雪兎「あ~、だからやめろって言ったのに」
一海「元はと言えばお前が!」
雪兎「それより先に何も聞かずに仕掛けてきたのお前だからな?」
一海「うぐっ」
雪兎「そんな事より今はあの暴走してる天才様を何とかする方が先だろ?」
一海「わかってるよ!」
雪兎「とは言え、どうやって止めたもんか・・・・あっ」
一海「何か思い付いたのか!?」
雪兎「まあな。詳しくは本編で」
シュテル「それではー兎協奏曲ー第144話、始まります」
一海「突然持ってかれた!?」
雪兎「・・・・今回はリリなの風なのね」
『オーバーフロー!・・・・ヤベーイ!』
明らかに不吉な音声と共に漆黒のモヤを纏うビルドが雪兎に迫る。そのスピードも先程とは段違いに速い。
「ちっ!」
シールドを失いガンドレットだけになったシールドアームでそのモヤを纏ったパンチを受けるも、パワーも上がっているようで雪兎はあっさりと吹き飛ばされる。また、パンチを受けた部分のガンドレットはまるで装甲を溶かされたように拳型の跡が残っている。
「マジで洒落になってねぇぞ、これ」
ガジェットキーを抜き、使い物にならなくなったガンドレットを消すが、ハザードと化したビルドは止まらない。
「オォリャァァァァァ!!」
そこにシュテルとの戦闘で疲弊していたはずのグリスが乱入した。しかも、グリスが仕掛けたのはビルドの方。つまり、ハザードトリガーによる暴走を止めようとしているのだろう。だが、割り込んだ事で今度はグリスがビルドの標的になってしまう。
「グリス!?」
「勘違いするなよ!俺は葛城さんを止める為に割って入っただけだからな!」
どう聞いてもツンデレな発言をしながらグリスはビルドに向かって左腕のバンカー・ツインブレイカーを振るう。しかし、それでもハザードフォームとなったビルドには通じない。自身へのダメージも気にせずグリスの顔面を殴り飛ばす。
「がっ!」
グリスの装甲は同じネビュラガスを利用してるからかハザードに耐性が僅かばかりあるようで装甲は溶けてはいなかった。だが、ビルドはすぐにグリスへと追撃に移ろうとしていた。
「させません!」
そこにシュテルがパイロシューターを放ち妨害する。
「シュテル!そのモヤを纏った攻撃には当たるな!溶かされるぞ」
「なるほど・・・・では前衛はお任せします」
妨害された事で今度はシュテルにターゲットが移るが、それを雪兎が再び攻撃する事でビルドのヘイトを自分に向けタゲを取る。そして、起き上がったグリスや三羽烏に向かって叫ぶ。
「呆けてねぇでお前らも手伝え!」
「えっ?」
「何で難波の手先の言う事をーー」
「だ・か・ら!俺はそんな連中知らねぇっての!どいつもこいつも人の話聞きやしねぇ」
改めて雪兎がそう言うと、グリスと三羽烏は暫しポカーンとしていたが、慌てて円陣を組む。
「な、なぁ・・・・これって、もしかして・・・・やっちまった?」
「あ、あいつの言葉を信じるなら、ですが」
「それよりも今は葛城さんを正気に戻す方が先決だな」
「さっさとしろ!取り返しのつかない状態になっても知らんぞ!」
「おい!それはどういう事だ!」
悠長に話し合いをしているグリス達に雪兎がそう告げると、そこにグリスが食いついた。
「説明してやるから俺と代われ、三羽烏!但し、接近戦はするなよ」
「「お、おう!」」
「わかった!」
そう言って三羽烏と交代した雪兎はグリスへと説明を開始する。
「まず、あのハザードトリガーってのは時間経過と共に一時的にではあるがハザードレベルを徐々に引き上げていく特性がある」
「ハザードレベルを?」
「ああ、そんでもってハザードレベルの数値は高くなればなる程に力を増すが、当然デメリットも存在する」
「デメリットだと?」
「まずはレベル1.0以下、スマッシュ化したら例え成分を抜いたとしても消滅する。レベル1.1以上2.0未満、スマッシュ化する。このレベルなら成分を抜きゃ助かる。レベル2.0以上、スマッシュ化せず人間の姿保てる。ライダー予備軍だな。レベル3.0、ビルドドライバー使用可。そんで少し飛ばしてレベル6.0、人間の限界。これを超えたら人間辞めてる。レベル7.0、普通に変身出来る許容値。そして、これ以上は人体の方が持たん。下手をすれば変身しただけで消滅しかねない」
「でも!それなら葛城さんはまだ5.0にもなってないし大丈夫なはずじゃ」
「但し、例外もある」
「えっ?」
「ハザードトリガー等の外的要因で急激にハザードレベルを上昇させた場合、上昇値にもよるが、肉体がハザードレベルに耐えられず消滅しかねない。こいつに搭載したハザードレベルスカウターによるとビルドの現在のハザードレベルは5.4、上昇値は1.1ってとこか。ハザードトリガーによる一時的な上昇とはいえかなり上昇してる。上昇値が2.0を超えたら危険域だと思え」
