IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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トーナメントスタート!

一回戦第一試合
シャルロット=デュノアVSラウラ=ボーデヴィッヒ

ファイッ!


125話 金と黒、譲れない想い 兎、解説する

そして、トーナメント当日。

 

「何、あれ・・・・」

 

一同は新設された特殊アリーナを見て言葉を失っていた。

 

「はっはっはっ!これぞ大天才・束さんの叡智を結集し、ゆーくんに手伝わせて完成したAR(現実拡張)バトルフィールドが展開可能なスペシャルアリーナさ!」

 

「ARとはいえ、投影されたものは全部実体があるのと変わらないよう調整してあるから限りなく実戦に近い訓練が可能だ」

 

束と雪兎は自信満々に特殊アリーナの説明をする。

 

「これがトーナメントの舞台だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『始まりました~、専用機持ちの学年末スペシャルトーナメント!実況は私、黛薫子と』

 

『一回戦はシードで暇な解説の天野雪兎でお送りします』

 

アリーナの観客席には既に全校生徒や教員、各企業や各国の重鎮も集まっており、このトーナメントの注目っぷりが判る。

 

『それでは一回戦第一試合のカードを紹介しましょう!青コーナー、シャルロット=デュノア!専用機はラファール・リヴァイヴⅡRC!』

 

薫子の紹介で、まずはシャルロットがリヴァイヴⅡRCで登場する。

 

『続きまして赤コーナー、ラウラ=ボーデヴィッヒ!専用機はシュヴァルツェア・レーゲン・インレ!』

 

続けてラウラもインレを展開して登場する

 

「ラウラ、悪いけど、僕は最初から本気でいくよ!」

 

すると、シャルロットはいきなりアンジュルグとネオイェーガーに換装する。

 

「それは・・・・あの時のアドヴァンスドか」

 

「そうだよ」

 

「ならば私も本気でいこう」

 

そう言うと、ラウラも大型化したシールドブースターキャノンに搭載されたヒートブレードを交差して構える。

 

『バトルフィールドは・・・・市街地か』

 

ARプログラムが作動し、バトルフィールドが生成される。それは本物と見間違うレベルの再現度で生成された市街地だ。

 

『それでは第一試合、試合開始!』

 

「市街地か・・・・だが、このビグウィグには関係は無い!」

 

試合開始直後、ラウラはインレに搭載された超大型ビームキャノン【ビグウィグ】を展開し、建物ごとシャルロットがいた地点目掛けて砲撃を開始する。

 

『いきなりビグウィグかよ・・・・』

 

『解説の雪兎君、あれは?』

 

『超大型ビームキャノン【ビグウィグ】と言って、インレに搭載された最大級の砲撃装備です。火力はネオバスターライフルの数倍を誇り、通常のアリーナのシールドなら一発で貫通するヤバいやつですね。あっ、このアリーナのシールドなら最大出力でも耐えられますからご安心を』

 

『・・・・本当にヤバいわね、それ』

 

そんなヤバいものをラウラはただ撃つのではなく撃ちながら旋回し、凪ぎ払うように市街地を破壊していく。

 

『市街地の意味ねぇ・・・・ラウラのやつ、遮蔽物全部凪ぎ払う気だな』

 

ラウラのインレはその装備の関係でかなり大型で、市街地のようなフィールドではその真価を発揮し辛い。そこでARなのをいいことにまずは障害物の除去から手をつけたのだ。ついでにシャルロットにダメージを与えられれば儲けものくらいの感覚だろう。

 

「さあ、出てこい、シャルロット!」

 

「じゃあ、遠慮なく!」

 

それに対しシャルロットはまだ残っているビルや破壊された瓦礫の影から一斉に(・・・)姿を現す。

 

『シャルロットちゃんが分身した!?』

 

『アンジュルグの【ミラージュ】ですね。多分、最初の砲撃に合わせて使ったな』

 

『ミラージュ?ってことは・・・・』

 

『簡単に言うと質量を持った残像ですかね?それを操作出来る機能です。レーダーにも全部本物と同じ反応がしますから見分けるのは至難の技ですよ』

 

「面倒な機能を!」

 

「「「「いくよ、ラウラ!」」」」

 

ラウラはヒートブレードとワイヤーブレードで迎撃するが、ミラージュを幾つか潰しはしたが、何度かミラージュソードの斬撃を食らってしまう。

 

「くっ、残像の方にも攻撃判定があるとは」

 

「「「「攻撃可能な残像、それがミラージュなのさ!」」」」

 

『え、えぇえええ!?な、何で残像が攻撃出来るの!?』

 

『ミラージュはアンジュルグのウイングに搭載された特殊な粒子を利用して作られていて、その粒子はミラージュソードと同じもの。つまり、残像に触れる事自体がダメージになるんです』

 

『・・・・アドヴァンスドって、本当に常識外れね』

 

『まあ、インレも十分常識外れなんですがね』

 

『えっ?』

 

雪兎のその言葉を証明するようにラウラはインレの機能を解き放つ。

 

「ゆけ、キハール!」

 

ラウラの命令で背面に装着されていた六つの黒い円盤のようなものがインレから分離し、変形して小型のロボットへと姿を変えた。

 

『えっ?』

 

『二次移行した時に俺のデータベースからデータ引っこ抜いていったみたいで、レヴィとかのプロトタイプのビットロボット生成してんですわ』

 

その姿はまるで黒い兎のようで、ラウラを象徴するような装備だ。そのキハール達がシャルロットのミラージュを次々と撃ち落としていく。

 

『しかも、あれは有線制御だからウィザードのジャックとかジャマーが効かないんですよね』

 

