原作ではこの二人のバトルって意外にもないんですね・・・・タッグはあるのに。
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二回戦第三試合
凰鈴音VS篠ノ之箒
ファイッ!
『さて、第三試合も興味深い組み合わせになりました!青コーナー、中国からやって来た男子コンビのセカンド幼馴染!凰鈴音!』
コールと共に入場する鈴の表情はいつにも増して真剣だ。無理も無い。何せ相手は・・・・
『赤コーナー、ぽっと出には負けられない!ファースト幼馴染!篠ノ之箒!』
対する箒もこの対決が決まった時から、いや、初めて会った時からいつか決着をと思っていた相手。お互いに今までも何度か特訓等で相手をする事はあったが、一対一での真剣勝負というのは意外にも無かった(雪兎が騒ぎを防ぐ為にそうならないよう誘導していたのもあるが)。
「「・・・・」」
そのせいか、二人とも入場してから一言も発していない。
『え~っと・・・・滅茶苦茶空気重いんですが』
『先程の君のアナウンス通り二人とも負けられない試合とあって気が張っているのだろう』
『こ、今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』
イヴァンの指摘が辛かったのか、それともこの重い空気を何とかしたかったのか、薫子はARプログラムを起動させる。今回生成されたステージは風が吹く山々に囲まれた高原だった。
『今回は割りと普通なステージですね?』
『・・・・ARプログラムも空気を読んだのだろう』
相変わらず鈴と箒は無言を貫いているが、確かに重い空気はなくなっている。
『それでは二回戦第三試合、試合開始!』
試合が開始すると、二人はお互いに両手に剣を握り真っ向から激突する。力では鈴の煌龍の方が上だが、箒はその力押しの剣術を舞のような受け流しで捌き、一瞬の隙を見ては雨月の突きを放つが、鈴も咄嗟に圧縮した空気の壁【嵐壁】を発動し突きを逸らす。そして、その嵐壁を破裂させ広がる風圧を利用して多少のダメージは気にせず鈴は一度箒から距離を取ると左右計八門の龍咆から圧縮空気弾を乱れ射つ。だが、箒も慌てず空裂を数回振るい直撃コースの空気弾だけを相殺する。
『何、これ・・・・』
『予定調和の演舞のような動きだな。お互いにこれくらい出来て当然と思っているのだろう』
『えっ?何その高度な読み合い・・・・』
「準備運動は終わったか?鈴」
「ええ、ここからが本番よ!」
そこでようやく言葉を交わしたかと思えば、今の攻防はただの準備運動だと口にする両者。
「いくわよ、炎龍!氷龍!」
その声と共に鈴は両手の双刀に炎と氷の龍を纏わせ箒に斬り掛かる。
「ならば!」
対する箒は雨月と空裂、更に足の展開装甲から光刃を出し変則的四刀流で応戦し、超高熱と超低温の連撃をまともには受けず、双龍が纏われていない腕や煌龍本体を狙う箒だが、鈴もそれを知ってわざと双刀を間に挟むように立ち回り直撃を避ける。
「くっ」
「この炎龍と氷龍を警戒するのは判るけど、そんな消極的な攻めじゃこの煌龍は破れないわよ!」
そう言うと、鈴は双刀の柄同士を繋げ双刃剣にし、それをバトンのようにクルクルと回転させる。すると、それに合わせて剣が纏っていた炎と氷の龍がその外側を回り始め熱気と冷気が渦巻き出す。
「食らいなさい!【双龍乱波】!」
「うわぁあああ!?」
熱気と冷気が高速で渦巻く事で生まれた乱気流の竜巻を発生させる鈴の大技に箒は避ける事は叶わず、そのまま山の一つに叩き付けられる。
『鈴音ちゃんの大技が炸裂!』
『私はもう天候操作が出来ると聞いても驚かん』
※別の平行世界には疑似的にではあるが、天候操作出来るISが存在する模様。
「・・・・くっ、やはりパワーは煌龍の方が上か」
ここで言うパワーとはただの腕力等の力ではなく、瞬間的に発揮出来る最大出力の事だ。紅椿は絢爛舞踏のおかげで長期戦には強いISではあるが、白式や煌龍のように一撃で勝負を決してしまうようなISとは相性が悪い。それに、シールドエネルギーは回復しても箒本人の疲労等は回復しないという欠点もある。
(やはり私がまだ紅椿を使いこなせていないという事か・・・・)
紅椿は無段階移行という一種のリミッターのようなもので能力を制限しており、箒の能力が一定を超えるとその制限が解かれ様々な装備や機能が使えるようになるIS。絢爛舞踏という単一仕様能力こそ得たものの、箒の紅椿の解放率は未だに40%程で、紅椿が真価を発揮しているとは言い難い状態だ。
(私がまだ未熟なのは認める・・・・だが!この試合は!鈴にだけは負ける訳にはいかんのだ!)