これは雪兎との戦闘での上昇値も込みの数値だ。だが、このまま上昇し続ければ危険な事には変わり無い。
「な、なら早く止めないと!」
「ちょっ!?」
それを聞いて焦ったグリスがビルドへと突撃するが、ハザードレベルの上昇したビルドにはグリスの攻撃は通用せず、再び弾き飛ばされてしまう。
「アホか!今のお前のハザードレベルじゃ5.0超えたビルドに通用する訳ねぇだろ!」
「だったらどうしろってんだよ!」
雪兎とグリスがそんな言い争いをしていると、ビルドは弾き飛ばされたグリスが落とした2本のボトルを手に取る。
「あっ!」
「やばっ!」
『フェニックス!ロボット!スーパーベストマッチ!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』
そして、ビルドはウルフとスマホから拾ったフェニックスとロボットにボトルを変更する。
『ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?』
そのまま無言でレバーを回し、ボディを生成するプレートを出現させ換装。
『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』
フェニックスロボハザードへと変貌する。
「また新しいベストマッチかよ」
「気を付けろ!フェニックスは炎を操り、ロボットはパワーと防御に優れてる!」
「うわぁ・・・・一対多にはベストマッチなフォームじゃねぇか」
すると、ビルドは黒いモヤの混じった炎弾を放ってくる。
「これで遠距離も安心出来なくなった訳だ」
炎弾以外にも火炎放射を使い、近付けば重い打撃を放てる厄介なフォームになったビルドに雪兎達は攻める事が出来ない。
『MAXハザードオン』
だというのにビルドはダメ押しとばかりにハザードトリガーのスイッチを押しレバーを回す。
『オーバーフロー!・・・・ヤベーイ!』
「ハザードレベル5.9、本気で余裕ねぇぞ、これ」
上昇値が1.6を超え危険域に近付いてくる中、雪兎は覚悟を決める。
「グリス!一瞬でいい、隙を作れ!」
「何か手があんのか!?」
「一か八かだがな」
『BlendTonfa Activate』
そう言い、雪兎は可変式のブレード内蔵トンファーを装備する。
「行くぞ!お前らぁ!」
「「「おう!」」」
雪兎の言葉を信じる事にしたグリスが三羽烏と共にビルドへと仕掛ける。まずはオウルが両手の球体【フォレストシーカー】を飛ばして撹乱、そこにスタッグが双剣【ラプチャーシザーズ】で切りかかる。そこでよろけたビルドがすぐに右腕をスタッグに向けて火炎放射を放とうとするが、シュテルのパイロシューターに妨害され、キャッスルの無事な左の盾【グランドランパード】のシールドバッシュで弾き飛ばされる。
「うおらぁぁぁぁぁ!!」
そこにグリスのツインブレイカーが炸裂しビルドは大きくよろける。
「今だ!」
「・・・・少し我慢しろよ!」
『BlendTonfa FullDrive』
グリスの合図に合わせ、雪兎はブレードトンファーのスロットにガジェットキーを差し込む。さらにクロストリガーを左手に構えて跳躍。上からエネルギー弾を乱れ射ち、防御態勢になったビルドの懐に潜り込みラッシュを放つ。
「おらおらおらおらっ!!」
拳打、膝打ち、踵落とし等を含めたラッシュを浴びせ、ビルドを浮かせると回し蹴りで大きく弾き飛ばす。
「コード麒麟!」
そして、ブレードトンファーのブレードを展開。
「でぃぃぃやっ!!」
一気にビルドへと近付きアッパースイングの一撃を叩き込む。その一撃がクリーンヒットしたビルドは地面に倒れ伏すと変身が解けた。
「・・・・やった、のか?」
「生体反応を確認。気を失っただけのようです」
倒れたビルド・葛城に近付きシュテルが脈を確認するが、ただ気を失っただけのようだ。
「変身解除ギリギリのダメージを狙ったが、上手くいったか」
葛城の無事を確認し、グリス達へ敵意が無い事を示すべく雪兎も変身を解除する。それを見たグリス達も雪兎に敵意が無いと判りそれぞれ変身を解除する。
「さてと、そこの兄さんも休ませんといかんし、お互いに情報交換もしたいんでどこか落ち着ける場所まで案内してもらえないか?」
まるっとハザード戦でした。
フェニックスロボハザードはちょっとしたノリで出しましたが、かなり厄介なフォームだと思われます。
雪兎がやった麒麟は元ネタのスパロボシリーズでアクセルがラミアとアシェンを救った時のやつを参考にしております。
BGMは『Dark Knight』か『限りなく近く果てしなく遠い世界』推奨
次回予告
何とかハザードフォームの暴走を止め誤解を解いた雪兎とシュテル。二人は彼らの世界のIS学園にてグリスこと一海達から事情を聞くのだが・・・・
次回
『巡り会う者達 兎、奇妙な縁を感じる』