IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回は雪兎VSシャルロットの恋人対決。これも文化祭以来のガチバトルです。

そして、束は解説中に何を語るのか?

二回戦第一試合

天野雪兎VSシャルロット=デュノア

ファイッ!

少し前話を編集しました。


132話 恋人対決!雪兎VSシャルロット! 兎、解説される

『一回戦の全試合が終了しました』

 

『二回戦は明日からだが、明日の試合の対戦表だ』

 

二回戦

第一試合 天野雪兎VSシャルロット=デュノア

第二試合 宮本聖VS神宮寺晶

第三試合 凰鈴音VS篠ノ之箒

第四試合 セシリア=オルコットVS織斑一夏

 

『第一試合から激戦の予感ね』

 

『あの二人の全力か・・・・いかん、背筋が』

 

一回戦が終了した段階でその日の日程も終わり、それぞれ傷付いた専用機は一度メンテナンスの為に学園が預かる事に。メンテナンスの担当は束なので翌日には元通りになっている事だろう。

 

「明日、だね」

 

共に寮へと帰る雪兎とシャルロット。そんな中、シャルロットは明日の試合の事を口にする。

 

「手を抜いたら僕、雪兎の事嫌いになるから」

 

「そんな事しなくても手は抜かねぇよ・・・・そもそも今のシャル相手に手抜くとか無理だ」

 

「そ、そっか」

 

「彼女だろうが、相手なら俺は容赦はしねぇ・・・・ついてこれるか?」

 

「絶対に食らいつくよ」

 

雪兎がシャルロットの意思を確認すると、シャルロットは改めて雪兎に宣言する。必ずそこに辿り着くと。

 

「楽しみにしてるぜ、シャル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

『本日もお集まりいただきありがとうございます!実況は本日も黛薫子がお送りします。そして、今回の解説者は・・・・』

 

『はろはろ~、天才の束さんだよ~』

 

実況は昨日と同じく薫子が担当する事になったが、解説席にはこのような場をあまり好まないはずの束の姿があった。

 

『束博士、本日はどうしても話しておきたい事があるとおっしゃってましたが・・・・』

 

『それは第一試合の途中に話すよ』

 

『それでは早速二回戦第一試合を始めます。青コーナー、優勝候補筆頭!誰が呼んだか兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)!天野、雪兎!』

 

薫子のコールで登場したのは最初からアドヴァンスドのコールド・フレイムを纏った雪兎。その姿に雪兎の本気具合が伝わる。

 

「やっと俺の試合だぜ・・・・ってか、昨日の準備運動無駄になったな」

 

他の試合が思いの外白熱した為、日程がズレたらしい。

 

『赤コーナー、兎あるとこ彼女在り!学園公認カップルの片割れ!シャルロット=デュノア!』

 

対するシャルロットも最初からライトニング・アサルトで登場。だが、若干顔が赤い。明らかに薫子の紹介のせいだ。

 

「が、学園公認って・・・・いつの間に」

 

これに関しては付き合い出した当初からだ。そして、文化祭やキャノンボールで全国レベルで知れ渡ったらしい。

 

『さあ、この二人のバトルフィールドは・・・・これだ!ポチっとな』

 

今日もARプログラムがバトルフィールドをランダムで決定する。そのバトルフィールドは・・・・

 

『な、なんじゃこりゃ!?』

 

それはステージ一面に巨大な水晶がいくつも生えた幻想的なステージだった。

 

『水晶ステージだね。あ、この水晶は光学兵器を乱反射させる性質があるから上手く活用してね』

 

つまり、下手に光学兵器を使うと、自分もダメージを負うリスクがあるステージらしい。セシリア辺りが一番困るステージだろう。

 

「水晶は破壊出来るからそれで反射パターンを変える事も出来るステージだったな・・・・自分で作っておいてなんだが面倒なステージに当たったもんだ」

 

「でも、雪兎は光学兵器メインのパックそんなに使わないよね?」

 

「光学兵器っていうとこのビームガンにこいつ(ソードライフル)とイェーガーのバスターライフル、ガンナーのビームガトリングにフォートレスのハルバートカノン、それからそのライトニング・アサルトのガングニールくらいか?そういや」

 

「クロスキャリバーにもあるね」

 

ルシュフェリオンは熱エネルギーだし、アンジュルグのイリュージョンアローは物質化しているので反射しないそうだ。

 

『それでは二回戦第一試合、試合開始!』

 

試合開始直後、雪兎とシャルロットはいきなり装甲切換を使い、それぞれ白月とコスモスにパックを展開。雪兎はネオウィザード、シャルロットはネオガンナーだ。

 

