IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回は試合だけじゃないよ。

一回戦第五試合

篠ノ之箒VSカロリナ=ゼンナーシュタット

ファイッ!


129話 兎妹VS小兎、武士道とビックリ箱 兎、解説を譲る

『え~、雪兎君は何やら二回戦の準備との事で、解説は引き続きマドカちゃんにお願いする事になりました』

 

『兄さんの代役のマドカだ。引き続きよろしく頼む』

 

『今回はちょっと意外な組み合わせ。青コーナー、元祖天災の妹!篠ノ之箒!』

 

「うん、もう慣れたな、その呼ばれ方」

 

もう呼ばれ方の訂正を止めた箒は紅椿で入場。明らかに疲れている感が出ている。

 

『続いて赤コーナー、三人目の天災候補!カロリナ=ゼンナーシュタット!』

 

「頑張ります」

 

こちらはむしろそう呼ばれた事を誇っているようにも見える。そんなカロリナはリリコンバージュで入場。

 

「そう言えばカロリナと一対一というのは初めてだな」

 

「師匠の師匠の妹が相手・・・・でも、負けない」

 

「・・・・何だろう、雪兎を相手にしているようなこの感覚は」

 

アムドライバーの世界にて既に変態的メカニックの片鱗を見せつつあるカロリナに、箒は雪兎が重なって見えた。

 

『さてさて、今回のバトルフィールドは・・・・これだ!』

 

『ポチッとな』

 

毎度の如くARプログラムがバトルフィールドを生成するのだが、今回は一風変わったステージだった。

 

『おっと、これは谷かな?』

 

『兄さんの資料によれば、グランドキャニオンを模したキャニオンステージとの事。このステージにはちょっとしたギミックがあるそうだ』

 

『ふーん、それは試合が始まってからのお楽しみで・・・・それでは一回戦第五試合、試合開始!』

 

「はぁ!」

 

試合開始直後、瞬時加速並みの速度で一気に距離を詰めた箒が雨月・空裂で斬りかかるが、カロリナはそれは読めていたとばかりに背面のブラート・ストールと左腕のグスタフのシールドで両方を受け止める。

 

「くっ、やはり堅いな、そのISは」

 

「箒こそ・・・・流石は紅椿の加速力。流石は師匠と大師匠」

 

カロリナもリリコンバージュでなければ間に合わなかったと自覚しており、改めてそのリリコンバージュを開発した雪兎と、紅椿を開発した束を称賛する。だが、カロリナも受けるだけでは無い。

 

「バリアバースト」

 

カロリナはバリアフィールドを形成すると同時にバリアを弾けさせ紅椿を弾き飛ばす。

 

『今のは?』

 

『リリコンバージュのバリアバーストだ。近接戦闘で密着してきた相手をバリアを一瞬だけ広範囲拡げさせて弾き飛ばす技。格闘ゲームなどで使われるバリアバーストまんまな技だ』

 

『仕切り直しとかには便利な技ね』

 

『リリコンバージュは防御を主において開発されたISで、シールドやバリアを利用した攻撃も行える攻勢防御型とでもいうタイプだ。防御性能だけなら兄さんの開発したISでもトップクラスの堅さを持っている。あれの攻略は中々面倒でな』

 

『・・・・ほんとに雪兎君の作るISって既存の概念を覆すISばっかね』

 

実況と解説がそんな話をしている間も箒は遠近問わず攻めるものの、リリコンバージュの防御を破れずにいた。

 

「堅い・・・・ここまで攻めきれないとは」

 

「箒こそ、その剣術は流石」

 

一方のカロリナは右手のショットランスやグスタフ等も使いしっかり箒に食らいついてくる。近接で攻められそうになればバリアバーストやブラート・ストールのブースターで緊急離脱をしたり、逆に遠距離で攻めようとすればバリアを展開したままのブーストタックル等、多彩な攻撃で箒を翻弄してくる。そんな時、突然バトルフィールドに警告音が鳴り響く。