よろめきながらも雨月を杖に立ち上がる箒の眼がカロリナ戦の時のように真紅に染まると、紅椿から新たな装備が解放される。
「これは・・・・【
背面のユニットをビットとして浮遊状態にし、背面から鋭い刃のようなパーツで構成された羽衣のようなアーマーを纏った形態に変形した紅椿に困惑する箒。雨月と空裂もこの形態では使えないようだ。
「ええい!こうなったら、穿千!」
使えない双刀の代わりに両腕の穿千を展開しようとすると、左腕だけに普段より大型穿千が展開された。
「へぇ~、この煌龍と撃ち合おうっての?いいわ!乗ったげる!」
それを見た鈴は八基の龍咆を前面に揃え連動させ、肉眼でも見えるくらいに空気を圧縮し空間を歪ませる。
「大型化したということは威力も上がっているはず・・・・」
箒もそれに対抗して実態化エネルギーの弦を引くと、紅椿のシールドエネルギーが物凄い勢いで減っていく。
「何だこの大食らいは!?絢爛舞踏!」
慌てて絢爛舞踏を発動するが、シールドエネルギーは少しずつしか回復せず、そのほとんどを大型化した穿千に持っていかれる。そして、そのエネルギーと比例するように穿千の光の矢は槍と見間違う大きさになる。
「これで!決めたげる!覇龍咆哮!!」
「千矢を超える一矢となれ!穿千・極!」
両者フルチャージで放ったその一撃は双方共に凄まじい威力を誇っていたが、その勝敗はその性質の差で決まった。
「嘘っ!?」
勝ったのは穿千・極だった。覇龍咆哮も確かに強力ではあるが、要は圧縮した空気を方向性を持たせて解放する技。対して穿千・極は一点にエネルギーを集中させた高密度エネルギーであり、その一撃は覇龍咆哮を貫通して霧散させ、その射線上にいた煌龍に命中する。溜め込んだエネルギーを開放し煌龍の残っていたシールドエネルギーを全て奪い去った。
『し、試合終了!勝者、篠ノ之箒!』
「・・・・負けた?」
試合終了のブザーと共に箒の勝利が告げられ、まだ信じられない鈴は受けたダメージよりもその事実に唖然としていた。
「鈴・・・・」
「な、何て顔してんのよ!あんたが勝ったんでしょうが!」
そこに箒が近付いてくるが、鈴は顔を背けてそう告げる。
「・・・・私に勝ったんだから、簡単に負けるんじゃないわよ?」
「ああ、約束する」
箒にそう言うと鈴はピットに戻り煌龍を解除するとそのまま廊下に出てその場に座り込み涙を流す。
(負けちゃった・・・・全力で挑んだのに、負けちゃったよ)
勝ちたかった。だが、それよりも負けたくなかった。同じ幼馴染として、一夏を慕う同士として、鈴は箒にだけは負けたくなかった。それが悔しくて、鈴は一人泣いていた。だが・・・・
「鈴、大丈夫か?」
「一夏・・・・」
丁度そこへ次の試合の為にピットへ向かっていた一夏が通りかかった。鈴としては今は会いたくないけど会いたかった人。それが目の前にいる。気付けば鈴は一夏に抱きついていた。体格差の関係で一夏の胸の中にすっぽり収まってしまう鈴だが、今はそれが都合が良かった。
「鈴・・・・」
「ごめん・・・・ちょっとだけ、こうさせて」
いつも強気な鈴の弱々しいその言葉に一夏は黙って鈴を抱き締めてその胸を貸す。
「ああ、今だけは俺は何も聞かないし、聞こえないから」
「う、うわぁああああん!!」
一夏のその言葉で鈴の我慢は限界を迎え、恥も何もかも忘れて鈴は泣いた。おそらく、鈴がこれほどまでに泣いたのはIS学園に来て初めてだろう。一夏は鈴が泣き止むまでそっと鈴を抱き締め続けた。
(私は、何をしているのだろうな・・・・)
鈴の様子が気になり反対側のピットから駆けつけた箒が見たのは一夏に抱き締められながら泣く鈴の姿だった。それを見た箒は二人に気付かれないよう慌ててその場を離れたが、その胸は今まで感じた事が無い程に締めつけられる感じがした。
そして、観客席では・・・・
「雪兎・・・・さっきのあれって」
「箒の眼、
他の観客は箒の大逆転劇に気を取られて気付いてはいなかったが、雪兎とシャルロットはモニター越しではあったが確かに見ていた・・・・箒の瞳が真紅に染まっていたのを。
今回の勝者は箒でした。
そして、とうとう箒の眼の変化に雪兎達が気付きました。
この変化は一体何を意味するのか?
次回予告
二回戦最終試合はセシリアと一夏というクラス代表決定戦を思い起こさせる一戦。以前は雪兎の特訓で何とか勝利した一夏は進化したセシリアを下せるのか?
次回
「蒼と白の再戦! 兎、調べる」