「いくよ、雪兎!フルブラスト!」

 

シャルロットはいきなり全武装を起動させビームと実弾、ミサイルを乱れ射つ。

 

『ええ~!?説明聞いてましたよね!?確認してましたよね!?』

 

『にゃははは!流石はゆーくんが見初めた娘だねぇ~』

 

水晶の説明をしたばかりだというのに行われたシャルロットの行動に薫子は驚愕、一方の束はその真意を知ってか笑っている。ステージは実弾とミサイルで砕かれ飛び散った水晶にビームが反射し、その閃光と硝煙で何も視えなくなってしまう。しかし、閃光と硝煙が晴れ現れたのは自身を氷の球体で覆いグラスパーでビームを凌ぎ切った雪兎と、全弾発射後にパックをネオフォートレスの重複展開に切り換え防ぎ切ったシャルロットの姿だった。

 

「初っぱなから飛ばすなぁ、シャル」

 

「これくらいしないと雪兎の意表は突けないからね」

 

『あれで無傷とか・・・・もう、このカップル何でも有りね』

 

その二人に戦慄する薫子。会場にいる観客達も同じ気持ちだろう。一夏達からしてみれば「やっぱりな」と呆れるだけだが。

 

「だったらこっちはこれでいくか」

 

すると、雪兎はステージの上に移動し、コールド・フレイムからルシュフェリオンに切り換え、熱エネルギーの誘導弾・パイロシューターを無数に展開する。

 

「パイロシューター・ジェノサイドシフト」

 

『出た、殺意高いやつ』

 

『相手彼女ですよね!?』

 

「fire」

 

その瞬間、絨毯爆撃も比にならない飽和攻撃がシャルロットを襲う。しかも、パイロシューターが一つ放たれる毎にすぐ新しい弾が展開する為、ほぼ隙の無い爆撃が可能。だが、雪兎がこれで終わる訳が無い。

 

「ディザスタァアアアア、ヒィイイイトッ!!」

 

そこにドライバーで極太のディザスターヒートをぶっぱなす。手加減はするな、とは言われたがやり過ぎな気がする。

 

『アリーナが普段のより頑丈だからってやり過ぎだろ!』

 

※普通のアリーナだったら観客席のシールドぶっ壊れて吹き飛んでます。

 

『でも、試合は終わってないよ?』

 

『えっ?あっ、本当だ』

 

いくらシャルロットととはいえあれでは無事では済まないと思われていたが、試合終了のコールが鳴らないのでシャルロットは無事らしい。しかし、下にはシャルロットの姿は視えず、地面があまりの高温で結晶化しているのが見えるだけだ。

 

『シャルロットちゃんはどこに?』

 

雪兎は何かに気付いたらしく、咄嗟にドライバーを盾にして上から(・・・)奇襲してきたシャルロットの攻撃を防いだ。

 

「惜しい!いけると思ったんだけどなぁ」

 

「そういう事か・・・・まさか、それ(バルニフィカス)までものにしてたとはな」

 

「レヴィに特訓付き合ってもらったんだ」

 

てっきり下にいるものだと思われたシャルロットは何とバルニフィカスを纏いいつの間にやら雪兎の上に移動していた。どうやらバルニフィカスのスピードであの弾幕を掻い潜り、いつの間にか上に移動していたらしい。

 

「レヴィのやつ、いつの間に・・・・」

 

「雪兎があの龍我って男子と一緒だった時だよ」

 

「シャル、地味に根に持ってたのな、それ・・・・」

 

そんな会話をしつつもスラッシャーとドライバーをぶつけ合う。

 

『まさか!シャルロットちゃん、あの鬼のような弾幕を回避していたぁ!』

 

『バルニフィカスは瞬間速度ならアドヴァンスド最速だからね、ネオイェーガーも併用してるみたいだし、アレくらいは当然かな』

 

「当たったら一発で終わったかもしれないってのによくやる」

 

「レヴィ曰く、当たらなければどうってことない、だよ」

 

「だったらこいつはどうだ?【SK:ストームカイザー】」

 

超高速で動き回るシャルロットに対し、雪兎も隠し玉であった新型アドヴァンスド・ストームカイザーで対抗する。

 

「そ、そのアドヴァンスドは・・・・聖のウェーブ・ライダーの」

 

「ああ、それにあっち(アムドライバーの世界)の蓄積データもな!」

 