『あれだけ大型なのにはそれ相応の機能があったんですね・・・・』

 

しかし、ミラージュを全て撃破したのにも関わらずシャルロットの姿は無い。

 

「シャルロットはどこに・・・・上か!」

 

慌ててラウラが頭上を見上げると、再度ミラージュを展開し、全員でイリュージョンアローを構えるシャルロットの姿があった。

 

「イリュージョンレイン!」

 

「うぐっ」

 

実体エネルギー矢の雨が降り注ぎ、インレのシールドエネルギーを削っていく。キハール達のエネルギーシールドとシールドブースターキャノンでガードはしているが、着弾と同時に爆発するイリュージョンアローが相手ではあまり意味がなかった。

 

「まだいくよ!コード・ファントムフェニックス!」

 

それでもシャルロットは決して攻めを緩めることはなく、身動きがとれないラウラに必殺の幻影の不死鳥を放つ。

 

「キャストオフ!」

 

だが、ラウラはシールドブースターキャノンの外装と追加装甲をパージし、それを囮にしてファントムフェニックスを逃れる。そう、インレが大型なのは本機に多くの追加装甲を纏っているからであり、それらは全てパージ可能なのだ。

 

「やっぱりラウラは一筋縄ではいかないね」

 

「それはこちらの台詞だ。こうも早くモード・ハイゼンスレイを晒すことになろうとはな」

 

シュヴァルツェア・レーゲン・インレには追加装甲装備形態のモード・インレと軽装の高機動形態のモード・ハイゼンスレイの二形態が存在し、必要に応じて切り換えが可能なのだ。

 

『もう、何でも有りね・・・・』

 

『まさか趣味でデータベースに記録しといたウーンドウォートのデータ持ってくとは思わなかったわ』

 

ちなみに、鈴の煌龍やセシリアのガブリエルも雪兎のデータベースから自機にあったデータを引っこ抜いており、とんでもないパワーアップを遂げている。

 

「でも、勝つのは僕だよ!」

 

そう言うと、シャルロットはアンジュルグから切り換え初公開となるアドヴァンスドを展開する。

 

「【CC:クロスキャリバー】!」

 

それは両腕に腕と一体化したビームキャノンとブレードの複合武装でアドヴァンスド名と同じ名の【クロスキャリバー】を装備し、背面のサブアーム四本にも同様のものを持つ遠近両用の超攻撃型アドヴァンスドだ。その代わり、防御・運動性はかなり低く、他のパックでそれを補う事を前提とした極端なパックでもある。

 

『また何か極端そうな装備を・・・・』

 

『シャルのやつ、ガチで勝ちにいく気だな』

 

シャルロットはネオイェーガーとの併用で使っており、機動力を強化している。

 

「受けて立つ!」

 

クロスキャリバーをブレードモードで使うシャルロットにラウラも両腕のヒートブレードで迎え撃つ。シャルロットの六刀流を両腕だけで捌くラウラ。だが、途中でシャルロットの動きが止まってしまう。そう、ラウラのISに元から備え付けられている第三世代兵器AICだ。

 

「これの存在を忘れてもらっては困るな」

 

「ふっ」

 

しかし、シャルロットはそんなラウラに対して雪兎のような不敵な笑みを浮かべる。

 

「何がおかしい?」

 

「ラウラこそ忘れてない?僕のISがリヴァイヴⅡRCがどんなISか」

 

そこでラウラは気付いた。シャルロットの、リヴァイヴⅡ"S"背面に【コスモス】の姿が無い事に。

 

「しまった!?」

 

「もう遅いよ!」

 

その瞬間、ラウラの頭上からコスモスがネオイェーガーのネオバスターライフルを発射し、ラウラをアリーナの床に叩き付けた。

 

『あーっと!シャルロットちゃん、いつの間にやら背面のコスモスを分離してラウラちゃんの頭上を取っていた!』

 

『接近戦になった直後だな。その後は気付かれないようにサブアームも使って畳み掛けてラウラから離れないようにして機動力の不利をカバーしてやがった』

 

「くっ、忘れていた・・・・コスモスは分離して単独行動が可能だったな」

 

「気付かれないようにするのは大変だったよ」

 

「イェーガーを選んだのも私に機動力を印象付けさせて至近距離での斬り合いに持ち込むための布石か・・・・一本取られたな」

 

『試合終了~!激戦を制したのはシャルロット=デュノア!二回戦進出です!』

 

最初の試合を制したのはアドヴァンスドを上手く使い、コスモスという隠し玉を用いたシャルロットだった。

 

「次は負けんぞ」

 

「ううん、次も勝つよ」

 

そう言ってシャルロットは実況席の雪兎の方を見る。

 

「だって、僕は雪兎の隣に立つんだから」

 

それはシャルロットの雪兎への宣戦布告であった。




という訳で第一試合の勝者はシャルロットでした。

ラウラのインレは元ネタとなった機体と大体同じ事が出来るのでかなり強いのですが、他のISに比べて大型です。並みの相手ではデメリットにならないのですが、今回は相手がシャルロットだったので敗れてしまいました。

シャルロットの新アドヴァンスド【CC:クロスキャリバー】はかなり極端なアドヴァンスドで、他のパックとの併用が前提というクセが強いアドヴァンスドです。


次回予告

シャルロットとラウラの試合はシャルロットが試合を制した。続いての試合はロランと聖の対決。オランダ製のオーランディ・ブルームと兎製のウェーブ・ライダーというこのカードは一体どんな対決になるのか?


次回

「女貴公子VS天空の支配者 兎、女の底力を知る」

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