IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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はい、後編です。

さて、色々予想はついてるとは思いますが、雪兎反撃回です。


ハーメルンの仲間の一人が知らぬ間にユーザー登録消されてたそうです。皆さんもお気をつけて


139話 決着!決勝戦 兎、新たな札を切る

誰もが目を疑っていた。それもそのはず、今まで雪兎がこのようにやられる姿を見た者はいない。それ故に、この一夏の奮闘は誰も予想だにしていなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・やったのか?」

 

しかし、勝利を告げるブザーは鳴っていない。つまり・・・・

 

「・・・・全く、一杯食わされたわ。おかげでこいつ(・・・)を使う事になるとはな」

 

砂埃の中から声が響き、それは姿を現す。

 

「【AtM:憑神typeメイガス】、こいつの特殊能力【増殖】が無かったらやばかったわ」

 

そのアドヴァンスドは腕や脚に葉のようなフィンが付いた黄色と黄緑の発光装甲を持ったどこか植物を彷彿とさせる変わった姿をしていた。

 

「増殖?」

 

「ああ、こいつはエネルギーを増殖させる事に特化したアドヴァンスドでな」

 

「それって箒の絢爛舞踏!?」

 

「いや、流石にあれ程無茶苦茶じゃねぇよ、その証拠に全快してないだろ?」

 

確かに雪兎のシールドエネルギー残量はイエローゾーンのままだ。

 

「つまり劣化版の絢爛舞踏ってとこだ・・・・でも、その分応用は効くぜ?」

 

雪兎はお喋りはここまでだと両手を一夏に向け、その掌からエネルギー弾を放つ。

 

「これくらい!」

 

弾速がそこまで速くないと一夏がそれを回避するが、雪兎はそれを見てニヤリとほくそ笑む。

 

『!?マスター!』

 

すると、回避したはずのエネルギー弾は一夏の傍を漂いつつも急速にエネルギーを増大させていく。

 

「はい、ボン」

 

「うわぁああああ!?」

 

そして膨れ上がったエネルギー弾は爆弾のように爆発し一夏を吹き飛ばす。

 

『な、何が起きたのでしょうか!?』

 

『おそらくあのエネルギー弾のエネルギーを【増殖】で増大化させて爆破したのだろう』

 

『エネルギーであれば見境無しか、また厄介なものを』

 

そうこうしている間に雪兎は自身の周りに無数のエネルギー弾を機雷のように滞空させ、一夏が近寄れない結界を形成する。

 

「対一夏用戦術その1、光爆陣、ってな」

 

高速移動からの近接戦闘を主とする一夏には厄介な戦術だ。しかも、所々に抜け道のようなものはあるが、雪兎がそれを知らぬとは思えない。つまりは何らかの罠である可能性が濃厚なのだ。

 

「ははっ、ガチで俺対策じゃん、これ」

 

この上無いピンチのはずなのに、一夏は笑みを浮かべていた。だが、それも無理は無い。何故なら、雪兎が対策をしてくるという事は、一夏はちゃんと雪兎が対策すべき対象と認識されているという事。つまり雪兎に認められている証拠なのだ。

 

「いいぜ!こんなの突破してやるよ!」

 

「そう来ると思ってたぜ!一夏!」

 

そう言ってあえて罠と思われる道を突き進む一夏。そんな一夏に雪兎も専用武器である銃剣を手にし狙撃するが、一夏はそれも回避し雪兎へと迫る。

 

「まだだ!」

 

その狙撃の雨を最初は雪羅のシールドで防いでいた一夏だが、シールドエネルギー残量が少なくなってきたため、直撃コースのものだけを切り払い強行突破を始めた。煌月白牙だけでは切り払えないと判断するや否や一夏は左手にとある武器を呼び出した。

 

「箒、使わせてもらうぞ!来い!”空裂”!」

 

そう、それは箒の紅椿の刀の一振り空裂。あの決勝戦の前夜に紅椿が箒に提案したのは一夏に空裂を貸す事だったのだ。

 

「空裂だと!?」

 

これには流石の雪兎も驚愕した。今まで散々他の武器を使う事を拒んでいた白式が他のISの武器を使っているのもそうだが、その武器が空裂だった事にも雪兎は驚かされていたのだ。

 

「お前のそんな顔が見られたなら苦労して白式を説得した甲斐があったな!」

 

一夏は空裂を器用に使い、雪兎の設置した機雷を破壊しながら徐々に距離を詰めてくる。そして・・・・

 

「雪兎!これが俺がこの一年で培ってきた全てだ!」

 

一夏は瞬時加速と零落白夜を発動し、ついに雪兎を捉えるが

 

「残念、それは残像だ」

 

一夏が切り裂いたのは雪兎の姿に似せた機雷の集まりだった。一方、本体の方は先程とは別のアドヴァンスドを追加装備して少し離れた場所にいた。

 

「えっ?」

 

「【AtI:憑神typeイニス】・・・・一夏、俺にこれだけの手をトーナメントで使わせたのはお前だけだ、誇っていいぜ」

 

イニスは幻覚を操るアドヴァンスドで、機雷のエネルギーを増殖で増大化し幻影を被せて自身に偽装、自身は不可視化して隠れていたのだ。

 