ストームカイザーは聖のウェーブ・ライダーのバイザーボードと同じくボードと簡易アーマーで構成されたアドヴァンスドで、ベースになっているのはジェナスが最初に使ったバイザーのボードバイザー【ワイバーン】だ。そして、当然ボードモードとブリガンディモードに切り換えが可能だ。性能はスピード重視でライトニング・アサルトと被るが、ライトニングは射撃、ストームカイザーは近接寄りに調整されている。またネオシリーズからチューブチャージシステムを採用している。また、ボードモードでは他のアドヴァンスドとの複数装備でも負担が少なくなるようになっている

 

「くっ、本当に雪兎は敵に回すと厄介だね」

 

「それは褒め言葉として受け取っておくさ」

 

そんな激しい空中戦を見て、観客の一人が「チートだ」と呟いた。

 

『ん?今、聞き捨てならない言葉を耳にしたね?ゆーくんがチート?』

 

それを束は聞き逃しはしなかった。

 

『これは私が話したかった事とも関係あるし、ここで話しちゃおっか』

 

そして、威圧感のある笑みを浮かべながら束は話し始めた。

 

『ゆーくんは確かに私の弟子だし、ちーちゃんの教えも受けてるから強いよ?でもね、決してチートなんて呼ばれる存在じゃないよ』

 

その束の言葉に観客達は疑問を抱く。無理も無い。雪兎は普段から色々な事をやっており、その存在が皆からすればチートみたいなものだったからだ。

 

『チートってのはね、大した苦労もせずに力を得た奴らの事だよ。ゆーくんはね、元々頭こそ良かったけど、強くなんて全くなかったんだから』

 

そう、雪兎は束の言う通り篠ノ之神社にある道場に通うまではただの前世持ちというだけでしかなかった。

 

『白鳥って知ってる?あれ、優雅に泳いでるように見えて水面下では必死にばた足してるんだよ?』

 

『つまり、雪兎君はあの力を人知れない努力で得たと?』

 

『そうだよ。ゆーくんの元々の才能はあの鋭い観察眼とそれに対する対応を瞬時に導く判断力、それとそれを上手く活用する高速切替だけ。後は全部ゆーくんが自分で文字通り血反吐を吐いてまで習得したものだよ』

 

『な、なるほど・・・・』

 

『あと、ゆーくんは確かに強いけど、それは一流として・・・・同じ分野では束さんやちーちゃんみたいな超一流には絶対届かない。あっ、剣術だけは別だよ?ちーちゃんが直々に仕込んだんだから』

 

『超一流には届かない?』

 

『そっ、人間には許容量ってのがある。束さんやちーちゃんみたいな例外を除けば人間の許容量なんてたかが知れてる。ゆーくんはね、その限界ギリギリのところにいるのさ』

 

束が雪兎を評価するのは前世知識からくる発想力もだが、この限界ギリギリまで自身を磨き続けた事だった。自分()には届かないけれども決して諦めななかったその点において束は雪兎を他の凡人とは違う括りにカテゴリーしている。

 

『そして、超一流に同じ分野で届かないとしたらどうすればいいと思う?』

 

『それは別の分野で勝るしか・・・・あっ!?雪兎が相手のメタを張るのは!』

 

『おっ、凡人にしては察しがいいね。その通り。ゆーくんは超一流に勝つ為の手段として相手の弱い部分で勝つ。そのために剣術以外の他の戦い方も多く習得したんだよ』

 

超一流になれないなら、その超一流が一流以下の分野で勝てばいい。雪兎の基本戦術はここから生まれたのだ。

 

『まだわかってない凡人どもにと・く・べ・つに分かりやすく説明するよ?とりあえず苺に例えようか、束さんは天然物の生でも美味しい苺、ちーちゃんは遺伝子組み換えとかで出来た束さんと同じくらい美味しい苺。そして、ゆーくんはね・・・・生では勝てないから色々と調味料とか使ってジャムにしてやっと束さん達の足元くらいの苺ってこと』

 

その例えで多くの観客はようやく納得した。雪兎も好き好んでメタ戦法を使っているのではなく、超一流と呼ばれる者達に並ぶべくそれを使っていたのだと。

 

『あと、本当のチート・・・・よく二次小説とかである神様転生ってやつ。神様に力貰って俺TUEEEEしてるアレ。アレをさっきの例えに当てはめるなら苺の味比べしてるとこに最高級ステーキ持ってくる感じ。判る?完全に別物なの。貰い物の力でそんなのしてて恥ずかしく無いのかな?あのカスどもは』

 

全てを自分の手で得てきた束からすれば特典持ち転生者は非常に不愉快な連中らしい。

 