 

「何だ!?」

 

「・・・・箒、あれ」

 

一度戦闘を中断した二人が見たものは崩れて塞がっていく谷だった。

 

『始まったようだな。このキャニオンステージは時間が経つと崖が崩れていくギミックが仕掛けられている』

 

『ちなみに、崩落に巻き込まれたら?』

 

『即失格だそうだ。よくスクロールアクションゲームにある迫ってくる壁や崩落していくステージを意識したらしい』

 

「・・・・崩落から逃げつつ戦闘をするって事?」

 

「そうらしいな」

 

迫り来る崩落から逃げながら箒とカロリナはお互いを見て一度距離を取って仕切り直す。

 

『相手を攻撃して崩落に巻き込むもよし、二人で逃げ切ってから仕切り直すもよし、だそうだ』

 

だが、二人の答えは最初から決まっていたようで、崩落から逃げながら互いへの攻撃を再開する。

 

『あっ、一応アリーナ内部を一周する感じで崩れるんだ』

 

『ああ、崩れた場所は後でちゃんと再構成されるらしい』

 

そこからはキャノンボールファストさながらのレースバトルが展開された。時には相手の進路上の崖を崩して妨害したり、または直接相手を崩落している方へ弾き飛ばそうとしたり、白熱した試合が繰り広げられている。

 

「穿千!」

 

「バンカー!」

 

「これはどうだ!」

 

「シールドアクセラレーター!」

 

箒は絢爛舞踏がある為出し惜しみなく、カロリナは防御と回避を上手く使い分ける。

 

『意外に接戦!これは熱い試合になってきました!』

 

『普通ならば紅椿が絢爛舞踏を持つせいでリリコンバージュは不利だが、このステージならば崩落に巻き込まれた段階で失格。十二分に勝ち目はある』

 

そんな中、箒の瞳が一瞬だけ真紅に染まったのに気付いたの者は誰もいなかった。

 

「私は勝つ!」

 

「私だって負けない!」

 

「「はぁあああ!!」」

 

何度目かも分からない激突の末にとうとうリリコンバージュのエネルギーが尽きた。

 

『試合終了!勝者、篠ノ之箒!』

 

その白熱した試合に観客席の生徒達の歓声がフィールドを包む。

 

「・・・・負けた」

 

「良い試合だった、カロリナ。また手合わせしたいものだ」

 

「・・・・次は私が勝つ」

 

箒が再戦を願うと、カロリナは悔しそうにそう告げる。そんなカロリナに箒は少しだけ驚いた。

 

「どうかした?」

 

「意外と負けず嫌いなのだな、カロリナは」

 

「向上心を失った技術者はただの生産者」

 

「なるほど・・・・確かにカロリナは雪兎の弟子だな」

 

カロリナの言葉を聞き、箒は微笑みながら彼女が本当に雪兎の弟子なのだなと再認識する。

 

「次の相手は鈴か・・・・」

 

そして、箒も負けられない次の対戦相手を思い浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雪兎は・・・・

 

「全く、今日はお呼びでないお客様が大勢だな」

 

アリーナの外・・・・いや、正確にはIS学園近海で雪華を纏い、学園に迫る所属不明のISやEOSを見下ろしていた。

 

「さてさて、準備運動くらいにはなってくれよ?」

 

そう言うと、雪兎は不敵な笑みを浮かべてその軍勢へと突撃した。




第五試合の勝者は箒でした。

そして、最後に雪兎が対峙した所属不明機は一体何処の軍勢なのか?


次回予告

第六試合はセシリアとアレシアの対戦。二次移行によってパワーアップしたブルー・ティアーズ・ガブリエルの力とは?その頃、雪兎はIS学園に迫る所属不明機達と交戦を開始し・・・・


次回

「蒼穹の支配者と紅き荒鷲 兎、準備運動開始」

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