「悪いな、空裂は流石に予想外だったが、お前がそこまで辿り着くのは計算の内さ」

 

「畜生、まだ届かねぇのかよ」

 

「そんな簡単に追い付かれてたまるかよ・・・・でも、この試合は中々に楽しめたぜ、一夏」

 

雪兎がそう言い終えると、一夏が斬った機雷が爆破し一夏のシールドエネルギーを削り切り試合終了のブザーが鳴った。

 

『決着ぅ~!!激闘を制したのはやはりこの男!天野雪兎だぁああああ!!』

 

シールドエネルギーを失いボロボロの一夏の白式を雪兎の雪華が支えながらゆっくりアリーナの中央へと降り立つ。

 

「届いたと思ったんだがなぁ」

 

「憑神シリーズ2つも使わせといて贅沢な奴め」

 

「というか、その憑神シリーズってどんだけあるんだよ」

 

「ん?あと5つはあるぞ」

 

「まだそんなにあんのかよ!?」

 

「一夏ぁ~」

 

そんな雪兎の言葉にげんなりしているといつものメンバーが二人に駆け寄ってくる。

 

「ごめんな、箒。空裂まで借りたのに勝てなかったよ」

 

「いや、お前は頑張った!他の誰も認めてくれなくても私が認める!」

 

「そうよ。あの雪兎(バグキャラ)にあれだけやったんだから十分な成果よ」

 

「そうですわ!あの戦いを見て一夏さんを馬鹿にする方なんていませんわ!」

 

「確かに敗けはしたが、恥ずべき戦いでは無い。胸を張れ」

 

箒、鈴、セシリア、ラウラの四人がそれぞれ一夏に称賛の言葉を贈る。

 

「雪兎、結構手こずったみたいだね?」

 

「ああ、あの短い時間で俺の予想以上に成長してやがったわ。おかげで隠し札二枚も晒す羽目になったぜ」

 

「その割には随分嬉しそうだけど?」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

一方で雪兎もシャルロットと共に一夏の成長を喜んでいた。そこに楯無もいつものように「お疲れ様」と書かれた扇子を片手にやってきた。

 

「二人共、良い試合だったわ」

 

「ありがとうございます!」

 

楯無も二人の試合に称賛の声を贈ると、一夏はISを解除し楯無に頭を下げた。

 

「お勤めご苦労様、会長」

 

雪兎もISを解除し、裏方に回っていた楯無を労う。初日以降は雪兎が試合に出る回数が増える事から警備は楯無達更識が主導で行われていたのだ。まあ、初日に散々やっておいたので二日目以降は特に大きなトラブルは無かったようだが。

 

「一夏君、よく頑張ったわね。お姉さんは嬉しいわ」

 

しかし、ストレスは溜まっていたようで、楯無はその鬱憤を晴らすかの如く一夏を抱き締める・・・・一夏の頭を自身の胸に押し付けるように。

 

「た、たた楯無さん!?」

 

これに一夏は戸惑い、箒達は殺気立つものの一夏がいるのとまだ観客がいる事から流石に手出しは出来ない。楯無もそれがわかっていてやっているのだろう。やはりこの女は侮れない。だが、放ってはおけないので雪兎が一夏を楯無から引き離す。

 

「ぷはっ!」

 

「全く、わざわざこいつらに見せつけるようにやらんでくれ・・・・火消しが面倒だ」

 

「ごめんなさい」

 

「やりたきゃ二人きりの時にしろ」

 

「あら?やるな、とは言わないのね?」

 

「「「「うんうん」」」」

 

楯無の言葉に箒達は言ってやれ!と言わんばかりに頷くが・・・・

 

「純粋にこいつを好いての行動なら何も言わねぇよ。一夏が誰と付き合おうが俺には関係無いからな」

 

四人の期待とは裏腹に雪兎は楯無が一夏にアプローチするのは構わないと告げる。

 

「お、お前は誰の味方なのだ!」

 

「そうよ!この泥棒猫の肩持つ気!?」

 

「知らん。一夏争奪戦は俺の管轄外だ」

 

幼馴染二人の言葉をばっさり切り捨てる雪兎。そんないつもの光景に皆は誰となく笑い出す。

 

「さて、馬鹿騒ぎはこのくらいにしてそろそろ行くぞ・・・・あちらで我らが担任がお待ちのようだ」

 

雪兎がそう言って指差す方を見れば表彰式の準備を終えた千冬らが彼らを待っていた。それを見て皆は慌てて千冬の元へと駆け出す。そんな中、シャルロットが雪兎に訊ねる。

 

「雪兎、楽しかった?」

 

「ああ、とってもな」




これにて学年末トーナメント編は閉幕です。
次が一応第一部の最終シナリオ春休み編です。
春休み編が終了したら一先ず兎協奏曲はお休みして新作を書く予定です。そちらも良ければ応援よろしくお願いいたします。


次回予告

トーナメントも終わり春休みに入ったIS学園。そんな中、雪兎の元に例の研究所から救出された少年が目を覚ましたと連絡があり・・・・


次回

「春休みと新たな仲間 兎、名付ける」

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