『さてと、長々と話してる間にゆーくん達は決着がつきそうだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎とシャルロットの戦いは機動力戦からパックを目まぐるしく換える読み合いに変わっていた。

 

「イリュージョンアロー!」

 

「風刃閃!」

 

シャルロットがアンジュルグで矢を放てば、雪兎はヴァイサーガの風刃閃でそれを切り払いつつカウンター。

 

「まだだよ!」

 

それを読んでいたネオフォートレスのアイギスを身代わりにし、クロスキャリバーの砲戦モードで砲撃。

 

「甘い!」

 

それすら読んでいた雪兎はネオウィザードのグラスパーでそれを反射し、ソウルゲインに切り換えて瞬時に距離を詰める。

 

「触れれば切り裂く!」

 

放つのは肘のブレードを伸ばし切り裂く技・舞朱雀。

 

「くっ!」

 

そのブレードにクロスキャリバーのサブアームと腕の武器を切られ、シャルロットはすぐにバルニフィカスに切り換え距離を取るも玄武剛弾でフォートレスのパーツを砕かれてしまう。

 

「やっぱり雪兎は強いや」

 

「これだけ善戦しといてよく言うよ・・・・本当に強くなったな、シャル」

 

雪兎と違いまだ使えるアドヴァンスドに限りがあるとはいえ、ここまで善戦された事に雪兎は笑みを浮かべる。

 

「だから、こいつ(・・・)を使うよ・・・・来い、俺はここにいる!」

 

そして、雪兎はそんなシャルロットに敬意を評しとあるアドヴァンスドを展開する。

 

「【AtS:憑神(アバター)typeスケィス】」

 

それこそ、シャドウズの一部隊を壊滅に追いやったあの禍々しい大鎌を持つアドヴァンスドだった。

 

「ア、バター?」

 

「呆けてる暇はねぇぞ?」

 

そのアドヴァンスドに驚くシャルロットだったが、背後(・・)から聞こえた雪兎の声に慌ててスラッシャーで防御するも、あっさりと雪兎の大鎌に吹き飛ばされる。

 

「つ、強い・・・・」

 

「スピードはバルニフィカスに劣るが攻撃力はこっちの方が上だから、なっ!」

 

距離を置くと左手から球状の雷撃弾を放ち、距離を詰めれば大鎌による攻撃。しかも、慣れないバルニフィカスで戦うシャルロットに雪兎はスケィスを完全に操り追従してくる。

 

『シャルロットちゃん、いくつかのパックを破壊され一気に不利な状況に!』

 

「まだ、まだ僕は負けてない!」

 

それでもシャルロットは諦めずスラッシャーで反撃するが、雪兎はスラッシャーよりも巨大な大鎌を難なく操りそれを受け流す。

 

「悪いが今回は俺が勝つ」

 

必死に食らいつくシャルロットを雪兎どんどん追い詰めていき、とうとうスラッシャーも耐えきれず砕け、大鎌の一撃がシャルロットのシールドエネルギーを削り切った。

 

『し、試合終了~!勝者、天野雪兎!激闘を制したのはやはりこの男だった!』

 

ダメージレベルが大きかったのか、試合が終わるとリヴァイヴⅡは解除され、シャルロットは空中に放り出されるが、雪兎がちゃんとキャッチする。お姫様抱っこで。

 

「よっと」

 

「あ、ありがと、雪兎・・・・」

 

最初はお姫様抱っこに顔を赤くするシャルロットだったが、次第に試合に負けた悔しさが滲み出してくる。

 

「負けちゃったね・・・・」

 

「そんな顔するなよ、シャル」

 

「でも・・・・」

 

「シャルは十分強かったさ・・・・俺が安心して背中を任せられるくらいには」

 

「雪兎・・・・」

 

聞きたかった言葉を雪兎に言われ、シャルロットの目に涙が滲む。

 

「でも、もっと強くなれ、シャル・・・・何時か俺を倒せるほどに、な」

 

「うん!」

 

シャルロットは雪兎に更なる成長を約束し、二人はピットへと戻っていった。お姫様抱っこのまんまで。そのせいでしばらくの間はシャルロットがそれをネタに弄られる事になるのであった。




という訳で恋人対決は雪兎が制しました。
パックの切り換え多くて死ぬかと思った・・・・描写考えるので。

なお、束が色々言っていますが、別に神様転生のアンチでは無いのでご了承下さい。


次回予告

雪兎とシャルロットの激戦に触発され気合いが入る晶と聖。そんな二人はどんな戦いを見せるのか?


次回

「晶VS聖、流星煌めく 兎、彼女と観戦」

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