IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回もおまけな話がつくよ。

一回戦もあと二試合。

一回戦第六試合

セシリア=オルコットVSアレシア=ロッタ

ファイッ!


130話 蒼穹の支配者と紅き荒鷲 兎、準備運動開始

『一回戦も残すところあと二試合!』

 

『今回のカードはこちら』

 

『一回戦第六試合!青コーナー、英国貴族の誇りをここに!セシリア=オルコット!』

 

その紹介と共に優雅に現れたのはブルー・ティアーズ・ガブリエルを纏うセシリア。その姿はガブリエルの名に恥じぬ蒼き天使。

 

「まだ、まともな紹介で良かったですわ」

 

今までと違い変な紹介で無い事に安堵するセシリア。

 

『赤コーナー、イタリアの紅き荒鷲!アレシア=ロッタ!』

 

セシリアと違い、雄々しく飛び登場するアレシアの姿は確かに荒鷲だ。

 

「この子の名前もロッソ・アクイラだし、間違ってはいないわね」

 

アレシアも、専用機の和名呼びなのでそこまで拒否感は無いようだ。

 

『さあ、この二人が対戦するステージは・・・・これだ!』

 

『ポチッとな』

 

ARプログラムが二人の対戦の舞台に選んだステージは・・・・少し緑色の入った空に大小様々な島々が浮かぶ幻想的な浮島ステージだった。空賊や武器に変身する女の子が出てきそうな気がする。

 

『これはまたファンタジーなステージが・・・・』

 

『何でも兄さんが好きだった漫画の世界観を投影したステージなんだとか』

 

『よくよく思えば今までのステージも雪兎君が手掛けてるのよね?』

 

『システム的な方面は束さんが、ステージ設定は兄さんがやっていたそうです』

 

そんなステージではあるが、空戦をメインとするこの二人にはピッタリなステージである。

 

「このステージでしたらお互いに持ち味が活かせますわね」

 

「確かに」

 

『それでは一回戦第六試合、試合開始!』

 

試合開始と共にセシリア、アレシアの双方は槍と剣を構え一気に距離を詰める。すれ違い様に互いに一撃を受けたが、アレシアはセシリアの行動に驚きはしたが、すぐにその場を離れた。何故ならセシリアがいつの間にか展開していたビットがアレシアを狙っていたからだ。

 

「突撃しながらビットを展開するとか随分と器用な事を」

 

「私だって昔のままではありませんわ」

 

入学当初はビットを飛ばしている間はビットの制御に集中せざる得ず、本体が無防備になってしまいがちという欠点を抱えていたセシリアだが、この一年で雪兎の改修によるハイパーセンサーの強化という補助がありながらもビットの制御と他の行動を同時にこなす並列思考(マルチタスク)を習得したセシリアは本当に厄介な射撃手へと変貌した。

 

「あ~もう!本当にやり難いんだから!」

 

ビットとライフルからの同時攻撃を紙一重で回避しつつ、アレシアは蛇腹剣【ヒートウィップ】を自在に振るいビットを牽制する。

 

「それは私への称賛と受け取らせていただきますわ」

 

だが、セシリアのビットは止まらない。むしろ逆にビットはビームの刃を展開してヒートウィップに向かってきたのだ。

 

「げっ」

 

ビットにヒートウィップの軌道を逆に制限され出来た安全圏から残りのビットが狙い射ってくる。しかも、その射撃は偏向射撃。これにはアレシアも堪らずその場を離脱する。

 

『うわぁ・・・・偏向射撃については聞いてたけど、セシリアちゃんのガブリエルだっけ?あれ、えげつないわね』

 

『まだあんなものではない。あのISの本気は』

 

『えっ?そうなの?』

 

『私も以前似たようなISを使った経験があるから言わせてもらうが、今のセシリア=オルコットは蒼穹の支配者という名が相応しいだろう』

 

すると、セシリアはランパードランチャーの穂先を開きボウガンのような形に変形させる。その穂先の内側にはライトニングアサルトのガングニール同様無数の砲口が存在した。

 

『えっ?まさか・・・・』

 

『そのまさかだ』

 

「スプレッドイレイザー、いきますわよ!」

 

ビットを含む全砲門から放たれたビームが四方八方からアレシアのアクイラを追う。そう、今のセシリアは動きを止めればこの拡散ビームの全てを偏向射撃で操る事が出来るのだ。

 

「こんなのカロリナのリリくらいの防御性能無いと凌げないってぇ~!」

 

そんな泣き言を言うアレシアだが、今のところはそのビームを回避し続けている。それが可能な時点でアレシアも立派に兎一味の仲間と言える。

 

「流石はアレシアさんですわ。でも、これで終わらせますわ・・・・私とこのブルー・ティアーズ・ガブリエルの葬送曲(レクイエム)で!」

 

セシリアはそんなアレシアに追い討ちとしてビームブレードを展開したビットを偏向射撃の合間を縫うように飛ばす。

 

「ちょっ!?それは流石に無理だって!?A・(アレシア・)S・(スーパー・)P(ピンチ)!A・S・P!!きゃああああ!?」

 

『・・・・まるで鳥籠(バードケージ)ね』

 

『勝者、セシリア=オルコット』

 

「優雅に華麗に大胆に、ですわ」

 

成長したセシリアは思った以上にとんでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎は自分の(・・・)担当区画に侵入した所属不明機の軍勢をほとんど行動不能にしてしまっていた。無人機だったEOS等は原型を留めていないレベルで斬り刻まれスクラップと化している始末だ。

 

「なんだ、準備運動にもなりゃしねぇな」

 

そう言って雪兎は手に持つウィザードのハルパーでもバルニフィカスのスラッシャーでもない禍々しいデザインの大鎌を肩にのせ、所属不明機達を見下ろす。

 

「ば、化け物め・・・・」

 

「その化け物の根城に手出したんだ・・・・当然覚悟は出来てんだろうな?」

 

いつになく冷たい表情を見せる雪兎に所属不明機の搭乗者達は冷や汗が止まらない。

 

「さてと、次は簪と一夏の試合だし、さっさと片付けるか」

 

すると、雪兎の左腕にオレンジ色の光のパーツが出現し、砲身を生成する。

 

「お前達のISコア、いただくぞ」

 

「「「「うわぁあああああ!!」」」」

 

そして、その砲身から放たれた光が所属不明機を貫き、外傷を与える事なく(・・・・・・・・・)そのコアを奪い雪兎の手へと回収されていく。

 

「ひ~、ふ~、み~、よ、っと大量大量」

 

「あ、悪魔だ・・・・」

 

その雪兎を見てEOSを纏っていた一人がそう呟くと、雪兎はチッチッチッと指を振り訂正する。

 

「悪魔じゃねぇ、こいつは・・・・憑神(アバター)だ」




はい、雪兎君、蹂躙してました。
彼らの正体については次回。

セシリアもガブリエルのスペックならあれくらい余裕です。アレシアはちょっと相性が悪かった。
ちなみに、雪兎やカロリナならあの弾幕も強引に突破してきます。


次回予告

一回戦最終試合は簪と一夏の対戦。共に同じ場所で開発が始められ、兎の手で完成したという経緯を持つ二機がここに激突する。


次回

「ヒーローの条件 兎、観戦する」

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