏達がギョッとする事になるのであった。




はい、雪兎が相変わらず暴走しております。
強化されたグリスコートについては次回となります。


次回予告

無事にこちらの世界の面々とも仲良くなった雪兎達。グリスコートに続いて雪兎の標的となったのは葛城の研究していたとあるもので・・・・


次回

『フルフルとピキピキ 兎、遭遇する』

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